芝威の発言 (予算委員会公聴会)
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○芝公述人 芝でございます。
私の方からは、現在、雇用労働問題が非常にクローズアップをされておりますので、労働相談から見た職場の現状あるいは問題点につきまして述べさせていただいて、予算審議にぜひ反映をしていただければというふうに思っております。
現在、さまざまな労働行政機関、あるいはそれ以外の労働団体等で労働問題についての相談を受けておりますけれども、私は、東京都産業労働局の資料をもとに意見を述べまして、参考にしていただければというふうに思います。
そのほかに、先ほども少し出ました全国の労働局の労働相談についての状況なり、あるいは、裁判所におきます労働事件等の数字も極めて増大をしているわけですけれども、資料の方を見ていただければいいと思うのですけれども、年間の労働相談件数につきましては、現在約五万件の相談がありまして、その内容について見ていきたいというふうに思っております。
そこに十年の資料が載っておりますが、少し前の方、これより以前のことを申し上げますと、昭和六十年代につきましては、おおむね三万件程度の数字で推移をしておりました。それで、平成四年に三万七千件ということで二〇%ほど増加をいたしまして、御存じのように、バブル崩壊以降、ほぼ五万件台の数字で推移をしております。
次のページに、労働組合の有無別で見た労働相談件数がありますけれども、労働組合がない事業所からの相談が九割を超えておりまして、そういう意味で、いわゆる集団的労使関係よりも、個別的な労使関係の中からの相談が大半を占めているという状況がうかがえるというふうに思っております。
次に、男女別の相談件数を見てまいりますと、そこにありますように、おおむね五五対四五くらいの比率で推移をしております。
ただ、就労者の数字を男女別で見ますと女性の方が少ないわけですので、例えば千件当たりの数字等を見てみると女性の比率の方が高いというふうに思いまして、そういう意味で、職場で働いておられる女性の方が問題点を抱えているのではないかというふうに考えております。
次に、規模別で見た数字がございますが、下の円グラフを見ていただきたいのですけれども、代表的な相談項目であります三つ、賃金不払い、それから解雇、労働契約ということで見てみますと、賃金不払いにつきましては圧倒的に三十人未満の事業所で、三分の二近い数字を占めております。労働契約のところに行きますと、必ずしも三十人未満ということではなくて、それ以上の規模のところでも相談が来ているということが言えるかというふうに思います。
次に、産業別に見ました労働相談件数なんですけれども、東京の場合でいいますと、ほぼ七五%以上を第三次産業が占めておりまして、そういう意味では、製造業が比較的ウエートが高いところに比べまして、少しサービス業の数字が多くなるかなというふうに思っておりますけれども、一応、少しサービス業の中を詳しく見まして、そういう数字になっております。
次に、労働相談の内容につきまして、そこに六年間の数字を出しておりますけれども、解雇がずっと一位を占めております。解雇の相談というのは、必ずしも景気のいい悪いについて増減をするということなく、大体ずっと解雇の相談が一位を占めております。
二位につきましては賃金不払い、これは退職金ですとか一時金の問題も含めますけれども、賃金不払いの問題がバブル崩壊以降ずっと、二番目に多くなっております。
それから、三番目につきましては労働契約で、これは、労働契約の中身、あるいは、約束されていた労働契約が実際に入ってみたら違っていたというふうな感じの相談が三番目を占めております。
それで、四位のところに、ここ最近、退職の問題が出てきておりますが、これは解雇ではなくて、退職強要をされたとか、そういう項目についてなんです。これまで四位にありました賃金その他というのは主に賃上げだとか賃金水準の相談が多いんですけれども、これが、ここ最近ほとんど賃上げが行われていないということもありまして、非常に少なくなっております。
それから、特に最近の特色といたしましては、五番目のところに職場の嫌がらせというのが上がってきておりまして、最近、この項目につきまして非常に多くなっております。
次に、相談項目をそこにありますような形で分類しているわけなんですけれども、ここ最近の特色といいますか、私は四十年くらい相談をやっているんですけれども、その中で、労働組合や労使関係に関する相談が非常に少なくなっているということが特に言えるかと思います。
