ソ・ウォンチョルの発言 (法務委員会)
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○徐参考人 在日韓国民団の徐といいます。
平素、日本国の発展と国民の生活安定のために御尽力され、また、日韓友好親善と在日韓国人の地位の向上のため格別の御配慮を賜っています山本幸三法務委員長を初め各政党の議員の先生方に、衷心より敬意を表します。
新たな外国人在留管理制度案に対しまして意見を申し述べさせていただきます。
私は、昭和二十七年、一九五二年に日本で生まれた在日韓国人二世であります。妻も在日二世で、二十八歳と二十六歳の二人の子がいます。父親は、戦前、日本人として九州の炭鉱で働き、同じく韓半島から渡ってきていた母親と縁があって結婚し、終戦までに日本で二人の子をもうけ、戦後、私を含め四人の子を生み育てました。
現在、歴史的経緯をもって日本に居住する在日韓国人の大多数は、入管特例法によって特別永住資格を持ち、日本で生まれ、日本で育ち、日本に生活の本拠を有しています。長い間、住民として、納税などの義務はもちろん、地域住民として善隣友好を深め、地域社会の一員としての役割を担っております。
このたびの新たな外国人在留管理制度の導入が、両国間の歴史的経緯をその原因とし居住するに至った在日韓国人が、日本社会で人権を尊重され、今後日本社会でより一層安定した生活を営むにふさわしい待遇の改善となりますよう、法務委員会の諸先生方の特段の御配慮をお願い申し上げます。
私は、四十三万人の特別永住者を代理してこの席に立っております。私たちの主な改正要望事項を述べさせていただきます。
新たな外国人在留管理制度の導入におきまして、特別永住者に対しては、歴史的経緯に配慮し、証明書の常時携帯制度から除外することを強く要望いたします。
特別永住者は入管特例法の対象であって、入管法上の在留資格に該当するものではありません。このたびの改正案において、いわゆる対象外国人ではない特別永住者に対しては、これまでの歴史的経緯に配慮し、対象外国人とは別途に市町村から証明書を交付されるのに伴い、その常時携帯制度からも除外すべきであります。
特別永住者のほとんどが日本で生まれ、既に四世、五世まで生まれています。実際には二世、三世も証明書を常時携帯していないのが生活上の実態であります。このたびの改正案が、不法滞在者対策などを強化するとして、まだ高校生である十六歳の子からICチップつきカードを受領させ、常時携帯と提示義務を負わせ、それを守らない場合は罰則をもって科すというのは、子ども権利条約を出すまでもなく、大きな人権問題を引き起こすものであります。
十年前、第百四十五回通常国会におきまして、外国人登録法の一部を改正するに際しまして、次のように附帯決議がなされております。「政府は、次の諸点について格段の努力をなすべきである。」「外国人登録証明書の常時携帯・提示義務等に関する規定の運用に当たっては、特別永住者について常時携帯義務違反が刑事罰の対象から除外された趣旨も踏まえ、いやしくも濫用にわたることのないように努めること。」「外国人登録証明書の常時携帯義務の必要性、合理性について十分な検証を行い、同制度の抜本的な見直しを検討すること。とりわけ特別永住者に対しては、その歴史的経緯等が十分考慮されなければならない。」
この十年間、日本政府は格段の努力を具体的にどのようにされたのでしょうか。十年前も、私たちは常時携帯の廃止を強く求め、審議もされましたが、結局廃止に至らず、常時携帯制度の見直しを検討するという附帯決議に終わった経緯があります。今度こそは先送りをせず、実態に即して常時携帯制度を廃止すべきであります。
国連の自由権規約委員会は、現行法の外国人登録証明書については、日本国民には求めていないのに永住外国人に対しても刑事罰等をもって常時携帯を義務づけることは、自由権規約第二十六条に反する差別的な制度であって廃止すべきであると勧告しております。これ以上、この勧告に逆行するような措置をとるべきではありません。
このたびの新たな外国人在留管理制度の導入に対しては、新たな管理による規制強化と新たな差別が生じる憂慮があるとの声が全国から起こっております。
入管特例法において、「法務大臣は、」「特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとする。」と規定しており、毎年行われております日韓アジア局長会議においても、韓国側から、常時携帯の対象から除外するように重ねて要望しています。
去る二月、公明党の大口善徳先生、神崎武法先生の御尽力で、森法務大臣にお目にかかり、私たちの長年の願いである常時携帯制度からの除外を重ねて要望したところであります。
