浅野直人の発言 (環境委員会)
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○浅野参考人 福岡大学法学部の浅野でございます。
本日は、環境影響評価法改正につきまして意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、委員長初め委員の皆様に心からお礼を申し上げたいと存じます。
今回の改正法案でございますが、中央環境審議会の答申を反映させたものであると存じます。審議会の答申につきましては、この赤い参考資料の六十九ページに参考資料二として出ておりますけれども、この答申を反映させたものであると思います。そして、現行法が制定された当時から検討すべきであると考えられてまいりました課題、それからさらに、現行法を施行してから十年間を経て明らかになりました課題といったようなものについて、現在の環境基本法の二十条というのが制度的には枠組みを示すわけでございます。
これは私の概要の二枚目のところに記しておりますけれども、念のために確認をいたしますと、環境基本法の二十条は、国がこういうことについての措置を講ぜよということを定めておりまして、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う場合に、事業者が、その事業の実施に当たって、あらかじめ事業に係る環境への影響についてみずから適正に調査、予測、評価を行う、その結果に基づいて、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進する、このことを推進させるために必要な措置を講じるのが国の役割、こういうふうに記しておりますので、これが言ってみれば現在の環境影響評価法の枠組みをつくるものでございます。
この枠組みに沿い、さらにまた、同じく資料の三ページ目に記しました、二〇〇八年に制定されました生物多様性基本法の二十五条でも環境影響評価に関する規定を置いておりますが、この要請を受け、これに沿った形で、現段階で関係するさまざまな主体がおられるわけですが、必ずしもみんなの意見が一致しているわけではございませんので、最低限度合意ができる部分について可能な手直しを行なったものであると評価するわけでございまして、私は、この改正案に賛成をさせていただきたいと存じます。
ところで、環境影響評価というのは、もう先生方御存じのとおりでございますけれども、広い意味でいいますと、これからあるプログラムやプロジェクトを始めようとするに当たって、それが環境に与える影響を事前に調査、予測、評価して、それを決定に反映させる、こういうシステムでございます。ですから、それを社会制度あるいは法制度としたものが環境影響評価制度であり、あるいは環境影響評価法であるというふうに考えることができます。
このような環境影響評価、アセスメントのシステムというものは、三ページに記しましたようにさまざまな機能を持っております。決して一つの機能だけではないわけでございまして、一々は申し上げませんが、ここにありますようなあらゆる機能を含むという可能性を持っております。
ただし、これらがすべてあらゆるアセスメントの制度の中に入るかといいますと、それは必ずしもそうではございませんで、制度、法をどのように構成するかによっては、ある部分が落ちるというようなことも出てまいります。いずれにせよ、どういう制度、どういう法を構築するにせよ、共通して基礎的であると考えられますのは、第一に掲げております、情報を把握しそれを解析する、こういったような機能でございます。情報を収集し、それがどうであるかということを解析する、そのことを踏まえた上で、第三番目に掲げております、意思決定者に対して情報を提供する、このことがアセスメントの共通の役割ということになるわけでございます。
なお、この意思決定者への情報提供というのは、ただ単に情報提供に終わりませんで、そのことを通じて意思決定者が環境保全措置を積極的に行うという、そのための誘導という機能も果たすことになるわけでございます。
アセスメントの役割、目的というふうにいいますと、私の資料で五番目に書いております合意形成機能ということが強調されることがとかく多いわけでございますけれども、環境影響評価のシステム、制度というものは、意思決定を支援するためのサブシステムであると私は考えておりまして、意思決定システムそのものでないことは当然でございます。意思決定のシステムや、どうやって物事を決めるかということに関しては、それは別にまた定められることでありまして、環境影響評価が意思決定そのものだというふうに考えることは避けるべきだろうと思います。
ですから、先ほど御紹介いたしましたように、環境基本法の二十条も、事業者がみずから環境保全に配慮することを推進するための制度だ、このようにしているわけでございまして、この考え方は基本法二十条も示すところだと思います。
