松田晋哉の発言 (少子高齢社会に関する調査会)
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○参考人(松田晋哉君) 産業医科大学の松田でございます。(資料映写)
今日は、高齢社会の進行と医療・介護ということで、諸外国との比較を中心にお話をさせていただきたいと思います。
若干、イメージを具体的につかんでいただくために写真等を追加してございますので、ごらんいただけたらと思います。
これが今日の説明の要点ですけれども、高齢者医療・介護の特徴、それから構造改革の必要性ということで、在宅ケアの推進、プライマリーケア、生活の保障、この三点についてお話をさせていただきたいと思います。
まず、これが高齢者の医療費の特徴でございますけれども、もうこれはよく御存じだと思いますけれども、入院医療費、入院外医療費とも受療率が非常に高い、受診率が若年者に比べて高いということが特徴でございます。入院に関していいますと五・六倍、入院外ですと二・七倍ということが、これが統計的に明らかになっております。
まあ言葉でまとめてみますとこうなりますけれども、非常に受診率が高いということ、それから多科受診であるということ、それから医療ニーズと介護ニーズが混在している、高い薬剤比率、それから死亡前一年間の医療費がやっぱり生涯医療費に占める割合が非常に高いということで、終末期の在り方が検討されるわけでございます。それから、保険収支のアンバランスということで、支出が保険料だけでは賄えないという特徴もございます。それと、また高齢者の医療といいますと、慢性疾患が中心の議論になりがちですが、実はその慢性疾患の管理的な医療に加えて急性期医療もかぶってくるというのがこの特徴でございます。
このような特徴がある高齢者ですけれども、これはオランダの厚生福祉スポーツ省、日本の厚生労働省に相当するところがこういう統計を出しております。
年齢階級別にどのようなサービスを使っているのかということですけれども、この七十五歳以上の後期高齢者になりますと、この赤い部分、これは何かといいますと、看護ケアと介護ケアが総介護・医療費のどのくらいを占めているのかということですが、基本的にはこの後期高齢者になりますと、まあ半分以上がこの介護・看護ケアの支出になるということになります。
実は、オランダではこのように介護と医療が一体化しておりますので、実はこの二つを長期保険という形で一体的にカバーしています。実は、オランダというのは世界で一番最初に介護保険を導入した国でもあります。
今、日本でもこの在宅へという流れが非常に出てきているわけですが、その中でやはり考えなければいけないのは、いかにこの在宅において看護サービスを保障するかだということだと思います。
例えば、その療養病床の今削減が日本でも課題になっておりますけれども、その療養病床の医療の特徴、ケアの特徴を見てみますと、非常に看護ケアが重要であります。そうしますと、もし仮に今後在宅ケアというものを日本で進めていくのであれば、いかにこの在宅に移行した高齢者のケアを看護師が担う仕組みをつくっていくかということが非常に大きな課題になってきます。
諸外国を見ますと、例えばイギリスですとナースプラクティショナーという形で、これはソーシャルケアトラストという中でやっているわけですけれども、在宅で、かなり医療行為も含めるんですけれども、看護師さんが主体となってケアをする仕組みというのができております。あるいは、フランスなんかでは在宅でリハビリを行う開業理学療法士、開業作業療法士制度というものもございます。あと、またフランスは、その開業看護師制度とか在宅入院制度といって、後で御説明いたしますけれども、その看護サービスをいかに在宅で提供するかと、そういう枠組みができております。
御参考のために、まずフランスのことを御紹介したいと思いますけれども、少し複雑な図になっておりますけれども、高齢者を真ん中に置きますと、実はフランスではいろいろなサービスが提供されております。もちろん、急性期の入院医療施設もございますけれども、リハビリテーションを中心とした入院施設、それからまあ安定期にありますけれども医療的な管理が必要な人のための長期入院施設、こういう施設に高齢者はそのニーズに応じて入院をするわけですけれども。
