家本賢太郎の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)
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○参考人(家本賢太郎君) 株式会社クララオンラインの代表取締役を務めております家本賢太郎でございます。このような機会で発言の場をお与えいただきましたことを感謝申し上げます。
今日は、まず、私どもクララオンラインというインターネットのサーバーコンピューターを管理するベンチャー企業において取り組んでおりますワーク・ライフ・バランスの実態、それから、これも率直に申し上げようと思っておりますが、中小、ベンチャーの企業でワーク・ライフ・バランスに取り組むことに対する課題、やはり大企業と比べていろんな面で余裕がなかったり、まあ人的な余裕、金銭的な余裕、様々ですけれども、そうした面で大企業との比較というところもお話ができればというふうに思っております。
前のスライドを順番に使わせていただきながら御説明を申し上げたいと思います。(資料映写)
まず、簡単に私のバックグラウンドを少し御説明申し上げたいと思いますが、今からちょうど十年前に創業いたしましたいわゆるITベンチャーの企業でございまして、大学、大学院に通いながらこの仕事を務めてまいりました。ちょうど、これは少し今日のワーク・ライフ・バランスに絡むところなものですから私の個人の部分を少し触れさせていただきますと、私は途中、小学校の六年生のころに脳腫瘍を発症いたしまして、その後、医療事故によりまして車いすになり、中学校三年間を五十日ぐらいの出席日数で過ごすと、ほとんど入院生活をしておったということがございました。その後も車いすの生活を十八歳まで続けておりまして、身体障害者の手帳の交付を受けて車いすの生活を送るというようなことがございました。途中、大検を受けまして、高校には行かず、二〇〇一年から大学に通いながらこの仕事を続けてきたというようなことがございます。
会社自体は今、日本では東京と名古屋、それから海外では中国の大連、台湾の台北、それからシンガポールにそれぞれを拠点を持ちまして、約七十名ぐらいの規模でやらせていただいております。
今日は、ワーク・ライフ・バランスというそのポイントと、もう一つは、私どもの特徴的な背景といたしまして、従業員のちょうど半分ぐらい、ちょうど今五割強が外国籍であるという背景も踏まえてお話ができればいいなというふうに思っております。
いわゆるITのベンチャーの企業の中でも、少し私どもはゆっくりと走っておる、仕事をしておりますが、会社の規模あるいは中小の企業の現状といたしましては、多分ほかの我々と同規模ぐらいの中小企業の例ともさほど変わらないだろうというふうに思いますので、その点を踏まえながらお話ができればなというふうに思っております。
株主のページ等々、少しごらんいただきながら、「価値観」のところから少し我々の取組を御説明をさせていただきたいと思いますけれども、まず、七十名おりますうち、先ほど申し上げたとおり約半分が外国籍であると。日本型の経営を、私のようないわゆる一九八〇年代生まれの世代はいろんなパターンを幾つか見てまいりまして、果たして例えば完全に経済合理性に傾くのがいいのか、あるいは本当に人だけを考えて継続的な企業の経営ができるのかと、いろんなパターンを考えてまいりました。
私たちが今考えているのは、その両方のいいところをきちんと融合して、会社の経営をゴーイングコンサーン、企業の継続性の中でできないだろうかということを考えておりまして、特に今日のワーク・ライフ・バランスの中のポイントとしては、この「価値観」の一番下にあります「組織」という、「家族のようにお互いを尊重し、助け合う。」というキーワードが大切になってくるというふうに思っております。
めくっていただきますと、私どもの今の方向性というのは、日本で一番になるという小さいことではなくて、アジアで一番になろうという一つの目標を掲げてやっておるところでございます。今後、また更に東南アジア、北東アジアの国々に進出をしていこうということで、日本発の多国籍でのITのベンチャーとして結果を出したいというふうに考えておりまして、必ずしも日本の従来からの考え方だけにとらわれることなく、逆にアメリカ、ヨーロッパの考え方にとらわれることもなく、自分たちなりの新しい組織像をつくっていこうという背景がございます。
元々、創業の経緯もございまして、いろんな背景を持っている人間を採用して会社を強くしていこうということをやっておったわけなんですけれども、元々ワーク・ライフ・バランスというものに対して私どもが取組を始めましたのは今から三年ほど前でございまして、そのときには単純にワーク・ライフ・バランスというその言葉は知っておったものの、我々中小、ベンチャーの企業には余り関係ないだろうというふうに思っておりました。
