小沢鋭仁の発言 (環境委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(小沢鋭仁君) おはようございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 先般、川口委員からの御質疑の中で、いわゆる経済モデルに関して報告をと、こういう御要請がございましたので、冒頭、御報告をさせていただきたいと、こういうふうに思います。
 お手元のところに、いわゆる裏表で、タスクフォースで用いた経済モデルの概要と環境大臣試案で用いた経済モデルの概要という資料をお配りをしていると思います。それに沿って説明をさせていただきますので御覧いただきたいと思います。できるだけ分かりやすく丁寧にと思っておりますが、時間も限られておりますので簡潔にせよと、こういう御要請もいただいております。そういう意味では、少し口早に申し上げるのをお許しいただきたいというふうに思います。
 まず、地球温暖化対策基本法の審議に当たりまして、さきの環境委員会において、経済や国民への影響について委員会の場できちんと説明するようにとの御指摘がございました。温暖化対策は国民の皆様お一人お一人が前向きに取り組むことによって初めて実現できるものであり、国民の皆様、また国民を代表して議席を得ている委員の皆様に対してその影響を御説明することは私としても極めて重要だと考えて、この場をお借りして説明をさせていただく機会をいただいたことにお礼を申し上げたいと思います。
 まず、タスクフォースによる三つのモデル分析について御説明申し上げます。
 温暖化対策に関する経済や国民生活への影響については、各府省了解の下、地球温暖化問題に関する閣僚委員会副大臣級検討チームにタスクフォースを設置して検討してまいりました。京都大学の植田先生を座長として、十月から十一月にかけて五回開催し、昨年十二月に取りまとめ、結果を公表いたしました。その間、すべて議論は公開の場で行っております。
 このうち、経済モデルについては、日本経済研究センター、国立環境研究所、慶応大学野村准教授の三者が分析を実施いたしました。
 お配りした資料のタスクフォースで用いた経済モデルの概要の表を御覧ください。
 いずれのモデルも一般均衡モデルに分類されるモデルであり、排出量を一定量に削減する場合に、経済が到達する均衡状態の姿を描くことを目的としております。また、いずれも地球温暖化対策税又はオークション型排出量取引で炭素価格、エネルギー価格を上昇させることにより排出量の削減を実現させる構造になっております。このほかの共通点としては、例えば一年ごとに逐次、その時点での最適解を計算する構造になっております。
 一方、各モデル独自の特徴としては、日本経済研究センターのモデルについては、マサチューセッツ工科大学の温暖化対策分析用の一般均衡モデルであるEPPAモデルを参考にして構築されております。
 国立環境研究所のモデルにつきましては、技術進歩を見込む手法として、対策技術を積み上げたボトムアップ型のAIM技術モデルとの整合を図っているところに特徴がございます。
 また、野村先生のモデルにつきましては、慶応大学産業研究所で開発しているKEOデータベースを活用し、同研究所が行った日本経済の実情分析を反映させています。
 分析に当たっては、二五%削減のうちいわゆる真水で達成する部分を一〇%、一五%、二〇%、二五%として分析し、成り行きケースとして想定された一九九〇年比プラス四%の場合との比較で結果を示しています。
 分析結果においては、例えば真水で二五%削減を実施した場合、いずれのモデルにおいてもGDPは現状よりも増加するものの、成り行きケースと比べるとGDPは減少するものと試算されています。
 以下、モデルごとの分析結果を御説明いたします。
 まず、日本経済研究センターのモデルでは、真水二五%の場合、成り行きケースの場合と比べ、GDPは三・一%の減少、可処分所得は四・五%の減少となっています。国立環境研究所のモデルでは、GDPは三・二%の減少、可処分所得は三・四%の減少。野村先生のモデルでは、GDPは六・一%の減少、可処分所得は一六・二%の減少となっています。
 モデルの構造上、地球温暖化対策税の税収又はオークションによる収入が発生することになりますが、今申し上げた数字は、いずれもこれらの収入を家計に一括して還流した場合の値でございます。
 また、収入の一部を地球温暖化対策への財政支出に還流させることによってエネルギー効率の改善が進むと仮定すれば、家計に一括して還流するケースよりもGDPロスが軽減され、可処分所得も改善されるとの試算が得られております。この場合の試算を日本経済研究センターが実施しておりまして、GDPの減少幅は収入を家計に一括して還流する場合と比べてマイナス三・一%からマイナス二・四%に緩和されております。
 高率の地球温暖化対策税を課してすべての税収を家計に一括して還流するのではなく、すべて温暖化対策の追加費用に充当することを前提に低率の地球温暖化対策税を課す場合について国立環境研究所が試算しておりまして、GDPの減少幅は収入を家計に一括して還流する場合と比べてマイナス三・二%から二・七%に緩和されています。
 このほか、収入を国債の償還に充てた場合の試算を野村先生が実施しています。それによると、家計に一括して還流されるケースと比較すると、GDPの減少幅は六・一%から五・六%に緩和されています。
 このように、地球温暖化対策税の税収又はオークションによる収入を温暖化対策や国債の償還に充てることにより、経済や家計への影響が緩和されることが示されておりまして、この点が重要と考えております。
 なお、各モデルでGDPや家計への影響などの分析結果が異なるのは、それぞれのモデルの構造や前提としている条件が必ずしも同一でないことによります。これらのモデルは、産業部門などの分類の仕方、生産部門の生産関数や費用関数、特にエネルギー間の代替や家計の効用関数の定義、技術進歩の見込み方、貯蓄の想定の方法など、種々の点で構造が異なっているものと思われます。唯一正しいモデルというものは存在しないため、複数のモデル分析を行い、その複数の結果を総合的に見て判断することにしています。
