富岡由紀夫の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

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○富岡由紀夫君 それでは、ODA調査第二班から御報告いたします。
 ODA調査第二班は、去る二月四日から十三日までの十日間、インド及びネパールに派遣されました。
 派遣議員は、長浜博行議員、石井みどり議員、弘友和夫議員そして私、団長を務めさせていただきました富岡由紀夫の四名でございます。
 まず、インドとネパールという二か国ですが、インドは、御承知のように、著しい経済成長を遂げ、人口も十一億人を超える超大国であり、現在世界で最も注目されている国の一つであります。これに対しまして、ネパールは国民一人当たりGNIが二百五十ドル程度とアジアで最も低い国であり、両国の置かれている状況は非常に異なっております。
 議員団は、両国において様々なODA案件を視察してまいりました。本日は時間も限られておりますので、それぞれの国において特に感じた点を中心に御報告いたします。詳細につきましては、後日作成されます報告書を御参照願いたいと思います。
 まず、インドについてですが、実は私、三年前の二〇〇五年にも同じくODAの調査派遣団の一員としてインドを訪問いたしました。そのときは二〇〇四年に成立しました現政権の下で経済成長の第一歩を踏み出した時期だったわけでございますが、その後、二〇〇五年度から連続して九%を超える経済成長を遂げております。今回の訪問では、前回と比べましても、わずか三年の間でございますけれども、その著しい成長は肌身に感じるものとなっておりました。
 また、今回の訪問では、インドが成長を遂げる中で日印関係にも変化が生じているということを感じました。意見交換をいたしましたインド財務省のバンサル国務大臣が、日本とインドは従来から親密な関係であったものの、それは文化的な面からの関係にとどまっておりましたが、近年においては経済的な関係も深まり、要人の往来も活発になったとおっしゃっていらっしゃったのが印象に残っております。インドに進出する日系企業の数もここ一、二年の間に飛躍的に増加しているとのことでもあり、日印関係が新たな段階に入っていることを強く感じました。
 もっとも、日本におりますと、経済成長などインドのポジティブな面ばかりを耳にいたしますが、実際にインドを訪問してみますと、都市の交通インフラの脆弱性、成長から取り残された農村や都市部の貧困層の問題など、今後インドが成長を持続させていくための開発課題も見えてまいります。
 まず、都市の交通インフラに関してですが、議員団が訪問したムンバイとデリーの二都市では経済成長に伴って自動車を持つことができる中間層が増加したことなどにより、いずれの都市においても交通渋滞が慢性化しておりました。今後も自動車の増加は続き、一段と厳しい状況になるものと予想されます。
 こうした交通事情を実体験いたしますと、デリーにおいて円借款で整備が進められております地下鉄、デリーメトロや無償資金協力によって建設されましたニザムディン橋の意義は非常に大きいと理解できました。また、デリーメトロへのODAは、インドという国の首都における東京メトロのような後世まで残る事業への支援であり、今後の日印関係を考えた場合にも非常に大きな意味を持つものであると思います。
 また、デリーメトロは、京都議定書の温室効果ガス削減目標を達成するためのクリーン開発メカニズム、CDMの適用を受けたということでも画期的であります。CDMによる排出権獲得をODAの目的とすることは本来の目的ではないのですが、ODA事業の実施に当たり環境に優しい我が国の技術力を活用することは行われてしかるべきであり、こうした点でもデリーメトロは象徴的な案件として評価できるのではないかと思います。
 次に、インドにおける貧困、格差問題であります。今回訪問したネパールと比較してみますと、ネパールでは全体的に所得水準が高くないと感じられたのに対して、インドでは非常に裕福な層が存在する一方で教育や医療すら満足に受けることができない層が存在しておりまして、その格差は非常に大きなものと感じられました。
 議員団は、草の根無償で供与されたストリートチルドレンのための巡回学校用スクールバスや無償資金協力で医療機材を供与したサー・ジェイ・ジェイ病院などを視察いたしました。これらは、貧困層を対象として教育や医療を提供する団体への支援、貧困層が直接裨益する案件であります。実際にストリートチルドレンの子供たちに会い、授業風景などを視察いたしましたが、恵まれない環境にあることを実感する一方で、我が国のODAによって教育を受ける機会が初めて与えられ、将来に希望を見出している子供たちの輝く目にも接することができました。草の根無償は、規模が小さく目立つ事業ではありませんが、細やかなところまで手が届くスキームであり、ODAの一方の大きな柱として今後も活用されることを期待しております。
 なお、インド政府や州政府の要人との意見交換の中では、現在進行中のデリーとムンバイを結ぶ貨物輸送鉄道案件を始めとして、発電所など大型のインフラ案件への協力を期待する声が中心でありました。インドの成長を後押しするこうした事業への協力も大切ではありますが、政府間協議の中では、インド国内における貧困問題や格差の拡大も注視し、その対策を働きかけていくことが重要ではないかと思います。
