長島昭久の発言 (本会議)

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○長島昭久君 民主党の長島昭久です。
 ただいまの菅総理のAPEC報告に対しまして、民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)
 さて、総理、韓国・ソウルに飛んでG20、そして横浜に戻ってAPECでの議長役と、大変なハードスケジュールであったと推察いたします。まずは、お疲れさまでした。
 また、諸外国から多くの賓客を迎えるに当たりまして、大変な御尽力をいただきました地元の皆様並びに警備に当たった警察を初めとする関係各位に敬意を表し、感謝を申し上げる次第でございます。
 さて、ことしは、アジア太平洋地域における先進国にとりまして、一九九四年にインドネシアのボゴールで開催されたAPEC首脳会議が設定をしたボゴール目標達成の年に当たります。先進エコノミーは二〇一〇年までに自由で開かれた貿易と投資を達成する、これがボゴール目標であります。
 APECは、現在、参加国のGDP合計が世界全体の五割を超え、貿易量及び人口は世界全体の約四割を占め、EUやNAFTAを上回るまさに世界の成長センターとなっており、このような地域において経済統合が推進され、域内での貿易・投資の自由化が進むことは、域内外への巨大な経済効果が期待できるところであります。まさにその牽引役が、日米を初め、韓国、オーストラリア、台湾、シンガポールなど、十三の先進エコノミーであります。
 ことしは、日本がAPEC首脳会議の議長国であり、来年は、アメリカ合衆国が議長を務めることになっております。ボゴール目標達成期限を挟んで、アジア太平洋地域最大の先進民主主義国である日米両国が続けて指導的立場に立つことになったのは、単なる偶然とは思えません。日本は、大事なアンカーとして、ボゴール目標達成の努力に区切りをつけ、新しいポスト・ボゴールのビジョンを提示する重責を担いました。
 その意味で、アジア太平洋地域における初の成長戦略を策定する今回のAPEC首脳会議では、各国の意見調整に難航が予想されるなど、議長国の力量も問われました。その中で、二〇一五年までの行動計画の策定を柱とする横浜ビジョンを採択できたことは、議長国としての大役を十二分に果たし、我が国の力量を参加各国に示すことにもなり、大きな成果だったと思います。
 とりわけ、アジア太平洋地域を一つの自由貿易圏として確立させるFTAAP構想は、APECの一大目標であります。しかし、FTAAPは、一朝一夕には実現できません。そのために、日韓中FTA、ASEANプラス3、ASEANプラス6などさまざまな努力がなされておりますが、現在大きな注目を集めているのが、完全な自由貿易を目指すTPPの取り組みであります。
 TPPは、内向きで、閉塞感にさいなまれ、自信を喪失し、ともすればガラパゴス化しているのではないかと批判されている今日の日本を、再び世界に向かって大きく開放し、開国がもたらす外からの刺激によって日本経済を新たな高みに押し上げるものであります。もちろん、高度な市場開放に伴って国内産業が厳しい競争にさらされることは間違いありません。しかし、この痛みなくして日本が再浮上することはないでありましょう。
 また、APEC首脳会議の議長国として日本がFTAAP実現への道のりにおいてリーダーシップを発揮するためには、アジア太平洋地域における経済連携でルールメーキングの母体となる可能性の高いTPPへの参画こそ、その最大の試金石となります。その意味で、APEC首脳会議に臨むに当たり、党内外の厳しい、激しい議論を乗り越えて総理がTPP関係国との協議を開始すると宣言したことは、平成の開国に向けて総理の並々ならぬ決意のあらわれと、深く感銘を受けた次第であります。
 そこで、菅総理に、改めて、TPP交渉参加に向けての御決意を伺いたいと思います。
 しかし一方で、TPPは日本農業を直撃することになるでありましょう。
 自民党時代に半世紀続いた農政の失敗は、今やだれの目にも明らかであります。荒れたまま放置されている農地はふえるばかりであり、農業に従事する人々の高齢化も進んでおります。国民の食生活における嗜好の変化を無視した農政は、ついに食料自給率を四割以下にまで押し下げました。TPPによる農産品の貿易自由化は、疲弊した日本農業にさらなる打撃を与えることになるに違いありません。
