前田晃伸の発言 (内閣委員会公聴会)

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○前田公述人 おはようございます。前田でございます。
 私は、七年間、民間の金融機関でCEOを務めてきた経験をベースに、公述人として意見を述べさせていただきます。今回の国家公務員法等の一部を改正する法律案の審議の参考になれば幸いでございます。
 今回の改正案は、平成二十年六月に公布されました、いわゆるプログラム法案であります国家公務員制度改革基本法の内容を固めていく第一弾だと聞いております。来年の通常国会に抜本的改革案が提出されると言われておりますので、ここでは、民間の立場から少し幅広く意見を申し上げたいと思います。
 まず、基本的なことでございますが、私は、幹部人事の一元管理等が改正案に入っておりますが、この人事制度というものにつきましては、官と民の違いは基本的には余りないと思っております。すなわち、それぞれの仕事の役割課題が違うだけであるということであります。したがいまして、公務員制度改革を行うに当たりましては、公務員制度を余り特殊化して考えない方がよいのではないかと考えております。
 民間の組織、制度は、経営環境の変化に対応して柔軟な構造となっております。公務員制度も、この民間の柔軟な対応に近い仕組みにすることが国民のためになると思います。今回の改正の基本的な方向感も、そういう方向だと理解いたしております。
 さて、私は、意見の冒頭で、私が自分の会社で十年前に三つの大きな銀行を再編統合して、五万人を一つのグループにしたときの問題点、それから解決法を少しお話しさせていただきます。
 企業文化、歴史、慣行の違う組織の合体、統一は難事業でございます。そのため、私どもは、まず人事部の統合と人事制度の統一、人事運用、配置転換のローテーション化を行い、次に、入り口であります新入社員の採用の窓口を一本化し、また、本人の希望を尊重する仕組みを導入いたしました。また同時に、人事評価制度の客観性、公平性を担保するために、いわゆる三百六十度評価を管理者全員に導入いたしました。
 人事評価は、基本的には直属の上司が部下を評価するのがどこの世界でも大原則でございますが、過去に所属する組織の異なる人事制度をベースに評価されてきた人々にとりましては、統合後の新しい会社では上司、部下とも全く知らない同士というケースがたくさん出てまいります。したがいまして、新しい人事制度を安定させ、信頼されるような制度とするためには、三百六十度評価の導入が必須と考えたわけであります。
 この評価の方法でございますが、年に一回、評価者全員、私どもの場合ですと六千七百人でございますが、全員を、評価項目二十六項目にわたりまして、部下、同僚がブラインドで評価するものであります。本人には、本人の自己申告とこの三百六十度評価をグラフに対比して表示して、そのギャップを認識していただいて、今後の自己啓発の参考にしてもらうものであります。
 三百六十度評価のもう一つの活用法は、会社の経営サイドから見まして、管理者の実績が期待どおりかどうかを検証するものであります。評価項目は全員に開示しておりますが、開示することによりまして、グループ社員の行動面における共通評価軸、すなわち価値観の浸透を図る効果もございます。
 この制度を導入いたしまして八年目に入りました。人事の制度、運用等が極めて安定的に行われていると申し上げることができます。三百六十度評価は、今回の公務員制度改革で省庁間の壁を低くして配置転換を弾力化するときに、公平化の観点からお役に立つものと思います。
 次に、民間での幹部の選抜、育成の実情についてお話を申し上げます。ここでは私どものグループの実態をお話しいたしますが、この仕組みは民間ではごく一般的な仕組みでございます。
 採用でございますが、新たに採用するときには、公務員の場合ですと上級職というような個別の区分した採用がございますが、民間でございますので、幹部候補生の採用は行っておりません。民間企業では、総合職、一般職といった名称のコース別の採用が主流でございます。
 私どもでは、大きく、総合系の基幹職、専門系の基幹職、特定職という三つの職系区分を設けておりますが、それぞれの職系はさらに幾つかのコースに分かれておりまして、入社後の所属部署や担当業務及び教育プログラムがコースごとに用意されております。本人の希望や適性を踏まえ、多様な人材を育成していこうという考えでございまして、どのコースでなければ幹部選抜の対象にならないというような運用はいたしておりません。
 次に、中核となった方の管理でございます。
 入社十年もいたしますと、だれもが何らかの得意分野を持ち、また、相対評価軸の中で、各分野ごとに中核人材、いわばトップグループの人材が浮かび上がってまいります。分野ごとの壁は高いものではございません。また人材も、特定の分野に固定化されるものではございません。中核人材に対しましては、徹底した重課主義で臨んでおります。重い課題を与えるという意味でございます。この中核者には、より重い仕事の負荷が与えられ、実際に試され、多面的な評価にさらされて、それにこたえられてこそ、真の組織のリーダーになるということでございます。
 中核者の育成の仕組みは、通常の業務のオン・ザ・ジョブ・トレーニングだけではございません。私どもでは、入社十五年前後の中堅社員の中から各分野の優秀な社員を集め、特別プログラム、いわば幹部養成プログラムを設けております。このプログラムに指定された者は、通常業務を行いながら、チームを組んで、約半年間、経営戦略論等の学習をベースに、会社の諸課題を探し出し、分析し、解決策を見出し、最終的には、今までは私のところに直接提言を行ってもらっておりました。社員自身の目線を上げることで、その成長に大きく貢献いたします。
