福島康志の発言 (文教科学委員会)
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○参考人(福島康志君) ただいま御紹介いただきました日本私立中学高等学校連合会、福島でございます。本日、このような機会をちょうだいいたしましたことを改めて感謝申し上げます。
私は、主として私立高校の立場から幾つかのお話を申し上げたいと存じます。
まず初めに、私立高校の全国的な現状について簡単に御紹介を申し上げたいと思います。
二十一年度の全国の私立高校の生徒数でございますけれども、中等教育学校の後期課程を含めて約百万人、これは全日制、定時制でございますけれども、約百万人でございます。このほかに通信制高校が約九万人の生徒がおります。高校生全体の中で占める私立高校の割合でございますが、これは約三〇%、全国でも三〇%という割合でございます。
それでは、今回の法案、政策についての考え方の一端を述べさせていただきます。
この政策、法案の意義でございますけれども、これにつきましては、現在のような少子化あるいは長期にわたる経済不況の中で、子供の教育に係る費用を社会全体で応分の負担をしていこうとする考え方、これは誠に当を得たものであるというふうに考えております。
子供を育てる責任というのはまずは家庭にあると思っておりますけれども、子供たちが学校教育という社会的な仕組みの中にどう参加し、そこでどう学び、さらにはどう成長するかについては、現実問題として考えますと、学校が子供たちにとって社会人として巣立つために必要なプロセスとなっている以上、家庭とともに社会全体が可能な限りバックアップするのはむしろ当然だというふうに思います。その意味で、今回ようやく政治の場で子供たちが学ぶことへの積極的な支援策がこのように審議をされているということは大きな前進であり、これは、いわゆるプレストン効果というのがございますけれども、これを回避するための第一歩となることを私どもとしては期待しているところでございます。
ということではございますけれども、一方、私ども私立高校の立場から意見を申し上げますが、私立高校の立場から申し上げれば、今回の法案、政策の中で私立高校の取扱いについては、必ずしも十分なものとは言えないというふうに考えております。政策の基本的なフレームは、我が国の高校課程の教育を受けるすべての者に対して年額一律十一万八千八百円を支援するということで、平等な取扱いというふうになっておりますけれども、現実問題として考えれば、私立高校生についてはなお有償な部分が残るということもまた事実でございます。
今や準義務教育化したという状況にあります高等学校教育を受けるについて、同じ国民である子供たちが公立に通おうと私立に通おうと、同水準の自己負担で済む形が理想的だと思いますけれども、一方で、現実の財政事情などを踏まえれば、これを一挙に進めることは難しいものと十分に理解をできるところでございます。私たち私立高校の立場からは、やはり今回の公立高校無償化、私立高校就学支援金という形はあくまでも第一ステップと理解しておりますし、私立高校の今後の取扱いについて工程表のようなものをお示しいただきたいというふうに考えております。
さらに、次のことでございますけれども、今回の政策の実施によって学校現場にどのような影響が出るのかということにつきましては各方面からお尋ねをいただいておりますけれども、この点について二つの問題点があることを御披露申し上げたいと思います。
まずその一つ目は、今回の法案、政策によって、特に私立高校の生徒の学費負担感や入学状況にどのような変化があるのかということでございますけれども、これにつきましては、現在私立高校に通っている生徒や家庭にとっては、入学時には予期していなかった負担軽減が実現するということになりますので、軽減の実感が大きいのは確かだろうと思います。
一方で、今春、この春、高校に入学しようとする子供たちや家庭にとりましては、学校選びを始めたころ、昨年の秋ごろからこの政策は大きく報道されておりますし、その動向を認識しつつ学校選択を行ったということも、現実問題としてはこれもまた事実だろうと思います。ましてや、現在のような経済不況の下にありましては、学校の学費負担の多寡、多い少ないが学校選択の重要な要素になっていることも確かでしょうし、公私間での学校選択という場面では、この負担格差感は残念ながらぬぐい切れなかったのではないかというふうに考えております。
