石川徹の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(石川徹君) 東京都板橋区にあります医療法人財団健康文化会の理事長で内科医師の石川です。また、都内の十五か所の病院、百二十一か所の診療所など、合計三百四十二の事業所が加盟する東京民主医療機関連合会、以下民医連と略します、の会長で全日本民医連の理事、また東京都板橋区医師会の理事も務めております。
 本日は、参議院厚生労働委員会の貴重な審議時間の中で意見を陳述させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
 この間、前政権下で推し進められてきた医療制度改革は、国や大企業の負担を軽減し、その一方で地方自治体や健康保険組合の負担、そして患者、住民の保険料や医療費の窓口負担を増やし続けてきました。医療難民、介護難民、そして医療崩壊、こういう言葉がすっかり一般化し、昨年の政権交代以降も医療機関にとっては医師、看護師不足、医療経営の困難はいまだ変わりはありません。
 また、患者、国民にとっては、この間、高くなり過ぎて払えない保険料のため資格証明書などで無保険状態になってしまう、あるいは保険料を払っていても三割という医療費の窓口負担、この支払が困難などのために病気になっても医療機関にかかれない、患者になれない、こういった不幸な事態が拡大し続けています。
 今回の法案は、高校生世代までの無保険を解消する、こういう賛成できる項目もありますが、全体を見れば今までの政策の転換を目指しているものではない、このように思います。
 現在の政権樹立に当たっての三党の政策合意では、後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険制度を守る、廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援するとしていました。
 また、民主党は、野党時代の二〇〇八年には、後期高齢者分とそれから市町村国保そのものの赤字体質の是正、それを図るために九千億弱の予算措置を我が党が政権を取った暁にはさせていただくと述べておられたにもかかわらず、後期高齢者医療制度の廃止は数年先に先送りしようとしており、また、今回の法案により国保財政に投入する予算は見当たりません。今回の法案は、後期高齢者医療制度の先送り、これを前提とし、国民健康保険の広域化などと抱き合わせ、一体化を推し進めようとしているものであると考えざるを得ません。
 今回の国民健康保険の広域化支援方針には、国保事務の共同化や保険料の納付状況の改善など、具体的な施策を盛り込むものとされています。国庫負担の引上げなしに国保の広域化を進めれば、結局は保険料が負担の高い方に引き上げることにもなりかねず、また、国保の事務を広域連合に移行させてしまえば、現在の後期高齢者医療の広域連合がそうであるように、住民の声が今まで以上に反映しにくくなる、こういうことが危惧されます。
 また、国保料の納付率が悪い自治体に対して財源の支援は何ら行わず、広域化等支援方針により収納対策を押し付けるものであり、都道府県調整交付金についても、収納率の低い自治体に対する都道府県交付金を用いたペナルティーを都道府県の判断で導入する、こういうことが可能になっているなど大きな問題だと言わざるを得ません。
 また、協会けんぽについても、国庫補助率を二〇一〇年から二〇一二年度までの三年間のみ一六・四%に引き上げる、こういうもので、このままではその後は再び一三%に戻ってしまうことになります。そもそも健康保険法で国庫補助は一六・四%から二〇%の範囲内で行うことができると規定されているはずで、国庫補助率は二〇%まで引き上げるべきです。
 また、今回の法案では、協会けんぽの後期高齢者支援金に対する国庫負担を実質的には削減する内容になっており、こういった内容ではそれぞれの保険、保険者間での負担の押し付け合い、こういう構造を脱却することはできないのではないでしょうか。
 また、協会けんぽの保険料率を上限一〇%から一二%に引き上げる、こういう点も問題です。国庫負担は上限まで行わず、一方で保険料は上限を引き上げ、被保険者の負担を増やし続けよう、こういうものです。
 今回いただいた参考資料の冒頭に、国民がいつでも、どこでも、だれでも安心して適切な医療を受けることができる国民皆保険制度は、これまで半世紀の間、国民の健康保持と国民生活の安定に大きな役割を果たしてきたと述べられていますが、今これが大きく揺らいでいます。今回の医療保険制度の安定的運営とは、だれのための、何のための安定なのか、このことが問われています。
 医療の第一線の現場で仕事をしている者として、この間、私たちが経験をしている地域の患者さんの状況をお話ししたいと思います。
 お手元の参考人関連資料等の中に、私たち民医連が三月十一日に発表した二〇〇九年国民健康保険など死亡事例調査報告を入れさせていただきました。三月十二日の東京新聞一面のトップ記事など、マスコミでも大きく取り上げられた報告書です。お読みになっていただきたいというふうに思います。
 この調査は、経済的事由により医療機関への受診が遅れ、結果として死亡に至ったと考えられる事例調査であり、保険証がない、あるいは保険証があっても手持ちのお金がなくて医療機関への受診が遅れ死亡につながった調査報告です。
 昨年一年間に民医連の病院や診療所がかかわった人で、四十七名の死亡例が報告されています。うち二十七名は一切の保険証を持っていない無保険の人でした。国民皆保険の国で保険証を持たない国民が増加していることは大問題です。この亡くなられた四十七人中二十五人が五十代以下の働き盛りの方々、しかもこの方の多くは非正規雇用あるいは職を失った方です。
