稲継裕昭の発言 (内閣委員会公聴会)

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○稲継公述人 本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございます。早稲田大学の公共経営研究科で行政学を専攻しております稲継と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 大学では、公共経営論や人事行政について研究いたしておりますが、また、行政改革推進本部の専門調査会やあるいは労使関係制度等検討委員会、さらには人事院の公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会などに参加させていただきました。そういった経験も踏まえて、今回の法律改正について五点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 幹部職員人事の内閣一元管理に関する点、退職管理に関する点、労働基本権に関する点、人事局への機能移管の点、そして給与に関する点、この五点でございます。
 まず第一に、幹部職員人事の内閣一元管理に関する点でございます。
 閣法によりますと、幹部職への任用は、内閣官房長官が適格性審査を行った上で作成する幹部候補者名簿の中から行うものとし、任命権者が総理及び官房長官との協議に基づいて行うこととされております。
 従来、各省ごとに将棋のこま形の昇進管理競争を行って、省益のために頑張る官僚が出世してきたということと比較いたしますと、今回の法案では、全省庁を横断した大きなバスケットをつくって、その中にプールされた人材の中から適性のある者を各職位につけるというものでございまして、省の壁を越える、各省のセクショナリズムを打破するものとして画期的な第一歩を記すものだというふうに考えます。
 明治期以来、日本に根づいてきた慣行を根本から変えるものでございまして、世界的な公務員制度改革の潮流にものっとっているものでございます。縦割り行政の弊害を打破し、官邸主導で適材適所の人材登用を柔軟に行うことを目指したものであると思います。
 ただ、官邸主導の適材適所の人材登用を柔軟に行うといった場合に、留意しなければならない重要なポイントがございます。政治的応答性、政治的な要求にどれだけこたえられるのかという点と、あと、幹部公務員の持つ専門性、政治的中立性といったもの、その両者のバランスということでございます。
 アメリカの高級管理職やSESの一部のような政治的任命職を除きまして、一般職の公務員の場合には、政治的中立性というものが近代公務員制の中では非常に重要な要素になってきております。政治的応答性は重要ではございますけれども、他方で政治的中立性、これは、あるじがかわっても従来と同じく専門性を持って政策提案ができるような人材が必要だということでございます。
 猟官制がばっこした大正から昭和初めの日本の例を引き合いに出すまでもなく、行政の中立性を損ねた場合に、非効率な行政の被害を最終的にこうむるのは国民でございます。政治的応答性と政治的中立性や専門性とのバランス、ここが一番の肝だというふうに私は思います。
 その意味では、政府案を実行に移すに際しては、人事権の濫用がないように、それから恣意的人事が行われないように細心の注意が必要であるとともに、そのための装置を用意することも必要なのではないかというふうに思います。
 まず第一に、適格性審査の段階においては、中立公正な判断のできる第三者、有識者委員会かもしれませんし、英国流にいいますと人事委員会ということになるかもしれませんが、そういった中立第三者機関をかませる必要があると思います。適格性審査においては、政治家は排除すべきだと思います。
 第二の段階で、プールされた幹部候補者名簿の中から特定のポストに任命をする段階でございますけれども、英国では幹部リーダーシップ委員会や各省の選考委員会が審査しておりますけれども、同様の仕組みを、類似した仕組みを政令で日本でも用意してよいのではないかというふうに思います。何らかの専門的機関がポストごとの候補者名簿を順位をつけて作成し、そこの中から大臣が任命するという仕組みにしてはどうかというふうに思うわけでございます。
 任命に当たっては、大臣は、名簿の第一順位ではなくて第二順位あるいは第三順位の候補者を選ぶことももちろん可能でありますけれども、その場合には、なぜ第一順位ではなくて第二、第三順位の候補者を選んだのかということを説明する責任が政治の側に発生するということにしてはどうかと思います。それくらいの仕組みにしないと、情実任用あるいは猟官制の危険は収束することはないというふうに思うわけでございます。
 この点は、政治的応答性と中立性、専門性との議論にかかわることですが、衆法の場合には特別職としており、政治的任命職に近いように読めるので、政治的応答性の方をかなり重視するというのはある程度理解できます。しかし、一般職の公務員として考える閣法の場合ですと、やはりメリットシステムのもとで政治的中立性や専門性を相当重んじる仕組みを用意する必要があるように思うわけでございます。
 大きな二点目、退職管理に関する点でございます。
 あっせん天下りを根絶するという点については、国民世論の流れからいたしまして正しい方向だと思います。ただ、公務員も生身の人間でございますので、彼らの生涯設計というものをどのように考えていくかということも極めて重要なポイントだと思います。
 新政権下になりましてから、八十三名の方が勧奨退職に応じてやめられて、そのうち半分くらいは無職だというふうに伺いました。私の知っているある高官の方も、退職されて、まだ年金支給開始年齢に達しておられませんので、無収入であります。今までの蓄えを取り崩す形で生活をされておられます。雇用と年金が接続しておりません。
 年金支給開始年齢の引き上げに伴って、いわゆる幹部職員だけではなくて、今後、一般公務員の雇用と年金の接続がますます大きな課題になってまいります。現在の五十七歳の公務員の年金満額支給年齢は六十一歳です。現在五十五歳の公務員の年金満額支給年齢は六十二歳です。現在五十三歳の公務員の年金満額支給年齢は六十三歳です。これはもう法律で決まっていることです。その空白期間を何とかしようということで定年延長を検討しようというのが、さきの基本法十条三項の規定でありました。この雇用と年金の接続の問題が顕在化するのは、もう目前に迫っていることでございます。