戦後、初代の出入国管理庁長官を歴任されました鈴木一氏は、次のように述べられております。在日韓国人に対しては、国内問題の一つとして、日本国民に準じた総合的対策がなければ、それは政府の盲点である、国際人権条約の原則だけでなく、彼らの歴史的事情からして、日本に生活の本拠地を有するこれら在日韓国人たちに、地方選挙権を含めたあらゆる権利について内国人と同等の処遇を与えるのは当然と思う、また、国民全体の意識改革が必要だが、日本に住むようになった在日韓国人たちの歴史を知り、彼らの立場に立って考えるだけの心の広さが求められていると。
戦後日本の発展の一翼を担ってきました永住外国人の存在を含め、今後の日本のあるべき外国人政策を抜本的に見直していく上で、先生方が御自分に何ができるかをこの委員会で真摯に問い直し、審議していただきたいと切に願っております。
次に、新たな外国人在留管理制度の導入において、一般永住者の負担を特別永住者に準じて軽減されるよう、強く要望いたします。
一般永住者は、日本政府みずからが日本への永住を許可した者たちであり、長年にわたり納税等の法的義務も果たしております。彼らが証明書の常時携帯をしなくてもよいように、また、わざわざ入管事務所に出向き、諸般の手続や届け出をしなくてもよいように、特別永住者に準じた負担軽減措置をとるべきであります。とりわけ、在留資格の異なる家族の間を分断すべきではありません。
永住者の場合、そもそも入管事務所に行く必要がなく、再入国のときだけ入管事務所に行けばよいところを、このたびの法改正が導入されれば、今まで市町村でよかった変更届や勤務先などをわざわざ遠方の入管事務所に届け出ないといけなくなりまして、大きな負担増となります。特に、都市部の入管事務所は今でも非常に混雑しており、さらなる不便と混雑が予想されます。
管理する側の都合だけで法律をつくるのではなく、日本の方々と生活をともにしている一般永住者の負担の軽減や利便性などを、もう少し彼らの立場に立って考える心の広さ、寛容さが求められています。
次に、新たな外国人在留管理制度の導入におきまして、就職、就学差別が生じることのないよう、特段の配慮を強く要望いたします。
法務省の業務の一環として、外国人が所属する機関、留学先、研修先、職場に対して、個人単位で状況を定期的かつ随時報告させることを義務づけ、また、外国人が届け出た情報と、外国人の所属機関から受けた情報を照合するとし、これに従わなかったり誤った情報を提供した場合、刑事罰もしくはそれに相応した措置をとるとしています。
これが導入されれば、特に中小の企業主などは罰則や煩わしさ等を嫌い、外国人及び子弟が採用忌避に遭ったり就職機会を奪われたりして、ひいては就職、就学差別につながるおそれがあります。
日本で生まれ育った外国人の子供たちが、新制度による管理の強化によって差別的待遇を受け、ひいては民族的差別を助長するおそれもあります。今後、日本の発展の一翼を担う外国人及びその子供たちが日本で住みやすく生きていくために、住民として人権を尊重され、差別なく、ともに暮らしていくことができる新制度にすべきであります。
日本で生まれ育ち、定住していく外国人の数は年々増加しています。私たち及び子供たちには愛する日本にしか生活の根拠がありません。日本で生まれ育った私たちを、外国籍だからといって、きのうきょう上陸してきた外国人と一緒にして在留管理を強化しようとするのは、私たちの人権と生活を脅かし、私たちの心を傷つけるものであります。
先進国で人種差別撤廃法がないのは日本ぐらいです。むしろ、人種、国籍差別撤廃法の一日も早い整備が強く望まれています。一つの家族に日本籍、韓国籍、米国籍などを持つ家庭が珍しくなくなりました。このたびの法改正におきましては、特に歴史的経緯を有する私たちの要望事項をぜひ組み入れていただき、何とぞ特段の御配慮と改善がなされますよう、重ねてお願い申し上げます。
意見陳述の結びに、一九九一年に日韓外相覚書が交わされ、特別永住資格や指紋押捺の廃止、常時携帯制度の見直しを検討することなどを取り決めたとき、当時の海部首相が、日本国民に向け次のようなメッセージを発表しております。少し引用させていただきます。
我が国には、特別な歴史を有し、私たちと社会生活をともにされてこられた在日韓国人の方々が数多く住んでおられます。これら在日韓国人の方々は、その特別な事情から、いろいろと苦労を重ねてこられており、日本社会において、より安定した地位と待遇を必要としておられます。私は、これらの方々が日本国の社会秩序のもとでできる限り安定した生活を営むようにすることが重要と考えます。私は、世界的な視野に立って、今後の日本社会の建設を進めていくに当たっては、国内におられるこれらの方々と同じ社会に生活する人間として、ともに考え、ともに生きることができるようにしなければならないと考えます。国民各位が職場や地域社会といった日常生活の場において、在日韓国人、さらには同様の歴史的経緯を有する他の外国の方々の立場についての理解と配慮を一層深められますよう心から希望いたしますと述べています。
この首相のメッセージを想起しつつ、諸先生方に私たちの切なる希望を託しまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。(拍手)