谷博之の発言 (本会議)

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○谷博之君 民主党の谷博之です。私は、民主党・新緑風会を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 総理は所信表明演説の中で、福沢諭吉の「出来難き事を好んで之を勤るの心」という言葉を取り上げましたが、この福沢諭吉や幕末明治の日本の夜明けを築いた人たちの中でも、特に吉田松陰や高杉晋作を尊敬されていると聞いております。その松陰をさかのぼること二百年前、江戸時代の前期に、貧困の中で苦学して大成した伊藤仁斎という思想家がおりました。松陰にも大きな影響を与えた彼は、富貴に惑わされず貧苦にもくじけず、清貧を守って折り目正しい一生を、積極的に、上機嫌に送りつつ、人のために、人と和して生きるという倫理観を実践した人でありました。私は、彼こそが正に美しい国の国民が目指すべき生き方をした人物であったと思います。
 しかし、総理、今の世の中は全く逆になっているとは思いませんか。自分のために、自分だけが金もうけをして、折り目もなく、消極的に、不機嫌にさえ生きている人の住む社会になっているとは思いませんか。最低限のルールさえ守ればモラルなんか守らなくてもいい。極端な規制緩和とあらゆる面に自由競争を導入することですべてをよしとするそうした勝手な社会になろうとしているとは思いませんか。また、あなたは美しい国という言葉だけを羅列しつつ、逆にそうした社会をつくろうとしているのではありませんか。総理、お答えください。
 総理、あなたは幹事長代理のときに、堀江さんの成功は小泉首相の改革の成果、ホリエモンのような偉大な起業家が出てきたのは小泉改革のおかげと持ち上げていました。あなたの目指す教育改革は、あのライブドア元社長の堀江被告のような若者をどんどん世の中に送り出すということなのでしょうか。モラルなき競争社会となった我が国の現実に対する総理の認識と、総理の教育改革が目指す理想の人物像について改めてお伺いいたします。
 次に、人口減少時代の国の基本的方向について伺います。
 総理はシュリンキングポリシーという言葉を御存じでしょうか。市街地に空き家が増えて様々な問題が発生している事態を悲観せず、むしろ絶好のチャンスととらえ、緑地や森林など自然に戻すといった取組で、急速な人口減少に直面しているドイツでは、自治体が連邦政府の財政支援を受けて積極的に地域再生を行っています。生物の多様性、あるいは安全性とか美しさとかゆとりを取り戻し、町の質を高め魅力的な空間へと変えようとしているのです。同じ人口減少社会でも、閣僚が女性を産む機械や装置に例える我が国の情けない状況とは雲泥の差であります。
 私は、このシュリンキングポリシー、つまり創造的縮合政策の発想を福祉や農政にも当てはめ、単なる切捨てではない、五十年先、百年先を見据えた、前向きで積極的な政策を展開していくべきだと考えますが、総理の所見を伺うとともに、許し難い暴言を吐いた厚労大臣の罷免を強く求めるものでありますが、総理の御見解を伺います。
 人口減少は、設備投資に必要な資金減少を引き起こすので、賃金上昇、消費拡大のチャンスだと言う人がいます。無駄な公共事業や基地をなくし、福祉や農業、教育に重点配分する政策に百八十度転換すべきです。これを実現できるのが民主党政権です。政官業の癒着から逃れられない自民党には一日も早く政権を降りていただき、政権交代を実現するしかありません。
 次に、安倍内閣の後ろ向き政策、福祉切捨ての象徴である二つの具体的問題についてお伺いいたします。
 その一つは難病対策であります。
 昨年秋、厚労省が示したパーキンソン病と潰瘍性大腸炎患者の一部を医療費公費負担の対象から外す方針について、私は民主党難病対策推進議員連盟の事務局長として、同僚議員とともに財務、厚生労働両省に反対の申入れを行いました。その結果、二つの疾患の削減は、来年度は行われないことになりましたが、再来年以降については定かではありません。
 今後どのような日程で再検討するのか、また、特定疾患対策懇談会の提言をどう扱うのか、罷免を求めている厚労大臣に聞いても仕方がないことではありますが、辞任がうわさされている厚労大臣、お答えください。
 この制度は、本来、国と都道府県で半分ずつ負担することとなっていますが、実際には国は三割しか負担しておりません。栃木県など自治体独自の指定疾患を削減する動きも出ています。この改善についても強く申し入れたところでありますが、わずかに七億円、三%程度増加した予算案で自治体の超過負担を幾ら軽減できるのか、厚労大臣、具体的にお示しください。
 さらに、私たち民主党は、医療費の公費負担制度を難病患者に対する福祉制度とするため、必要な法制化について検討することを厚労省に申し入れました。私は、当選以来、ずっとこれを提案し続けています。現在、安倍内閣としてどのような青写真を描いているのか、総理、お答えください。