 特に、民主主義国家であるインドにおいて、人口十一億人の大部分が居住する農村の問題は、今後のインドが政治的な安定の下、持続的な成長を実現するためにも非常に重要であるということをインド滞在中繰り返し伺いました。同じ民主主義国家としてインドが今後も成長を持続できるよう、我が国としても、農村問題について注視し、可能な支援を探っていくことが重要になると思います。
 その点、ヤムナ川流域諸都市下水道整備計画の一つであります下水処理施設を視察いたしましたが、そこでは単に下水を浄化するだけではなく、取り除いた汚泥を肥料に、また浄化した水をかんがいに利用するという構想で設置されており、このような試みは今後も継続される必要性を感じました。
 次に、二か国目の訪問国でありますネパールについて御報告いたします。
 ネパールにつきましては、無償資金協力によるトリブバン国際空港への管制機材の供与案件と、既存のODA案件ではありませんが、昨年十二月に大分で開催されました水サミットでも取り上げられ、またネパール政府より我が国に対して開発調査の要請がある氷河湖問題について御報告いたします。
 まず、トリブバン国際空港ですが、ネパール唯一の国際空港である本空港では、一九九二年に二度の航空機墜落事故が発生しており、これを受けてネパール政府より我が国に支援の要請があり、これまでに約五十億円の無償資金協力によりレーダーシステムや無線通信システムの整備を行っております。
 空港当局からは、本件に関する我が国の協力に対して感謝の意が示されましたが、その一方で、供与した機材の一部、具体的には無線通信システムでありますが、これに不具合が生じ、二〇〇四年の不具合発生以降、現在まで同システムを利用できない状況にあることが明らかになりました。
 当該システムの不具合が回復されていない背景には、機材供与後にその日本メーカーが事業から撤退したため、スペアパーツの入手が困難になっているといった事情があるとのことです。現在、外務省及びJICAにおいて対応措置を講じているとのことでありますが、不具合の発生から既に四年が経過しようとしており、早急な対応が求められると考えております。
 この問題は、我が国の信頼にもかかわる問題でありますので、今後も注視してまいりたいと思います。
 次に、氷河湖問題に関する調査概要について御報告いたします。まず、御承知でない方もいらっしゃると思いますので、氷河湖について御説明いたします。
 氷河というのは、文字どおり氷の河でございますけれども、その先端では、周りの土や岩を削って土砂を押し進めているわけでございます。その氷河が押し進めた土砂が先端にあるわけですけれども、現在地球の温暖化によりましてそのヒマラヤの氷河が融解して解けまして、その水が押し進めた土砂、土とか岩によってダムのように止められてしまって湖が形成されるというのが氷河湖問題でございます。この氷河湖自体は以前から存在していたわけでございましたが、温暖化により氷河の解けるスピードが上昇するのに伴って、近年、数、規模とも拡大しております。現在ネパール国内に二千を超える氷河湖が形成されておりまして、中には決壊のおそれがあるものも存在しております。実際に氷河湖が決壊して水があふれまして、水力発電所が破壊されるという災害も発生しております。
 議員団は、ネパールにおいて、ヒマラヤ周辺の八か国から構成されている国際総合山岳開発センター、ICIMODという組織から概要説明を受けるとともに、航空機を利用し空中より氷河湖の状況を視察いたしました。予想以上に大きな氷河湖が形成されていることを確認して、対策が急がれていることを感じてまいりました。
 この問題につきましては、現在ネパール政府より我が国に対して支援の要請があることでもあります。また、ICIMODからは、日本に対して氷河湖の状況をモニタリングするための衛星解析技術や砂防分野についての支援を期待する声がございました。
 なお、氷河湖問題、ヒマラヤにおける氷河融解問題は、短期的には決壊による住民や経済インフラへの被害をもたらしますが、中長期的に見ますと、氷河という水源の枯渇による下流部のインドやバングラデシュにおける水不足問題をもたらすなど、地球温暖化問題の一つの象徴となる問題でもあります。
 本年七月には洞爺湖サミットが開催され、地球温暖化問題が中心議題になると言われておりますが、我が国がサミットにおいて世界に向けたメッセージを発せられるよう、本委員会においても与野党を超えて何らかの貢献ができればと考えております。
 この氷河湖問題を通じて地球温暖化問題に関する議論を深め、我が国としての貢献の在り方について本委員会として何らかのメッセージを発することができれば、ODA特別委員会が参議院の独自のものとして設置された意義、役割を果たすものになるのではないかと思っております。また、ODA調査派遣の成果を今後のODA政策に反映するという調査派遣の目的にもかなうと思いますので、今後の本委員会において氷河湖問題について参考人質疑などを行い、議論を深めることができるよう、この場をお借りいたしまして提案させていただきます。
 さて、インド、ネパールにおける今回の調査は非常に充実したものであり、報告し尽くせない部分も多くありますが、時間もございますので、以上をもって第二班の報告をさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 富岡由紀夫

speaker_id: 25163

日付: 2008-04-02

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会