池尾和人の発言 (議院運営委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(池尾和人君) 池尾和人でございます。
 本日は所信を述べる機会を与えていただき、大変光栄に存じます。
 私は、現在、慶應義塾大学で学生の教育、研究に携わっております。専門は金融論ですが、とりわけ金融制度・システムや金融機関行動にかかわる問題を中心に研究し、著述等もしてまいりました。それで、目の前の現実を無視して金融の研究をするということはあり得ませんので、一九九〇年代以降の状況の中では、政策的なイシューにも常に注意を払いながら研究を行ってまいりました。この意味では、中央銀行が取り組まなければならない諸課題についてもかねてから関心を持ち続けてきたと言えます。
 また、研究活動との関連で、日本銀行の特に調査・研究畑の人たちとはかなり以前から交流がありました。私自身、もっと若いころに日本銀行金融研究所の客員研究員を二年間務めた経験もあります。こうした交流、経験から、私は日本銀行という組織に対して、愛着と言うと言い過ぎですが、それに近いようなものを持っており、今回、日本銀行政策委員会審議委員への就任要請を受けました際には、極めて短期間に判断をしなければなりませんでしたが、余り迷うことなくお引き受けしようと決意いたしました。
 それで、日本経済について述べたいと思います。
 現下の日本経済は、主として海外発の要因の影響で減速を余儀なくされていると思います。もっとも、もう少し長い目でとらえた場合には、日本経済の成長基盤は数年前よりは格段に強くなっています。企業部門では、債務、人員、設備の過剰、いわゆる三つの過剰などの構造的な問題が解消に向かいました。また、金融システムの安定も基本的には回復したと考えています。経済の動きを見る場合に、需要項目などの短期的な動きだけでなく、こうした企業、産業の構造や金融システムの状況など、成長の基盤となる部分をよく見てきちんと評価することが重要だと思っております。
 このような日本経済の現況にあって、金融政策運営に関して現在日本銀行が表明している考え方、すなわち、経済、物価の見通しと上下両方向のリスクを点検した上で機動的に政策を行うという考え方は極めて適切なものだと私自身も評価いたしております。
 金融政策の効果波及等に時間的なラグが存在することを踏まえれば、先を見て行動する、いわゆるフォワードルッキングであることは不可欠なことですし、その際にも不確実性を考慮に入れた慎重な対応を取ることが望ましいことは理論的にもよく知られております。とりわけ現在のような微妙な局面では、リスクに注目することは全く当然のことだと考えています。
 この限りでは、日本銀行が折に触れて主張してきていることと私自身の考えの間に大きな違いはあるとは思いませんが、その上で、私自身が特に重要だと考えていることを最後に付け加えさせていただきたいと存じます。
 それは、金融システムの安定性、健全性を維持することの大切さということです。もちろん、これは言うまでもないことかもしれません。日本銀行法が日本銀行の使命として物価の安定と並んで信用秩序の維持を規定しているのは、こうした認識があるからだと思います。
 しかしながら、一九九〇年代から二〇〇〇年代初めにかけての我が国が陥った長期低迷の教訓に加えて、今般の米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融資本市場の不安定化の経験からも、中央銀行が金融システムの問題に深く関与する必要があることが改めて強く確認されたと考えます。そして、この信用秩序維持政策の面におきましては、これまで蓄積してきた学問上の知識や経験から私にはいかばかりかの比較優位があり、政策委員会での議論を活性化させる上で貢献できるのではないかと自負いたしております。
 現在は経済金融情勢が大変難しい局面にありますが、日本銀行の審議委員に任命していただきました場合には、最大限の努力をしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116914024X02820080603_004

発言者: 池尾和人

speaker_id: 12787

日付: 2008-06-03

院: 参議院

会議名: 議院運営委員会