高木新二郎の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(高木新二郎君) 高木でございます。
私は、先月三月十五日まで産業再生機構の産業再生委員長をしておりました。先日解散いたしましたが、清算中でございます。そういった関係から、私の申し述べさせていただくところは、産活法改正法案の第四章、事業再生の円滑化という題になっておりますが、その点に焦点を絞らせていただきたいと思います。(資料提示)
こういう資料を作って先生方にお配りしてございますので、おめくりいただきたいと思います。
一は目次でございます。
なぜ、産活法第四章、事業再生の円滑化、この部分が必要なのか、それから改正産活法案第四章の中身、事業再生円滑化の中身はどうなっているのか、それから法律になった後の運用上の問題は何かと、こういう点について述べさせていただきます。
おめくりいただきますと、二ページでございます。
改正産活法第四章、事業再生の円滑化は、私的整理ガイドラインの運用と産業再生機構の活動によって普及しました早期事業再生のためのアウト・オブ・コート・ワークアウト、片仮名で申し訳ございません、裁判所外の私的整理の実務を日本に定着させるために不可欠なツールを提供するものであります。この法律の制定とその活用によって、日本の早期事業再生のための文化は世界的水準に達するものと考えております。
金融庁が応援しまして全銀協と経団連が中心となって組織しました私的整理ガイドライン研究会が、二〇〇一年九月にガイドラインを制定いたしました。過剰債務により経営困難となった債務者企業を再建させるために、メーンバンクとそれ以外の金融機関が再建計画について協議して、中立公正な専門家アドバイザーの助けをかりて債権放棄やデット・エクイティー・スワップ、これも片仮名で恐縮ですが、債務の株式化について合意するための民間の自主的なルール、紳士協定でございます。このガイドラインを使って、これまで三十社余りの大企業などが再建されました。
ガイドラインが作られたのは不良債権処理のためですが、それだけでなく、早期事業再生のための有用なツールでございます。九九年から二〇〇五年にかけて整備されました民事再生や会社更生などの法的手続がございますが、資金繰り破綻してからでないとこれらの手続は利用されないのが現実。一般の商取引債権を巻き込んでしまうので、事業価値を毀損することにもなりかねない。ガイドラインによる私的整理はそれよりも早い段階で開始されて金融債権者だけで金融支援しますので、混乱は少なく済みます。手遅れになる前に早期に着手して迅速に事業を再生させることは経済安定のために必要ではございます。
二〇〇三年に産業再生機構が創設されました。金融と産業の一体的再生を図るためでございます。事業再生は民間の手法で行われるべきものですので、機構は株式会社とされました。また、政府保証で調達できる資金を使って準公的機関が事業再生を行いますと、民間の再生ビジネスの活動を阻害することにもなりかねませんので、時限立法とされました。私どもはそれを一年前倒しにして、先ほど申し上げたように解散いたしたわけでございます。
ガイドラインによる私的整理は、できれば銀行の資産である貸金債権を減らしたくないというメーンバンクのイニシアチブによって、逆に借金をできるだけ減らしてもらいたいという債務者の債務を削減するために行われますので、利益、利害が相対立する問題が生じて財務リストラが徹底してなされないというおそれがございましたが、産業再生機構はそういったしがらみを気にせずに、御案内のとおり四十一グループ、百九十八社の再生を支援することができました。
機構の仕事を始めるに当たりまして、対象事業者を再生させるだけでなく、日本経済の持続的な発展のためには早期事業再生の文化を日本に根付かせるということが必要であると考えておりました。その目的はある程度達成されたようでございます。この四、五年の間に日本で再生ビジネスが育ちました。しかし、世の中も随分と変わりました。いろんなプレーヤーがかかわるようになってまいりまして、銀行と企業の癒着を意味するメーンバンクシステムもメガバンクに関する限りは変わったようでございます。しかし、その代わりに貸金債権の売買も行われるようになりまして、銀行はポートフォリオの内容を良くするために貸金債権をファンドなどに売るようになりました。元々、ガイドラインによる私的整理には債権者全員の同意が必要でございます。もうこれは三ページに入っております。
