土堤内昭雄の発言 (少子高齢化・共生社会に関する調査会)
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○参考人(土堤内昭雄君) 皆さん、どうもこんにちは。ニッセイ基礎研究所の土堤内と申します。
私の方からは、少子高齢化とコミュニティーの役割、つながり求める社会というテーマで今から二十分ほどお話をさせていただきます。
まず最初に、スライドをちょっと変えていただけますでしょうか。(資料映写)
お手元にパワーポイントの資料もお配りしていると思いますけれども、まず最初に人口構造の変化というグラフがございます。これ、皆様方よく御案内の、戦後の年齢三区分の人口の推移を表したグラフなんですが、これを見ていただくと、オレンジの高齢者の人口が増え、そしてブルーの子供の人口が減るという、いわゆる少子化、高齢化の進展というのは見てとれると思います。あわせて、この真ん中の生産年齢人口、十五歳から六十四歳の人口ですが、これが九五年をピークに既に日本では減少に入っていると。
このグラフの中で私が申し上げたいのは、真ん中に折れ線グラフがあるんですが、これは従属人口指数といいまして、子供とお年寄りの人口の合計を生産年齢人口、働き手の人口で割った数値です。これが現在見ていただくと五〇になっている。つまり、五人の子供とお年寄りを十人の働き手が支えているという、こういう今社会扶養の状況になっているわけです。
この水準は、グラフを見ていただくとお分かりのとおり、一九六〇年代と同じぐらいの水準なんですね。ただ、何が違うかといいますと、当時は社会的扶養の対象の大半が子供であったと、それが現在は高齢者になっている。子供は成長すれば当然労働人口に、生産年齢人口に算入されていくわけですから、どんどんこの社会的扶養は軽くなっていくんですが、現在は少子高齢化ということで、全くその逆にこの社会的扶養がこれからますます大きくなっていくと。
現在の人口の推計によりますと、二〇三〇年にはこれが七〇・九、それから二〇五〇年には九三・〇まで上がっていくと。つまり、もう子供とお年寄りの数の合計の数と働き手の数がほとんどイコールになってくると。こういう今状況の中で我々は生きているということでございます。
そういう人口構造なんですが、今少子化が極めて速い速度で進展しているんですが、この少子化の要因なんですが、大きく二つ要因があって、一つは真ん中に書いてあります有配偶率の低下、つまり結婚する人が少なくなっているということでございます。もう一つは、有配偶出生率の低下ということで、一組の夫婦から生まれる子供の数が減っているということです。
結婚する数が減ったら子供の数が減ると、考えたら当たり前のような気がするんですが、実はフランスとかあるいは北欧のスウェーデン、デンマーク、こういった国は必ずしもそこは直結していないんですね。それはなぜかというと、婚外子の比率が五〇%を超えているということで、必ずしも結婚の数と出生の数がリンクしないと。ところが、日本の場合は婚外子の比率が二%ですから、そこが直接結び付いていると、こういう状況にございます。
もう一つ、一組の夫婦から生まれる子供の数が減っている理由ですが、これは結婚そのものが遅くなって晩婚化が進む、晩婚化の結果晩産化が進む、そして子供の数が減るということ。あるいは、社会的な背景として、教育費が高いとかあるいは仕事と子育ての両立が難しいと。そういったことから、その理想とする子供の数と実際の数にかなり乖離があって子供の数が減っていると。
こういうのがこれまで日本の少子化を進めてきた大きな二つの理由と、こういうふうに言われていたわけです。
しかしながら、ここに来て、実は新しい非常に重要な要素がございます。それは何かといいますと、結婚したいけれども結婚できない人が増えているということでございます。これは、その背景に若年層の非正規雇用の問題があります。非正規雇用のために経済基盤が安定しない、だから結婚したくても結婚できない、こういう人たちが今増えているというのが非常に大きな課題になっております。あるデータを見ますと、三十歳前半の男性の場合ですけれども、正規雇用の人に対して非正規雇用の人の婚姻率は約半分になっているという、そういう数字もございます。
それから、男性の生涯未婚率、これは五十歳時点での未婚率ですが、これが現在急速に高まっておりまして、二〇〇五年時点で一六%の男性の生涯未婚率ということになっております。
こういうような理由で、今日本では少子化がどんどん進んでいるわけですが、政府は様々な少子化対策を取っております。その結果として、じゃ、日本の人口は回復するんだろうかということです。
これは、答えを最初に申し上げれば、回復することはありません。それはなぜかといいますと、このグラフの右側の人口ピラミッドを見ていただければ明らかでございます。
上の方に出っ張っているのがいわゆる団塊世代、その下のこぶが団塊ジュニアです。つまり、団塊世代はたくさんの自分たちの子孫をつくりました。しかしながら、団塊ジュニアは自分たちの子孫をたくさんつくっておりません。結果的に、下にもう一つ、三つ目のこぶがないということでお分かりいただけると思います。したがって、この後何十年かたって次の人口の大きな波がやってくるということはない。
