小宮山宏の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)
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○小宮山参考人 ありがとうございます。
そこのパワーポイントのスクリーンと同じものがお手元に配付されてございますので、このどちらでもごらん願いたいと思います。
私は、日本の再創造ということを提案しておりまして、今後の日本の進むべき道、そのためにどういうイノベーションが必要なのかというような形で考えてございます。
スライドを送ってください。
日本は、イノベーションということでは非常におくれていると思います。イノベーションが起きない。なぜ起きないかといいますと、科学技術が社会で実験されて、そのうちのいいものが社会を変革していくというのが新しいイノベーションであります。ここが途上国と先進国との違うところ。
先進国は新しい科学技術を社会で実験することが必要で、それによってイノベーションが起こります。途上国には坂の上の雲を目指して社会を変えていけばいいという明確な差があるわけです。
この先進国になったときのやり方が日本はできていない。どこがかというと、科学技術の問題よりは、社会実験ができないというところの方にはるかに大きなところがあるわけで、この答えというのは、一番わかりやすいのは規制緩和ということになるかと思います。
先ほど東北の話が出てございましたが、最後の私の結論は、東北で思い切った規制緩和で新しい社会をつくるということをしていって、それを日本のイノベーションにつなげるべきだというのが私の本日の主要な論点に最後はなります。
もう一つは、現状があってビジョンがございます、どういうところに向かいたいと。実は、これは途上国ですと、ビジョンに向かって進むというのが非常に楽なんですね。もうほとんど何もないわけですから、つくればいいわけです。しかし、先進国というのは、特に日本に代表されるように、非常にしっかりした社会というのがあるわけです。そのときには、移行プロセスの議論も同時に極めて重要でありまして、ビジョンも欠落しているんですが、特にこの移行プロセスの議論に関してはほとんどやられていないというところが大きな問題かと思います。
次をお願いいたします。
二十世紀の延長戦だけで再生は無理だというこの議論は、私もきょう参考人として述べさせていただいておりますけれども、例えば、今力を持っている企業、そういうところに聞いただけでは将来は見えません。これは二十世紀の延長戦と私は呼んでおりますが、二十世紀に成功した形で商売をしているわけです。
それは、例えばエネルギー資源という言い方で言うと、エネルギー資源の供給をふやして経済成長をする、これは、一九七三年、オイルショックの年までは、明確にGDPの成長とエネルギーの消費量というのは弾性値一対一で成長しております。そこからぱたっと、例えばグーグルが一つ日本にできた、十兆円のGDPがふえますけれども、エネルギー消費はふえないわけです。こういうエネルギーとGDPとが一対一でなくなった、これは非常に大きな論点であります。
では、二十一世紀はどうかというと、効率化によって、エネルギー資源の消費を減らして経済成長をするというのが二十一世紀のエネルギー資源政策ということであろうと思います。
こういう思いに至った背景を少し説明させていただきます。
次をお願いいたします。
私は人工物の飽和ということを年来申し上げておりますが、恐らく二〇五〇年あたりで世界じゅうで人工物がほぼ飽和に至る。
この意味は、例えば自動車です。自動車は、日本では一人当たり〇・四五台、大体二人に一台ですね。二人に一台までみんな持っていきます。上の日本からドイツまでを見ていただきますと、二人に一台、人口で保有台数が決まるんですね。
これが非常に大きな点で、このとき、ポジティブな面とネガティブな面、ネガティブな面は、アメリカの自動車の販売台数、日本の自動車の販売台数が飽和します。日本は五千八百万台の自動車があって、十二年で廃車になります。そうすると、五千八百万割る十二、一年五百万台というのが毎年廃棄されて、毎年売れていくわけです。ですから、自動車に関しては、日本の国内需要というのは五百万台なんです。このように人口で飽和する需要、これが、日本、アメリカ、ヨーロッパ、いずれも内需の飽和ということに苦しんでいると申しますか、その基本的な背景。
ただし、ポジティブな面があります。それは、新車をつくる資源、例えばレアアースとか鉄とか、そういったものは廃車されるものの中に含んでいるということです。つまり、メタルに関するリサイクル社会をつくれば、天然資源は要らなくなる時代が二〇五〇年ごろにやってくる。これは、もともと天然資源を持たない日本にとっては最もいい社会であります。
つまり、人類が永久に地下から金属を掘り出すという必要はないんですね、捨てていけば別ですよ、それが人工物の飽和という極めて重要な背景。
次をお願いいたします。
それでは、今、世界は中国の需要、もちろん中国だけではございませんが、先進国になろうとしている人たちの需要によって経済が引っ張られているというのは皆さん御存じのとおりでございます。そうすると、中国が一体いつごろ飽和するかというのは極めて知りたいところで、私もいろいろな指標から調べております。結論は、意外と飽和は早いということです。