 死亡された東京都内の方のを挙げさせていただきます。家のリフォームなどの仕事をされていた自営業の男性です。二〇〇八年からは仕事がほとんどなくなり、借金がかさみ、国民健康保険の保険料も払えず無保険となり、医療機関も受診することができず、糖尿病などの持病も悪化をしました。いよいよ体調も悪くなり、民医連の診療所が行っている医療・介護なんでも相談会を訪れました。相談の結果、自己破産の手続も行い、生活保護を申請、下肢の静脈瘤の手術を行い、再入院を予定していましたが、入院待ちの間に腹部のヘルニアが破裂して、アパートの自室にて孤独死されてしまいました。
 今回の四十七名の死亡例は、私ども連合会に所属する医療機関で集計できた氷山の一角にすぎません。孤独死は東京都で年間三千人にも及ぶとされています。全国の医療機関で、このような経済的事由により医療機関への受診が遅れ、結果として死亡に至ったと考える、こういう事例がどれだけあるのか、是非、厚生労働省自ら調査もしていただき、このようなことが起きない医療制度を確立していただきたい、このように思います。
 二〇〇八年末から行われた年越し派遣村に、私ども民医連の医師を始め多くの職員がボランティアとしてかかわりました。二〇〇九年一月四日の一日だけで百三十人もの医療相談を受けましたが、全員が無保険でした。
 このうち、重症で即日に入院という方もおられました。一人は肺結核、ガフキー八号、こういう方です。この方は派遣社員として社員寮に住み込みで仕事をされていました。体調が悪くなってからも、仕事を休んだら解雇されるから医療機関を受診することができず、とうとう仕事に行けなくなって解雇、社員寮も追い出され、サウナ、ネットカフェなどで過ごし、年越し派遣村にたどり着いた、こういうものです。もう一人は強度の貧血、ヘモグロビンが三・三グラム、これで即刻輸血、こういう方でした。お二人ともまさしく危機一髪、もう少し遅れていたら命にかかわる事態でした。
 これら患者さんは、いずれももっと早期に発見し、早期に治療すれば、多くの医療費を掛けることもなく治療することができ、御本人も早く仕事に復帰できるわけであり、患者にとって国民健康保険始め各種の医療保険制度を安心して使えるように運営していくこと、これが必要と考えます。
 また、正規の保険証があるにもかかわらず、三割の窓口負担が困難なために受診することができない、必要な治療を受けることができない患者さんも急増しております。
 私自身の外来で最近経験している例をお話しします。六十三歳の男性です。C型の慢性肝炎で十年以上前から通院しておられます。昨年は年間で三回のみの受診でした。昨年の最後の受診は十一月。そのときのお話では、この四か月間全く仕事がなくなり、医療に回すお金がない、血液検査など必要だということはよく分かっているけれども、とにかく今日は薬だけにしてくれ、来年になったら何とかお金をためて検査に来るから、こういうことでございました。この方とは今年まだお会いすることができておりません。
 その他にも、糖尿病でインシュリン治療を行い、間質性肺炎を合併したために在宅酸素療法を行っていた患者さんで、医療費と電気代の負担が困難のために何か月後かに在宅酸素療法は中止してしまったという患者さん。肝炎でインターフェロン治療が必要だけれども、仕事を休むことができず、また医療費も払うこともできず、健診での血液検査しかできない、こういう患者さんもおられます。
 保険証がなく無保険、また、毎年上がり続け高額となった保険料を払い続けながらも実際には医療を受けることができない、こういった状況が日本中で広がっていると思います。
 二〇〇九年十二月の国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、過去一年間の医療機関の利用状況について、健康ではなかったが行かなかった、こういう回答をした世帯のうちの一七・〇%でした。経済的な理由が最も多く三八・四%。そのうち、健康保険に加入していない、こういう回答が一四・二%もありました。また、二〇一〇年二月の日本医療政策機構による調査においても、自身や家族の将来を考えたとき不安を感じるかとの問いに、深刻な病気にかかったときに医療費を払えないを挙げた回答者は七九%の高率を占めています。
 各保険への国庫補助を引き上げて、国民健康保険始め高過ぎる保険料を引き下げること、あわせて、患者の窓口負担金、これも引き下げていくことが必要だと思います。
 憲法二十五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と国民の権利、生存権を保障し、その第二項で国の責務を明確にしています。そして、国民健康保険法はその第一条で、「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与すること」としています。
 社会保障として医療を国民すべてに公的に保障する制度、これが国民皆保険制度です。今回審議される閣法が、すべての国民の命と健康を守る法律となりますように十分に審議を尽くされますこと、これをお願いいたしまして、私の意見を終了させていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 117414260X01720100427_009

発言者: 石川徹

speaker_id: 285

日付: 2010-04-27

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会