秋庭悦子の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)
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○秋庭参考人 おはようございます。秋庭と申します。
三月十一日の地震発生から一カ月半が過ぎましたが、福島第一原子力発電所の事故はいまだ収束せず、長期化が予想されています。国内外のありとあらゆる技術や知恵を結集して、一刻でも早い収束を願っております。また、この事故に伴い避難生活を余儀なくされている方々に、心よりお見舞い申し上げたいと思っております。
原子力基本法第一条に、原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、人類の福祉と国民生活の向上のために寄与することを目的とすると書かれております。しかし、この事故により多量の放射性物質が環境に放出され、八万人を超える住民の皆様が避難を余儀なくされて、さらには野菜や魚の出荷制限や飲料水の摂取制限など、国民生活に不安を与えることになってしまったことは大変残念に思っております。
私は、原子力委員に就任する以前は消費者団体やNPO法人で活動しておりましたので、本日は、国民の視点に絞って三点申し上げたいと思っております。
まず第一に、避難なさっている方々への支援についてです。第二には、福島原子力発電所以外の原子力発電所の立地地域の住民の方たちへの情報提供、そして全国の国民への放射線、放射性物質についての情報提供についてです。そして第三に、今後の原子力政策の検討に当たっては国民参加の仕組みが必要である、この三点について述べさせていただきます。
まず第一に、避難なさっている方たちへの支援についてです。
安心、安全と言われていたのに、なぜこのような事故が起きて避難しなければならなくなったのか。原子力発電所と共生する町づくりを目指していたのに、田畑や家畜、そしてせっかく誘致した工場もすべて捨ておいて、遠く離れていなければならないのか。避難なさっている方たちの憤りや苦しみは、例えようがないほど大きいものと思います。しかも、その電気は、首都圏に送るための電気です。その怒りや苦しみに対して、安全確保が前提とはいえ、原子力を推進してきた原子力委員として大変申しわけなく思っております。
原子力委員会は、組織的には、避難なさっている方々への直接生活支援をする、そういう役割ではありません。しかしながら、NPOの活動などを通じて私は立地地域の町長や住民の方々と交流があったため、いても立ってもおられず、新幹線が通じることを待って、休暇をとって四つの町の避難所にお見舞いに行ってまいりました。富岡町と川内村の一部が避難している福島ビッグパレット、そして先週末には、楢葉町、大熊町、そして隣接であります浪江町が避難している会津方面に行ってまいりました。
それぞれの町長を初め役場の方々は不眠不休で働いており、そんな中、お話を伺うのは大変恐縮いたしましたが、どこでも町長は熱心にお話をしてくださいました。そのことが大変印象的でした。
四人の町長が共通しておっしゃったことは、国は、何千人もの住民を率いて大変な苦労をして避難している町長の意見をもっと聞いてほしいということでした。例えば、このたびの計画的避難区域と緊急時避難準備区域の設定や一時帰宅の件についても、何の打診もなく、テレビの報道で初めて知って驚いているところに、ようやくファクスが一枚入っただけだったという町もありました。住民からは、なぜ自分の家に行ったら十万円の罰金が取られるのかと町長に詰め寄る、そんな場面を目撃することもありました。今後、損害賠償のことなど、ぜひ現場の声を聞いていただきたいと四人ともお話しになっていらっしゃいました。
避難生活が長期化する中、町と県や国とのコミュニケーションの問題は今後ますます重要となると思いますので、まずは避難なさっている現場の声をしっかり聞いて、それぞれの地域性に応じたきめ細やかな対策を講じることができるような仕組みにするべきと痛感いたしました。
現在、計画的避難区域になった地域には、避難する前に説明があり、また、国の窓口も役場につくり、住民の相談に乗ることになっています。これは大変重要な取り組みだと思っております。ぜひ、避難指示により既に避難している町役場の中にも、同様に国の窓口をつくるべきではないかと思っております。
本来は、住民の要望は町が聞くことになっておりますが、今回の事故に関しては、住民からの要望を国が直接聞く窓口も必要だと思っています。地域によって事情は異なりますが、国の対応はできるだけ公平にするということが重要だと思っております。
