渡辺博史の発言 (議院運営委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(渡辺博史君) 渡辺でございます。よろしくお願いをいたします。
それでは、御指示に従いまして所信を述べさせていただきます。
最近における世界的な資金の流れを見ますと、潤沢さを増した資金が金融資本市場という範疇を超えて、原油などの資源市場にまでその移動する範囲の外延を拡大しながら、高い利回りを求めて、かつ瞬時に世界中を移動するようになっています。
また、新興市場国の貯蓄の拡大をも要因として資金が潤沢になった結果、各市場が同じ方向に動くようになり、プラスという意味での正の相関というか、共に振れるという意味での共振性が強まっております。この結果、リスクに対するヘッジが難しくなっており、市場全体の振幅が増す方向に働いています。
そうした中、米国のサブプライムローン問題に起因して、昨年夏以降、国際金融資本市場は大きく変動するようになり、今年に入ってからますます調整の度合いを深めています。為替相場は約十二年ぶりに一ドル百円の水準を割り込み、原油価格の高騰も続いています。
このような急激な市場の変動は、市場参加者の予見可能性を奪って対応力を損なわせるため、経済を一層減速させるおそれがあります。
このように、サブプライムローン問題を背景とした金融資本市場の変動は、特に短期の金融市場の収縮を通じて、投資、消費の両面で米国の実体経済を減速させています。また、共振性が高まる中で、為替市場の変動や資源市場の需給が窮屈になることなどに伴う世界経済の下振れリスクが高まっています。
我々が現在直面する課題に取り組むためには、切迫感というか時間の制約という感覚をきちんと持つ必要があります。そして、これへの対応を我が国が必ずしも適切に行えなかったことが、長年にわたって世界経済の重要な担い手であった日本が、ここ数年ややその存在感を低下させている背景であります。
今や、米国経済の景気後退に伴い、日本経済においても減速感が高まっています。国内要因であった改正建築基準法施行の影響は収束しつつありますが、国際的なエネルギー価格や穀物価格の高騰は続いており、中小企業などや家計に悪影響が及ぶことが懸念されます。
また、中長期的には人口減少という問題があります。これは経済全体の生産性などに大きく影響を与えるとともに、相対的に低い金利という環境の中で、どのように持続的な年金経理を仕組んでいくかという課題にもつながるものであります。一億人という大きな人口を抱える国において急速な高齢化が進行するのは、日本を嚆矢とします。我々にはこの難しい問題に取り組む道筋を全世界に対して示すことが期待されています。
以上申し上げましたことは、この四月から始まりました一橋大学大学院における学生教育においても、若い人々に訴えようと考えていたものでもあります。問題意識を持ち、自らそれへの対応を設計し、かつ自らの汗を流して実行していく必要のある、また彼らの世代にとっても大きな課題であるからであります。
このように、世界経済、そして日本経済が短期的にも中長期的にも重大な局面を迎える中で、日本銀行の金融政策のかじ取りはますます重要となっています。仮に副総裁を拝命した場合には、金融政策の理念、すなわち物価安定を通じた経済の発展を実現するため力を尽くして、総裁をしっかりと支えてまいりたいと考えております。
その際、国民の信頼にこたえられるような適切な判断を自主独立の立場で下していくためには、国際的な経済情勢の不確実性が高まっている時期であるだけに、内外の経済情勢や市場動向について幅広く情報収集するとともに、多くのリスク要因について、予断を持つことなく、様々な角度から丹念に分析するよう努めたいと考えております。
私は、昨年七月に退官するまでの三十五年間、公務員として勤めてまいりましたが、この期間中の最後の約十年は、財務省国際局あるいは財務官の職にあって、国際金融市場の発展や安定のために尽力してまいりました。また、財務省を退官した後も、国際金融情報センター顧問、あるいはハーバード大学シニア・ビジティング・フェローとして、引き続き世界経済や国際金融市場の抱えている課題に取り組み、それぞれ関係の方々と意見交換をし、情報の分析に努めてまいりました。その関係者には、先進国のみならず、近時の世界経済の重要な成長点となっておりますアジアの方々も含んでおります。この面からも、我が国経済の持続的な成長に対して、いささかなりとも貢献できればと考えております。
また、金融政策における中央銀行の独立性と透明性は、金融政策の信任を得る上で極めて重要であると考えています。市場との対話を通じて説明責任を果たすよう努め、金融政策の独立性と透明性を確保し、国民の皆様に御信任いただけるよう努力してまいります。
信用秩序の維持、すなわち金融システムの安定を図ることも日本銀行の大きな使命であります。グローバル化した金融市場において、中央銀行間の連携協力は極めて重要です。金融市場における緊張感が高まる中、日本銀行は、世界で最も優れたノウハウや知識を持つ中央銀行として、国際金融市場の安定化に貢献することが重要であると考えております。また、金融システムの安定には内外の金融市場や金融機関の実態をしっかりと把握することが重要であります。さらに、銀行券の流通や日銀ネットの運行など、資金決済の円滑な確保も中央銀行としての重要な業務です。
こうした中央銀行としての様々な業務についても、総裁をしっかりと補佐してまいりたいと考えております。
私は、公務員として奉職以来、いかなる職にあるときも与えられた職責を全うするよう最善を尽くしてまいりました。日本経済と世界経済が極めて難しい局面にある中で、日本銀行副総裁という重責を担う機会を与えていただくこととなれば、日本銀行法の理念に忠実に沿い、持てる力をすべて注いで職務に取り組みたいと考えております。
御清聴ありがとうございました。