このような理解を前提といたしまして、以下、改正法案について五点ほど申し上げさせていただきまして、あわせて、改正法案には盛り込まれませんでした三つの点について申し上げたいと存じます。
まず第一の点でございますが、改正法の三条の二以下に、方法書の公表に先立って計画段階配慮書を作成することを義務づける、このことが新設されることでございますが、事業計画の検討の早期の段階での環境配慮の必要はかねてから指摘されておりまして、諸外国では既に採用されておりますいわゆる戦略的環境影響評価制度、SEA制度を我が国へ導入することによってこれを実現すべきであるという意見が強く出されていることでございました。
しかしながら、先ほど御紹介いたしましたように、環境基本法二十条の持っている制度の枠組みということを考えますと、諸外国と全く同じようにかなりの上位計画の段階でSEAを全面的に取り入れるということについては、法律構成上の無理がございます。
ところで、現行の環境基本計画、第三次の計画が今動いておりますけれども、これは、SEA導入のための共通的ガイドラインを策定せよということを定めておりました。そこで、環境省は、二〇〇七年の四月に、現行法の枠組みとの整合性も考える、さらに、予測、評価についての知見が蓄積している、こんなようなことを考慮いたしまして、現行環境影響評価法の対象事業に関して、上位計画のうち位置、規模等の検討段階での予測、評価及び環境配慮の導入ということに関する共通的ガイドラインを定めてございます。これにつきましても、この赤い参考資料では、九十九ページに参考資料四として導入された共通的ガイドラインが紹介されておりますけれども、こういうものがございました。
この共通的ガイドラインをつくる段階で特に強く意識しておりますのは、計画の詳細が必ずしも完全に定まっていない段階で環境配慮をしてほしいということでございますので、これは柔軟に対応できなければ動かないということを考えておりました。
とりわけ、事業の性格というんでしょうか、私ども事業種と申しますけれども、どういう事業かによって特性が異なるわけでございます。例えば道路事業のようなもの、これを長物というふうにいっておりますけれども、そんなようなものと面開発ではおのずから性格が違うということがございますし、事業主体が公共である場合と民間事業である場合には違いが出てまいりますから、そういったような違いについて十分な配慮も必要であるということを強調しているわけでございます。
公共事業に関しましては、国土交通省がこの共通的ガイドラインに基づきましてさらに具体的なガイドラインを策定されまして、これによって日本での事情に応じたいわゆる戦略的環境影響評価、SEAの考え方が第一歩を記したということになるわけでございます。
先ほど御紹介しました生物多様性基本法の二十五条も、事業の構想段階から実施段階に至るあらゆる場面で環境配慮を事業種の特性に応じながら多元的に推進していかなきゃいけないということを記しておられますけれども、改正法案の三条の二以下は、これまでのこういったような経過を踏まえながらこれを明文化したものというふうに見ることができるわけでございまして、事業種の特性に応じ、これを勘案しながら、柔軟かつ確実に早期の段階から環境の配慮を事業者に行わせることを制度化したものと考えるわけでございまして、今後の実績に大いに期待したいと存じているわけでございます。
なお、地点に関して複数地点にわたる検討を必ずしも必須としていないという点については、いろいろ御意見があることも承知しておりますけれども、やはり事業種によっての事情の違いということを考えますと、改正法の中でこのようになっていることについてはやむを得ないと考えている次第でございます。
第二番目は、方法書の説明会義務づけでございます。
方法書は、環境影響の調査、予測、評価の対象項目と、調査、予測、評価方法を明らかにするものでございまして、これを公表する目的は、地域の環境についての情報はより多く行政や住民の方が持っておられます、また専門家も情報を持っておられますから、こういう方々からの情報をいただき、あるいは御意見をいただいて、もう既に存在するような情報を重ねて調査するというような無駄なことは避ける、あるいは、後になって情報が不足であるといってまた手直しをやらなきゃいけないというようなことを避ける、これが方法書を公表するということの主な目的であると理解しております。
しかし、これまでのところは、こういったような方法書の趣旨が必ずしも理解されておりませんで、必要な情報が方法書の公表という段階で寄せられないという状況もございますので、方法書の説明会を行うことによってこういったような点についての改善に資することは、早い段階での情報提供を徹底して得ることができるという意味で、意味があることではないかと存じます。
第三に、方法書及び準備書の縦覧を電子化しようという点でございます。