 そもそも、数ある難病のうち、どの疾患を公費負担の対象とするのかは医師だけで決めるべきものではありません。一方、患者や家族の代表や行政代表も含む難病対策委員会は五年間に一度も開かれないまま、この一月に任期が切れ、改選手続に入っています。これは行政の不作為ではありませんか。医師以外の委員枠を維持し、早期にこれを開催するよう強く求めるものでありますが、厚労大臣の御答弁をお聞かせください。
 私は先日、SMA、脊髄性筋萎縮症という難病団体の方々から陳情を受けました。SMAは難病中の難病と言われるALSの類縁疾患でありながら、医療費の公費負担対象には該当せず、高額の医療費に苦しんでいます。先日、テレビで放映された、筋肉が骨になってしまうFOPという病気も難病中の難病であります。ほかにも多くの希少疾患の患者、家族が医療費の公費負担を求めて一日千秋の思いで運動を続けています。
 医療保険や介護保険、障害福祉が軒並み給付減、負担増となる中で、こうした疾患に光を当てられないで何が選択と集中なのでしょうか。こうした希少疾患の早期指定について、総理並びに厚労大臣の明確な御答弁を求めます。
 次に、障害者自立支援法について伺います。
 政府は今回、三年間で約一千二百億円規模の利用者負担の軽減措置や事業者への激変緩和措置を打ち出しました。そして、その理由は様々な意見に対応するためと説明し、実態を調べた結果とは言っておりません。つまり、このことは、厚労省はいまだに実態を直視していない証左だと言わざるを得ません。
 重度障害者の在宅介護給付は、障害者自立支援法で義務的経費となりましたが、あくまで障害程度区分で規定される範囲内でしかありません。その結果、自治体の独自予算の有無に生死が懸かる状態が続いています。在宅重度障害者地域生活支援基盤整備事業の柔軟な運用を含め、きめ細かな地域生活支援が必要だと思いますが、厚労大臣に伺います。
 法施行前、身体障害者の平均負担額は月八千四百円と見積もられていました。が、しかし、施行後にDPI日本会議が行ったアンケートでは、平均額は約二万円となりました。所得が低い障害者に対して、重度の方ほど負担が増える応益負担の仕組み自体に無理があるのです。また、運営費を削減して作業所や通所施設の運営を行き詰まらせていることも、地域自立支援という理念と逆行するものであります。
 軽減策でお茶を濁すことなく、早急に一人一人の生活実態を把握し、応益負担の撤回と所得保障を含めた制度設計を見直すべきだと考えますが、総理並びに厚労大臣の明確な答弁を求めます。
 障害者の法定雇用率や障害者自立支援法などは障害認定が要件になっているために、障害手帳のない難病患者や学習障害、注意欠陥多動性障害児・者の人たちには職業紹介を受けられず、就労政策も利用できません。特に若年患者には雇用機会もなく、福祉制度の対象にもならず、制度の谷間に置かれ続けています。再チャレンジ政策の下、これらの方々に対する具体的な就労支援策について、総理並びに厚労大臣にお伺いをいたします。
 次に、年金問題について伺います。
 社会保険庁の解体案は、我々民主党が言い出したことであります。総理、年金問題に詳しいと自負するあなたが官房長官という要職にいた折、なぜねんきん事業機構法案を提出したのですか。あなたのせいで年金改革が丸一年遅れたではありませんか。
 総理は所信表明の中で、高齢者の多くが加入し未納率四割の非常事態にある国民年金については全く触れずじまいでした。働き方が多様化した今、転職のたびに厚生年金から国民年金に切り替えるのは大変面倒です。また、昨年十二月、出生率が一・二六に下方修正された結果、現役収入の五〇%を年金給付水準とした与党の百年安心という約束はもはや破綻したも同然であります。国民年金も含めた公的年金の抜本改革が求められていることについて、総理はどのように考えておられますか、お答えください。
 総理は所信表明の中で、パート労働者への厚生年金の適用拡大に触れられました。現在は労働時間週三十時間以上を加入対象としている中で、パート労働者は一千二百六十六万人、そのうち女性は約七割を占めています。適用対象を週何時間まで広げるお考えなのですか。アドバルーンだけに終わらぬよう、御答弁を総理、厚労大臣から伺います。
 次に、教育改革について伺います。
 私は、今後の教育改革は、国家統制、権限強化の方向ではなく、国際的な方向である子どもの権利条約と日本国憲法の精神を生かした、すべての子供たちへの教育条件の整備充実、機会均等を実現するため、保護者や地域の広範な人々との連携を日常的なものとし、地域に開かれた、根差した学校を目指して、現場からの教育改革を更に進めていくことが重要だと考えておりますが、総理及び文科大臣の御認識を伺います。
 いじめや自殺の問題が深刻になる中、教育委員会の消極的な対応が批判されています。
