雨宮浩の発言 (厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会)

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○雨宮参考人 雨宮でございます。
 私は移植学会の会員でもございまして、したがいまして、本日は、移植医という立場から私の意見を述べさせていただこうかと存じます。
 本日の資料といたしまして、この二つをお手元にお届けしてあると思います。私の話はこちらの一枚刷りの方で進めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 (1)の我が国の臓器移植法、ここに文字で書いてある部分でございますが、臓器移植に関する法令のさわりをまとめたものでございます。
 一番下の段に、WHO推奨の、本人意思が不明なときには家族の同意で提供できるとする基準、これがグローバルスタンダードだといたしますと、我が国の基準は極めて厳しい条件となっていると言えます。
 しかし、私どもは、この法律を厳格に守るために、提供の承諾はすべて移植コーディネーターという第三者機関にゆだねております。そして、移植医は全くこれには関係しないということにしてきております。また、脳死判定も、移植に関係のない複数の専門家によって、しかも臓器移植法施行規則に定められましたところの脳死判定基準に従って、さらに指定された病院内だけでこれを施行するということを遵守してまいったところであります。
 さらに、脳死下臓器の提供につきましては、その全過程につきまして脳死下での臓器提供事例に係る検証会議によりまして、各事例ごとの厳正な検証が行われております。いずれも適正に実施された、こういうふうに判定をいただいていると伺っております。私どもの脳死下臓器提供は、極めて厳格に、法律にのっとって行われているということを申し上げられるかと存じます。
 (2)の脳死下からの臓器提供件数でございますが、この(2)以下は日本臓器移植ネットワークのデータをちょうだいしたものでございます。
 (2)につきましては、年を追うごとに脳死下ドナーの数が増加している様子を示しております。このことは、脳死下における臓器提供に対する国民の理解が進んできている証拠であるというふうに考えております。
 しかしながら、年間最高で十三例という数でございまして、これは、ネットワークに登録されている待機の患者さんが、心臓移植を必要とする人ですと百人以上、また肝疾患では二百人以上もいらっしゃるということを考えますと、脳死下での臓器提供を広げるという法律上の工夫も極めて必要でないか、こんなふうに考えております。
 (3)の脳死下臓器移植と生着状況でございますが、このデータは、本年三月までに八十一例の脳死ドナーからの臓器提供を受けた患者さんたちの現況でございます。
 この黄色いバーが生存されているところでありますけれども、一見して、かなり高い成功率であるということをおわかりいただけるかと思います。
 ここにデータは載せませんでしたけれども、移植五年後の生着生存率、いわゆる成功率はどの程度かと申しますと、心臓移植で九二・八%、肝臓移植で七二・六%、腎臓移植は生存率で八七・五%、生着率で七九・六%。かなり良好な成績だと思います。これは欧米の成績と比べても決して見劣りのするものではございません。
 (4)の人口百万人当たりの年間心臓提供者数でございますが、これは、心臓提供というものは脳死下でのみ可能でございます。したがって、脳死ドナー数の動向と平行しているというふうに考えられます。我が国は、百万人当たり〇・〇五人という極めて低い水準にあります。
 臓器提供の意思決定の方法として、生前に提供拒否を表明しておかない限り自動的に提供承諾とする、いわゆるオプティングアウト、この方式の数カ国がございますけれども、それ以外は、ここに載っているデータは、現在グローバルスタンダードと言われております家族の承諾で提供の意思決定をしている、こういった国々であります。
 最新の情報によりますと、お隣の韓国、人口が日本の約三分の一ぐらいだと思いますが、昨年、百五十例を超える脳死ドナーの提供があったそうでありまして、百例に近い心臓移植が行われたそうであります。
 我が国は、まずこのA案のようにグローバルスタンダードを取り入れた、家族による提供意思決定方式を採用する必要があろう、こういうふうに考えておるところでございます。