 中核者管理は、最終的には、各組織の長を担う経営人材の管理に継承をされます。入社時は横一線であった社員は、入社二十年前後の経営職階選抜のときにはおおむね二割程度にまで絞り込まれますが、ここがゴールではございませんで、経営幹部の選抜はここからが本番であります。
 枢要ポストの後継人材につきましては、直接にトップがかみ込んで、個別にパフォーマンスを見ていく体制をとっております。
 また、現場の経営管理人材につきましては、マネジメント力強化のための仕組みを設けております。すなわち、一流のプレーヤーが必ずしも一流のマネジャーになるわけでございませんので、みずほでは、管理職ポストの登用プロセスを高度化する仕組みとして、一つに、支店長公募制度を導入いたしております。
 また、各種の経営職階に向けての研修会のほか、管理職の評価を上からだけでなく下から、横からチェックする仕組み、先ほど申し上げました三百六十度評価を導入して、能力と実績に基づいた人事制度の公平性をチェックいたしております。
 次に、組織活力を維持するために行われております、部長職以上、役員の退職管理等の実情について簡単にお話を申し上げます。
 私どもでは、執行役員等に任命された場合を除きまして、満五十五歳から六十歳の定年までの間は、専任職員として個別担当業務に従事することとしております。したがいまして、それ以前の満五十歳代の前半には、ほとんどのライン管理職はポストから外れることが一般的でございます。これは組織活性化維持のためでございます。ラインの管理職を外れた後は、各人の専門キャリアを生かし、在職のまま業務監査セクションで指導業務に従事するケースや、関連子会社や外部の一般事業会社にあっせん転籍をするケースが一般的でございます。みずほの給与、処遇制度は職務と成果に応じたものとなっておりますので、ポストを外れた段階で給与、処遇はダウンして、見直しをされます。また、満五十五歳からの専任職員につきましては、従来とは異なる給与、処遇体系を適用いたしております。
 次に、公務員幹部人材育成のための重要なポイントをお話し申し上げます。
 人材の育成には時間がかかります。制度の変更も大切でございますが、政治主導を支える幹部人材の育成は待ったなしの状況でございます。ここでは、私も委員の一人として参加いたしました人事院の研究会のレポートを御紹介申し上げます。昨年の二月、公務研修・人材育成に関する研究会が一年かけて作成いたしましたレポート「新しい時代の職業公務員の育成」、サブタイトルが「政治主導を支える「全体の奉仕者」像」というものでございます。後ほどゆっくりごらんいただければと思いますが、ここではポイントだけ御説明を申し上げます。
 公務員としての必要な資質、能力につきましては、職業人としての基本的能力に加えて、使命感、職責の自覚、国民全体の奉仕者としての自覚、勇気、気概、担当分野の専門家としての必要な主張をする責任感、幅広い視野、高い識見、問題解決能力、分析、洞察力でございます。これは、公務員ということで申し上げましたが、民間人でも全く同じでございます。
 次に、今後の人材育成の方向でございますが、あるべき公務員をつくるためには、一つは、全体の奉仕者としての意識の徹底が必要だと思います。みずからの行動や判断を律する基軸でございます全体の奉仕者という意識、それから倫理観、使命感、税金を使う立場にある者としての自覚を早い段階から徹底的に根づかせる必要がございます。
 次に、政治に従い、政治を支えるための意識や能力の涵養が必要でございます。政治に従う、これは、国民の選択した政権に常に誠実に仕える意識でございます。それから、政治を支えるという部分では、解決策の選択肢を正しく提示して、実行に移す能力であります。政治主導が本来の機能を発揮するために必要な要件でございます。
 次に、新たな幹部育成のあり方でございます。
 現在のキャリアシステムは、さまざまな弊害が指摘されております。公務員制度改革基本法で、新たな幹部候補育成の仕組みを構築することが決定されておりますが、その際必要な施策につきましては、一つは、採用試験のあり方でございます。それから二番目は、重課責、重たい責任を付加することによりまして、その仕事ぶりを通じて幹部としての適性を把握することが必要であります。それから、健全な誇りや使命感の涵養が必要でございます。誤った特権意識を除去し、困難な事態に直面しても、自分たちが社会的基盤を支えていくとの気概を植えつける必要がございます。それから四番目には、人事評価との適切なリンクが必要でございます。職員が発揮した能力や成果を評価し、処遇や育成に反映し、人事の中立性、公正性の確保が必要でございます。
 最後になりますが、制度、仕組みを変えるときの、私ども民間から見た留意点を申し上げます。
 すべてのことを制度、手続で決めることは困難でございます。官でも民でも、制度はある程度抽象的にしか決められないものでございます。したがいまして、重要なことは、その仕組み、制度の運用、運営実態を十分にモニターすることでございます。公務員の場合、どうしても法律に基づいて運用が行われますので、環境変化が激しいときには、対応が遅延することが制度的に発生をいたします。これを打破するためにも政治主導は欠かせないものでございます。
 したがいまして、制度設計に当たりましては、余り詳細な制度設計をしないことをお勧めいたします。例えて申し上げますと、民間では、幹部職員のポストの価値を毎年見直しております。経営環境が変わりますと、部長でも役員でも、そのポストの価値が変わるのは当然でございます。変化の激しい時代では、ポストの価値を固定化すること自体が弊害を招きます。
 以上でございます。説明不足であった点等ございますが、後ほど御質問があればお答えいたします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 前田晃伸

speaker_id: 1827

日付: 2010-04-28

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会公聴会