ただ、その高齢者に関しまして一番重要な役割を果たしているのは、実はこの開業医でございます。主に一般医なんですけれども、この一般医の先生が包括的な処方せんを出すことによって、在宅の高齢者に対して開業看護師、開業PTというのが在宅でサービスを提供するという、そういう仕組みができております。
じゃ、この開業看護師とはどういうものかといいますと、基本的には国家資格を持っていればだれでも個人で開業できるという、日本の訪問看護ステーションよりかなり軽い仕組みになっています。
このような高齢者が介護が必要になってきますと、老人ホームやケア付き住宅、あるいは受入れ家庭制度というところに移っていくわけですけれども、こういう人たちに対して実は医療が必要になってきます。この医療に関しましては、それぞれの部門に医療部門というものがありまして、ここに地域の開業医の先生がいて医療を提供するという、そういう枠組みと、もう一つはこの開業看護師の方がこういう老人ホームやケア付き住宅に行って看護サービスを提供するという、こういう仕組みが導入されています。
それからもう一つは、受入れ家庭制度というのがございます。これは何かといいますと、一定の研修を受けた家庭が、高齢者、それは家族でなくてもいいんですけれども、その高齢者を自宅に受け入れてケアを、お世話をするという、そういう仕組みがございます。
それ以外にも、いわゆる社会福祉の仕組みとして個人自立給付、これは日本で言う介護保険ですけれども、そういうサービスを提供もしております。このような多様なサービスがあって、フランスではこの在宅ケアというものが非常に保障されているということがあります。
この在宅入院制度なんですけれども、これは何かといいますと、実は患者さんの御自宅のベッドを登録した場合にその病院のベッドというふうにみなして、その患者さんに対して病院の医療チームがチームとしてサービスを提供するという、こういう仕組みです。これは非常に最近フランスでも増えてきている仕組みなんですけれども、非常に面白い仕組みだというふうに考えています。緊急時には当然病院の方に入院できるような形になっているわけですが、こういう在宅入院制度というのがございます。
それからあと、開業看護師というのがいまして、二十四時間対応というのが中心になってくるわけですけれども、この二十四時間対応できる開業看護師の方が、いわゆるかかりつけ医、後方病院、患者さんの間に入ることによって緊急時にも対応できるような継続的な看護というものが保障されているということがございます。この場合、注意していただきたいのは、在宅の患者さんというのは、この在宅というのは自宅だけではなくてケア対応住宅とか老人ホーム、そういうものも含めているということになります。
次に、プライマリーケアの話をさせていただきます。高齢者が要介護状態に至る一般的過程を考えますと、何らかの慢性疾患があって、そこに突発的なイベントが起こって、ぐるぐる回りながら最後は亡くなるわけですけれども、この介護の入口と出口には医療があるわけです。そうしますと、この部分をだれが保障するのか、いわゆる地域でケアの継続性をいかに保障するかということを考えますと、やはりかかりつけ医の役割が重要だろうと思います。
実はどこの国でも、ヨーロッパではこのかかりつけ医制度をいかに導入していくか、充実させていくかということが大きな課題になっています。その中で非常に注目されますのがフランスのかかりつけ医制度の導入です。フランスは、実は日本と同じように患者さんのフリーアクセス、医師選択の自由が保障されている国でした。そのために非常に重複受診とかそういう問題がありまして、ただやはりかかりつけ医の方が、医師組合の方がやっぱり診療の自由というものを、医師選択の自由というものをかなり強調しておりましたので、実はこれがなかなか難しい状況にありました。
これが実はブラジ・プランという中で入ることになったわけですが、どういう仕組みかといいますと、今、フランスでは十六歳以上のフランス人はすべて自分のかかりつけ医を選択しなければいけません。そのかかりつけ医にまず掛かって、そこから専門医等を紹介していただく場合にはいわゆる診療報酬表に従った支払を行うことになります。ところが、この患者さんがかかりつけ医を通らずに専門医に掛かるということをしますと、診療報酬の定額に加えて付加料金を支払わなければいけないという、こういう仕組みになっています。要するにフリーアクセスといわゆるかかりつけ医制度というものの両立をするということをこういう仕組みでやっているわけです。実はドイツも同じような仕組みを用いて家庭医制度というものを今運用しているところです。
