西島和の発言 (環境委員会)
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○西島参考人 日本弁護士連合会の西島でございます。よろしくお願いいたします。
日本弁護士連合会では、二〇〇八年十一月に、環境影響評価法に係る第一次意見書を発表させていただきました。お手元にお配りしております資料でございます。
初めに、日弁連のアセスメントに対する取り組みについて簡単に御紹介させていただきたいと思いますけれども、かなり古くから取り組んでおりまして、昭和四十七年、環境保全に係る法律試案要綱の提案というものを公表させていただいております。これを紹介しました山村恒年弁護士の論文を簡単に紹介させていただきたいと思いますけれども、ここでは四大公害の被害について触れられておりまして、「事後的救済は四大公害訴訟で見られたように、金銭による賠償である。これがいかにむなしいものであるかは患者の人達が訴えているとおりである。」「そこで現在必要なのは、実効性のある事前予防法である。それは健康被害の予防という狭い範囲のものでなく、生態系の保全を含めた良好な環境に対する侵害の予防という巾広い事前予防法を作る必要がある。」というような問題意識でもってアセスメント制度についても提言をしているところであります。これは古くて新しい問題意識かと思いまして、紹介をさせていただきました。
その後も、昭和五十年、五十二年、五十三年、平成八年、平成九年というふうに意見書などを公表させていただいておりまして、弁護士会のアセスメント制度に対する期待、つまり、環境アセスメントというのは、情報公開と住民参加、意思形成参加を本質とした制度であるという認識のもとに、そのような制度が確立されれば住民が実効的な環境保全の道具を手にすることができる、そうすれば、開発事業による大気の汚染、河川や海の汚染、貴重な動植物の生息地の喪失というような事態が防止されて、健康被害の発生の防止、そもそも紛争の発生が防止される、こういう期待を持って意見書を提出させていただいておる。
平成九年にはようやく、待望の環境アセスメント、環境影響評価法の制定ということに至るわけであります。この制定法の評価ですけれども、意見書にも初めの一ページ目に書きましたけれども、これは、多くの問題点を抱えたまま制定されたものであるというような厳しい評価をさせていただいて、それでもってこの意見書を二〇〇八年に出させていただいたということであります。このほかにも東京弁護士会から団体訴訟制度に関する意見書も出ておりますし、弁護士の環境アセスに対する関心の高さということで紹介をさせていただきたいと思います。
今回の改正法案に対する評価でありますけれども、先ほど浅野参考人から御紹介ありましたとおり、本当に前進した部分は少なくない。皆さんの御努力の成果だと思いますけれども、ただ、さらにこれを前進、進化させる余地というのはあるのではないかという立場から本日は意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、特に弁護士会から申し上げたいのは、争訟制度の導入であります。
これは、意見書の八の一、八の三というところで書いておりますけれども、「環境アセスメント手続に不当・違法事由があると主張する団体を含む住民等は、当該事業に係る許認可権者等に対して、その是正を求める不服申立てができることとする。」それから、八の三でいきますと、「環境アセスメント手続において不服申立てを行った者は、当該事業の許認可等の処分の違法性を争う原告適格が認められるものとし、環境保護団体等の団体原告適格については明文規定を設ける。」こういうような提言をさせていただいております。
この理由ですけれども、先日、二十五日のこちらの委員会の審議では、山崎議員から、事業アセスの限界というような問題点、課題が指摘されたと思いますけれども、事業者という立場は、目的達成のために事業を行う。ですから、見方を変えると、環境を破壊する、環境に影響を与えることによって目的を達成する、そのための手段として事業があるということですから、これをいかに環境に配慮してもらいながら事業を進めてもらうというふうに法律で規制していくかという課題があるかと思うんですけれども、現在の制度では、この点に関してのチェックがちょっと甘いのではないかというような問題意識であります。
アセスにちょっと消極的な事業者がいいかげんな調査であるとか結論ありきの評価をしてしまったような場合に、司法審査がなされるということがないと、手続の実効性というものがなかなか確保されづらいというふうに認識しております。きちんとやった事業者といいかげんな事業者との公平性という面からも、争訟制度、不服申し立ての手続というのが不可欠でありましょうし、アセスメントに参加する住民ですとか学識経験者の方、農家の方とか漁民の方とか、そういう参加する側にも最終的にはきちんと裁判所の判断を仰ぐことができるということが制度的に保障されていれば、言うだけ無駄だというようなことで参加に消極的になることもないでしょうし、参加の意欲につながるというふうに考えております。住民だとか学識経験者とかいう方たちというのは広い意味での有識者だというふうにとらえておりますので、そういった方の知識が生かせるような手続にしていただきたいというふうに思っております。
