谷博之の発言 (厚生労働委員会)
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○谷博之君 私は、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案に対し、南野知惠子君、衛藤晟一君、西島英利君、小林正夫君、山本博司君及び私、谷博之の共同提案による修正の動議を提出いたします。
その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
これより、その趣旨について御説明申し上げます。
まず第一は、脳死の定義についてであります。臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案では、第六条第二項の脳死した者の身体の定義について、「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削除することとしております。この文言は、平成九年の法制定時に参議院において提起され、脳死は人の死かという問いに対する国民の議論が分かれる中で、脳死を一律に人の死とせず、臓器提供を行う場合についてのみ、脳死を人の死とするという一つの結論を導き出し、修正議決に至った経緯があるものであります。そのような経過を経て追加された文言が今回の改正により削除されることで、一般的に脳死は人の死とされるのではないかといった懸念が、幅広い国民の間に広がっております。また、医療関係者の中には、脳死は人の死とはっきりさせるために削除すべきとの論議も見られるところであります。
脳死は人の死とすることについては、ある世論調査において約六割が死と判定してもよいと回答しています。しかしながら、別の世論調査においては、半数以上の国民が臓器提供の場合に限り脳死を人の死とするという現在の枠組みを肯定しているといった結果も出ております。あわせて、本委員会における審査の中でも、医療や法曹の関係者や有識者の方々からも第六条第二項の定義については、現行法を踏襲すべきといった意見が多く述べられたところであります。こうしたことを踏まえると、国民的合意がいまだ形成されていない脳死は人の死を前提として脳死した者の身体の定義について改正することは適切ではなく、現行どおりにすべきであります。
第二は、虐待に関してであります。改正案では、被虐待児からの臓器摘出を防止するための検討に関する項目は公布の日から起算して一年を経過した日から施行することとなっております。しかしこれでは、十五歳未満の者からの臓器提供が可能となる公布後一年経過後に初めて検討を開始することとなり、被虐待児からの臓器摘出を防止するための具体的方策が確立されないまま、児童から臓器が摘出されるおそれがあります。被虐待児については、臓器提供が実際に行われる改正の施行までの間に検討を行い、防止のための具体的方策に関する一定の結論を施行前に導き、それを踏まえた対応を速やかに行うことが必要であり、そのためには、公布後直ちに検討を開始することを定める修正が不可欠であります。
第三に、児童の脳死判定についてであります。改正案にはこの点についての規定が全くありません。児童の脳死判定については、これまでの審議の中で明らかとなったように、成人とは異なる児童の特性に十分な配慮が必要であり、その視点に立った適正な脳死判定基準を定めるための修正が不可欠です。
第四に、家族、遺族の心情への配慮についてであります。臓器の提供に当たっては、医療的側面だけではなくドナーをみとる家族の視点も重要です。愛する者を失った悲しみに加え、臓器提供という重い決断を迫られる家族の心情は察するに余りあり、脳死という事実を受容し、納得するために時間を要するのは当然のことであります。このような現実を踏まえ、法律の運用に当たって、臓器提供者の思い、とりわけ、我が子の思いを尊重したいという家族等の心情や、遺族が故人に寄り添う時間を求める心情等について十分に配慮することを規定するための修正が必要です。
第五は、遺族の心のケアについてであります。遺族の心の葛藤は、臓器摘出のときのみならず、その後の生活においても続く場合があり、後悔の念にさいなまれたり、社会的、精神的な孤立を感じる遺族の方々もいらっしゃいます。にもかかわらず、現行の制度においては、こうした遺族を支える体制が十分とは言えません。遺族の苦悩を緩和するための支援について検討を行い、対策を講ずるための修正が必要であります。
第六は、臓器移植の検証についてであります。脳死下での移植医療についての国民的理解は必ずしも十分とは言えません。そのため、脳死の判定の適正性、救命治療の状況など脳死の判定及び臓器の摘出の状況に関し、検証を遅滞なく行い、遺族の同意を得た上で公表することが、移植医療に関する透明性を確保する観点からも重要であります。そのような視点から、修正案は、事後の検証を法律上明記するものであります。
第七に、今後、法律施行後における臓器移植の実施状況、医学・医療技術の進歩、国民意識の推移、改正法の定着度合いなどを踏まえ、施行後三年を目途として法律の全般的見直しを行う必要があります。
このような認識の下、本修正案を提出するものであります。
以下、提案する修正案の骨子を説明します。
第一に、原案では、「脳死した者の身体」について定める第六条第二項の規定から「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」との文言を削ることとしておりますが、このような改正を行わず、現行どおりとすることとしております。
第二に、検討等に関する修正であります。
まず、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないようにするための検討に関する規定につきましては、原案では、公布の日から起算して一年を経過した日から施行することとしておりますが、公布の日から施行することとしております。
また、検討等に関し、次の五項目を追加しております。
一項目めとして、臓器の摘出に係る脳死の判定についての厚生労働省令は、児童についての臓器の摘出に係る脳死の判定に関しては、児童の身体の特性に関する医学的知見を十分に踏まえて定められるものとしております。
二項目めとして、政府は、新法の適用に当たっては、臓器の摘出に係る脳死の判定及び臓器の摘出に関する当該者、特に当該児童の思いをその者の家族又は遺族が尊重する等のこれらに関するその者の家族又は遺族の心情が十分に配慮されるとともに、遺族が臓器が摘出されることとなる者に寄り添う時間を求める等の遺族の心情が十分に配慮されるようにするものとしております。
三項目めとして、政府は、臓器の摘出が遺族に心理的影響を及ぼした場合においてこれが緩和されるよう、当該遺族に対する適切な支援について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。
四項目めとして、政府は、当分の間、新法による脳死の判定の状況及び新法による臓器の摘出の状況に関し検証を行い、その結果を遺族の同意を得た上で公表するものとしております。
五項目めとして、新法による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、新法の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとしております。
なお、一項目めから三項目めまでは公布の日から、四項目め及び五項目めは公布の日から起算して一年を経過した日から施行することとしております。
以上が、修正案の趣旨説明であります。
何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。