イギリスでは更に進みまして、かかりつけ医なんですけれども、高齢者の方が多いわけですが、そういう方が持っている問題のいろんな問題というのが、医療、介護、それからいわゆる経済的な問題、いろいろなものにかかわりますので、ソーシャルケアトラストという、家庭医、看護師、PT、OT、ソーシャルワーカーから成るグループをつくらせまして、そのグループが全体で地域の登録された住民を診るという、そういう仕組みを今つくっています。やはり高齢化が進むということはニーズが多様な高齢者が増えるということでございますので、そういう患者さんに対してどのようにトータルにサービスを提供していくのかということが求められるということは、このイギリスのソーシャルケアトラストというのは非常に参考になるんじゃないかなと思います。
ここから少し町づくりとか総合的な課題についてお話ししていきたいと思うんですけれども、これは日本の今のいろんな取組を少しまとめてみたものですけれども、今やはりどちらかというとこういう議論が中心になってきているわけですが、実はこの一方で、高齢期の生活保障をいかにするかというその議論をしなければ、実は医療、介護の問題は解決しないんじゃないかなという、そういう問題意識を持っています。
例えば、高齢期の所得保障を考えた場合に、やはり日本は特徴として諸外国に比較して前期高齢者の就労意欲が非常に強い国でございますので、そうすると、この高齢者が労働を継続できる、そういう環境づくりをどういうふうにやっていくのかということが課題になろうかと思います。
これは、労働経済学の清家先生がこういうものを出しているわけですが、専門的技能を持っていること、職住近接であること、健康であること、この三つを挙げているわけですが、これを見ますと、やはり、働くことができるだけの健康状態をいかに保っていくのか、それで、また、そういう方たちが地域の中でどのように働く場所を見付けていくのか、そういう体制をつくることが大事ではないかなというふうに考えています。
実は、この生活不活発病の対策という話が今回の介護予防等でも出てきているわけですが、いかに、この移動能力の低下が生きがいの低下とか意欲・関心の低下につながっていく、この悪循環をいかに断つかということがやはり重要ではないかなというふうに考えています。
これは実は写真で、ある日本の地方都市の駅前の写真です。かなり大きな都市でございますけれども、昼間の写真です。高齢化率が三〇%を超していますのに、この町の駅前で高齢者を見ることはほとんどございません。
これはノルウェーのアーケード街ですけれども、高齢者がたくさん歩いています。あるいは、これはスペインですけれども、町を散歩するお年寄りがたくさんいます。やっぱりヨーロッパに行きますと地方都市ほど実は高齢者が町を非常に昼間出て歩いています。日本でなぜこれができないのかということがやはり大きな課題ではないかなと思います。
あるいは、これはドイツで、凍った川に、これ川なんですけれども、お年寄りが集まっています。何をやっているのかというと実はカーリングをやっているんですね。こんな感じで投げているわけですけれども。常にその地域の中に自分たちで楽しめる場所をつくっていく。それがあることによって高齢者が町に出ていくという、そういう枠組みができる。要するに、生きがい対策というものをその地域の中で工夫してつくっているということがあります。
巣鴨のとげぬき地蔵の前の商店街ですけれども、ここにはこんなにたくさん高齢者が出てくるわけです。やはり楽しいと思える場所があれば高齢者は町に出てきますし、こういう町づくりをいかにしていくかということが特に地方都市においては重要じゃないかなというふうに考えています。
そういうことを考えてみましたら、実は青森が今こういうことをやっています。これは新町商店街という、手前が青森の駅になるんですけれども、ここは何をやったのかといいますと、歩道を倍に広げて、ここに、ちょっと見にくいんですけれども、ベンチがあります。百メートル置きにベンチを置いて、要するに、高齢者、障害者が出やすい町をつくっていくことによって実は今この商店街に活気が戻ってきていますし、郊外から高齢者がこの裏の、いろんな高齢者対応住宅ができているんですけれども、そういうところに高齢者が集まるようになっている。いわゆるコンパクトシティーというやつですけれども、こういう町づくりをいかに地域でやっていくかということがこれから求められるんじゃないかなと思います。