私的整理ガイドラインの参考になったのは、ロンドン・アプローチという不文律のプラクティスでございます。しかし、ロンドンのシティーの金融村の銀行だけで紳士的にワークアウトをしていたのに、ファンドなどが債権に入って、考え方が違う人たちが入ってきたので、話合いによる解決が難しくなりました。そこで、英国では二〇〇二年にエンタープライズ法というのを作りまして、ほとんどの債権者が合理的な再建計画に同意したのに少数債権者が反対した場合には裁判所の多数決で計画を認可するということになりました。こういうことは世界的な傾向でございます。
皆さん、ユーロ・トンネルを御存じだと思いますが、ユーロ・トンネルはロンドンとパリの間を列車で一時間半の距離に縮めましたが、思ったほどにトラックが通ってくれないので通行料収入が足らずに、銀行団がワークアウトによって有利子負債を削減いたしました。一昨年に二回目のワークアウトが行われましたが、二〇〇五年フランス新法を適用して、裁判所が介入して解決しました。最初のワークアウト時の債権者は、バークレー銀行、ソシエテジェネラル、住友銀行などの有名銀行でございましたが、二度目のときには銀行から債権を買ったファンドの名前が多くなっておりました。
そこで、事業再生のためのワークアウトをバックアップする制度を新設するために、二年間にわたり経産省と法務省が学識経験者の力をかりて研究を続けて作ってくださったのが、この産活法第四章でございます。私は、勝手にこれを早期事業再生円滑化法案と呼ばせていただいております。ちょっと読んだだけでは分かりにくい法律ですが、おおむね次のとおりであると解釈しております。
四ページに入ります。
いわゆる認証ADR法に基づく法務大臣の認証を受け、かつ事業再生に特化しているために、経産大臣の認定も受けた中立公正な認証紛争解決事業者、例えば私的整理ガイドライン協会のようなものが専門家アドバイザーのような者に私的整理ガイドラインのような公正妥当な準則にのっとってワークアウトを実施させたが、一部少数債権者の同意が得られないために私的整理が成立しないときは、裁判所に特定調停の申立てをすれば、裁判所は改めて調停委員を選任して長々と調停するんじゃなく、裁判官一人で関係者等から事情を聞いて、相当と認める場合には速やかに民事調停法十七条に基づく調停に代わる決定をすると。この決定は当事者の異議がありますと失効いたしますが、それでも不同意債権者が尊重することを期待できますので、ワークアウトの成立を助長する効果があると思っております。
三か月ぐらいのワークアウト期間中も多額の運転資金が必要になりますが、そのために金融機関がいわゆるDIPファイナンスをしている場合には、中小企業基盤整備機構や信用保証協会がある程度の信用保証をしてDIPファイナンスを出しやすく助けてくれます。それから、先ほどの手当てにもかかわらず、私的整理が成立しないで会社更生などに移行した場合には、DIPファイナンス融資債権は他の一般の債権に比べて優先的に取り扱われるように保護する、これが大体の中身でございます。
五ページに行かしていただきます。
早期事業再生円滑化法案は英国法に比べて不徹底であることは否定できませんが、一歩か半歩は前進ではないかと思っております。法案が成立した後の運用におきましては、認証紛争解決事業者を中立公正な者に限定して、金もうけを目的とする不純分子が紛れ込まれないように、その認証や認定は厳格にしていただかないと、逆に弊害が起きるおそれがございます。特に、経産省と法務省にはその辺の手当てはきちんとしていただきたいと考えております。いわゆる事件屋、整理屋と、こういった者が紛れ込んできますと大変な弊害がございますので、是非、法律施行後はその点について所管官庁はお気を付けいただきたい、これが私のお願いでございます。
以上でございます。ありがとうございました。