 環境大臣試案における四つのモデル分析について申し上げたいと思います。裏面を見ていただければと思います。
 タスクフォースの分析は、イノベーションの加速に伴う経済影響、温暖化対策関連の市場拡大やその波及効果などが十分考慮された分析になっていないとの指摘があり、また、需給ギャップが存在する現下の経済状況を考慮した経済影響についての分析が行われていなかったことから、環境省として追加的に分析を実施し、四つのモデル分析結果を大臣試案に盛り込みました。
 以下、個別のモデル分析の詳細を御説明申し上げます。お配りした表を御覧いただきたいと思います。
 まず、伴先生のモデルでございます。
 大阪大学の伴先生によるモデルは、一般均衡モデルを用いていること自体はタスクフォースと同様ですが、以下の二点がタスクフォースで用いたモデルと異なります。
 一つ目に、経済主体が消費・投資行動を決定するに当たり、短期の効用・利潤最大化を目指すか長期の効用・利潤最大化を目指すかという点で異なった構造となっています。タスクフォースのモデルは一年単位で効用・利潤が最大になるように設定されております。一方、伴先生のモデルでは、目標年である二〇二〇年までの全期間を通じ効用・利潤の最大化が実現するよう設定されています。
 例えば、将来に排出規制の強化を控えている場合、期間全体の効用・利潤を最大化するため、当初は効用・利潤が小さくなることを承知の上で消費を抑制して投資を行い、投資増大による効率改善から将来より大きな効用を得るといった行動、合理的な行動と、こういうことでございますが、それが表現されております。
 二つ目に、イノベーションの加速が実現するケースを新たに設定しています。
 このケースでは、社会全体が温暖化対策に積極的に取り組むことを仮定し、その結果として、温暖化対策技術の大量導入が進むことによるコスト低減効果を見込むほか、再生可能エネルギーの導入を容易にするための規制緩和といった目標達成に向けての必要な規制改革にも取り組むことを想定しています。
 伴先生のモデルでは、一九九〇年比マイナス一五%とマイナス二五%のケースで分析を実施しておりますが、分析の結果、例えばマイナス二五%のイノベーション加速ケースの場合、一九九〇年比四%の成り行きケースと比べて、二〇二〇年にGDPや就業者数がそれぞれで約〇・四%押し上げられるとの試算がなされております。
 次に、松橋先生のモデルでございます。
 東京大学の松橋先生のモデルも一般均衡モデルでありまして、温暖化対策の実施に伴いイノベーションが促進された場合の効果を分析しています。松橋先生のモデルでは、二五%削減のうち一五%までを真水で削減し、残りの一〇%を海外クレジットの活用により削減することを前提にしております。
 分析の結果、イノベーションにより、家電製品、エコカーや太陽光発電などの価格が下がるとともに、省エネが進むことで光熱費も下がるため、他の用途に使うことができる所得、すなわち家計上の余裕がどの所得階層においても温暖化対策を実施しないケースと比較して大きくなるという結果が得られています。
 第三に、名古屋大学の藤川教授のモデルでは、産業連関表を用いてエコ製品、エコ設備等の需要拡大に伴う関連産業の市場、雇用への波及効果を評価しました。この産業連関分析はタスクフォースの分析ではなかったものでございます。
 分析の結果、二五%のための対策導入及び日本のエコ技術の輸出を考慮すると、二〇二〇年の時点では四十五兆円の需要、百二十五万人の雇用が発生するとしています。また、百十八兆円の市場規模、三百四十五万人の雇用規模の波及効果があると試算されております。
 ただし、これらの市場、雇用が純粋に増加するわけではないことに注意が必要です。実際には、新市場の創出の結果として、ある程度、従来型の産業が縮小することが考えられますが、本モデルではこのようなマイナスの影響を分析できておりません。
 第四に、日本経済研究センターのモデルでは炭素税の導入による経済影響を分析しています。
 本モデルでは、マクロモデルに分類され、伴教授や松橋教授の一般均衡モデルとは異なります。マクロモデルは、経済の供給力と現実の需要との間の乖離といった需給ギャップや失業率など、より実態に即した経済影響を考慮することが可能であり、タスクフォースの分析ではなかったものでございます。ただし、多くの財や産業部門を分析できる一般均衡モデルと異なり、部門分類ごとのきめ細かな分析、例えば炭素税収を省エネ設備など特定の部門に投入するといった分析を行う構造にはなっておりません。
 分析の結果、炭素税の税収を政府支出の増加分に充てることで需要を増やし、設備、雇用の供給過多を改善することが可能となり、GDPは上昇し、失業率は減少するということになりました。
 ただし、この分析は、直接二五%削減に伴う影響を評価するものではなく、意欲的な炭素税の導入による影響を分析し、その税収を政府支出に充てることが現下の経済状況において有効な政策であることを示すために大臣試案で紹介したものでございます。
 以上、足早にタスクフォース及び大臣試案の経済モデルについて御説明いたしました。
 モデル分析の結果に幅が生じてしまうのは、このようにそれぞれのモデルの構造や全体としての条件が必ずしも同一でないことによります。モデル分析は、一定の前提の下に種々の条件を変化させたときに各種の指標にどのような影響が出るかを示すものでありまして、前提の置き方や政策の組み方によって結果が異なってくるものであります。
 委員会の皆様におかれましては、このモデル分析の特性を御理解いただき、慎重に御議論をいただくようにお願いを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 117414006X01320100601_005

発言者: 小沢鋭仁

speaker_id: 1006

日付: 2010-06-01

院: 参議院

会議名: 環境委員会