それからもう一つは、団塊ジュニアの下を見ていただくとお分かりになるんですが、いわゆる出生力の高い二十代から三十代前半にかけての女性の人口が急激に減っているということです。したがって、今、仕事と子育ての両立ができるような、そういう環境が十分整ったとしても、産む母数そのものが急激に減っているために、出生率は上がっても出生数そのものは増えないというのが日本の人口構造でございます。
ということで、日本の社会は社会的な扶養がこれからますます大きくなって、そして本格的な人口減少時代に突入していくと、そういう時代の中に我々はあるということでございます。
次ですが、もう一つ我々を取り巻く非常に今大きな変化がございます。それは、家族の形が大きく変わっているということです。日本は既に人口減少に入っているんですが、世帯の数は二〇一五年まで増加するというふうに推計されております。
その理由はなぜかといいますと、一つの世帯の規模がどんどん小さくなっているからでございます。ここに資料がございますように、二〇〇五年の平均の世帯人員は二・五六人であります。これが、今推計されている数字では、二〇三〇年には二・二七人まで減少をいたします。
じゃ、なぜこういうように世帯の規模がどんどん小さくなっているかというと、右側のグラフを見ていただくとお分かりになるとおり、世帯類型を見ると、いわゆるひとり暮らしの単独世帯の比率が急速に増えているからでございます。これを見ていただきますと、二〇三〇年にはひとり暮らしの単独世帯は三七・四%になるというふうに推計されています。したがって、世帯の四割近くがひとり暮らしになっていくと、こういうことでございます。
これを実感するようなことがいろいろございます。例えば、卑近な例で申し上げますと、NHKの教育テレビで「きょうの料理」という番組を皆さん御存じかと思うんですが、「きょうの料理」のテキストを見たところ、昨年の春まではレシピは四人前書いてありました。しかしながら、昨年の春からですね、今レシピは二人分しか書いてございません。したがって、料理を作るのももう二人が普通という、そういうような状況になっているということでございます。
こういうように一人世帯がどんどん増えてくる。上野千鶴子さんが「おひとりさまの老後」という本をお書きになりましたが、このお一人様社会というのは、実は老後だけではないんですね。
これは次のグラフを見ていただくと分かるんですが、この右側は二〇三〇年の世帯主年齢別の世帯類型別の世帯数なんですね。一番下の青いところ、これがひとり暮らし、単独世帯ですが、御覧になっていただくと分かるとおり、高齢者の部分だけではなくて、若者から中高年全体にかけてこの単独世帯が増えているということがお分かりになるかと思います。
したがって、お一人様社会というのはいわゆる高齢者だけではなくて、若者、中高年、お年寄りまで各世代、あらゆる世代がひとり社会になっていく。つまり、私たちはこれからひとり社会の中を生きていくということでございます。
ここでお話し申し上げたいのは、じゃ、そのひとり社会が抱えている課題というものは一体何なんだろうかということでございます。
それがレジュメの三のところに書いているんですけれども、一つは、やはりひとり社会になることによって、これまで担ってきた家族の機能、これがどんどん失われていくということです。その結果、それを代替するような社会的な制度が必要になってくるということになります。
例えばですが、介護であったり子育て。介護については、御案内のとおり、二〇〇〇年に公的介護保険制度が導入されて、その社会化が図られました。また、子育てについても、現在保育所の整備やファミリー・サポート・センター等々の子育てを社会化するためのいろいろな施設なり制度が今整備されつつあるところでございます。
こういうような家族機能に代わる社会制度をどんどんこれからつくっていかなくてはならないということが一つと、二番目に、ひとり社会になったときに、その社会的な孤立が拡大していくということでございます。
よくニュースなんかでも御覧になるかと思うんですが、大都市近郊の大規模な団地などで高齢者の方が孤独死をするという、そういった悲惨なニュースが時々報じられております。社会とのつながりを失ってだれにもみとられずに亡くなっていく、そういう方が今全国各地で出てきているということでございます。
それからさらに、よく御存じのとおりだと思うんですが、日本では年間三万人を超える人が自殺をしております。今、交通事故で亡くなる方が年間五千人を切っておりますから、その六倍以上の方が毎年自ら命を絶っている。その理由は、高齢者の方の健康問題というのが一番多いんですが、その次に多いのが四十代、五十代の男性の経済的な理由による自殺です。
これは私も一人のサラリーマンとして感じるんですが、やはり企業社会の中で、成果主義が導入されてから会社の中での孤立感というのは非常に深いものがございます。ある意味では、会社の中で一緒に仕事をしていても、もう同僚というような感覚がだんだん薄れてきていると。そういうサラリーマンの、ある意味では社会的な孤立というものも非常に今深まっていると思います。そういったことから、そういう四十代、五十代男性の自殺につながったり、あるいは、今非常に深刻になっているのはやはりメンタルヘルスの問題でございます。
そういう中高年だけではなくて、若者も、先ほど申し上げたような非正規雇用が増えることによってやはり職場でのつながりが薄れております。また、仕事と仕事の間にいわゆる失業状態が発生して、それを契機にしていわゆる引きこもりになったりということもございます。
