大西隆の発言 (少子高齢化・共生社会に関する調査会)
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○参考人(大西隆君) ありがとうございます。
機会をいただきましたので、今日は、少子高齢社会における地域・まちづくりの在り方というタイトルでお話をさせていただきます。
この調査会のカバーしているテーマがかなり幅広いので、私の話がどこにうまくはまるのかとちょっと自信がないところもありますが、私の専門と本調査会の趣旨との重なる部分ということで、特に地域・まちづくりの在り方というところに焦点を当てて話をさせていただきます。
お手元に、今から映しますパワーポイントの印刷物と、それからもう一つ、昨年ですが、日経新聞に書いたもので、今日これからお話しする大きく三つテーマがありますけれども、その真ん中のことに関連した「経済教室」の記事をお配りしていますので、参考にしていただけたらというふうに思います。(資料映写)
私は東大で教師をしていますけれども、一つ、この少子高齢化、特に高齢化という調査会の趣旨と関連すると、自分の仕事の中で、東大では唯一ではないかと思いますが、夜学を始めています。夜学と言うとちょっと言い過ぎなんですが、すべての講義が夜に開講されて、土曜日に演習があって、仕事と両立しながら修士課程を卒業できるという制度を二年前から発足させました。二〇〇七年の十月、二年半前です。二十名弱の学生が学んでいまして、大変人気が今のところある修士課程になっています。
テーマはまちづくりあるいは都市計画というところでありますが、社会に出てから第一線で活躍している人がもう一度勉強したいという意欲が強いということで、大学の在り方もこうした高齢社会の中で変わっていく必要があるというのをひしひしと感じているということでございます。
それを担当している、それ以外の昼の普通の課程についても務めているわけですが、加えてこういうことをやっているということをちょっと紹介させていただきます。
最初の二、三枚が前置きで、先生方よく御存じのところでありますけれども、日本はかなり人口あるいは地域に住む人という問題について深刻な状況にあるということであります。
このグラフは、西暦二〇〇年から二一〇〇年程度まで日本の人口をトレースした将来についての予測でありますが、御覧いただきますように、ピークを既に過ぎて急速に減少していると。この点線で書いてあるところであります。この一番行き着く先が、四七七一と書いてありますが、四千七百万ぐらいに二一〇〇年にはなると。この二一〇〇年、四千七百万というのを確認できる方はこの中にはもしかしたらいないかもしれません。ただ、これも楽観的な予測だと。少し厳しい予測では三千六百万になるという予測が、これは国の機関の予測として出ています。
ここでしかしとどまるわけではなくて、これは二一〇〇年の時点でありまして、更にそれが進んでいくと、つまり結局はゼロになるまでこの予測は続いて終わるということであります。出生率、合計特殊出生率が非常に低いので将来は日本の人口はなくなるということで、どこかでこれを逆転させて人口の安定化を少なくとも維持する出生率に戻すということは極めて重要なテーマだというふうに私は思っています。
それと、今のは総人口でありますが、これは日本国内における人口の分布を表したグラフであります。
一番上が総人口の変化で、今申し上げたとおりでありますが、下の二つのグラフは、上が地方圏の人口の動向、下が大都市圏、少し大都市圏を少なめに数えています。一都三県が東京圏で、二県が名古屋圏で、二府一県が大阪圏というのを大都市圏というふうにここでは定義をしていますが、まだ地方圏の方が少し人口が多いんですが、地方圏の減り方が激しいので、将来、ここで取っている大都市圏の人口が地方圏を上回るということになっています。つまり、人口の大都市圏集中という動き、とりわけ東京圏への集中という動きが続いているということであります。
もう一つの見方は、一つの都市における人の住み方というのが拡散的になっているということであります。
このグラフは、DIDという人口集中地区、いわゆる市街地の面積と人口を表したものであります。
一番上のグラフが一九六〇年を一〇〇とした場合の市街地の面積の動向で、真ん中がそこの人口の動向であります。一九六〇年から人口も面積も市街地が拡大してきたわけでありますけれども、最近では、その拡大が鈍って人口は地方圏では横ばいになっている。しかし、ややまだ市街地そのものの面積は広がっているということで、結果としては密度が特に地方圏の都市では低下しているということであります。
つまり、都市に人が集まるという現象から、都市の人が拡散的に住むという、そういう様相を呈してきているということであります。簡単な人口の指標で見ても、人口が減少するという問題と大都市集中という問題と都市で人が拡散的に住むという三つの、しばらく前ならば余り心配しなかった問題が起こっているということであります。
その問題点はいろいろあるわけでありますが、端的に、次のパワーポイントがちょっと重複していますのでもう一枚次のやつを御覧いただきたいんですが、これは日本の、ちょっとラフでありますが、都道府県の中でどこが一番いわゆる持続可能な地域なのかということを指標で整理してみたものであります。