そして、現在、各町長が抱えている課題は、情報伝達とコミュニティーの維持です。いまだに二千人規模の避難所で段ボールで区切って生活している避難所もあり、いち早くホテルや民宿などに二次避難しているところもあります。
前者は、プライバシーもなく衛生環境も非常に悪化しておりますが、避難している方たちは減少することがありません。なぜなら、町役場と一緒にいないと、さまざまな生活支援の情報が得られないからと聞きました。避難所の壁一面に張られた生活支援情報などを皆熱心に見ていらっしゃいました。また、避難所にいればほとんど無料ですが、外に出れば生活資金も負担しなければならなくなるからです。
後者の場合、つまり、それぞれホテルや民宿などに分かれている場合は、その裏返しとして、生活環境はよくなりますが、行政からの情報がなかなか届きにくく、中には二百カ所にも分かれて避難している町もあり、コミュニティーから孤立してしまうというおそれがあります。町としても、情報伝達のために巡回したくてもなかなかできないという悩みがあります。現在、各町では、住民の九割程度の行方は把握できているようですが、遠く離れた県外に避難している方々へのフォローが課題になっています。
避難なさっている方から話を伺うと、だれもが、とにかく一刻でも早く家に帰りたいと願っています。
長期化する避難生活にとって必要なのは、生活資金と仕事です。生活資金は、既に東京電力が一世帯当たり百万円を支払うことになっており、避難なさっている方々もひとまず安堵なさったと思いますが、今後重要なことは仕事です。
お金があっても、何もすることがなく時間が過ぎると、生きるエネルギーがなくなるような気がすると避難なさっている方から伺いました。当面は、避難している地域での雇用を何とか確保するとともに、町に帰宅後に始まる新しい町づくりのプランを避難なさっている方々でつくることによって、希望を持てるようにすることが重要だと感じました。
以上、個人的に訪問してまいりましたが、さまざまな要望や御意見を伺い、今後の政策に取り入れることも原子力委員会の役割ではないかと痛感いたしました。
第二に、福島原子力発電所以外の原子力発電所の立地地域の住民の方たちへの情報提供及び全国の国民への放射線、放射性物質についての情報提供についてです。
福島第一、第二以外の現在動いています全国の原子力発電所の立地地域の住民は、自分たちの地域の発電所でも同様な事故が起きて、避難生活をしなければならないということを大変御心配になっていらっしゃると思います。まずは、不安に思っている住民の皆様の声をしっかりと聞くということが重要だと思っております。
そして、緊急安全対策についても、単なる説明ではなく、納得のいくように御説明、そして御質問に答えていくということが大変重要だと思っています。
二十五年前のきょう、チェルノブイリ事故が起きましたが、そのとき、私は食品の影響について大変不安になりました。今回も同じレベル7の事故となり、食品や飲料水に対する不安、子供への放射線影響に対する不安の声が原子力委員会にも多く寄せられています。この不安の高まりは風評被害につながる場合もありますので、今、放射線の専門家を活用した草の根からの丁寧な説明が有効な手段ではないかと考えております。
現在は、原子力広報はほとんど行われておりませんが、私は、このようなときだからこそ、事故の概要や放射線の体への影響などについてわかりやすい情報提供が必要だと思っております。
第三に、今後の原子力政策を検討するに当たって、国民参加の仕組みが必要であるということについてです。
先日、原子力政策に関する報道機関による世論調査の結果が発表されました。幾つかの機関が発表されました。いずれも、原子力について現状維持が四〇から五〇%と、ほぼ過半数に近い数字でありました。すべて廃止にすべきだという意見は一一から一三%でした。私は、国民は冷静であり、資源のない日本において安定供給するためには、原子力をすぐに廃止することは現実的ではないということをよく理解していらっしゃると思いました。首都圏で実施された計画停電のとき、交通が混乱し、医療などの社会的な混乱を招いたということもあり、このような結果になったのではないでしょうか。
しかし、だからといって、今までのように、国策だからとトップダウン的に原子力を推進することは難しいと思っております。まずは、国民的な議論を行い、国民の納得のいく上で原子力の利用を進めることが必要だと思っております。
原子力委員会は、従来より広聴、広報を基本としておりますが、既に、この事故について六千四百通以上もの御意見が寄せられております。今後は、今まで以上に国民の声を真摯に聞き、政策への国民参加の仕組みを検討する必要があると思っております。
以上です。ありがとうございました。