保母武彦の発言 (少子高齢社会に関する調査会)
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○参考人(保母武彦君) 島根大学の名誉教授の保母でございます。
私の専攻は地方財政学、そして地域経済論です。主に農村の経済問題を今まで扱ってまいりました。今日、私の方は、高齢期の住生活環境についてという中で、とりわけ農村、中山間地域の問題について陳述するということでございます。
今、青森市の佐々木市長さんの方から陳述がありましたコンパクトシティー、こういう制度ができないのが農村部の特徴であると。農村部というのはやはり孤立分散という、これは農業、林業等々とのかかわりがありまして、そうならざるを得ない宿命があると。この中でどのようにしていくのかというのが、あるいはどういう問題が出ているのかというのが課題だと思います。
かつて昭和五十年代のころに過疎対策を行いまして、この中で集落移転を行いました。そのときには通勤農業という形で、住居は役場の近くに置いて、そして通勤をして田畑を管理していくという方法が幾つかのところで取られましたけれども、これについては、例えば水田は朝夕、水見をしなきゃならないし、あるいは畑については収穫も朝早くあるいは夜中にしなきゃならないと、こういうようなところから、なかなか居住地と農地、農業の空間とを分離することが難しいというところから、この集落移転という形ではなかなかできないと、ここのところをどのようにしていくのかということが課題ではないかと思います。
私の方でお配りしておきました中山間地域における課題というのですけれども、この中でいきますと、事例としては二つここでは挙げました。一つは島根県の旧匹見町、現在益田市に合併しておりますけれども、この地域です。それからもう一つは、これも人口も割と少ない高知県の事例です。
この旧匹見町、ここはかつて七千人ほどおりましたけれども、人口が今千六百名という、非常に過疎化の典型的な地域だったわけですけれども、それがその後も下がっております。原因としてはいろいろありますけれども、特に、二週間ほど前に現地に行きまして聞いた中では、米価の下落が非常に大きな打撃になっておるということを言っておりました。かつて三十キロぐらいで一万五千円、現在六千円と。農業をやればやるほど赤字になっているという話も出ております。あるいは建設業、これは島根県、一生懸命やってこられたわけですけれども、これが六割方建設業カットという中で仕事がないというような事態になってきております。
そういう中で、特に私が注目したのは、農村の場合、集落です。集落がどうなっているかということをしっかりと見なきゃなりませんけれども、四十六の行政区があります。そのうちで三十一の行政区、すなわち六七・四%、これが高齢化率が五〇%を超えていると。限界集落という言葉がありますけれども、この町全体が限界町村になっていて、高齢化率が五一・三%という高い状況になっているということです。行政区においては高齢者の割合が一〇〇%というところが三か所ほどあります。
その中での問題点といたしまして、年金者が年金の収入が非常に低くて、これ自体が問題になっております。隣の旧柿木村にも行きましたけれども、大体、月の収入が四、五万円というのが年金の収入です。そうしますと、これは年間、計算上は多くて八十万円ですけれども、そこまでは行かない、到底、という状況の中で暮らしておりますので、デイサービスも提供しても、特に一年前から月額制になって、そのために利用回数を減らしているというような世帯もあるし、配食・給食サービスですね、これ月二回やっておりますけれども、三百五十円を四百五十円に引き上げて、百円引き上げて、月二回ですよ、であるのに配食サービスの利用をやめた人が十人以上いると。
こういうこと、こういう実態を見ますと、生活環境という場合に、生活費の必要レベルの確保というのが、これが最低限なされなきゃならない、そういう状況に置かれていると。
医療、福祉の問題、四番目ですね。
この問題については、町の中に医院がありますけれども、大体は小一時間掛かる益田市まで出向いていると。そのときに、まあ医療費の負担の問題もありますけれども、ここで書いておきましたような交通費の問題、この問題は非常に大きな問題があって、一番奥地の三葛という地域から行きますと片道が二千円ということですから、これは頻繁な通院はなかなか経済的負担にも大変だと、この辺りの制度をどのようにしていくかということが一つの大きな課題であろうと思います。
それから、福祉サービスも、これは農村部というのは非常に不効率なところです。ホームヘルパーの方にもヒアリングしましたけれども、片道四十分掛かると。そうすると、一人の介護のために半日は掛かってしまうようなところもある、吹雪があれば行けない、こういうような問題も出ていると。この旧匹見町のところは一つの典型的なところですけれども、そこでは問題は孤独死、今年二件あったと、こういうような状況も出ております。
次に、高知県のところを一週間ほど前に調べたところですけれども、ここでいきますと、高知県の政策企画部、ここが相当よく調査をしておりまして、その最低レベルの住生活環境としては三つの点が欠かせないというのが調査結果として集約されておりました。
