足立信也の発言 (少子高齢社会に関する調査会)
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○足立信也君 民主党・新緑風会の足立信也です。最終報告に向けての意見を表明させていただきます。
私が少子高齢社会調査会の理事として入りましたのは三年目からでしたので、主に三年目の調査事項について意見を述べます。
まず、不妊治療、生殖補助医療に関して申し上げます。
今日、不妊カップルは全国で百二十万組と推定され、約三十万組が治療を受けております。現在、排卵誘発剤などの薬物療法や卵管通過障害に対する卵管通気法などの一般的な不妊治療については保険適用の対象となりますが、人工授精、体外受精については治療の概念とは異なるとして認められておりません。
特に私が指摘したいのは、排卵誘発剤などの使用は保険診療であるのに対し、そこに男性の精子が少ないことなどによって人工授精が必要となると全額自己負担になる。すなわち、男性が加わっただけで本来保険診療であった女性は全額自己負担になるという矛盾、これは解決されるべきであると考えます。
生殖補助医療について、我が国にはクローン人間を禁止する法律以外、基準を定めた法律がありません。これまでは専ら日本産科婦人科学会の会告という自主規制にゆだねてきたのが実態であり、国としても平成十二年十二月に厚生科学審議会の専門委員会が法律を含む規制の体制を三年以内に整備するよう報告書をまとめておりますが、いまだ実現を見ておりません。
このような法的対応の遅れの下、本調査会に参考人として招致した長野県の医師による産科婦人科学会の会告に反した生殖医療の実施や親子関係をめぐる具体的な問題の訴訟が起きてきました。
生殖補助医療は人の誕生という人権の出発点を左右するものであり、これをどこまで認めるのかは慎重な判断が求められるところでありますが、これ以上の問題の先送りは許されない段階に来ております。我が党は検討チームを発足させ、昨年十二月に中間報告を行い、この秋までに最終報告をまとめる予定です。政府においても社会的な問題になった代理懐胎について日本学術会議に検討をゆだねましたが、国民的合意を得つつ、早急に必要な立法化を図るべきです。
子供を持つ、持たないの選択は当事者の問題としても、妊娠、出産には適齢期があるということを広く国民に周知していく必要があります。
また、不妊治療などの普及により多胎妊娠が増え、低出生体重児のNICU、新生児集中治療室への入院が増えております。しかし、NICUは絶えず満床状態にあり、多くの周産期医療センターにおいては搬送依頼があっても受入れができないという状況にあります。そのような中、昨年八月、奈良県で、急変した妊婦が県内外十九の病院で受入れを拒否されたという事案がありました。NICUの確保及び長期入院患者の後方支援施設も含めた医療提供体制の整備並びにネットワーク化は緊急に対処すべき課題です。
あわせて、安心できる出産体制整備のためには産科医、小児科医不足への対応も重要であり、特に地方での医師不足対策には、まず安全な医療を提供するには医師の絶対数が足りないという認識を共有することです。
次に、仕事と生活の調和について申し上げます。
ILOの調査によりますと、我が国は週五十時間以上働いている労働者の割合が二八・一%という世界一の働き過ぎ国家です。このような長時間労働を是正することこそが仕事と生活の調和を実現させる第一歩と言えます。
また、仕事と生活の調和の取組の中で特に仕事と家庭の両立支援は重要でありますが、我が国の場合、正規職員で労働時間を柔軟に選択できる制度に乏しく、とりわけ女性の年齢階級別労働力率のM字型カーブが示すように、育児休業制度が導入されても七割の女性が出産前後に退職を余儀なくされております。この傾向は女性医師も同様で、せっかくの技術を持ちながら出産、育児のために退職をしなければならないという状況は医師不足が社会問題化している中で大きな社会的損失でもあり、一般の職員のみならず専門職職員についても柔軟な労働時間の選択を可能とする制度が強く求められるところであります。
仕事と生活の調和の実現のためには企業の意識を変えていくことが何よりも必要でありますが、企業側の認識としては、仕事と生活の調和を図るための環境づくりよりも、むしろ正規職員の数を減らして非正規職員の数を増やしていくという姿勢が依然として見られるところであります。その背景にあるのが労働法制、あるいは社会保障制度等において非正規職員を増やすほど企業側にとってプラスに作用するという仕組みになっていることであり、その適用に当たって雇用形態間に差を設けないことなど、賃金体系を含めて、正規職員と非正規職員の均等待遇の実現は不可欠な要件とも言えます。
最後に、高齢社会について申し上げます。
生涯現役を続けられている日野原参考人から、平均寿命の延びを反映して、高齢者の定義を六十五歳から七十五歳に引き上げるべきとの指摘がなされました。今後、高齢化が更に進展し、いわゆる後期高齢者の割合が増加してくる状況の下で、七十五歳以上を高齢者と定義し直すことは、一面では理解できますが、我が国の場合、雇用定年年齢と年金受給開始年齢がリンクしており、高齢者を再定義することで高齢者にとって関係施策や制度上のメリットがあるのかどうかという点も考慮しなければなりません。再定義が逆手に取られてはなりません。
しかし、高齢者が終末期を迎えるまで自立して生活することは最も好ましいことであり、そのために六十五歳を超えても仕事をしたい人は仕事の場が、ボランティアを行いたい人にはボランティアの場が、健康づくりを行いたい人には健康づくりの場がそれぞれ提供されることは必要なことです。中でも、高齢者の移動能力の低下が生きがい、意欲、関心の低下につながりかねないことから、高齢者が外出しやすいまちづくりやコンパクトシティーの形成等の取組を地域で行っていくことが求められております。
近年、医療や介護の予防への取組が重要視されてきましたが、医療・介護費用の抑制という財政上の問題にとどまらず、生涯を通じて健康で自立した生活を送るためにも予防重視の政策の更なる推進が望まれるところです。
医療、介護に関しては、今後は医療に比べ介護の問題が大きなウエートを占めると考えられますが、介護の入口と出口には医療があり、そこでのかかりつけ医の導入、充実は大きな課題となっています。残念ながら我が国ではその取組は遅れており、その育成は介護面のみならず病院医療における医師不足対策としても重要な課題であると言えます。
高齢期を自立して生活できるためには安定した生活保障基盤が必要でありますが、年金の制度間格差や就業機会の有無により高齢者間に格差が拡大していると言われております。とりわけ我が国の公的年金は中所得層以上に比べ低所得層には手薄になっており、貧困層の高齢化を避ける方策が求められます。また、少子高齢社会にあっては賦課方式からの脱却が必要であり、世代内の所得再分配機能を高めることが肝要です。高所得層に有利な所得控除から、税を還付する形の税額控除の創設や社会保険料負担における基準年収の上限引上げなど、早急に検討すべき課題であると考えます。
以上、時間の関係で数点に限って意見を表明しましたが、一年目、二年目の調査を始めとして、私が触れてこなかった点については、後の討議の場で委員各位の活発な御議論にゆだねたいと私は思います。
以上でございます。