現在、各学校では四月からの新学年の学校運営や学校組織をまとめつつありますけれども、特に私立高校にとりましては定員を確保することが学校運営の大前提というふうになります。各学校ごとに、今春の入試の志願者が増えたとかあるいはある学校では減ったとかいう話も様々ありますけれども、これらはすべて途中経過の話でございまして、学校にとりましては、四月時点での生徒数が例年に比べてどのように変化したかということを見なければ、影響の度合いは本当のところは分からないということでございます。
ただし、一つのメルクマールというものを御紹介申し上げますと、この春、高校に入学する子供たちは今春の中卒者が大部分でございますので、この中卒者の動向を見ればどうかということが一つ分かると思います。この今年の春の中卒者でございますけれども、昨年に比べまして四万人近く、三万九千人ぐらい増えていると、こういう統計がございますので、この増加した約四万人近い中卒者が、この増加分が公立へより多く行くのか、あるいは私立が一定割合を確保できるのかということを見れば、今回の影響の一端はかいま見ることができるのではないかというふうに考えております。
さらに、もう一つの問題点を御披露申し上げますと、私立高校などが対象となっております就学支援金の事務手続が果たしてスムーズに進められるかという問題でございます。
確かに、今現在このように法案が審議中ということで、より具体的な対策あるいは方法につきましてはこれからということになると思いますけれども、既にプラン、試案として示されているものを拝見しますと、制度上の今回の責任の主体は各都道府県にあるというふうにされておりますけれども、実際上の事務処理の大半は学校現場が担わなくてはならないというふうに思われます。一定の期間にこの事務処理を求められるとすれば、より簡素化された方法と学校現場にある程度の事務処理の裁量権を認める形としていただきたいということをあえて申し上げる次第でございます。
これに関連する事項として更に付け加えさせていただくならば、就学支援金を受領する高校生、私立高校、公立高校以外の高校生ということになりますが、就学支援金を受領する高校生は全員自ら署名した申請書を提出することになっております。現在示されております様式の案でございますけれども、この案によりますと、その別紙には今回の政策の趣旨が記載されておりまして、御披露を若干しますと、本制度が国の費用で行われ、社会全体の負担により生徒の学びを支えることを通じて、将来、我が国社会の担い手として活躍されることが期待されていますと書かれております。
これを一人一人の私立高校生には文書をもって徹底をされるのだとすれば、より数の多い公立高校の生徒一人一人に対してもこの政策の趣旨の徹底を図る手だてを考えていただければというふうに思うわけでございます。
さらに、もう一つ申し上げれば、この政策をきっかけにして、比較的理解の深い県、あるいは財政的に余裕のある県と言ってもいいかもしれませんが、都道府県では、県単の上乗せ支援策を実施すると聞いております。これはこれとして誠に結構なことではございますけれども、その結果として、各都道府県間で私立高校生が受ける就学支援の内容に大きな格差が生ずるということも恐れるところでございます。これを是正して我が国の国内で学ぶ高校生がどの地域でも同水準の就学支援が受けられるように対策を講ずるのは、やはりこの政策を主導する国の責任であるというふうに考えております。
最後に、この政策に関連する重要な問題としてもう一つ指摘をさせていただくならば、この政策によって高校生が学校で学ぶ際の経済的負担は確かに軽減されると思います。だからといって、必ずしもより良い教育が受けられるようになるとは限らないということでございます。
高校の立場で申し上げれば、より良い教育あるいは新しい教育を提供し教育環境を整備するためには、これまで以上の費用を要するのでありまして、そのために特に私立高校では学費値上げ圧力が高まるということも考えられますけれども、現実を踏まえれば、この政策によって軽減された授業料を直ちに値上げするということは政策の趣旨を生かすことにもなりませんし、対公立高校との関係で更なる負担格差を生ずるということになりますので、甚だ難しいということのように、私立高校にとっては大きなジレンマに陥るということも予想されるところでございます。
このような事態を打開して、私立高校がより良い教育を提供することによって我が国の公教育全体の健全性と多様性を確保するためにも、やはり私どもの立場で申し上げれば、私学助成の充実がこれまで以上に重要となるということを申し上げたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。