それからまた、子育てですね。特に専業主婦の人が子育てをするときに孤立してしまうという、そういう状況もあります。そして、先ほど汐見さんからもお話あったように、そういう孤立の中でそのはけ口が子供に向かって子供の虐待につながるような、そういったようなケースも出てきております。
そういうことで、このひとり社会というのは深刻な社会的孤立を今拡大しているという状況にございます。
それから三つ目の課題は、今までの二つとはちょっと性格が違うんですが、「家計効率の低下」というふうに書きました。
ここのグラフにもあるんですけれども、一人世帯は例えば四人世帯に比べると、家計消費というのは一人当たりに対して二倍掛かるんですね。ちょっと飛躍するかもしれませんが、例えば二〇二〇年に温室効果ガス二五%削減ということで、産業部門はかなり減っていますが、家庭部門のCO2の排出量は非常に増えています。それは確かに我々のライフスタイルの問題もあるんですが、実は世帯が小規模化することによって極めて家庭のエネルギー効率が低下しているというような背景もございます。そういったことからひとり社会の課題というものが出てまいります。
そういうような、ほかにもいろいろあろうかと思うんですが、こういったひとり社会の課題を解決していくためには、ではどうしたらいいのかということでございます。
一つはまず、先ほど、家族機能が薄れてきている、それに対して代替する社会制度が必要だということを申し上げたんですが、実はこの社会制度だけですべてがカバーできるわけではございません。そのときにそれを補完する機能として、やはりコミュニティーの機能というものがこれから非常に重要になるというふうに考えています。
このコミュニティーをつくっていくということは、つまり人と人のつながりをつくっていくということでございます。この人のつながり、最近ではソーシャルキャピタルというような言葉がよく使われますけれども、人間関係資本ということで、そういう人のつながりをベースにしながら地域の問題を地域の人が自ら解決をしていく、そういう地域力を醸成していくことがこれからは求められるのではないかなというふうに考えております。
それから二つ目は、いろんなものをシェアする社会をつくっていくということが重要ではないかというふうに私は考えております。
例えば、そうやって世帯が小さくなってひとり社会になっていったときに、赤の他人でも例えば気の合う人と一緒に暮らすとか、例えばルームシェアとかハウスシェアといったような、そういうようなライフスタイルであったり、あるいは車みたいなものをカーシェアリングで共用して使ったりとか、そういうような暮らし方というものもこれからは必要になってくるのではないかなと思っています。
それから、そこにちょっと「相部屋」と書いたんですが、最近では、一人でグループツアーに参加をして、見知らぬ人と相部屋になってその旅の体験や会話を共有するという、そんなような一人旅も結構人気があるというふうに聞いております。そういうようなシェアの仕方。
あるいは、昨晩の「ニュースウオッチ9」でやっていましたけれども、共同墓、お墓ですね。少子化が進んでお墓を見てくれる人がいないということで、全然知らない人同士が一緒のお墓の中に入ろうといってコミュニティーをつくる。それはそのお墓の管理だけではなくて、むしろそういう意識を持つことによって、生前に、要は生きているうちにコミュニティーをつくって交流を図っていくという、そういったことでつながりをつくっていく。こういったことも一つのシェアする社会ではないだろうかというふうに考えております。
あと最後に、私も子供が中学校のときに保護者会の役員を二年間やりました。そういう意味で、学校を始めとした地域の活動を随分体験をいたしました。そのときに感じたことは、子供はよく夫婦のかすがいと言いますけれども、私が実感したのは、子供は地域のかすがいだということでございます。つまり、地域の中で子供がいるがゆえに大人もネットワークというものが張り巡らされているという実態を私はつぶさに見ました。
ただ、問題は、やはり少子化が進むことによって、そのかすがいになる子供はこれから減っていくということです。そうなったときに、じゃ、だれが地域のかすがいになるのかということでございます。
その地域のかすがいは、ある意味ではリタイアした高齢者の方が務めていただければいいんですが、実はそう簡単に地域のかすがいになれるものではないんです。といいますのは、やはり企業の中でのいろんな価値観と地域が持っている行動様式や価値観というのはやっぱり大きく違います。
したがって、私が大事だと思っているのは、リタイアしたから地域ではなくて、先ほどやっぱり汐見さんのお話にありましたように、現役時代に働いているときから常に地域生活、家庭生活、そして職業生活といったもののバランスを取っていくということが極めて重要ではないかというふうに考えております。
それは、ですから、ワーク・ライフ・バランスという言い方もありますけれども、私はいつも人生は好い加減に生きようと。好い加減というのはちゃらんぽらんという意味ではなくて、好い加減に生きるという意味で、グッド・ライフ・バランスというものを実現することが人々が地域に居場所を求めていく非常に有効な方法ではないかなと、そんなふうに考えております。
一応時間が参りましたので、これで私の発表を終わります。ありがとうございました。