高原史郎の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(高原史郎君) 一言お礼申し上げます。発表の機会を与えていただき、ありがとうございます。座ったままでお願いします。
 なぜ私が今ここにいるかなんですけれども、私の所属する大学附属病院は、心臓移植、肝臓移植、肺移植、膵臓移植、腎臓移植、全部行っています。お世話するために移植医療部という臨床部がありまして、私は以前そこの世話役をしていました、今は違うんですけれども。そこでは、やっぱり私の専門とする腎臓移植や膵臓移植だけじゃなくて、肝臓移植、心臓移植、肺移植のいわゆるカンファランスですね、移植前の方、移植した方、それをドクターだけじゃなくて、技師の方々とかコーディネーターの方々と一緒に検討していました。そういうことで、いろんな経験があるということで私が選ばれたのかもしれません。
 最初に私が申し上げたい点は、実際にどのくらいの数の患者さんが移植によって救うことができずに亡くなられているかです。七月二日の参考人意見陳述で、日本移植学会の寺岡理事長が説明しましたように、心臓移植によって救えたはずの患者さんの数は、少なく見積もって年間四百人から五百人です。肝臓移植で年間救えたはずの方が二千二百人から二千三百人。私の専門とします腎臓移植に至っては、血液透析、腹膜透析をされている今約二十八万人の患者さんの中の適用は約十五万人以上です。移植によって生命予後を延ばす効果を考えますと、数千人の効果があります。つまり、臓器移植を受けていれば助かっていた可能性の高い人の数は年間一万人以上であり、交通事故で毎年亡くなられている人の数よりも多いのです。
 日本という国にとって、臓器移植という医療があった方がよいのか。あった方がよいのであれば、何をすべきか、どのような優先順位ですべきか、この点が重要だと考えます。
 私がA案を推進するのも、A案が通ってすぐに増えるわけではありませんが、まずこのA案を通してドアを開けない限り、次に進まないことが明らかだからです。では、これから今後、日本における臓器移植を必要とされる患者さんの数は増えるのでしょうか、減るのでしょうか。
 肝臓移植を例に取ります。今、C型肝炎の患者さんの数は約二百万人と言われています。今後数年、少なくとも十年以内に数万人の患者さんが肝臓移植を必要とします。これらの患者さんにおいて生体移植のドナーが見付かるとは限りません。実際に行われる数は年間四、五百例です。腎臓移植においては、四十万人程度にまで透析の数が増えると言われています。現在の年間の生体臓器移植の数は千人から千百人ですから、今後十年以内に三倍、四倍に増える見込みはほとんどありません。医療経済的にも、現在、血液透析で一兆数千億円のお金が掛かっております。実際に臓器移植のニーズは非常に高いと考えていいと思います。
 海外渡航移植について述べます。
 私自身が班員の一人でありました厚生労働科学研究の調査によれば、これは三年前の調査ですが、海外で移植されて日本の移植している施設、主に日本移植学会の施設ですが、に通院されている方は、肝臓移植でその当時約二百人、腎臓は数百人、これはちょっと実数が分かりません、移植学会以外の施設でも見ていますから。心臓移植でも百数十人の方でした。また、この方々の大多数が大人の方であり、今回大きく問題になっている子供だけではありません。つまり、これらの数は氷山の一角です。特に腎臓移植においては、特定の施設以外の医療機関で通っていらっしゃる方が多く、実際に本当に数は分かりません。
 今後、もし、今回の法改正において、これから日本での臓器移植は増える見込みがない、現在の法律ですが、となった場合、どのようなことが起こるでしょうか。恐らく、やみに隠れ、海外での違法な移植、非倫理的な移植が増えるでしょう。
 イスタンブール宣言のことがよく話題に上がります。昨年の四月、私も日本からの出席者四人のうちの一人として参加しました。これくらいの部屋の中に世界中から二百数十人が集まって、二日間缶詰になりました。移植医療の方々、WHOのメンバーの方、医療倫理の方々、この二日間まるっきりその中でやったんですね、会議を。
 予想どおり、日本は名指しで非難されました。特に発展途上国からの非難は非常に厳しいものでした。お金で臓器を買いに来る。その結果、自分たちの国の中で本来その臓器を必要とされている患者さんが死んでいる。日本だけが、先進国の中で日本だけがなぜほとんど臓器移植が増えないのか、極端に少ないのか。非常に厳しい質問、なぜなのか、問いかけを受けました、二日間。セルフサフィシエンシー、自分たちの国で必要な臓器移植のドナーは自分たちの国の中で賄う。その二日間の会議の中で、そんなことは当然だ、なぜわざわざそんなことを宣言し、WHOのガイドラインに入れようとするのか。要するに、名指しで非難された金で臓器を買いに来る日本のような国を防ぐためなんです。もうはっきり言われました。
 これもよく新聞に載っていますが、WHOのガイドラインの変更は今年は見送られました。来年になる見込みです。しかし、昨年のイスタンブール宣言以降、実際に日本からヨーロッパ、アメリカ等の海外での肝臓移植、心臓移植で行われているのはほんのごくわずかの数です。
 例えばアメリカだと、デポジットを三億円入れろと言ってきます。一〇%ルールというのはアメリカは変えませんから、三億円入れろということは要するに断っているんです、彼らの意思表示として。ドイツはもう断っています。実際に今、高橋先生もおっしゃったように、お金を集めても行けなくなっていますし、より強調したいことは、最初に私が申し上げたように、本当に必要としている数は年間四百人、心臓だけでいらっしゃるんです。この十数年間で移植ができなくて亡くなられた方は十万人を軽く超えるんです。
 もう一度繰り返しますが、日本の国として、この国にとって臓器移植という医療があった方がいいのか。いいのであれば、どういう優先順位で何をすべきか。私は、やはりA案をまず通すことだと思います。