非常に高い項目としましては、そこにあります賃金不払い、解雇、それから雇いどめ、退職強要、退職というのを含めますと、ほぼこの三つが非常に高いウエートを占めているわけですけれども、その他の問題のところで、人間関係と職場の嫌がらせというのが次いで高いウエートを占めているというふうに考えております。
そのほかに、特別相談ということで、外国人の相談ですとか派遣労働者の相談、あるいはパートタイマーの方の相談についても分類をしておりますが、外国人の方の相談の中では、圧倒的に賃金不払いと解雇が多くなっております。
次に、派遣の方の相談につきまして言いますと、これはほとんど社会保険と労働保険の加入の問題、加入をしていないという問題が多くなっております。
次に、パートタイマーの方の相談が年間で約六千件くらいあるわけですけれども、ここの中では解雇と賃金不払いの問題が非常に高いウエートを占めております。
全体的な概況につきましては、そこに数字として挙げたような中身ですけれども、次に、最近の労働相談の事例の中から、非常に特徴的といいますか、そういう項目について、どういう内容かということについて幾つか例を挙げております。
労働契約法が、御存じのように制定の問題が検討されておりますが、こういう相談が非常に多くなっております。
このケースでいいますと、Aさんと仮にしておきますが、インターネットで募集広告を見て、企業規模が五十人くらいの食品業のところに採用になりまして、あるスーパーのコーヒーショップで働かれていたわけですが、賃金が約二十万円くらい。就業時間が、開店が十時ですので、十時の少し前から、閉店の八時半ですぐ帰れるということではなくて、実際は九時ごろまでかかっていたというふうに言われているんですが、その中で休憩が一時間予定をされております。お店ですから、彼のほかに数人のアルバイトの方と一緒に働いているわけですけれども、試用期間が三カ月ということで、試用期間を過ぎたら店長手当として三万円を支払うという約束で働き始めたんですけれども、六カ月経過をしましても手当が支給されませんでした。
それで、Aさんは、経理を担当されている社長の奥さんが専務ということですので、お店に見えたときに約束の店長手当を払ってほしいというふうに言われたようなんですが、翌日、社長さんが見えまして、実は、そんな約束はしていないということで、言った言わないの話になったわけです。そうすると、怒って解雇を通知されたということで、解雇の予告手当と、それから時間のところ、計算していただくとわかると思いますが、残業代が未払いになっておりますので、払ってほしいという相談でした。
どういうことかというと、労働契約を文書で交わされているということが非常に少ない。特に中小企業のところでは少なくなっておりまして、労働条件について約束と違うという相談は非常に多くあります。
率直に言いまして、言った言わないの話です。それから、インターネットの求人広告にも書いてありませんので、実は彼の前任者の方にどうだったかということを聞いてもらったんですが、実は店長手当は払われておりまして、ただし金額が一万円ということで、実際に三万円の約束があったのかどうかというのはちょっと疑問なところがあります。
結局、最終的には、店長手当については払っていただけませんでしたけれども、未払いの時間外労働を払ってほしいというふうに言いまして、約五十七万円だと思いますが、そういう金額を支払ってもらって、本人も、それだけ払ってもらったので店長手当については断念をするということになっております。
次に、就業規則の周知義務なんですけれども、Eさんは、サービス業で八十人くらいの企業に就職されていたわけです。ある年、四月に昇給するということになっていましたけれども、ありませんでしたので、上司に聞いたところ、二年前に就業規則を改定して、賃金の昇給の制度を改定したんだというふうに言われたそうなんですが、就業規則を見たことはないし、一方的に変更ができるのかということが相談の中身です。
これは御存じのように、フジ興産事件という最高裁の判例で、周知をしていない就業規則の効力については否定をされております。就業規則を改定される場合には、そこに書きましたように、従業員代表の方の意見書の添付なり、労働基準監督署への提出だとか、あるいは従業員の方への周知、これは法律でかなり詳しく決められているわけですけれども、それがないケースが非常に多くありまして、従業員の方が安心をして働くという意味では、そういう手続についてきちっとしていただく必要があるのではないかと思っております。