一つは、生活用水の確保の問題です。それから、二つ目に買物の問題ですね。それから、三つ目に移動手段、交通手段の確保の問題です。
具体的な例を少し話しておきますと、生活用水の問題では、大体は谷水を引いてくる、それから簡易水道で供給するということですけれども、これもなかなか、雨が降れば濁るという中で、例えば、この2の①の谷水と書いたところで、管理に非常に苦労しておりまして、水源まで歩いて二時間も掛かる家があって、ここでは週に三回も水源管理に行ったこともあると。こういう中では、共同化しないと到底、高齢化したら飲み水も確保できないということが出ております。あるいは、③のところで、これは水源地から貯水槽まで道役、みんなが出て作業するわけですけれども、これを今、老朽化しておって、これをどう取り替えるかと、地元の負担だけではできないという問題も出ております。このような、一番の最低限のところでいえば飲み水の確保というような問題も深刻な問題としてあると。
二番目の問題として指摘されていた買物の問題ですけれども、デイサービスに行った帰りに買物をするとか、あるいは、一人の人が買物に行くときに声を掛け合って隣近所のも買ってくると、言い付けという言葉だそうですけれども、こういうのがなされたりしておると。しかし、人口が減ってまいりますと、当然、民間の商店もあるいは農協の移動販売の車もだんだん回数も少なくなるし、そこにおける住民の消費生活の質の低下と、こういう問題が危惧されておるというのが高知の実情でした。
それから、三つ目のところの移動手段の問題ですけれども、これはかなり深刻な問題で、どのようにその対策をするのかと。具体例はそこに書いておいたとおりですけれども、これについては、今、新型交付税の問題ともかかわりがありまして、普通会計のところでの赤字の問題と、それから病院やそれから交通の特別会計の赤字、これ、ひっくるめてどのように、実質公債費比率の問題が出てまいりますので、そうすると結局は、例えば一八%以下に下げていくとか、この努力をするためには交通を切ったり病院を切ったりしなきゃいかぬと、こういうような問題もあって、この農村部での移動手段をどう確保するのかということはもう少し国会の方で考えられるべきであろうと思います。
その上で、まあ時間がちょっとありませんけれども、何点かだけ、ポイントだけ申しておきますと、どのように今後やっていくかと。
たくさんの集落が今消滅の状況にあります。国土交通省の方の調査資料の中でいきますと、約二千六百集落ほどがすぐか、いずれは消滅するということが報告されております。
この辺りから考えてみると、六点、これ、箇条書的に言って終わりにしますけれども、一つは相互扶助的な地域共同体の整備の問題です。農村共同体がかつてありました。そこをいかに活性化するかというのは、やはり農村部の重要な課題です。行政だけではできない問題をどのようにして地域のネットワークなり連携でやっていくのかと。いい例は高知県の大月町で見てまいりましたけれども、これはそこに専門の職員まで、有給の職員まで配置してしっかり、行政とは別個にやっているようなところもあります。
二つ目に、集落調査を基に政策を持つことと。この調査が遅れておると思います。ほとんどやられていない。国土交通省の方も数字は出しておりますけれども、実態がどうかという点は、そこまではまだ行ってないんじゃないかと思います。これは、行政の方にやれというのも一つですけれども、こういう参議院の調査会のところで、予算があればそこで独自に調査をすることもいいかもしれません。
三番目に、既に少人数になった集落についてはその連携をすることと。合併していくとなかなか難しい問題もありますので、緩やかな共同体をつくっていくという方式は一つの方法だろうと思います。
四番目に、年金制度、先ほど言いましたような、供給をしても、福祉サービス、辞退されるような事態ではどうしようもないわけで、そうしますと、その最低限のところを確保するということが必要か、あるいは、かなり高齢者の方と話し合いまして出てきたのは、一生懸命農産物やその加工をやるんだけど、それ全部税金が掛かる、何とかしてくれというような話もありました。そこで、ここでは高齢者の特別減免措置できないものかということを書いておきました。
五番目に、先ほどの生活用水、買物、移動手段、この三項目、これが重要であると。その上で、これは前から農村部では出ておりますけれども、地域の商店がなくなるとか、そういうような状況の中では、もう役場で小売からあるいはタクシー機能から持つぐらいの、そんなことも考えてもいいんじゃないかというような話も出ております。全国一律の規則ではこれはもちろんいけない話で、もう少し実態を、先ほど調べろと言ったんですけれども、調べた上で柔軟な対応を考えていったらいいと。
最後に、六番目に、中山間地域の実態に合わせた財政制度の問題。先ほどこれは言いましたので省略いたしますけれども、やはり赤字でも置かなきゃならない交通だとか病院だとか様々あります。その辺りは公共サービスの必然的な問題として、金の問題で解決できない問題で、いかにして集落移転等できない農村部の現状の、そこでの高齢者の生活権を確保するのかと、これが課題かと思います。
ちょっと長くなりました。失礼しました。終わります。