 日本はまだ臓器移植のためのインフラが整っていないのではないかとよく御質問を受けます。私もその提供の現場にお手伝いに行くこともありますので、そういう質問をよく受けます。私がそのやっぱり現場においてつくづく感じますのは、インフラがしっかり整っているところから始め、少しずつ広げていくのが正しい方法じゃないかと思います。
 例えば、日本臓器移植ネットワークにはコンサルテーション医師というのが登録されています。私もそうです。私は何かというと、ちょっとこの方は厳しい状態なので、非常に言葉はちょっと失礼な言い方になりますけれども、この腎臓使えるかどうか分からないから来てくれと言われたら行くんですよね。脳死の診断でも、やっぱり四類型の病院でもそんなにしょっちゅうあるわけではありませんから、特に臓器提供の法的の手順というのは結構複雑なところもありますので。そういういわゆるお助けマンですよね。今でもいらっしゃるんです。やはり今あるインフラを少しずつ広げていくというところが大事だと思います。
 虐待についてもよく言われるんですけれども、私もISODP、インターナショナル・ソサエティー・オブ・オーガン・ドネイション・アンド・プロキュアメントといって、要するに政府機関と学会の人間が一緒にどうやって臓器移植をそれぞれの国で増やしましょうかというところの理事をやっているので、よくそういう話題を受けることあるんですけれども、まず虐待のことも含めてドメスティック・バイオレンスすべて共通して言えるんですけれども、何万人もやっているわけですから、アメリカ、ヨーロッパ。数がやればやるほどコーディネーターの方及びそのシステムが慣れてくるから、はっきり言えることは、慣れれば慣れるほど、数が増えれば増えるほどそういうドメスティック・バイオレンスとか虐待についての見極め、チェックは、より精度が高くなる。それははっきり言えると思います。
 あと、もう一つ言われたいのは、やっぱりドナーファミリーのケアについてですよね。これはもう当然のことであって、崇高な精神で提供されたわけですから、後で何か悩んでいらっしゃるんじゃないかとか、あと後悔している人いるんじゃないかとか、こういういろんな意見を聞くんですけれども、私が間接的にですけれども経験したことを一言だけ述べさせていただくと、実際に今の法律下で脳死提供が行われました、あるところで。提供されたんですね。御家族の方ももちろんドナーカードもあって申出されたんですけれども。後から今の法律をよく読むと、あのとき自分が、その御家族の方ですね、あのとき自分がうんと言ってサインしたから脳死診断が行われて移植をされたわけですよね。ということは、自分があのときサインしていなければ死の診断は実際には遅れていると思うんですよね。ということは、自分がある程度死の判断に関与したと、それはやっぱり遺族と家庭としては非常につらいことだというふうに、間接的で、僕は聞きません、コーディネーターの方からお聞きしたんです。
 そういうふうな経験ありますから、今の法律の方がむしろドナーファミリーの方にとってはおつらい要因が大きいということは私ははっきり言えると思います。私は移植サイドなので、直接提供された方には会うことはほとんどないんですけれども、コーディネーターの方はよくお会いすることがあるので。特にドナーファミリーのケアは大事です。
 一つだけ例を申し上げますと、昨年、日本移植学会という学会を私が会長でやったんですけれども、いわゆる学術集会ですよね。でも、去年はもうさすがにそれだけじゃ済まないということで、ドナーファミリーの方にも集まってきてもらって、学会自体のテーマを「いのち・希望・感謝」というふうなテーマにして、一日掛けて、実際ドナーファミリーの方にちょっとでも光が当たるように、どうすれば、移植医療というと僕ら医療従事者は限られていますから、やれることが。どうやって光を当てていけばいいか、僕たちがお手伝いできることをやってみました。だから、今後はこのような学会だけじゃなくて、公的なやっぱり支援の枠組みというか、いろんなのが必要だと思います。
 今の法律の中でも、これは行政の方も、そこそこと言うと非常に失礼ですけれども、よくやっていらっしゃる部分もあると思うんですよね。当たり前のことですけれども、移植医療者だけで提供が増えるわけではありません。今の枠組みで何とか増えないかということを我々も頑張っているんですけれども、例えば、去年、移植学会に合わせてWHOと厚労省と学会が共催で会議を開きました。これはやっぱり行政の方にも、日本からは上田局長がわざわざ来てくださって、どうやって少しでも増やしていこうかという会議をやったんですけれども、一日だけの会議なので限度がありまして、やはり残念ながらそこでも言われていたのは、日本は変な国と言われたんですよね。なぜこれだけ先進国で医療技術があって行政システムが発達しているのに提供が増えないのかと。もちろん、臓器提供にはいろんな問題あるだろうけれども、やっぱり社会として、日本の国としてあった方がいいのであれば、やること決まっているじゃないかというふうに言われました。
 先ほどから私は同じことを繰り返していますけれども、私はA案推進なんです。なぜかというと、A案が通ってもそんなすぐ増えるわけじゃないんですけれども、本当にやっぱり医療従事者、さっき申し上げた移植医療部の部長として、移植の専門家として、それから実際に、昔コーディネーターがいらっしゃらないころ、私もコーディネーターみたいなことをやったことありますから、それの経験からいって、この案が通らないと前へ進まないんです。そこだけは御理解いただきたいと思いますね。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 高原史郎

speaker_id: 20599

日付: 2009-07-07

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会