渕上貞雄の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。社会民主党の意見を申し上げます。
 この間、本調査会では、「成熟社会における経済活性化と多様化する雇用への対応」をテーマに、今回、三年間にわたる調査のまとめとも言えるワーク・ライフ・バランスについての調査が行われました。私は、大変有意義な調査会だと思っております。
 さて、ワーク・ライフ・バランスについてですが、日本語で言いますと労働と生活の調和というふうになりますが、当たり前のようで当たり前にできていないというのが実態であることが調査会の中から浮き彫りになったと思います。
 参考人意見にもありましたように、ワーク・ライフ・バランスというと子育て支援を中心に考えられる傾向にあります。確かに、制度導入の入口としては、子育て支援は分かりやすく、少子化を食い止める非常に重要な考え方でありますが、ワーク・ライフ・バランスは、特定の年齢や業種において取り組まれる内容のものではなく、社会システムとしての一つとして存在させることが必要であると考えます。
 ここ十年間の働き方の変化、雇用形態の変化は激しいものがあります。長時間労働を余儀なくされる正社員と、労働条件が低く、企業の都合に合わせて便利に安く使われるパートや派遣、有期、請負労働など、働き方の二極化が確実に進行しました。パート労働者など、本来は生活との調和が容易であるとされてきた働き方ですが、現実には、育児・介護休業を取得するのが困難であるなど、両立支援が行き届いていないなどの問題があります。
 また、成果主義は時間ではなく成果によって評価することが基本ルールであると言われますが、時間管理の弛緩した結果、労働時間が短縮されるのではなく、かえって長時間化する傾向を加速させています。これらの結果、メンタルヘルス不全者が増加をし、過労死や過労自殺など、深刻な問題が惹起しています。また、家事、育児など家族的責任が果たせない、果たす時間がないなど、仕事と生活の両立が達成できずにバランスを欠いた生活となっております。
 このように、日本的雇用慣行が崩壊する中、新たな雇用の在り方が模索されてきましたが、この中でワーク・ライフ・バランスという視点はほとんど顧みられることなく、働き方の変質だけが着実に推移をしてきました。これは、利潤だけを追い求める経営者の姿勢に惹起するところが大きいと思います。非正規社員の問題、パートタイム労働者の均等待遇といいますと、経営側からは判で押したように国際競争力に勝てないという答えが返ってきます。国際競争力は収益率だけのことではなく、労働者をいかに大切に働いてもらうかということも国際競争力の一つと考え方を転換させていくことが必要です。
 参考人の意見の中でも、上司の理解がワーク・ライフ・バランスを進める上で重要であるとの発言がありましたが、私も同意見であります。ワーク・ライフ・バランスを進める上で経営者の理解、努力というものは何よりも必要であり、これからは労働人口が減少していく中で、いかに大切に働いてもらうかということで競争すべきではないでしょうか。ワーク・ライフ・バランスは、勤労社会に起きている様々なゆがみを治療し、改革するシステムで、大きな期待が掛けられています。
 この間、育児休業、介護休業など整備拡充されてきましたが、実態は女性の約七割が育児休業を取得する前に仕事を辞めており、残り三割の六四%が取得しているのが実情です。男性では取得率は〇・三三%です。育児休業など単独の制度は、当該の課題に関心がない人にとってはむしろ職務遂行にとって阻害要因にさえ映ります。多くの賛同を得るには、働くすべての人に両立課題があることを前提に、トータル的な生活支援の方策が必要です。両立支援の実施は企業にとっては投資ですが、企業に引き止めたい有能な人材が両立支援によって新たな意欲を持って業績向上に貢献すれば、投資コストは回収できます。仕事と仕事以外の生活の両立を支援することが社員から高い勤労意欲を引き出し、女性の活躍の場の拡大にもつながることは、参考人の意見陳述からも明らかとなっております。
 社会システムとしてワーク・ライフ・バランスを定着させるには、やはり政府の取組、後押しが大きいことは言うまでもありません。この間の政府の動きを見ますと、雇用保険法の改正、パート労働法の改正、雇用対策法の改正、労働基準法の改正、労働協約法、最低賃金法の改正など、どうも経営側を向いた内容のものとなっております。また、先日の政府参考人から報告のあったワークライフバランス憲章の策定でも、多様な働き方、成果主義が逆に労働者の生活を脅かしているという視点が欠けています。
 憲法二十五条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定をし、生存権を保障しています。労働基準法第一条第一項は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」と規定をし、生存権の規定を労働条件の分野で具体化をしております。この規定は、働く人が人間としてその人格を尊重されるような価値ある生活が営まれるだけの労働条件を保障することを宣言をしたものです。ワーク・ライフ・バランスを先取りした条文であると考えます。ワーク・ライフ・バランスは、この原点を踏まえて、政府が先行して誘導していくことが何よりも必要であります。
 以上、雑駁でありますが、私の意見といたします。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 渕上貞雄

speaker_id: 19418

日付: 2007-05-09

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会