 (5)の本邦における移植登録患者の転帰でございますが、臓器移植法が施行されましてから、ほぼ十二年がたちます。そして、今までに八十一件の脳死ドナーからの臓器提供がありまして、そこの表の青い欄でございますが、心臓が六十五、肺臓移植が五十九、肝臓移植六十三、腎臓移植、これは心停止後の腎臓提供も含めてでございますが、二千三百三十八例、膵臓移植が五十九、小腸移植が四例行われております。
 しかし、この十二年間に移植された数としてはやはり少ない。この間に、移植を待ち望んでおられたにもかかわらず、多くの患者さんが亡くなっているのでございます。その表の中のグレーに彩ってあります死亡の欄をごらんいただきたいのですが、心臓では移植を受けられた方の約二倍、肺では約三倍、肝臓で約五倍の方々が移植を待ち望みながら亡くなられております。
 また、現在も移植に望みをかけて待機している患者さんがおられますが、現状、年間最高十三例ということでございますと、それらの方々もこれから四年もしくは五年待たないと移植を受けられない、単純計算でございますが、そういうことになろうかと思います。
 しかも、この数値はネットワークに登録された方々だけでありまして、例えば国内での移植の可能性の全くない小児の心臓病の子供たちは、ここには登録されておりません。そればかりではなくて、国内の心臓移植適応患者数は年間二百二十八から六百七十人と推定されておりますが、移植の機会の少ないことから登録もしない患者さんが数多くおられる、これもまた現実でございます。
 心移植の適応患者の一年生存率が五〇%と言われております。年間の適応患者数を四百人としましても、この十二年間に約五千人の方が死亡したことになりますし、年間二千二百人いると言われる肝臓移植適応患者につきましても全く同様なことが言えると思います。
 私どもは、提供数の増加を期待できるA案の一日も早い成立と施行をお願いする次第でございます。
 (6)の海外渡航心移植の推移、計百三十三例の最新のデータでございます。
 前の表から、ネットワークに登録待機中に海外渡航移植をした患者さんが三十六名いることになっておりますが、そのほかの九十七名は直接に外国へ移植に出たことになります。その半数以上が十七歳以下の子供たちになります。
 子供たちの中でも体格が割と大きい子がいる、そういう子は成人からの心提供を受けることができますが、多くは発育が悪いものですから、どうしても小さい臓器の提供を必要といたします。その結果、現状では外国に頼らざるを得ないということになります。そして、今回のイスタンブール宣言、さらにWHOの指針の改定等によりまして、小児の渡航移植がますます困難になることは明らかであろうと思います。
 小児にとっても心移植が受けられるような、公平な移植法がぜひとも必要でございます。小児という観点からも、A案の実現を心から期待しているところでございます。
 (7)イスタンブール宣言、国際移植学会でございますが、これはその内容をまとめたものでございます。
 昨年の十月に本委員会で、WHOのルーク・ノエルさんが来られましてお話をされたということでございますが、結局、その根底には各国のドナー不足が深刻化してきたことがございました。そして、その結果、いわゆる臓器移植の自給自足を推進して各国でやってくれ、こういうことが出てきたと思われます。
 しかし、この四月十四日、そこの憲政記念館で開催されました、「日本人が日本人を救える国に」と題しました臓器移植法改正促進大会でも明らかになったことでございますが、臓器移植に関する世界の状況が大きく変化して、国外への渡航臓器移植が極めて困難になるということが予想されてきたわけであります。成人もそのとおりでございますが、特に小児につきましては、そうなりますと日本国内でも日本国外でも移植ができないということになるわけであります。
 もちろん、医は仁術なりという精神は世界共通のものであると存じますので、各国に対して臓器の完全鎖国をしろ、こういう命令が出たとは思いませんけれども、しかし、我が国においても、小児から成人に至るすべての年齢層において公平に移植を受けることができる、そしてさらに、少しでも多くの移植ができるような法改正をお願いしないとならない、こう考えているところであります。何とぞ、A案の精神を十分に生かしていただきたいと存じます。
 (8)は内閣府の意識調査でございまして、そのデータでございます。
