田村哲夫の発言 (教育再生に関する特別委員会)
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○田村参考人 おはようございます。
まずもって、このような場で私の考えを述べさせていただく機会をいただいたことを感謝申し上げたいと思っております。
現在政府が提出しております学校教育法の改正案に対しては、私ども、賛成をしている立場でございます。その立場から御意見を少しく申し上げてみたいと思います。四点ぐらい触れてみたいと思っておりますが、その四点に入る前に、今回の学校教育法の改正の趣旨というか意味といいますか、そういうようなものを少しく意見を述べさせていただこうと思っております。
昨年十二月に、国会の審議をいただきまして、六十年ぶりに教育基本法が改正されました。この改正によって、日本の教育のあるべき姿、目指すべき理念が法律で明らかにされております。その中には、義務教育の目的、大学、私立学校、幼児期の教育、学校、家庭、地域住民等の相互連携等々、新しい規定が設けられているわけでございます。
この新しい規定が設けられた基本法の改正の考え方でございますが、やはり、六十年の間に大きな時代の変化があったということを受けておるというふうに考えられます。時代の変化というのはこれからも続くわけでございますが、二十一世紀は、いわゆるグローカル時代、グローバルとローカル、こういう基調が社会の基調の考え方になるだろう。それは当然教育にも反映されなければならない。
その際、グローバルあるいはローカルという言葉は、別の言葉で言いかえますと、ダイバーシティーといいましょうか、多様性ということだろうと思います。つまり、多様の中にグローバルあるいはローカルというものがいろいろな考え方に反映されていく。そうなりますと、ナショナルスタンダードといいますか、ナショナルコードといいましょうか、国としてどういう特徴があるのかということをしっかりと押さえておかないと、多様性に対応しにくくなるというそういう面が出てくることは当然のことでございます。
したがいまして、従来の国としてのスタンダードの意味が、時代の変化、グローカルという流れの中で違った意味を持ってきている。ですから、当然のこととして教育基本法の中にあらわれてきているわけですけれども、伝統文化を尊重するというのはその一つの表現だろうというふうに私は思っております。
また同時に、規範意識という言葉が出てまいりました。これは、安倍内閣がよく教育改革の特性としておっしゃられていることですが、実は、教育の世界で規範意識という言葉は今回初めて使われているわけです。規範意識というのがなぜ出てきたかというと、今の流れの延長線上にあるというふうに私は理解しております。
つまり、伝統文化を大事にするということは、伝統文化の中に、我が国において自然につくられてきた文化の反映としてのマナー、人間としての生き方、これをしっかりとナショナルなコードあるいはナショナルスタンダードとして理解をしておく必要があるのではないか。私たちの国がもし伝統文化の延長線上にマナーというものを考えるとすれば、具体的に言えば、規範の面で言えば、例えばおてんとうさまという考え方をもう一回しっかりと考え直す必要があるのではないか。だれが見ていなくても、やっていいことといけないことをきちっと分けてそういう行動をするというこのおてんとうさま意識といいますか、自己抑制力といいましょうか、これがこれからのグローカルの時代には、私たちは日本の国民の一員としてそういうものをしっかり持っていることが必要であろう、こういう考え方で今回の改正がなされている。
基本法が改正されますと、当然のこととして、教育の具体的な内容を示す学習指導要領というものが議論され改正されていくわけですけれども、それをつなぐものとして、学校教育法というものが同時に改正されていく必要があるわけです。
今回、実は学校教育法が、いろいろな面において、多面な部分で改正されているわけでございますが、今回は四点ほど取り上げて御説明を申し上げてみたいと思っております。
まず第一点は、各学校種の目的、目標というものが明示され、それが提案されたということでございます。
これまでのいわゆる教育基本法の普遍的な理念、つまり、世界平和とか人格の尊重というような、いつの時代でもだれも反対することのない普遍的な理念に加えて、我が国の特有の伝統文化、あるいはその延長線上にある道徳心、あるいは、次の時代を担う青少年に対するサジェスチョンとして新しい公共の精神といったものが新しい基本法に、改正の中に入っておりますので、それを受けた形で、義務教育の目標という従来なかった新しい項目を学校教育法に入れていただいたことを私どもは非常に高く評価しているわけであります。
義務教育は、個人の人格の形成それから国民の育成というこの二つの面があるということを明示されました。これは非常に重要な視点でございまして、国家社会の形成者ということを提示しておく、つまり、人格の形成、これは当然のことでございますが、子供が大人になるということは、依存している存在が自立する存在になる、こういう変化でございますから、その自立の過程で人格を完成させていくということについてのお手伝いをする。今や十八歳で成人というふうに言われている時期、また、それが投票に反映する。つまり、国に対する参政権も十八歳からにするということが、ヨーロッパではもう既にして常識になっているわけでございますが、そういう時代の変化も受けて、義務教育の内容を、従来にない、目的のはっきりしたもの、つまり、人格の形成と国民の育成というこの視点を明確に出すということで、今回の改正は私ども大変結構なことではないかというふうに考えている次第でございます。
また、具体的には、小学校、中学校、高校等、大学については今回は大きな変化はないわけですけれども、大学にまでも一応大学の役割として、教育、研究、さらには社会貢献、こういう三つの目標を教育の目標として示しているということも私ども大きく評価をしているわけでございまして、学校教育がどういう目的で、どういう目標でなされていくのかということを明示したという意味では、非常に大きな改革ではないかなというふうに思います。