 食料安全保障はもとより、農業には治山治水の役割もあり、山紫水明の豊かな国土を保全する上でも、日本農業を衰退させるわけにはいきません。農業を魅力ある産業として何としても再生をしていかなければならないのです。したがって、TPPへの参加は、日本農業の抜本的な構造改革と組み合わせて実現されなければなりません。
 政府は、TPP協議と並行して、農業構造改革推進本部を立ち上げ、来年六月までに基本方針を立て、十月までに行動計画を策定するとしています。
 農業構造改革の目玉は、戸別所得補償であります。そのためには大きな財源が必要となります。恐らく、年間数兆円規模の財源を、五年、いや十年と、続けていかなければならないでしょう。しかし、この財政上の痛みこそ、新生日本農業を生み出す痛みなのであります。大胆な歳入改革なくして各種の政策財源が絶対的に不足することが明らかとなりつつある今日、日本経済の生き残りをかけて国を開くためには、何としても農業構造改革の財源を捻出せねばなりません。
 そこで、総理、改めて、日本農業の再生をかけた農業構造改革に向けての総理の御決意を伺いたいと存じます。
 最後に、APECとの関連で、総理のアジア太平洋戦略を伺いたいと思います。
 TPPの議論が日本で沸騰する少し前、シンガポールの外交官が私に興味深い話をしてくれました。TPPの意義は、単なる経済構想にとどまらない、台頭する中国を見据え、日米が中心となってアジア太平洋地域の安全保障を確立していくプロセスそのものだ、こう述べました。
 私は、アジア太平洋の戦略的な構図というものは、米国とその同盟諸国が西太平洋に結集し、旧ソ連にかわって台頭しつつある中国との戦略的均衡と安定を確保するというものです。その上で、自由貿易体制を通じ、日米のような先進民主主義国と中国に代表される新興工業国との共存共栄を図るというものであります。
 最近の尖閣諸島や北方領土への傍若無人なる対応に見られるように、中国やロシアの対外姿勢は、時に、十九世紀的な、力を背景に国家意思を前面に押し出すスタイルを隠しません。このような理不尽な国家意思の押しつけを断固拒否するためには、まず、みずからの国はみずからが守る、こういう主権国家としての当たり前の姿を確立しなければなりません。
 折から、政府は、五年ぶりに防衛計画の大綱を見直しております。厳しい財政事情のもとでも着実な防衛力の整備を進めることが、まず求められます。特に、今度こそ、北方重視の冷戦思考と完全に決別し、機動的な防衛力を大胆に南西方面へシフトさせるという思い切った政治決断をすべきであります。
 こういった自助努力がまず先にあって、その上で、五十周年を迎えた日米同盟をさらに深化、発展させ、米韓、米豪といった西太平洋に広がる米国の同盟網を確固たるものとし、同時に、中国との戦略的互恵関係を安定させ、その基盤の上にアジア太平洋地域全体の経済統合を促進する、これが日本の大戦略だと考えます。
 そこで、総理、このたびの新たな防衛計画の大綱、そして日米同盟の深化、発展、これらの方向性を含め、総理の描くアジア太平洋戦略をぜひ国民の前に披瀝していただきたいと存じます。
 いずれにいたしましても、明治、昭和に次ぐ第三の開国ともいうべき平成の開国は、黒船と敗戦という外圧によって無理やりこじあけられた過去二回の受け身の開国とは根本的に異なります。国力の低下、人口減少、新興国の台頭などといった内外の危機感をばねに、あくまでもみずからの意思によって国を開くところに歴史的な意義を見出すものであります。これぞまさしく真の開国であり、こういった国策の大転換は、政権交代が実現した今だからこそ初めて可能になったと確信いたします。
 したがいまして、菅総理には、農業を初めとする国内の構造改革から逃げることなく、むしろ、開国の大方針をてことして、長く放置されてきた内政上の諸課題を一気に解決する、堂々たるリーダーシップを発揮していただきたい。このことを強く御期待申し上げ、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

発言情報

speech_id: 117605254X00920101116_064

発言者: 長島昭久

speaker_id: 29241

日付: 2010-11-16

院: 衆議院

会議名: 本会議