持続可能というのは、普通は経済発展があり、社会的な公平があり、環境保全が行われているという三つの指標が取られますけれども、ここでは更に加えて、人口が、出生率が比較的高いということも持続可能性、文字どおり持続可能な地域という意味で必要だというふうに考えました。それから、都市が余り拡散しないという指標も入れて五つの指標で地域を整理しています。
全部説明する時間はないわけですが、東京を御覧いただきますと、東京都、今人口が集まっていると申し上げた東京都では、経済的豊かさは全国一であります。それから、コンパクトで密度が高いという点でも全国一でありますけれども、例えば出生率は最も低いということであります。それから、社会的公平という観点からも、その東京都の中における所得格差が大きいということで、東京都に集まってくることが持続可能な場所に集まっていることにはならないということであります。
次のページに持続可能性の総合順位というのがあって、東京都は二十四番、ちょうど私の作った指標では真ん中辺りに位置していますけれども、日本の中でもっと持続可能な地域があるので、そういう地域にもっと人が住んでいろんな活動が行われるような新しい流れをつくっていく必要があるのではないかと。たまたまこの指標では、石川、長野、滋賀、静岡といった大都市からそう遠くない、しかし大都市ではないという場所が優位な場所ということになっているということであります。
ということで、こういう問題意識から、私は、都市計画あるいは地域計画というのが専門でありますけれども、東京にだけ人が集まるのではなくて、いかに全国土を有効に使っていくのかということが極めて大きなテーマではないかというのをかねがね考えていろいろな研究をしてきたということでございます。
そこで、以上を前提条件として、今日は、こうした人口が減少する、あるいは都市が拡散する、私はそれを逆都市化時代というふうに呼んでいるわけですが、その逆都市化時代における地域づくりあるいは都市づくりということについて、特に三つのテーマについてお話をさせていただきたいと思います。
議論の前提としては、今申し上げましたように、地域の在り方を考えるときに今我々が抱えている一番大きな問題は、地域からしまいには人がだれもいなくなってしまうという深刻な少子化問題で、これに対して対処するということは非常に重要だということになります。
それから、その点はしかし今日の本題とはせずに、一極集中を避けながらいかに各地域を活性化するのかということに焦点を当てて、取り上げるテーマとしては、地域の主体性を発揮していくということが大事ではないかという点と、それから、何といっても地域で産業を興して雇用を増やしていくということが根本的に大事だと。
三つ目に、そのためには人材の交流あるいは人材の派遣ということで、地域で手薄になる、特に地方で手薄になっている人材を補完するというようなことが政策的に必要ではないかという三つの点をこれからお話しさせていただきたいと思います。
第一番目のテーマは、地域の主権あるいは分権ということで、主体的な地域づくりをするということであります。
この点について、私は二つの重要なポイントがあるというふうに考えています。
一つは、御案内のように、地方分権、あるいは最近では地域主権という言葉も使われているようでありますが、そうした動きは進んでいる、地域に権限が移譲されあるいは財源も移譲されようとしているわけでありますが、今度は各地域、市町村がその移譲された権限あるいは財源を使って自主的な行政を行うということが極めて大事だと。その一番大きな象徴は、各地域が独自な条例を作ってまちづくり、地域づくりを進めることではないかということであります。
このスライドは、石川県の金沢市でまちづくり関係の条例だけに絞って挙げたものです。非常に小さな字になっているのは、たくさんの条例、二十を超える条例を金沢市では作っているからであります。この中には、いわゆる委任条例、法律で委任された条例と、自主的に地方自治法に基づいて作る条例が両方含まれていますが、それぞれのテーマに応じて自主的な条例を含んだ条例を作ってきたということであります。
特に、条例の数という点では金沢は突出しているわけでありまして、ほかの自治体も分権分権という言葉の次に自らルールを作って行政を進めていくという主体的な行動に転じていくことが必要だということでありますが、なぜ各地域が条例を作って行政を進めていくことが必要かというと、市町村というのは住民に身近な自治体だということに尽きるわけであります。
したがって、住民に身近ということは、いわゆる参加によって、住民の参加によって行政あるいは政治が行われていく必要があると。この御紹介した金沢市の条例の中でも、最近のものでは市民参加の制度というのが様々に取り入れられているということであります。
一般的には、私は市民参加というのは四つの発展のレベルがあるというふうに考えています。足による参加、手による参加、知恵の参加、知恵の実践による参加というふうに名付けていますが、足による参加というのは、行政や税制の内容によって居住する地域を住民が選ぶということであります。手による参加は、選挙によって首長、議員を選ぶ、あるいは住民投票で個別テーマに意思表示をするということが発展していく必要があると。
しかし、さらに最近では、知恵を持っている住民が知恵によって参加する、例えば審議会の公募委員になったりパブリックコメントに参加するということで、自分たちのアイデアを市政に役立てるということを行うようになってきています。しかし、更に進めば、これももう一部では出ていますが、知恵の実践による参加ということで、公益的な事業を自ら実践することによって社会的な貢献を果たすということも行われるようになってきたということであります。