同時に、子供の成長、発達、つまり、依存が自立するというこの成長、発達の過程の中で発達心理学という学問が一九六〇年代に非常に進みまして、実は、これは従来の教育のいろいろな法規の中に必ずしも明確に反映されていなかったということがございます。発達段階に応じた教育というものを工夫する、さらに言えば、最近、まあこれからの問題ではあると思いますけれども、脳科学の研究が進みますと、脳科学を教育にどう反映させていくかということも大きなテーマになろうかと思いますが、そういった大きな社会的な、あるいは、人間の学問の成果というものを次の世代に伝えていくという意味での教育の仕組みに反映させるという意味では、今回の学校教育法の改正は十分に対応してきているというふうに思います。
学校種が順番を幼稚園からにしたという意味では、これは、幼児教育というものが十八歳までの年代の子供にどういう位置づけを持つのか、大変重要な役割を持っているということは既にして教育の現場では常識になっているわけですけれども、それが法律の形で明示されたということで、私ども、大変よかったなというふうに考えております。
それから二点目でございますが、新しい職種を学校の世界に持ち込んだという点が新しい視点でございます。
従来の経営学的な考え方でいえば、最も進んだマネジメントのシステムというのはなべぶた形であるというのはこれは常識でございますが、これは、ITその他の機器の発達によって、なべぶた形が一番いいんだ、こういうような考え方が実行されております。実は、学校はなべぶた形の組織をそのままとっておったわけでございますが、時代がそれを許さなくなってきたということを私ども考えて、この変更を歓迎するわけでございます。
どういうふうに許されなくなったかというと、実は、学校という組織は、いろいろな社会条件が成り立ったところででき上がった仕組みでございます。その社会情勢というのが変わってきますと、学校の役割が大きく変わってくるわけです。
実は私、中教審の中に教員の給与にかかわるワーキンググループというのが立ち上がりまして、その主査をさせていただきました。約二年間にわたって、現在の教員の給与の実態を調査させていただき、また勤務実態を調査させていただきまして、一定の結論を得て答申を出しているわけでございますが、その答申が今回の法律改正の内容に一部反映されております。
なべぶた形の組織では対応できないという意味は、先生方は社会の変化によって子供と接する時間が極端に少なくなってきている、そういう変化がございます。この極端に少なくなってきているという意味は、親と話し合いをしなきゃならなくなってきている、そういう事態が起きているということでございます。
親と話すよりは、実は、先生方には子供としっかりと対応していただきたいわけですね。子供としっかりと対応するという時間を給食費の取り立てに使われてしまうというようなことになると、何のための学校かわからなくなるということが現実問題として全国的に広がっているわけです。
それらの問題を解決するには、やはり、職種を幾つかつくって、それぞれ経験と自分たちの仕事の量を考えながら、例えば親との対応は、ある程度年齢がいって、親よりも年下でない人が経験のもとに対応した方が結果はうまくいくはずでございます。現実に現場からもそういう意見が出ております。そういう趣旨を踏まえて、副校長、主幹教諭、あるいは指導教諭といった仕組みを学校に持ち込むことを提案しているわけでございます。
根本は、時代の変化に応じて先生方が子供に接する時間が減らないようにというところが基本にあるということを御了解いただいて、ぜひ、この趣旨を生かしていただければと思っております。
三点目が、学校評価及び情報提供に関する提案でございますが、これは、法の整備の中に、学校の評価及び情報提供に係るいろいろなインフラストラクチャーを含めた提案がされております。
ただ、この際ちょっと心配なのは、自己評価それから外部評価と言われる評価がなされることは私ども大いに歓迎するわけでございますが、現在いろいろなところで言われております第三者評価ということは、これはかなり心配だなと。つまり、第三者評価をする仕組みがまだ整っていないわけでありまして、それはちょっと早過ぎるのではないかなと。学校に評価が導入されますと、大きな影響が学校に起こります。現場が混乱しないためにも、早速にやらなきゃいけないというのは内部評価であり外部評価であろうと思います。
実は、この学校の評価というのは、内部評価、外部評価のある程度のことは、こういった議論がされる前にほとんどの学校で行われています。まともな先生ならば自分の授業の評価を生徒に聞きますし、まともな学校ならば自分の学校の教育をいろいろな関係者に聞くということは、当然行われております。
ただ、実は、なかったのが公表する部分なんです。これはほとんど行われていなかったんです。今回の法の整備によってそれが大きく進んでいくだろうと思います。公表しなければ評価をする意味がないんですけれども、マイナス点も見ますので、なかなか現場ではそのことを嫌がるわけですね。そういう意味で進まなかったんですけれども、それでは学校はよくなりませんので、ぜひ今回、こういう整備の中で慎重にそれが進んでいくことは非常にいいことではないか。いわゆるPDCAサイクルというものが実際に実現していくということを大いに期待しているところでございます。
そして、大学等の履修証明制度については、これはまた、生涯学習社会の中で、いわゆるコンパクトな形で大学が社会に対する貢献を果たすという意味ではこの制度は非常に有効であろうというふうに思われます。大学人にお聞きしてみても、私も実は大学に関係しているんですけれども、具体的な話として聞いてみても非常に評価が高うございますので、ぜひこの制度は活用していただくということを期待しているところでございます。
以上、四点にわたって大変駆け足で御説明をさせていただきましたが、いわゆる教育基本法の改正を踏まえて教育の理念が明示されたところで、ぜひ、現場で適用するための学習指導要領の明確化を助ける意味でも、教育基本法と学習指導要領をつなぐ学校教育法の審議をできるだけ慎重に、そして早く御審議いただきまして、学習指導要領の審議に移れるようにお願いを申し上げて、御説明を終わらせていただきます。
時間をちょっとオーバーいたしまして、どうも失礼いたしました。
ありがとうございました。(拍手)