 そうした中で、規制改革会議では、教育委員会の設置義務の徹底が一度は盛り込まれたものの最終答申で後退、教育再生会議では、保護者代表の参加を義務化すべきとの意見が出たにもかかわらず、先日の第一次報告書では盛り込まれませんでした。また、第三者評価機関の設置がうたわれていますが、学校に対する第三者評価機関と同じ組織のことなのかはっきりしません。総理の所信表明でも責任の所在を明確にするというだけで、住民や保護者、児童が安心できる改革内容を示してはいません。
 総理は教育委員会を具体的にどう改革したいのか、また、文科大臣は第三者評価機関をどこに設置すべきとお考えなのか、見解を求めます。
 また、教員免許更新制に至っては、再生会議と中教審の意見が対立しており、今後、関連法案提出に向け、どのように政府・与党内での合意形成を図るのかが不明です。やり方によっては、教師を追い詰め、ストレスを増やし、ついには教員を自殺にまで追いやるような悲惨な結果にならないのか、極めて心配です。文科大臣の見解を求めます。
 最後に、農政について伺います。
 今年は戦後農政大転換の年であります。政府は、担い手対策の名の下に農家を耕作面積で足切りし、施策を大規模経営体に集中させることで中小・兼業農家を離農させ、農地を集約させようとしています。さらに、それと同時並行的に、農業大国オーストラリアとの自由貿易協定交渉を本格的に始めようといたしています。我が国の現在の食料自給率四〇%はイギリスやドイツの半分であり、韓国でさえ四九%もあり、日本は先進国で最も低い状況にあります。日豪FTAを締結して、二〇一五年度までに食料自給率を政府目標どおり四五%まで引き上げることができると本気でお考えなのでしょうか。総理お得意の安全保障上、我が国の食料自給率は十年後に何%必要だと考え、そのためにどのようにしようとしているのか、お答えください。
 今回の農林水産関係予算は七年連続の減少です。しかも、その大半は担い手に集中し、非担い手向けの施策は五年間の農地・水・環境保全対策と三年間だけの産地づくり交付金などになってしまいました。農地の半分に当たる二百万ヘクタールを耕す非担い手農家が営農意欲を失い耕作放棄地が増えることは、地元栃木県の農村を回ってみても明らかです。さらに、構造改革不況によって農村地帯では兼業収入も近年大幅に減っています。安倍自民党農政は、今正に戦後施策の大転換を行い、比較的均質だった日本の農村に巨大な格差をつくり出そうと考えているように思います。総理はどうお考えですか。
 もっとも、下げ止まらない米価の現状では、担い手の将来も明るいものではありません。担い手は果てしない規模拡大を迫られていますが、どこまで拡大すれば経営が安定するのか、どれほど借金をしなければならないのか見通しが立たず、規模拡大意欲は衰えを見せています。そのことは二〇〇二年の農業白書でも既に警告されており、今度の農政の大転換により一層担い手の規模拡大意欲は減退し、農業は崩壊すると私は危惧しております。このことをどうお考えですか。
 また、政府は、農山漁村活性化推進法を今国会に提出するようでありますが、そのために新設する農山漁村活性化交付金はわずかに三百四十一億円です。その陰で、従来あった地域活性化のための交付金四百十五億円は廃止になっています。法案を作りながら予算を削減するということは、一体どんな了見なのでしょうか。
 以上二点、農水大臣の明確な御答弁を求めます。
 JA全中、全国農業協同組合中央会は、昨年六月、次期参議院選比例区候補者の支援のための当面の取組についてという文書を発し、組織一丸となって、まだJA全中専務職にあった組織内候補の後援会づくり、カンパ活動などを進める取組を指示しています。JA全中はまた、部長クラスの幹部三人を特命休職として選挙対策に当たらせるとうわさされております。形式上、全国農政連の推薦候補でありますが、指摘した文書がJA全中の連名で発信されていることを見ても、JA全中の直営選挙の様相が極めて濃いと言わざるを得ません。
 農協は、農業協同組合法に基づき、組合員農家のための最大の奉仕をすることを目的とする非営利団体です。中でも、JA全中はその組合の健全な発達を図ることを目的として設立され、農政の実施に深くかかわっています。このような公益性の高い法定団体が特定政党の候補者を応援する政治活動を行うことは、農協法の趣旨に反すると同時に、農協の中立性への信頼を失いかねないと言わざるを得ません。この点についての農水大臣の御見解を求めます。
 さらにまた、農協の職員が五千人のリストラを、改革を余儀なくされている中で、勤務時間中に職務上のラインを通じ、様々なこうした後援会加入やカンパ用紙の活動をさせられているということについて……

発言情報

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発言者: 谷博之

speaker_id: 18165

日付: 2007-01-31

院: 参議院

会議名: 本会議