 公務員が定年まで勤務できる環境をどのように整備するのか、改正法に基づき設置される内閣人事局において検討すべき、非常に急を要する、喫緊の課題だというふうに私は思います。
 大きな三点目に、労働基本権に関する点について言及したいと思います。
 基本法十二条の規定では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係を措置するものとする。」と書かれております。また、附則第二条では、地方公務員についても検討するとされています。
 そもそも労働基本権の問題は、終戦直後からの長年の課題でございまして、国民目線から見た議論が必要だと思います。その意味では、国民的に議論が活発になっていくのは好ましい傾向だというふうに私は思っております。
 ただ、最近、人件費を二割カットするための基本権付与という議論が一部になされているように聞いております。しかし、これは論理的に見るといかがなものかなというふうに思うわけでございます。基本権が付与されたからといって二割カットになるのか、あるいは逆に、組合が強くて二割ふえてしまうのか、これは何とも言えないわけでございまして、上の議論はいささか乱暴な気がいたしております。
 基本権拡大に伴う便益と費用を含む全体像を国民に示して、政治の側で最終的な決断を下される必要のある重要な論点であるというふうに思います。
 大きな四点目、人事局への機能移管の点でございます。
 この点につきましては、衆法の方では明確に示されており、しかも昨年の法案よりも財務省の部分も含めた踏み込んだ法案となっております。
 これに対して閣法では、まず、初めの第一歩として、現在の推進本部事務局を内閣人事局に移し、その他のものについては内閣人事局で検討して、今後、早急に移管を検討することになっています。
 もちろん、初めの第一歩を踏み出すことは大きなことでございますので、その点については閣法に賛成いたしますが、できましたら、改革の全体像、工程表のようなものをできるだけ早目に国民にお示しいただきたいというふうに思っております。
 最後に、大きな五点目、給与に関する点でございます。給与に関して、三点ほど指摘をしておきたいと思います。
 第一に、幹部職人事についてでございます。閣法では、部長、審議官、局長、事務次官を同一の職務遂行能力とするものの、給与については、従来のままの、次官二千三百万円、局長千八百万円、部長が千五、六百万円というようになるようで、これにはやや違和感が私は残ります。
 この際、いずれの給与も、基本給は職務遂行能力に見合った千五、六百万円に合わせてしまう。その上で、局長には職責手当として二百万円をプラスする、事務次官には職責手当として七百万円をプラスするということを考えられてはいかがかというふうに思います。
 このようにしますと、事務次官から審議官に転任した場合でも、職責が外れるので職責手当がなくなるのは当然ですから、七百万減っても、これは職責手当分ということで、不利益云々という問題はクリアできると思います。
 また第二に、退職手当に関連するものですが、このように上積み分を職責手当化いたしますと、退職時のポストによって退職手当が大きく異なってしまうという大変大きな問題が解決できるわけでございます。
 現在のままの給与体系では、事務次官の退職手当は七千六百万円です、局長なら六千万円です、審議官なら五千三百万円です。事務次官と審議官では退職手当が二千三百万円異なってまいります。退職直前に審議官から事務次官へ転任する、あるいはその逆でも結構ですが、転任いたしますと、退職手当が二千三百万円異なるという仕組みにならざるを得ないわけでございます。単年度の給与額の差よりもはるかに大きな差が退職手当で出てしまうことになります。
 この三つの職階についての職務遂行能力は同一であるというふうに考えるのでございましたら、退職手当についても、職責手当分を除いた基本給をベースとして、部長、審議官クラスの五千三百万円にそろえてはいかがかと思うわけです。これは、局長でも事務次官でも同じく五千三百万円の退職手当を基本給から計算する形で算出するわけでございます。こうしておけば、転任の際にも問題は起きにくくなると思います。また、そのことが、高額退職金に対する国民の批判を和らげることにつながるものと思います。
 給与の問題の第三として、総額人件費の問題について言及しておきたいと思います。
 総額人件費はP掛けるQ、給与単価掛ける人員ではじかれるわけでございまして、今後、政府として、定員削減に積極的に取り組んでいただく必要があるのは言うまでもございません。私は、さらにもう一歩進んで、給与単価についても踏み込むことが可能ではないかというふうに考えております。
 地方公共団体の場合でも都道府県や政令市には人事委員会を設置しておりますけれども、そういった自治体の半数以上が給与カットをして総額人件費を削減しています。大阪府の橋下知事の場合は、組合と交渉の結果、幹部で一四%削減、一般職員でも数%の削減をして、全体で七・四%の給与削減を断行しています。もちろん、これに対しては、大阪府人事委員会の方から遺憾の意見表明がされてはおります。しかし、橋下知事は給与カットを断行しております。
 国の場合でも、政府の側がその気になりさえすれば、給与カットをすることはできるはずですし、昭和五十七年には実際それを実行しているわけでございます。
 労働基本権が与えられていないから給与カットはできないというのは非常に紳士的な答えだとは思うのですけれども、そのような立ち位置でいた場合、基本権が与えられたら給与カットができるのか、その点、少し疑問を抱くような次第でございます。
 最後になりましたが、今回の公務員制度改革によりまして、国民にとりましてよりよい行政を実現していただけることを切に願っております。
 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 稲継裕昭

speaker_id: 24401

日付: 2010-04-28

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会公聴会