安倍晋三の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡崎トミ子議員にお答えをいたします。
労働の規制緩和についてお尋ねがありました。
労働者派遣法など労働法制に関する規制改革は、労働者の保護に欠けることのないよう留意をしつつ、多様な働き方を選択できるようにするための必要な改革を行ったものと考えております。
他方で、フリーターなど若年者を中心とした非正規雇用の増加は、将来の格差拡大や少子化につながるおそれもあり、十分な注意が必要と考えています。このため、政府としては、フリーター二十五万人常用雇用化プランを推進するなどの取組を一層進めるとともに、どのような雇用形態であっても安心、納得して働ける環境の整備に向けて、労働法制の整備を始め各般にわたる対策を推進してまいります。
最低賃金法の改正についてのお尋ねがありました。
今国会に提出をした最低賃金法の改正法案においては、地域別最低賃金について、生活保護に係る施策との整合性に配慮することを法文上明確にしているところであります。この生活保護に係る施策とは、国民に最低限度の生活を保障することを目的とする生活保護法に基づいて行われる施策であります。
また、地域別最低賃金の水準については、地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるものであり、現段階で具体的な金額に言及することは適当ではありません。いずれにせよ、今回の法案が成立した暁には、各都道府県の審議会において法改正の趣旨に沿った議論が行われ、その結果に沿って、現下の雇用経済状況を踏まえた適切な引上げ等の措置を講ずることとしております。
さらに、それに加え、成長力底上げ戦略推進円卓会議において、生産性の向上を考慮した最低賃金の中長期的な引上げ方針について政労使の合意形成を図り、その合意を踏まえ、生産性の向上に見合った引上げを実現したいと考えております。
差別的取扱いの禁止等についてお尋ねがありました。
本法案は、すべてのパート労働者を対象として、それぞれの多様な就労実態に応じ、差別的取扱いの禁止と均衡待遇の確保の組合せにより、きめ細かく待遇を改善していくこととしております。また、努力義務であっても行政指導の対象とし、実効性を確保してまいります。そのうち、差別的取扱禁止規定の対象者となる正社員と同視すべき方については、パート労働者全体の四、五%程度と推定をしております。
いずれにいたしましても、これは正社員と同じようには働いていない方々にも安心し納得して働ける環境の整備を図ろうとするものであります。格差を正当化し拡大するといった御批判は全く当たってはいません。
また、パート労働者を含め、労働条件の不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うことはおよそ法的に容認されないものでありますが、仮に紛争となった場合には、個別労働関係紛争解決促進法に基づき、適切に指導等を行ってまいります。
正社員への転換を推進するための措置を選択制とした趣旨とその実効性についてお尋ねがございました。
正規雇用として働くことを希望する方について、その希望や努力が実現される仕組みを整備することは再チャレンジ支援の観点から重要な課題と考えております。
その仕組みを整備するに当たり、企業における正社員の募集、採用等の実態を考えた場合、毎年多数の正社員を採用することが制度、慣行となっている大企業もあれば、数年に一回、正社員を一名採用することがあるかどうかという企業もあります。企業によって様々であります。このような実態を踏まえれば、正社員への転換を推進する措置について、すべての企業に対して一律に同一の措置を強制することはかえって実効性を欠くおそれがあり、本法案では各々の企業がその実情に応じて個別的な措置を円滑に講ずることができるようにしたところであります。
また、最近、経済状況を背景に正規雇用者が増えつつありますが、本規定の施行によって正社員がどの程度増加するかについては、個々の企業によりまちまちであると考えております。いずれにしても、全体の数は測り難いところでありますが、国としても指導によってその実効性を確保してまいります。
正社員転換に係る民主党の案についてのお尋ねがありました。
民主党案の、現に雇用しているパート労働者を優先的に正社員として採用することについては、企業の採用活動を硬直的にするほか、当該企業に就職しようとする新規学卒者の機会を制限するおそれがあります。労働市場全体の中で考えた場合、適当でない、このように考えております。
また、他の応募者の就業の機会の確保について配慮しつつ優先的に雇用するという規定については、配慮すべき内容があいまいで具体的でなく、個々の事業主はどのような措置を講ずればよいか分からず、結局、取組が進まないのではないかと懸念をいたしております。
パート労働者への厚生年金適用の拡大についてのお尋ねがありました。
今般、正社員に近いパート労働者に適用拡大するという考え方の下、二十七年前に定めた現在の厚生年金の適用基準を今回初めて見直すこととしたところであります。これは、関係者からの意見聴取等によりパート労働者の多様な実態や意向を把握した上で、週労働時間の基準に加え、既に厚生年金が適用されている正社員等と同等の賃金等の基準も組み合わせることとしたものであります。これ以上の拡大については、厚生年金と国民年金との関係などを慎重に検討すべき課題が多くあると考えております。
正社員のパートへの転換の防止と調停等の申立てについてお尋ねがありました。
均衡待遇の確保に当たっては、企業や経済の活動全体が底上げされ、正社員とパート労働者双方の労働条件が改善する中で進められることが望ましいことは言うまでもありません。
また、さきに述べましたように、労働条件の不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うことはおよそ法的に容認されないものでありますが、仮に紛争となった場合には、個別労働関係紛争解決促進法に基づき労働者はあっせんの申立てが可能であり、行政としても適切に指導等を行ってまいります。
職務給制度についてお尋ねがありました。
職務給を中心とした賃金体系となっていない我が国において、今後、職務給中心の労働市場の構築を目指すべきかどうかについては、労使を含めた国民的な合意が得られているとは考えておりません。このような中で、まずは、既に職務給制度を導入している企業の実例について引き続き収集し、情報提供を行う等の取組を進めてまいります。
私の政権が目指す雇用社会についてのお尋ねがありました。
人口の減少や働き方の多様化など、我が国労働市場をめぐる状況の変化に対応し、ワーク・ライフ・バランスの実現、女性、高齢者等の就業機会の拡大、働く人の所得や生活水準の底上げなど、国民一人一人が安心、納得して意欲と能力を十分に発揮できる社会を築き上げ、国民の働き方と暮らし方をより良いものにしていきたいと考えています。
このため、まず今国会において、正規労働者との均衡待遇の実現等を図るためのパートタイム労働法の改正、長時間労働を抑制するため法定割増し賃金率について引上げを行う労働基準法の改正、最低賃金制度がセーフティーネットとして十分機能するための約四十年ぶりの最低賃金法の改正など、六本の労働法制の整備に取り組んでいるところであります。
また、御指摘のワーク・ライフ・バランスの実現は少子化への対応の観点からも喫緊の課題であります。「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議等において更なる具体策を検討し、着手をしてまいります。
以上であります。(拍手)