牧里毎治の発言 (少子高齢化・共生社会に関する調査会)

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○参考人(牧里毎治君) それでは、まず自己紹介を少し兼ねて、ここになぜ私が座っているのかということをお話しさせていただきます。
 お手元の資料に今日のレジュメを用意させていただきましたが、最後の二枚目に日本地域福祉学会のニュースレターを付けさせていただいています。
 実は、二〇〇八年度より会長を務めることになりまして、こういう地域での取組だとか自治体の支援だとか、そういうことをテーマにした学会でございまして、大体二千人足らずの会員なんですけれども、一応全国を網羅をしておりまして、学者だけではなくて、社会福祉協議会だとかNPOだとか、それから自治体の職員の方だとかが会員になっていただいております。
 そういうこともございまして、各地で取り組まれている優秀な地域福祉実践を実践賞としてこれまでに十数か所ですか、表彰させていただきました。現場に近い学会ということで頑張っております。そういう立場からお話をさせていただきたいと思います。
 お手元に一応レジュメを用意させていただきましたが、時間も短いので無駄に使うことができませんので、かいつまんで説明をまずさせていただいて、こういう地域活動の取組には中間支援と申しましょうか、インターミディアリーと申しておりますけれども、そういう中間支援の組織があるかないかによって活性化をしたり活動が伸び悩んだりするということがございまして、その必要性をお話をさせていただくということになろうかと思います。
 それでは、レジュメに従いまして、原稿を作ってまいりましたので、それを読み上げるような形でまずお話をさせていただきたいと思います。
 まず、社会貢献の仮説ということについてです。
 ボランティア活動や地域自治会活動など、準公益的な活動を始めたり生活の一部として継続的に活動することはなぜなんでしょうか。その動機やきっかけの根底にあるもの、活動の源泉は何なのかを考える必要があります。人間はなぜ人に役立つことをしたいのか、なぜ助けようとするのか、直接的な報酬を求めないで非営利活動をする人がなぜ存在するのかなど、根本的な基本を理解しておくこと、社会貢献をしたい欲求を認める必要があるでしょう。
 まず、人間は、意識的にせよ無意識的にせよ、人に対して役に立ちたい、何か貢献したい、困った人がいたら手を差し伸べたい、人の困窮を黙って見過ごすことができない存在なのだということを仮定として設定する必要があります。本源的に人間は他者に役立ちたいというニーズ、共に生活環境を良くしたいという欲求を生まれながらに持っているのだという仮説をまず立てます。それが、人間が人間である本質的、太古的特質なのだと考えることにしておきます。
 しかしながら、この基本的な社会貢献をしたいというニーズは、均等にいつでもひとしくだれにでも発現するわけではないのです。人間の置かれた環境や時代や文化的背景によっても社会貢献ニーズは目に見える形で気付かれないまま消え去っていくこともあります。不景気や不安や恐怖が支配する社会や時代では見えにくくなりがちです。とすれば、社会貢献ニーズが世に立ち現れてくる、曇ったガラスを見やすくする必要があるのです。
 だれもが社会に参加して他者に貢献したい、ひいては自分たちの暮らしているコミュニティーや市民社会に貢献したいという欲求を顕在化しやすくするにはどうしたらいいのか。より良い条件づくりや環境改善を進めれば、社会貢献ニーズが開発されて、多くの人々が社会貢献しやすくなるのだろうと仮定するわけです。
 では、現状をどう認識するかというところに移ります。
 しかしながら、現実は全く異なっているのではないか。なぜボランティア活動は伸び悩み、町内会・自治会活動は空洞化してきているのか。なぜなのか。自治会役員のなり手は少ないし、PTA役員も後継者探しに行き詰まっている。さらに、自治会や町内会に入会することさえ忌避する人たちもいますし、ボランティア活動に至っては、関心はあるが参加する余裕はないと答える人が大半です。自分の暮らしや目先の未来を考えるだけで精いっぱいな状況に多くの人々が追い込まれているとは言えないでしょうか。
 また、つながりが難しい時代になっています。地域社会も職場もコミュニケーションすることが難しくなっていますし、意思疎通をすることが苦手な人が増えています。社会や時代が変わってきたといえばそれまでですが、自立したり契約関係を結んで行動する生活スタイルが一般的になってきました。地域社会も世帯単位で活動することが少なくなりましたし、職場も世代ピラミッドによる縦社会ではなくなってきました。個人単位の、横にフラットな脆弱で壊れやすい人間関係になってきています。
 産業構造や雇用関係が年功序列型の終身雇用型から契約請負型の働き方に変わってきていますし、生活単位も家族・世帯単位から個人・孤立型に変わってきていると言っていいでしょう。仕事の仕方から暮らし方、さらには価値観や人生観も大きく変わり、多様化してきているのです。当然、地域社会の様子も、少子高齢化の影響を受け、限界集落にも見られますように、持続的に発展することが困難になってきています。
 それでは、提案ということになりますが、可能性と展望について話をさせていただきます。
 では、コミュニティーが再生される可能性はあるんでしょうか。地域における公共的活動が世代間で循環する持続的展望は望めるんでしょうかという問いに答えなければなりません。
 従来どおりの家父長的な地域社会の再生のみを願望するのでなければ、可能性と展望はあります。これまでの古いタイプの男性優位の世帯単位による地域社会から、個人個人の興味、関心が尊重され、それぞれの個性を尊重した緩やかな連帯と協働の地域社会を構想するならば、男も女も子供も高齢者も参加、参画する福祉社会の展望は開けます。人それぞれの社会参加や社会貢献のニーズは、程度に合わせて制度的支援や専門的なサポートがあればだれもが変わっていきます。