 脳死下で臓器提供したいと考える人が年ごとにふえ、黄色いバーがだんだん右に広がってきています。それで、赤い、したくないという人のバーが少しずつ減っているということで、これは社会の理解が着実に定着してきている、こういうふうに思っているところでございます。
 それから(9)は、内閣府の意識調査の中の、脳死臓器提供に本人の意思表示のない場合にどうするか、家族の判断にゆだねてよろしいかというアンケートでございます。
 この黄色いバーでございますが、家族の判断に任せるとした方が年ごとにふえまして、今回は五四・三%になっております。いわゆるオプティングアウトでよろしいとする人も七・三%あります。両者を合わせますと実に六一・六%の人が、本人の意思表示がなくても臓器提供はできると考えているのではないでしょうか。これは、まさにA案の摘出の要件の根本になっていると考えております。
 (10)は、十五歳未満の者からの臓器提供についてのアンケートでございます。
 平成十二年以来、六〇%から七〇%の方が小児臓器提供ができるようにすべきであると考えておいでです。しかも、二〇%の人は、できないのはやむを得ないとはしておりますけれども、これは法律も含めて小児臓器提供の環境が整えば、恐らく提供に賛同いただける人々であろうと私は考えております。したがって、小児臓器の提供ができるような法整備ができますと、それは国民の八割以上の人々の意思を酌んだ法律ということになるのではないでしょうか。
 (11)のグラフは、意思表示カードの所持状況でございます。
 日本臓器移植ネットワークを初め関係機関の大変な努力にもかかわらず、平成十二年以来、ドナーカードを記入した人というのは三%ぐらいしかいない。全くふえておりません。しかも、常時携帯している人は一・六%となっております。
 私は、このドナーカードというのは普及活動にはもう絶対欠かせない、こう思いますが、しかし、臓器提供という実用性の面から考えますとどうしても限界があり、現在その限界に達してきている、こういうふうに考えております。
 ドナーカードを持っている人は三%ぐらいしかいません。それに対して、脳死で臓器提供をしてもいいという人が四三・五%もいたわけであります。したがって、提供してよいと考えながらドナーカードを持っていらっしゃらない方、そういう方からの臓器提供が可能になりますと、当然、臓器提供数は上昇する、こう私どもは考えております。まずは意思表示カードにあることを尊重する、そして意思表示カードがなくても、家族に同意の判断をゆだねることを認める、こういう制度がどうしても不可欠であろうと考えております。この観点からも、A案というのはぜひ必要なものだと思います。
 最後に、私は、現在の日本の臓器移植、なかんずく脳死臓器移植の原点は脳死臨調の議論にあったと考えております。
 平成四年の一月二十二日に出されました答申の中に、移植機会の公平性の確保について一ページを割いた論述があります。その中で、すべての前提条件として「医療を受ける権利はあまねく公平に与えられねばならない」としておりまして、当然、小児の臓器移植適応者も移植の機会が公平に与えられねばならないわけでございます。また、「単にわが国国内にとどまらず、国際的な視野で考えなければならない。日本人が一方的に外国に赴いて移植の機会を得るだけでは、国際的にも不公平感を与えかねない。」と指摘しております。
 また、「臓器提供の承諾」の項では、「臓器提供についての本人の承諾がドナーカード等の文書でなされていない場合においても、近親者が諸般の事情から本人の提供の意思を認めているときには臓器提供を認めてよいものと考える。」さらに一歩踏み込みまして、「本人の臓器提供についての意思が不明な場合であっても、近親者が提供を承諾する場合には、臓器提供を認めるべきであるという意見もあった。」と明記しております。
 イスタンブール宣言が波及した国外渡航の問題もさることでございますが、脳死臨調の答申に述べられましたこの精神を実現するということ、これが今日求められているのではないでしょうか。このような観点からも、A案は、最も現実に即し、しかも脳死臨調の理念に即した内容を持った案と考えております。
 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 雨宮浩

speaker_id: 10556

日付: 2009-04-21

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会