次に、不払い残業についてなんですが、こちらの方は、会社で人事労務関係を担当される方からの相談です。広告代理業で、マスコミ関係は非常に残業の多い業種でございまして、連日残業があるわけですけれども、残業料が一銭も払われていないということで、このDさんは以前ほかの会社で残業料をもらっていたということで、ある労務管理の講座に行ったときに残業不払いが多いというふうに言われたこともありまして、その点につきまして社長さんに話をされたら、じゃ、労務担当なんだから考えてみろというふうに言われて、労働基準法どおり支払うということで提案をされたそうなんです。社長さんの方は、営業マンの方だけ月三万円の営業手当を払うということで制度を変えられたようなんですが、その金額では実際の残業の恐らく五分の一くらいにしかならないのではないかというふうに言われています。
そういう意味で、残業の問題は、この間、不払い残業の問題も含めまして、非常にクローズアップをされておりますけれども、時間外労働を命ずるためには、時間外労働協定、通称三六協定というふうに言っておりますが、これを締結して労基署に届け出をする必要がありますが、その手続をとられていないケースというのが非常に多くあります。三六協定は免罰規定でございまして、三六協定を結んで届け出をすることによって罰則が免じられるわけですけれども、労働基準監督署が昨年のいわゆる不払い残業について勧告した金額だけでも二百三十数億円というふうに聞いておりまして、そういう面でいうと、不払い残業が非常に蔓延をしているという状況が明らかになっているのではないかというふうに思います。
次に、労働者派遣法の関係なんですけれども、この内容については、出版関係の六十人くらい、出版で六十人といいますと大体中堅クラスのところだというふうに思いますが、営業補助ということで派遣の方が、そこに書いておきましたように五人働かれているわけです。一人は十一年、二人は、少し違うんですけれども七年間くらい、一人が五年、一人は三年以上ということで働かれているそうなんです。
これは改正労働者派遣法で、一般的、臨時的な業務につきましては三年に延長されましたけれども、その際に、派遣先の使用者責任の強化ということで、いわゆる派遣労働者に対する雇用申し込み義務が創設をされています。経過措置もついているんですけれども、極めて長い期間、同じ方が同じ会社に派遣をされているということは、明らかに派遣法違反ということになるわけです。その際には労働組合の意見も聞くということに法律上はなっていますけれども、これは、直接雇用義務について現在話し合いをされています。
次に、時間の関係がありますので、最後のメンタルヘルスのところに参りたいと思います。
これは、メンタルヘルスの関係では非常に多いケースですけれども、大手金融機関に勤務されているFさんの場合でいいますと、非常に毎日のように残業がありまして、過密労働、時間の平均は、月の数字で約八十五時間残業をされている、そのほかに、ノルマがあったり、口うるさい上司の方に叱責をされたりということで、ストレスが原因で精神疾患、この方の場合はうつ病になりまして、病気療養中になっております。
会社の就業規則によりますと病気休職の期間は二年ということになっておりますが、休職期間が満了に近づくようになりますと、まず家族の方は、生活のことがありますので、何とか復職をしてほしいということを言われます。ところが、主治医の医師の方から言わせますと、同じ状況の職場に戻しますとまた病気が再発するのではないかということがあります。そういう形で、会社の方は、病気がきちっと治ったと医者が言うまで戻っては困るというふうに言われておりまして、問題なのは、このまま休職期間が過ぎますと自然退職ということになりますので、そのことについて心配で相談をされました。
私どもは、できれば病気休職期間を少し延ばしてもらえないかというお話をしたんですけれども、最終的にこの方の場合は、多少の退職金の上積みということで退職をされております。
こういう状況のもとで、私どもとしては、特にこのメンタルヘルスの問題では、やはり会社の方の安全配慮義務というものが非常に大切なのではないかというふうに考えております。
時間が参りましたので、結論として申し上げますが、現在さまざまな労働法制について検討されているようですが、ぜひこういう職場の現状を知っていただいて法改正の検討について行っていただきたいということが一点と、雇用労働条件の改善が特に今の状況のもとで大切なのではないかというふうに考えております。
それと、私ども労働相談を受けておりまして非常に感じますことは、現在あります労働法規について残念ながら守られていないケースが非常にありまして、そういう面で法律が遵守されるということが非常に大切なのではないかというふうに思っております。
それから最後に、ほかの方も意見を言われましたけれども、セーフティーネットの確立がぜひ必要だというふうに考えております。
以上の点を申し上げまして、私の意見にさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)