なぜそういう話をしてきたのかといいますと、これちょっと見にくくて申し訳ないんですが、こちらだけ見ていただきたいんですけれども、これは福岡県で、医師会の先生方の御協力をいただきまして、百八十日以上入院、入所されている方を対象に全数調査をやらせていただきました。どういう方が入所しているのか。百八十日以上です。独居者や六十歳以上の場合ですと、実は退院を希望しない高齢者というのは、ADLのレベルは悪くありません。自立度はかなり高い。それから認知症のレベルも軽いんですね。ところが、生活の安心感が不足している、生きがいが不足している、経済的支援がない、そういうことで病院から退所しようとしない、退院しようとしない。
要するに、考えてみますと、入院期間、入院していますと、そこでは食事が保障される、入浴もできる、ケアも保障される、それからいろいろな方と楽しむこともできるわけですので、住むという環境においては非常に望ましい、高齢者にとって生きがい、安心できる環境になっている。やはり、そういうところからなかなか出ていきたくないというのは、やはりこれは当然のことだろうと思います。
例えば、それに対応するものとして実はオランダにはコミュニティレストランというのがあります。これはどんな町に行ってもあります。これはどういうものかといいますと、地域に、例えば高齢者のボランティア組織が地方自治体の委託を受けて、市街地の空き部屋とかデイケアセンターを使ってコミュニティレストランというのをやっています。そこにその地域の高齢者、まあ多くは女性ですけれども、やってきて食事を作って振る舞う。そういうものを、その地域のニーズのある住民、独居老人ですとか障害者ですとかHIVの患者さん、あるいは薬物中毒者、あるいは不登校の子供たちがやってきて、そこで温かい御飯を一日に一回は食べて午後を過ごして帰っていくと。お酒も出ます。こういうものが地域にあって、そこで食、また生活のための基本的なものが保障されている。
こういうものが日本にできればいいのになという話をしていましたら、実は、また青森なんですけれども、青森でこういうものができています。これは浅虫温泉の裏側に浅めし食堂というのがあるんですけれども、これは何かというとコミュニティレストランです。だれがつくったのかというと、この近くに石木医院というのがあるんですけれども、そこの石木先生がおつくりになったものですけれども、ここで元気な高齢者が有償ボランティアとして働いて、地域でニーズのある高齢者がここにやってきて昼御飯を食べて帰っていくと、こういう地域の中に生活を保障するものをつくれないか。そういうものを医療機関は持っているわけですので、そういうものを地域に開放できないかということを今考えているところでございます。
こういうことをなぜ考えているのかというと、人材面での持続可能性の問題があります。これまたオランダのデータですけれども、オランダの保健省がこういうデータを作っております。二〇二五年になると労働者の五人のうちの一人がケアワーカーになると。オランダでもケアワーカーはほとんど女性ですので、そうすると、二人の女性のうち一人がケアワーカーであるという非常に想像しにくい状況になるということです。
日本でも同じような問題が出てきます。そうしますと、どうしてもこういうフォーマルなケアだけでは難しいですので、いかにその地域でインフォーマルなケアをつくっていくのか、共助の仕組みが必要だろうと思います。
これはまとめでございますけれども、高齢者対策としての町づくりということですが、たとえ軽度の障害を持っていても、楽しいと思える場所があれば皆さんそこに出掛けていきます。生活がリハビリの場になります。たとえ障害がなくても、町が楽しくなければそこにはだれも出掛けてこない。冒頭にも、途中お見せした日本の地方都市のスライドでございますけれども、これが生活不活発病のリスクになってしまう。やっぱり高齢者が楽しいと思えるような町づくり、それをやることがやはり健康づくり、介護予防の目的じゃないかなというふうに考えています。
これは、やはりそういうものはそれぞれ地域によって特性がございますので、やっぱり地域の知恵が必要だろうと思います。そういう意味で、こういう点に関しては、やはりヨーロッパの町づくりから学ぶべき点が非常に多いと思いますので、是非そういうものを御参考にいただけたらなというふうに考えています。
以上でございます。