一番最後の知恵の実践ということがこれから重要になるというふうに思っているわけですが、御承知のように、阪神・淡路の大震災をきっかけにしてボランティア活動が非常に普及してきたと。最近では、新たな公、これは国土形成計画の言葉ですが、あるいは新たな結という概念、あるいは新たな公共というような言葉が出てきて、この市民参加ということを更に進めようという動きがあるというわけです。
同時に、こうした市民の活動をサポートする仕組みも大事だということになっておりまして、ここで御紹介したいのは、その中の最も進んでいる仕組みの一つと思いますが、千葉県市川市で行われている市民活動団体支援制度というものであります。これは概念的には、納税者が納税額の一部を寄附をすることによって市内で活動するNPO、公益的な活動を支援しようということができる制度であります。現在参加している人たちは一万人弱ということでありますが、二千万円ぐらいのお金がこれによって支援に回されているということであります。
二つ目は、地域の発展にはやはり地域で産業が興り、雇用が増えるということが大事だということであります。
この点で、私は基幹産業論という考え方が非常に重要だというふうに思っています。基幹産業論というのは、地域の産業を基幹産業と地域産業に分けて、いわゆる輸出、国でいえば輸出産業に当たる基幹産業の振興によって地域の発展を考えていこうという考え方であります。
その場合に、一つの基幹産業というのはなかなか永続しないということで、これはジェーン・ジェイコブスというアメリカの都市社会学者がデトロイトを例にとって基幹産業の連鎖の模様を描いたものであります。つまり、デトロイトが今では日本の自動車産業にやられていますけれども、自動車産業が非常に盛んになるまでにいろんな産業が現れて、それが継続することによってデトロイトが発展してきたということを述べています。基幹産業というのがうまく継続するということが大事だというのがポイントになります。
しかし同時に、基幹産業でせっかくお金を獲得しても、地域で消費する機会がないと、地域に気の利いたお店がないということだと地域外に富が流出することになります。そこで、地域の中で、需要は地域内に限られるかもしれないけれども、地域産業が興るということが大事だということも重要な点で、私は、そういう意味で、基幹産業と地域産業という両方に目配りをしながら地域の雇用を増やしていくという戦略が重要ではないかというふうに思っています。
この点では、立法的には、当初日本ではいわゆる地方に工場を分散させるという政策が取られてきたわけでありますが、国際競争が激しくなるにつれてそういう政策が廃止されまして、法律が廃止されたわけです。しかし、やはり地域の疲弊が、特に地方の疲弊が激しいということで、最近ではまた産業政策、地域産業政策というのが復活してきているという状況にございます。産業というのは極めて地域の将来にとっては重要だということで、こうした政策に注力していくことが必要ではないかと。
最後に、人材派遣による地域づくりということについてお話しさせていただきます。
なかなか人口が減ってしまって、いい人材ほど地域外に出てしまう、大都市に行ってしまうということで、地方の疲弊が、そういう意味では人材が枯渇するということを通じて厳しくなっているということで、いろいろな人材派遣制度というのが政策的に取り上げられています。
ここで幾つか例を挙げましたけれども、まちづくりに関する地域再生マネジャー制度、あるいは地域おこしに関する地域振興アドバイザー制度、観光に関する観光地域プロデューサー制度、こうした経験から、短期的に二、三日指導に行く、それで帰ってくるというやり方ではなくて、場合によっては二、三年滞在してじっくりと指導すると。
しかしもう一方で、余り長くなり過ぎない。五年、十年ということではなくて二、三年という、そういう期間で集中的に、しかし余り短い期間ではない、そういう期間で地域に人材を派遣して、その人材の持っているノウハウを伝達するということが効果があるんではないかというふうに指摘されているところであります。
こうした、これまでの経験をうまく整理して、人材派遣ということによる地域づくりということも一つの柱にする必要があるんではないかと。
最後にまとめで、これからの政策に求められることを、以上述べたことを踏まえて申し上げたいと思います。
一つは、市民の活動を更に促すために市民税等からの寄附に対して税額控除制度を設けるという、所得控除から一歩進んだ税額控除制度というのが、今も議論されているようですが、非常に有効ではないかというふうに考えます。
二つ目は、基幹産業と地域産業を組み合わせた地域の雇用増大策、特に地方都市を対象としたこの政策を重視していくべきではないか。
三つ目は、それでも当面、人材が不足しているという問題があると思いますので、地域に刺激とアイデアをもたらすような人材の二、三年という長期派遣を行って人材交流と地域活性化を図るべきではないかと。
この三つの政策を是非重視していくべきだというふうに考えます。最初に述べたように、しかし、地域の将来にとっては少子化対策というのが大前提になるということを申し添えて、話を終わりにさせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。