それから、特に代替案の義務づけについては、意見書の四項で提案をしております。これは、コミュニケーションの充実のために不可欠であるということもありますけれども、アセスメント手続の中で代替案の検討が行われていれば、後に争訟になったときに、裁判所の方で、きちんと考慮すべき事項が考慮されたかどうかという審査をしてもらいやすいんだろうと。裁量統制の一つの有力な手がかりになるだろうということで、ぜひ代替案の義務づけはしていただきたいということを提案させていただいております。
それから、六の一と六の三というあたりで、評価の基準や方法等を省令ないしは法律で定めて手続を客観化してくださいという提案であります。そうすることで司法統制になじみやすくなるだろうということであります。
それから、五の二と五の三は、環境保全審査の基準の明確化と環境保全審査結果の公表ということで、これも最終的な裁判の場での判断がしやすくなるという見地から提案をさせていただいております。
ただ、裁判というのは本当に最後の手段だと思いますので、本当は、訴訟まで行かずに早い段階で事業計画が適切に見直されるということが一番望ましいというふうに思います。今回、配慮書手続ということが入りまして、少し前倒しにはなったわけですけれども、さらに上位計画でのアセスメントの実施、戦略的環境アセスメントというものが必要であろうというふうに思っております。これは、きょう配付されております赤い表紙の資料の七十ページ、七十一ページで中環審の答申が引用されておりますけれども、ここでも、「戦略的環境アセスメントとは、本来、個別の事業に先立つ「戦略的な意志決定段階」、すなわち、個別の事業の実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)、さらには政策を対象とする環境影響評価である。」というふうにありますので、これはぜひ今後早急に検討していただいて、導入していただきたいということであります。
それから、配慮書段階での住民意見の聴取が義務づけられていないであるとか、この段階でも代替案検討は法的義務ということになっておりませんので、このあたりは今後の課題ということで検討していただきたいということであります。
あと、せっかく前進した、配慮書手続が入ったんですけれども、適用除外事項があるということで、五十二条三項という条文について、参議院でもかなり詳しい質問もなされておりました。この規定自体はかなり広い内容を含み得る規定のように思いますけれども、具体的な内容は政省令で定めるということで、これも赤い資料の四十一ページ、ここでどういう事項を見込むかということが、「大地震などによって大量の廃棄物が発生し、新たな区域での最終処分場の整備が緊急に必要となる場合について、当該事態に対応するための事業を必要に応じて指定することを想定している。」とありますけれども、ここは今後定められるところだと思いますので、弁護士会としても注視していきたいというふうに思っております。
それから、課題ですけれども、手続の客観性や信頼性の確保のために審査会の設置をという議論が参議院でも審議されておりましたし、先日の委員会でも山崎議員から指摘があったところだと思います。日弁連としても、必要性については非常に高いというふうに考えておりますので、この点も今後ぜひ検討していただきたい。法律で正面から位置づけられるということが必要だというふうに考えております。
あと、環境大臣意見を述べられる余地が広がったというところですけれども、これも必ずしも、例えば自治体のアセスに対して主体的に意見が述べられるというふうな手続になっておりませんので、そういったところも課題が残っているかというふうに思います。
情報公開と意思決定参加ということが本質だというのが弁護士会のアセス観、アセスというのはそういう本質を持ったものだというふうに考えておるわけですけれども、なかなか法文を見てそういった本質が見えてきにくいというふうに思います。せっかく時間をかけて、費用をかけて環境影響評価をやっていただくわけなので、先ほども申しましたように、住民、漁民、農民、学者といった幅広い意味での有識者の意見、知恵と情報を反映させていくことが保障された手続になるということが今後の課題ではないかというふうに考えております。
まだまだ改善の余地があろうかと思います。この赤い資料を見ますと、前回の制定時の審議では地方公聴会というものも実施してその審議をしたというふうなことも書いてありましたので、ぜひ時間があれば今回も、上関、長島ですか、委員会でも事業の例が挙がりましたけれども、辺野古でもよろしいかと思いますけれども、そういった貴重な、すばらしい自然のあるようなところで公聴会をしていただくと非常に前進するように思います。
そういうことは難しい、なかなか時間がない中でこの改正手続が進むということであれば、せめてその見直し時期というのは、十年ということが法律では予定されておりますけれども、早目に改正作業を始めていただきたいということで、さらなる環境影響評価法の進化を期待いたしまして、意見陳述とさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)