 市民の自発的な行動だけに期待するのではなく、社会参加したい、社会貢献したいというニーズをくみ上げて具体的な社会活動に落とし込んでいく専門的支援があれば、人々は成長度合いに沿って変容していきます。個人的に体験参加する初心者の段階から、仲間を集って活動する活動リーダーへ、さらにはボランティア支援をしたり助け合いの活動を組織的に支援する専門職のレベルまで社会参加や社会貢献の幅は広いと言えます。
 つまり、住民の活動のレベルに合わせて専門的に支援する有給職員がいれば、社会参加の取組や社会貢献の活動は促進されるだろうということです。
 コミュニティーを従来の地縁型社会としてステレオタイプに固定的に考えないということも必要でしょう。職場社会も機能的コミュニティーと考え直す必要もあります。地場産業が地域社会を基盤に成立していた時代ならともかく、情報社会、サービス産業の時代にある現代では、勤労者は会社や職能集団など職場社会で一日の大半を過ごしています。旧来の地域社会にのみ焦点を当てて組織化しても空回りするだけです。今求められているコミュニティーづくりは、職場をボランティア空間にしたり、助け合い、支え合いの公共活動の場をつくることではないでしょうか。
 あるいは、地域社会そのものを職場にすることも必要です。自治会や町内会が担っている地理的コミュニティーであれ、NPOやNGOによるテーマ型コミュニティーであれ、担い手が増え、活動を継続させるには拠点と資金が必要なのは言うまでもありません。
 ただし、これも、旧来のように自治体の助成や補助のみに依存するだけでは行き詰まってしまうでしょう。ソーシャルビジネスやコミュニティービジネスなどの活躍を含めた活動資金の源泉を多元化して考える必要も出てきています。
 活動の資金の源泉は、税金のほかにもたくさんあるんです。寄附、料金も想定できますし、拠点も自治体による公営施設に限定する必要はないと思います。市民や住民が自発的、自主的に使える空き教室、空き店舗、空き倉庫、民家などもコミュニティーにとっては有効で貴重な地域資産なんだということを認識して活用することも求められます。
 要するに、人材を含めて地域社会の資源を地域の資産、あるいは将来に手渡す遺産に変えていく、市民、住民の参加によるローカルガバナンスが構築されなければなりません。
 ちょっと、残った時間で少し。
 添付しております、一つは宝塚NPOセンターという、これは中間支援団体、インターミディアリー組織でやっていることについて書いたものです。もう一つは、冒頭に申しました「ソーシャルビジネスとは」という資料です。これについて一言二言説明させていただいて、私の発言を終わりにさせていただきたいと思います。
 一つは、宝塚NPOセンターは、宝塚市内のNPOだけではなくて周辺のNPOセンターへの支援、NPOそのものの支援。つまり、ボランティアグループだったけれどもちゃんと法人格を取って何か事業をしたいと、法人手続の仕方、当然登記の仕方ということになりますが、登記した後もどんなふうに運営するのか。どこもNPOは収入に困っていますし、あるいは会計もどうしていいか分からないという方々も多いんですね。そういう意味では、ハンズオンというんでしょうか、手取り足取りずっと設立した以後も持続的にかかわっていくという必要があります。そういうことを宝塚NPOセンターではやっております。
 当然、NPOセンターも行政やいろんな団体から助成金をもらって自転車操業なんでありますけれども、そういうことをやりながらほかのNPOを支援をしておりますということが一つですね。
 それからもう一つは、ここでのソーシャルビジネスという考え方ですけれども、コミュニティービジネスとかソーシャルビジネスとかいろんな言い方があるんですけれども、要するにビジネス手法を使って公共的なことをやっていこうと。
 つまり、今まで福祉とか保育とか介護とか、こういうものはほとんど行政の仕事だったわけですね。そういう時代が少しちょっと終わろうとしている。それに代わるものとして、こういうビジネス手法で公益的な、公共的なことをやっていこうと、こういう社会をつくっていかないと日本社会はもたないんじゃないかという、こういう考え方ですね。
 また、学者によって定義が様々ですのでこれだということはないんですけれども、一つは、そういうビジネス組織を使って雇用機会をつくったり、あるいは最終的には消費者である人たちに商品とかサービスとか、そういうより安くいいものを提供する。当然、そういうことを通じてお金を出してくれる出資者、まあ株主と言ってもいいんでしょうか、株主さんもいい気持ちでお金が出せるような社会にする。最後は、それを通じて地域社会づくりをやっていこうと、そういう団体がたくさん出てくれば変わるんではないかと。
 こういうソーシャルビジネス、コミュニティービジネスをたくさん生み出すことと、その出てきたいろんな団体の調整をするということがこれから重要になってまいります。
 なかなか行政では立ち入ることができない民間団体ですから、その公と民間をつなぐような中間支援組織というものがこれからますます必要になってくるんだということを訴えておきたいと思います。
 これで私の発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 117414533X00220100217_003

発言者: 牧里毎治

speaker_id: 4974

日付: 2010-02-17

院: 参議院

会議名: 少子高齢化・共生社会に関する調査会