ところが、たまたま新卒の社員で、大学院卒で、学生結婚をして子供が一歳であるという社員の入社が決まりまして、今まで例えば小さな子供がいながら働くという経験を私どもの社員の中にはなかったものですからどういうふうに対応しようかというところで、このワーク・ライフ・バランスに対しての取組のきっかけが始まったところでございました。
その従業員に関しては、例えば保育園なんかの都合もありまして、結果的に例えば時短勤務を認めたりですとか、会議がどうしても夕方から始まり保育園のお迎えの時間なんかに重なってしまうというときなんかには、一度早めに会社を切り上げてもらって、会議に子供を連れて参加してもらうと、泣いちゃったときなんかには代わりに会議に参加してない社員に少し預かってもらったりしながらということで、会議に子連れオーケーにするとかいうような、大枠の、いわゆる規定レベルでその取組をするというよりは、大枠でこんな方向をしようというのが三年ぐらい前でございました。
そのうち、だんだん会社の成長とともにいろんな年齢層の従業員が入ってくる中で、いわゆる子育て世代の従業員、特にITの場合には二十代、三十代、この辺りの年齢層の従業員というのがどの企業でも大体非常に多いんですけれども、そうした中で、子育て世代の従業員が増えてくる中に、一つ継続的に会社にきちんと働いてもらって結果を出してもらえると、例えば一年や二年でジョブホッピングでぽんぽんぽんぽんと会社を移り変わっていくというような状況ではなくて、長くうちの会社に勤めてもらえるためにはどうしたらいいだろうかということを考える上で、一つ会社の人事戦略、経営戦略の柱としてワーク・ライフ・バランスというものに取り組もうということを全社で進めてまいりました。
会社の雰囲気が、こちらの写真にございますとおり、これは一部の社員ですけれども、例えばフランス、ポーランド、ハンガリー、ロシア、南の方に行きますと、マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、中国、韓国、台湾、香港と、いろんな国籍の社員が働いておりまして、日本語をもちろん話すことができる社員もおりますし、日本語はこれからというような従業員も中にはおります。半分ぐらいが、外国籍の社員の場合に関しては、日本に留学をしてきて、そのまま日本で働きたいと、日本の文化に関心を持ったというようなところで就職活動をしていて我々を見付けてくれたというケースですが、残りの半分は非常に興味深くて、海外の大学なり大学院の在学中に就職活動をしていて、日本に来たいといってダイレクトに飛んでくるというようなケースもございます。
そういう中で、先ほど申し上げましたとおり、その経営戦略、人事戦略の重要な柱としてダイバーシティー・アンド・インクルージョンという、多様性と、その多様性を受け入れる、受容する考えを持とうということを非常に経営の高いレベルで常に意識をしております。
私どものそのワーク・ライフ・バランスに対する考え方というのは、中小、ベンチャーの場合、とはいうものの、毎月毎月、四半期四半期、一年一年という単位での業績が求められてきますので、ワーク・ライフ・バランスに対しての取組なんかの余裕はないだろうというのが大方我々と同じぐらいの規模の企業の経営者の方の御意見、私もそういうふうに聞いてまいりました。
ただ、我々の明確な企業の目標がある限り、この一番右の従業員の満足度というのは非常に欠かせない部分であると。継続してその会社で働いてくれて結果を残してくれるというのは、従来の終身雇用で四十年働いてくれるというような状況から、我々のITのような企業の場合には、本当に早かったら半年、長くても三年、四年ぐらいでぽんぽんと辞めていってしまうというような状況が非常に周辺多いものですから、そこにやっぱり経営が一番力を使わなきゃいけないという認識を持っております。
そういう中で、そのワーク・ライフ・バランスに対しての取組を続けてまいりましたが、一つこれは我々が気を付けたポイントで、どうしても会社の経営者がワーク・ライフ・バランスに取り組もうとすると、常に会社側若しくは経営側の視点が多く含まれてしまうと、結局その経営側の都合のいいようになってしまうということで、そこを何としてでも避けたいなと。ワーク・ライフ・バランスをぽっとやって、二、三年やって、はやり言葉のようにやって終わらすつもりはないものですから、継続してできるためにはどうしたらいいだろうということで、私どもはフローレンスという東京都内で病児保育をやっておりますNPO法人と提携をして、経営と従業員の間にNPO法人に入っていただいて、例えば社員からどんなワーク・ライフ・バランスに対する施策が欲しいのかとか、今ワーク・ライフ・バランスに対して会社が取り組んでいることをどう評価するかとか、そうしたアンケートも含めて全部NPOの方に間に入っていただくと。