これは、併用するということでございますが、法改正を準備するためには、先生方御存じのとおり、この資料の八十九ページにございますけれども、中央環境審議会に先立って研究会を開きまして、問題点をいろいろと検討したわけでございますが、その研究会の席でも、あるいは中央環境審議会の審議の席でもほとんど異論なく認められていた点でございまして、現在の方法書や準備書の縦覧の制度というのは、行政その他の分野で電子化が進められる以前の状況を言ってみればそのまま温存していたということが言えるわけでございます。
ですから、もちろん企業秘密とか希少動植物に係る情報の秘密保持というような点については懸念の面もございますけれども、しかしながら、紙媒体でやったって同じことなんですから、それが電子化を否定する理由にはならないだろうと思います。
ただ、電子情報化いたしますと、悪意のサーバー攻撃のような従来なかった事態への不安は残るわけでございますけれども、しかし、これも環境影響評価に固有の話ということではございませんで、犯罪的行為によって物事が妨害されるという危険はどんな場合にもあるわけでございますから、そのことを理由にこれを否定することも適当ではないと存じます。
第四番目は、地方公共団体の長等の意見提出についての改正でございます。
当初は、政令市の区域内にのみ影響を及ぼす案件については政令市の長の意見だけで済ませようじゃないかということも考えられたわけでございます。しかし、そうはいっても周辺自治体の長の御意見ということもあるでしょうから、やはり都道府県知事にもそれらを取りまとめて御意見をお出しいただくということは必要だろうということで、両者を並列するということになったわけでございますが、他方では、アセス審査についての第三者機関を持っていない、つまりアセス条例のようなものを持っていない政令指定市もあるということがわかってまいりました。これを都道府県と全く同様に扱うということにも疑問がございますので、結果的には改正法案のようになったわけでございまして、すべての政令市というわけではございませんが、逆に、政令市でなくても要件を満たしているところは独自に意見が出せるということになったと理解しております。
市の第三者機関に、都道府県の第三者機関と同じようにある程度時間をかけて慎重に御検討いただくということができるようになりますので、多少、事業者の方には対応しなきゃいけない相手が二つになるという御不便をおかけするかもしれませんけれども、これは有意義なことではないかと思います。
それからさらに、地方分権改革によって環境大臣の意見提出機会が消滅しております部分がございますので、これを回復させるということを含めた環境大臣の意見提出機会をふやすという変更についても、先ほど申しました研究会では当然のこととされていたところでございます。
最後は、事後調査の取り扱いに関する改正についてでございます。
手続を経て環境影響評価書が確定いたしまして、その環境影響評価書の中に記された環境保全措置というものが事業着手後に確実に所期の効果を上げているかどうかを確認する、場合によっては追加的な保全措置を講じるというようなことが必要になりますところから、環境影響評価書に事後調査を実施するということを明記している場合がございます。しかしながら、現行法では、事後調査の結果を公表するということは任意とされておりますので、これを義務化しようという改正法案の内容は、妥当なものだと存じます。
事後調査の実施を評価書に記載させる目的は、調査、予測、評価の段階ではよくわからないということがあるわけでございますので、これを率直にわからないと書いて、事後調査でちゃんと補いますということをはっきりさせる、そういうことができるようにしましょうということが大きな目的であったと思います。現行法をつくるときにも、そういうことを考えてこういう規定を設けたところでございましたが、残念ながら、どうも実際のアセスを見ていますと、わからないことでも、悪い言い方ですけれども、わかったふりをして、大して影響はないというようなアセスメントが散見されるところでございます。やはりわからないことは正直にわからないと言うのは当たり前のことでありまして、そのようなことがこれによってちゃんとできるようになるということであれば、大変よろしいことではないかと思います。
もっとも、事後調査をだれがいつまで何について行うか、事後調査の費用を一体だれが負担するのかといったような問題は残っておりますので、環境影響評価制度の趣旨、目的を考えながら、詳細については慎重に検討されなければならないと存じます。
特に、いつまでやるのかということがはっきりしていないと、場合によっては大変無駄なことをエンドレスでやるというようなことがあり得るわけで、私が知っている例でも、毎年毎年同じような報告書を十年近く読まされてうんざりしているという例がございますから、それは要らないんだと思うんですね。だから、形式的に、形骸的にやるということではなくて、本当に実質的に事後調査ができるということがこれによって促進されることを期待したいものと思っております。
