2009-04-21
衆議院
横田裕行
厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会
横田裕行の発言 (厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会)
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○横田参考人 日本医科大学の横田と申します。本日はよろしくお願いします。
資料の確認をさせていただきます。A4のとじたものと、あとA4の一枚があります。逐一、お話ししていきたいと思います。
私が本日ここにお招きいただいた大きな理由としては、救急医療の現場あるいは脳神経外科の現場では、脳死の判定というのはどのようになされて、どのような問題があるかということを多分お話しするという使命だと思います。ということで、十五分以内でお話ししていきたいと思います。
まず、私の資料の一ページの下の部分、これは平成十八年二月二十一日に、日本救急医学会、これは私どもが加盟しています、救急医約一万余名の先生方が参加している学会でありますけれども、見解の提言としてこの三つを、脳死の判定とその判定後の対応ということで公表しております。
その一番目としては、脳死は人の死であって、それは社会的、倫理的問題とは無関係に、純粋な医学的な問題、すなわち、脳死の診断というのは科学的になされるものだということであります。ただし、二番目に書いてあるのは、脳死の診断をした後の対応に関しては、やはり患者さんの家族や患者さんの生前の意思を参考にして対応すべきだというふうなことが書かれてあります。それから三番目としては、学会としては臓器移植を妥当な医療と認識している、そういうことが書かれています。
ということでありまして、二ページ目をめくっていただくわけですけれども、脳死の判定、我々が判定をする本当の意味というのは、これは臓器提供の有無とは全く関係のないものであって、先ほどお話ししたように、この患者さんが救命できるのかできないのかを診断する行為であります。脳死の判定をして、もしそれで脳死と診断された場合には、これは絶対的予後不良の診断ということでありますので、その旨を家族にお伝えするわけです。その中で、もし患者さんの生前意思及び家族の方々が臓器提供の意向をお持ちだった場合に臓器提供というふうなことがなされるわけで、我々が脳死の判定をする目的は臓器提供のためではないということをお話ししたいと思います。
実際の脳死の判定の場面を二ページの下に書いてありますけれども、一般的には、経験のある医者が二名以上で行うというのが脳死の判定であります。
しばしば問題になっていくのが、三ページ目の上の部分の、脳死の判定に網羅されています各種脳幹反射の位置づけであります。
ここに七つの脳幹反射、左の一番上に「瞳孔の散大と固定」と書いてありますが、これは正確ではありませんので、毛様脊髄反射ということに直していただきたいのです。七つの脳幹反射をしていく中で、例えば、もともと目が御不自由な方、たくさんおられると思います。それから、大きなけがによって鼓膜の損傷を合併してしまったような患者さん、これも大勢おられます。そういった患者さんに関しては、我々、脳死の判定をしようと思っても、残念ながらこの七つの脳幹反射をすることができないので、脳死の判定をすることが現時点ではできません。
では、ほかの方法がないのかということでありますけれども、次に、先ほど確認していただいた一枚の資料がありますでしょうか。これは、日本では一九七四年の日本脳波学会の脳死判定基準以来、脳死の概念は全脳死の立場をとっているわけでありますけれども、日本の脳死の考え方というのは、不可逆的全脳機能の停止、喪失というふうにも表現されることがあると思いますが、そういうふうな立場で一貫しております。
この「不可逆的全脳機能の停止」という大きな楕円形がありますけれども、この楕円形の大きさは、別に数の大きさをあらわしたものではなくて、その考え方をあらわしたものと理解していただきたいと思います。その不可逆的全脳機能の停止、すなわち脳死のそういった集合体の一部に厚生省の判定基準を満たす集団がある、それを我々は脳死というふうに診断しているわけですけれども、残念ながら、先ほどお話ししたように、目の損傷だとか鼓膜の損傷で脳死の判定をできない患者さんが中にはおられます。
そういった場合に、では、脳死の判定は現時点の医学ではできないのかという問題ですけれども、その中に「脳血流停止」というのがあります。この脳血流に関して言うと、ほぼ厚生省脳死判定基準の中に含まれるわけですけれども、一部、厚生省の判定基準で判定できないような患者さんも、脳血流停止のこの部分ですね、厚生省基準で判定できない脳死のところがある、すなわち、もし厚生省の判定基準で脳死の判定ができないような患者さんがおられたとしたら、その補完的、補助的な検査として脳血流というのを位置づけることは可能だろうということであります。
ちなみに、三ページの下の表が各国の脳死判定基準であります。ちょっと字が小さくて見づらいんですが、例えばカナダでは、各種脳幹反応ができないときには脳血流の検査をする、こういった位置づけがされていまして、脳血流の検査というのはこういう位置づけだと思います。実際の脳血流の検査は、四ページ、五ページに書いてあります。
ということで、繰り返し申し上げますけれども、脳死の判定に脳血流の検査を必須項目とする必要はないと私は思います。ただ、現時点の判定基準でどうしても判定ができないような場合には、補完的な、補助的な検査として脳血流の検査を位置づけることは、各国の状況から見ても妥当なことではないかというふうに考えます。
それから六ページの部分ですけれども、これは、平成十八年に救急施設あるいは脳神経外科施設にアンケート調査をした結果でありまして、それによりますと、アンケートを回収した対象施設から年間約千六百一例の脳死の患者さんが出た。意思表示カードを一〇%所持しているということになりますと、単純な計算をしますと、年間百六十例ぐらいの患者様から臓器の提供をいただけるということにはなるんですが、実際、今の数は御承知のとおりであります。
では、その原因は何かという部分の一端が、次の七ページにあるのではないかと思います。それは、いろいろな問題点の中で、提供施設の負担というのがやはり無視できない。何らかの支援、人的な支援があれば提供できるというふうにお答えいただいた施設が非常に多かったというのも、この七ページの上段のグラフで御理解いただけると思います。これから臓器提供が可能な施設を拡大するという議論のときに、やはりこういった支援のシステムというのはどうしても必要になってくるのではないかと思います。
ちなみに、七ページの下段の部分ですが、これは、平成十五年から十七年、私が主任研究を務めさせていただきました厚労省の研究班ですけれども、当時で、実は、法的脳死判定、臓器提供の場合には日常の診療に非常に支障を来したという答えが返っています。脳死下の臓器提供というのは、提供施設に負担が全くないということは今後もあり得ないと思うんですが、日常の診療に支障を来すほどの負担というのはやはり考えなくてはいけないと思います。
ということでありまして、我々は、次の八ページに見られるような、全国の脳外科施設、救急施設を集めて、少しでも脳死の判定に習熟していただこう、あるいはその手続に習熟していただこうといういろいろなセミナーを開催しております。
最後の九ページの部分ですが、私どもの要望です。
これから法律が変わって提供の数がふえていく、非常にいいことだと思うんです。ただ、今のシステムのままふえてしまうと、この移植医療というのは社会に信頼の厚い医療でありまして、せっかくの信頼を裏切ってはいけないという部分で、やはり数だけふえていくと、今の手続あるいは支援システムでは提供施設は破綻してしまう。あるいは現時点でのネットワークの人員、非常に今ネットワークの評価が高いことが私の昨年度の研究班でも明らかになっていますけれども、この信頼を継続していくためには、やはり数がふえていくということを前提にネットワークの体制もさらに強化していただきたい、そういうふうに思います。
最後に、繰り返させていただきますけれども、医療不信が叫ばれる中で、移植医療に関しては社会に信頼の非常に厚い部分であります。この信頼を裏切らぬためにも、いい法律、いい施行細則あるいはガイドラインをつくっていただきたいと心から念じる次第であります。
どうもありがとうございました。(拍手)