白川方明の発言 (議院運営委員会)
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○参考人(白川方明君) 白川でございます。よろしくお願いいたします。
本日は所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。
私は三月二十日付けで日本銀行副総裁を拝命しましたが、就任後今日まで総裁が欠員であるため、総裁代行としての職務を果たしてまいりました。この間、私が最も強く意識したことは、こうした異例の事態が続く中で、日本銀行の業務がいかなる意味でも滞ることのないように運営することでありました。
今回、全く図らずも総裁候補としての御指名をいただき、事態の急激な変化に戸惑っています。総裁空席という事態は明らかに異例であり、そうした事態は早急に解消される必要があります。私としては、熟慮を重ねた結果、国会の場で自分なりに所信を申し上げ、その上で同意がいただけるのならば、総裁としての職務を果たすために全身全霊を傾けて努力をする覚悟を決め、その旨、総理に御返事を申し上げた次第です。
日本経済は、現在、国際金融市場の動揺や世界経済の減速、エネルギー・原材料価格高騰による中小企業の収益環境の悪化や生活関連物資の値上がりなど、内外共に多くのリスク要因を抱えています。先行きの日本の景気については、当面減速するものの、その後は緩やかな成長を続けるという姿を相対的に蓋然性の高いケースとして想定しています。ただ、最大のリスク要因である国際金融市場の動揺について見ますと、米国では一九三〇年代の大恐慌以来の深刻な金融市場の動揺が続いています。このような状況の下で日本銀行として重要なことは、予断を持つことなく、見通しの蓋然性と上下両方向のリスク要因を注意深く点検することであり、それに基づいて必要かつ適切な政策を機動的に実施することであると思っています。
昨年夏以降の国際金融市場の動揺とそれへの中央銀行の対応を見ていますと、中央銀行の本質的な機能が流動性の適切な供給や配分を通じる金融市場、金融システムの安定維持であり、危機管理であることを改めて痛感します。幸い、日本の金融市場では現在までのところ混乱は生じておらず、相対的に安定を保っていますが、今後とも市場機能を維持するために細心の注意が必要であると思っています。
次に、現在の経済金融情勢への対応を離れ、金融政策運営に関する基本的な考え方について申し上げます。
内外の通貨の歴史を振り返りますと、景気や財政、為替レートへの短期的な配慮が優先される結果、通貨の発行が過大となり、経済が混乱したことを示す事例には事欠きません。そのような経験を踏まえ、中央銀行という組織に対し金融政策決定の権限を与え、持続的な物価安定の実現という目的に専念させるという考え方が生まれました。これが金融政策の独立性という考え方であり、中央銀行の行動を律する重要な原則であると理解しています。しかし、それと同時に、独立性が独善に陥ってはならないことも強く自覚しています。
日本銀行としては、金融政策に関する自らの判断の根拠を国民や市場参加者に対して丁寧に分かりやすく説明すること、すなわち透明性を確保することが非常に大事であると考えています。私は、独立性と透明性という日本銀行に課せられた二つの重要な原則に基づいて行動することを肝に銘じています。
金融政策の運営に当たっては、一方で短期的な景気、物価動向に対して十分な注意を払う必要がありますが、他方で、金融政策の効果が経済全体に及ぶには一年から二年程度の長い時間が掛かること、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係があることから、足下の動向だけでなく中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があります。これは、従来より日本銀行がフォワードルッキングな金融政策という言葉で表現している考え方です。もとより、経済の先行きは常に不確実性に満ちており、中長期的なリスクを的確に認識することは容易ではありません。それだけに、予断を持つことなくいつも謙虚な姿勢で幅広く情報収集に努め、その上で日本銀行内に蓄積されている知識を最大限活用して、適切な政策決定を行うことが求められています。
最後に、総裁という職務遂行に当たっての私自身の心構えを申し上げます。
第一に、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行に課せられた公的な使命の達成に向けて責任を持って取り組みたいと考えています。その際、金融政策や金融システム、決済システムを始め、日本銀行での様々な業務の経験をベースに、専門家として誠実に仕事をしたいと思っています。
第二に、日本銀行という、我が国にとって極めて重要な組織であり、また大きな組織のリーダーであることを十分自覚して仕事に取り組む覚悟です。市場や国民に対しては、日本銀行の政策運営の考え方を分かりやすく説明することに努力します。政策委員会の議長としては、メンバーの多様な意見に十分耳を傾けた上で必要なリーダーシップを発揮し、政策委員会として適切な政策決定に到達できるように努力します。職員に対しては、モラールを高め、専門的能力が最大限発揮されるような職場づくりに取り組む考えです。
第三に、各国の中央銀行との関係で、あるいはより広く国際金融社会において人的な信頼関係を構築し、緊密な情報交換、意見交換を重ねることによって、日本経済ひいては国際経済に対し貢献したいと願っています。
私は、自らが微力であることは十分認識していますが、仮に総裁に選任される場合には、この職務に求められる役割、責任を意識しながら努力を重ねることによって、一歩でも二歩でも前に進むために、全身全霊を傾けて職務に励む覚悟です。
御清聴ありがとうございました。