最後に、今回の改正に当たって、制度の対象事業を拡大してはどうか、あるいは、国の審査手続の透明化を図るべきである、環境影響評価をめぐる争訟手続がちゃんとしたものになるべきだといったような点も議論されたわけでございますが、この点について少し意見を述べさせていただきたいと思います。
対象事業種を広げる、あるいは規模をもっと引き下げるということにつきましては、これは既に多くの自治体で条例アセスがございまして、条例でそういったようなものを取り扱っているということがございますので、法律制度でこれを引き上げてしまうというようなことになりますと、これは、地方分権、地域主権ということが強調されております今の状況でございますから、この辺の調整が必要になってまいります。その点を考えまして、今回大幅な見直しを見送ったということについては、私はやむを得なかったというふうに思っております。
それから、今後想定される新たな事業種をアセス制度の中に取り込むということにつきましても、調査、予測手法の検討といったような点も必要になってまいりますので、直ちに全面的にこれを取り入れることに至らなかったということでございまして、多少残念ではございますけれども、やむを得なかったのではないかと思っております。
次に、環境大臣のもとでも、地方公共団体の長以外にも審査が行われるわけでございますが、この審査手続を透明性のあるものにするために第三者機関を設置すべきだという御意見が強く出されていたわけでございます。地域の審査でも、第三者機関が関与することがほとんどでございます。それから、国に新たな機構、組織をつくるということは昨今慎重であるべきだろうということでございましたし、さらに、アセスの内容というのは非常に多岐にわたりまして、特定の少数の委員で審査をするということはバイアスがかかるという危険性がございますから、必ずしも適当ではないと考えたわけでございます。そこで、改正法の立場はやむを得ないというふうに思うわけでございます。もちろん、専門家の意見をちゃんと聞くということをできれば法文化した方がいいというようなことも考えたわけでございますが、現行法の立場はやむを得ないと考えているわけでございます。
さらに、手続の過程に不服がある者がその違法を争う法定手続を導入するということにつきましても、研究会や審議会で議論いたしましたけれども、今回は結論には至りませんでした。現行の制度のもとでも実は行政訴訟というのは起こっているわけでございますから、そういうことを考えますと、特にこの法に限って特別制度を設けるということに関しては、他の類似の制度との整合性あるいは環境影響評価制度の特性というものを考えながら、引き続き慎重にかつ急いで検討すべき課題であるということで審議会としてはまとめたわけでございます。
なお、諸外国での戦略的環境影響評価制度のように、上位の政策や計画の策定に当たって環境配慮を行うということに関しては、資料の最後にも記しておりますが、実は、現行環境基本法十九条には、「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。」とはっきり書いているわけですね。ということは、つまりどういうことかと申しますと、国は、あらゆる施策を策定、実施するに際しては、それが環境に影響を及ぼすかどうかを調査、予測しなければこの条文は生きてこないわけで、最初から影響を及ぼすことが自明であるかどうかはわからないわけでありますから、そういう意味では、あらゆる上位計画、上位の政策に環境配慮しなきゃいけないということは、もう既に環境基本法の十九条に定められているわけでございます。これは二十条とは別枠ということになりますので、そのことも勘案しながら、かつまた、政策や計画の策定手続や過程というものは一つ一つが一律に決まっているわけでございませんで、違いますので、現行法の枠にとらわれることなく、もっと幅広い検討をする必要があろうかと思います。この点は今後の大きな課題ではないかと思います。
それから、民主党の勉強会に出させていただきましたときに御指摘をいただいたんですが、ダムの撤去のような、これまでのように新しく物をつくるということだけじゃなくて、古いものを壊すというようなときの環境影響についても考えなきゃいけないのではないかという御指摘がありました。これはかねてから私どもも関心を持っておりまして、原科参考人ともども、環境アセスメント学会でもそのことをシンポジウムで取り上げたことがございますので、大変関心を持っておりますけれども、これは残念ながら現行二十条の枠の中ではなかなか難しい面もございますから、これらについては、今後、積極的な検討を継続する必要がありますし、場合によっては、環境基本法そのものを見直すというようなことを含めて検討しなければならないだろうと思っております。
以上のようなことをつけ加えさせていただきましたが、私の意見の発表は以上で終えさせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)