企業とNPOの融合、連携というものも最近非常に叫ばれているところでございますけれども、私ども、その一つの経営側の意識として、従業員の本音を聞きたいと。きれいな言葉を聞いて従業員と会社の間の関係をきれいに保ちたいというのではなくて、本当に従業員たちに長く会社を愛してもらって働いてもらうためにはどうしたらいいだろうということで、病児保育という正に子育て中のお母さん、お父さんに接点を持っているNPO法人だったものですから、きっと関心を持っていただけるだろうということで打診をいたしましたところ、そのような提携関係を結ぶことができまして、三年間、今まだ継続的にやっておりますけれども、続けております。
特に、最初は、ワーク・ライフ・バランスといっても、今まで申し上げたようなとおり、子育てということがキーワードになりがちだったんですが、必ずしもワーク・ライフ・バランスというのは子育てだけに限るものではございません。
例えば、男性の独身の社員であっても、仕事の時間以外のところで、それはスポーツをするのもいいかもしれませんし、何か資格を取るための勉強をするのもいいかもしれませんが、とにかくプライベートの生活と会社の生活のバランスをどういうふうに会社が認識してあげるかと、そこをサポートしてあげるかというところがポイントだというふうに思っておりまして、そうした点について、ちょうど昨年度ぐらいから更にその取組を増やしながら動いておるところでございます。
結果、何が起きたかというふうに申し上げますと、実は昨年、離職率、離職というその点からいきますと、残念ながら外国人の社員で一名、個人的な都合で帰国をしなければならないというような社員がございましたが、それ以外退職者はゼロでまいりまして、この規模のベンチャーの企業としては比較的いい数字だったのかなというふうに思っております。
その育児支援の中での取組については、大きく私どもが挙げておりますのは、このスライドに挙げさせていただいているとおり、在宅勤務、時短勤務を認めるですとか、やはりITの会社ですからITの仕組みをいろいろと活用したものを提供しようということでe—ラーニング、自宅でいろんなパソコンを使っての勉強ができるようなことを会社がサポートしたりですとか、それから冒頭申し上げましたとおり、子供を一緒に連れてきてもらってミーティングとかブリーフィングに参加するのもオーケーですよというようなこともやったりしております。
ここで重要なのは、大企業の中でもこういうふうにいろんなものを並べられて、こんなことができます、こんな施策がありますというものを挙げられるところが多いんですけれども、我々が非常に気にいたしましたのは、ITの中でも特にベンチャーの企業である、我々中小企業であるということを自覚して、中小企業でできるところからやっていこうと。何もその大企業の皆さんがやっていらっしゃるワーク・ライフ・バランスの制度を全部まねする必要はなくて、我々でできるところからやっていこうと、継続が重要であるという認識を経営者一同持っております。
ですので、例えばこういう在宅勤務ですとか時短勤務に関しても、ベンチャーの企業の場合には人員的な余裕もありませんから、一人、二人余っているなんというケースもありませんので、あらかじめ出産、育児の予定を会社のみんなで話し合って、この人の仕事はこういうふうにカバーしようとかいうようなことを議論をたくさんすることによってカバーするというような取組をやってまいりました。
それから、少し私どもの、もうこれは社会との接点でございますが、こうした私どもの社内のワーク・ライフ・バランスに対する取組を一つケースとして知っていただこうということでブログのサイトを作りまして、もう一年半ぐらいやっておりますが、ワーク・ライフ・バランス・アドベンチャーということで、特に会社の宣伝を実は全く中ではせずに、会社の中の実態をそのままお伝えするということもやっております。中には、例えば社員のインタビューを、これも一切、実は私も含めて経営者は事前チェックなしで公開をしておりますけれども、NPOの方に、先ほど申し上げたNPOの方に入っていただいて、そこで編集をしていただいてブログのサイトで公開してというようなこともやっております。
思わぬ効果といたしましては、ちょうど昨年の十一月、十二月ごろ、この三月卒業ぐらいの大学生、大学院生がワーク・ライフ・バランスに対して非常に取組に関心を持っているなというのを実感いたしましたところとして、卒業論文ですとか修士論文の参考事例として使わせてほしいという声が非常に多うございまして、七十件ほどその二か月間でいろんな学生さんから、このブログを見ながら、もうちょっとこういうところを知りたいと、データ欲しいなんという、そういうお問い合わせもいただいたところでございます。
今日は率直に申し上げようと思ったものですから、いい数字だけではなくてネガティブな数字も持ってまいりました。例えば、ワーク・ライフ・バランスに対して取り組んでいることについて、ポジティブに見ている従業員も当然ございます。しかし、ごらんいただきますとおり、そのグラフの下の方には、自分には関係ないとか無駄だと思うという意見を言う者もございます。これは当然どこを見なければいけないかと申しますと、この下の方、自分には関係ないとか、ワーク・ライフ・バランスに対する取組というのは無駄だというふうに言っている人間に対して誤解を解いていく作業をしなければならないのかなというふうに思います。
途中申し上げたとおり、ワーク・ライフ・バランス、イコール育児支援だというふうに思われているところは、まだまだ私どもこれだけいろんな取組をしておりましても従業員の中には残っておりまして、むしろ例えば親御さんの介護ですとか、いわゆる資格の取得に対する支援ですとか、ITの仕事ですと体がやっぱりどうしてもなかなか動きが少なくて壊れやすいということもありまして、そうした体力面でのバランスを取るとか、いろんなことが考えられるんですが、そうしたものもワーク・ライフ・バランスなんだよということを社内に対しても更に啓蒙する必要があるのかなというのが、こうした社内調査の一つのデータでございます。
全体的に見るとその評価は、八割以上の社員は非常にワーク・ライフ・バランスに対して取り組んでいるこの会社を評価するというふうにデータを挙げてきてくれています。しかし、定量的なデータで見てもネガティブな意見はございますし、コメントを含めて定性的なデータも中では取っておりますが、やはりワーク・ライフ・バランスの取組は一部の人間にとってだけメリットがあるんじゃないかと、本当に社員、従業員全員にメリットがあるものかどうかというのは疑わしいという意見も出ておりまして、ここは長く継続的に取り組むことによって解決をしていかなければいけないのかなというふうに考えております。
特に、ワーク・ライフ・バランスというのがマスメディアの報道の中でも育児支援だというふうに言われ続けるところがちょっと多いのかなというのがやはり率直な私の感想でございまして、育児支援だけじゃないよと、ワーク・ライフ・バランスというのは、本当に人間が働く中で、働くということと個人の生活というもののバランスをどういうふうに保つかなんだと。そこでリフレッシュをして、また仕事に対してのその情熱を傾けれるような、そういう考え方なんだよというものがもう少し広まってほしいなというのが、これはマスメディアに対する意見でございますけれども、持っております。
最後に、私どもが感じております課題を少し御説明申し上げたいと思います。
やはり中小、ベンチャーの企業というのは、資金繰りの問題も当然ありますし、利益を追求しなければならないという、そのステージステージでの当然目標もございます。
それから、私どもも外部の投資家、機関投資家などが株主に入っておりますが、そうした機関投資家、株主はやはり早い結果を求めるというような傾向もございまして、ワーク・ライフ・バランスに対して取り組んでいることをいかに株主に対しても理解をしてもらうかということも今後重要になるだろうと思っております。
それから、ワークシェアリングという問題でも、ワークシェアリングということに対してそもそも日本の場合には余り慣れているケースが少ないものですから、仕事をシェアすることというのがお互いにとってどういう効果があるのかということを、もう少しいろんなモデルケースが出てくるといいなというふうに思っております。
それから、企業風土・環境という点におきましては、私どもの場合、一つの背景として外国籍の社員が半分いるということで、まあ何となく日本の企業ですし何となく外国の企業のような、そんな雰囲気がふだんの会社の中の雰囲気なんですけれども、そういう中で、優秀な人であれば国籍、宗教、文化、民族、そうしたものと関係なく採用していくという企業の方針もまたこれは必要なのかなというふうに思っておりますし、長期的に考えますと、中小企業が成長するためには優秀な人材がやっぱり必要で、私どもも経験しましたけれども、中小企業というのはなかなか採用コストがたくさん払えないものですから、結局まあ大企業が採用できる層と違う層のやっぱり採用にならざるを得ないという問題があります。結果、いつまでたっても中小企業は中小企業であり続けなければならないというようなこともございまして、成長を求める企業にとっては、優秀な人を探すときに日本の中だけじゃなくて世界から探してくるということに対しても、いろんな対応がこれから増えてくるといいなと思っておりますし、私どもビザの問題とかでいろいろと苦労もしてまいりましたが、そうした面での変化もあると。これはまあワーク・ライフ・バランスという一つの面だけじゃなくて文化を変えていかなければいけない問題だというふうに思っておりまして、いろんな背景が連鎖しているのかなというふうに考えております。
少しちょっと時間オーバーしてしまいましたが、私どもの今の現状の取組についてと私の意見について述べさせていただきました。
以上です。ありがとうございました。