これはセメントの生産量です。縦軸は一人当たり何トンのセメントを生産しているかというのを年別にとっていった。そうすると、この下の面積が各国トータルとして今まで何トンのセメントを一人当たり入れたかということです。
一番下の緑がアメリカです。アメリカは一人当たり十六トンのセメントを国土に投入しています。三億人の人口がいますから、三億掛ける十六トン、四十八億トンのセメントをアメリカに高速道路としてあるいは空港として塗ると、アメリカの今のインフラができ上がったということです。
同じように、フランスがその上の黒ですが、フランスが二十二トン、日本は二十九トンです。山が急なのでダムが多いとか少ないとか、そういった国情の違いはございますが、大体一人当たり二十トン入れると先進国の今の必要なインフラはできるというふうに見ることができます。
今急速に伸びている青が中国でございまして、これは一人当たりですので、昨年、中国は世界のセメント生産量の五五%をつくっております。そして、去年まで、二〇一〇年までに中国が投入した量が既に一人当たり十四トンになります。先ほどのアメリカの十六トンというのを思い出していただきますと、あと一年ちょっと、もうすぐアメリカと同じ一人当たりのセメントが中国に投入されます。
このことは驚くべきことでして、アメリカと中国、ほとんど同じ国土の大きさに人口が四・五倍いますから、中国にアメリカの四・五倍のセメントが塗られるということで、この意味は、いろいろ議論しておりますけれども、わかりません。もしかすると、既にもう要らないものをつくっているという可能性すら感じさせる。
いずれにしても、中国がインフラの整備というような形で世界の需要を引っ張っていくという時代がそんなに長く続くとは思えないというのがいろいろな指標からの結論でございます。
次をお願いいたします。
そうすると、私たちは需要を二種類に分けて考えた方がいいんじゃないか。
一つは普及型の需要。今、車の例を申し上げましたけれども、家、車、新幹線、原子力発電所といったような、普及して飽和していく形の需要、これが二十世紀に物づくり産業が行っていることです。これを私は二十世紀の延長戦と言っております。ここを負けるわけにはいきません、というのは、これで今、日本は食べているわけですから。したがって、これが高度成長するに向かう、ここの競争に負けないように国が支援していくというのは、極めて重要な問題であります。
しかし、大事なことは、今の産業をそうやって支援しているだけでは、二十一世紀の新しい戦いにおくれるよということであります。ここがポイント。私の、きょうの科学技術・イノベーションというところは、創造型の需要の方に力点があるんだろうと思います。
では、創造型の需要とは一体何があるのだろう。
これの一つがグリーンイノベーション。これはもう申し上げるまでのこともない。
もう一つがシルバーイノベーション。今後、高齢社会が世界にやってまいります。中国でさえ、二〇一五年に、もうあと四年ですよ、もうあと四年で生産年齢人口、十五歳以上六十四歳以下という年齢が二〇一五年でもって減り始めます。これは中国の明確な高齢化であります。高齢化というのは世界が抱える課題ですので、ここに膨大な産業がある。ここを日本は率先して開拓して、世界にリードした新しい産業をつくっていく、これをシルバーイノベーション。
きょうはこの二つを申し上げますけれども、もう一つ、ゴールドイノベーション、情報技術に基づくものというのが極めて重要でありますが、こうした新しいところ、つまり、日本の戦略というのは、経団連に代表されるような二十世紀の延長戦を負けないように勝ち続けつつ、同時に二十一世紀のイノベーションというのを強力に推し進める。二十世紀の延長戦が強過ぎるものですから、この二十一世紀の新しい方がどうしても遅いんですよ、日本は。ここが最大の問題というふうに私は考えます。
次をお願いいたします。
例えば、エネルギーの問題、CO2の問題、ここに関しても、日本は乾いたぞうきんであって、もう減らせないよという議論がありますが、これは間違いです。なぜ間違いかというと、それは物づくりに関する話。
日本の物づくりというのは、確かに、一九七三年のオイルショック以後、強烈な効率化をやって、例えば、セメントなんか、一トンつくるのに、今、一九六〇年代の半分しか使っておりません。これだけ効率化をした。
ところが、アメリカのセメントなんていうのは余り進歩していないんですよ。中国は、進歩していない技術を使っております。ですから、先ほど言ったように、五五%のセメントをつくっている中国が一トン当たり日本の一・七倍のエネルギーを使っているんですから、中国が日本の技術を入れればいいんですよ。その方が彼らにとっても得なんですよ、長期的に考えて。
そういう状況にありますので、物づくりで日本がこれ以上CO2を減らすというのは、経団連を中心におっしゃるように、確かに苦しいんです。しかし、ここで見ていただくように、物づくりはエネルギー消費あるいはCO2の発生というものの四三%にすぎません。これは二〇〇七年ですけれども、恐らくもっと減っていますよ。
四三%。四三%が減らせないけれども、左側の家庭、オフィス、輸送、これは、右側で物をつくって、左側で生活をするというふうな分類をしてございます。ですから、家庭、オフィス、輸送、こちらはだぶだぶです。これはもう本当に多く減る。日々の暮らしがだぶだぶ。
私の家は、ちなみに八一%CO2を減らして、快適でございまして、あと二年ぐらいでもって初期投資を回収いたします。
つまり、経済的に成り立って、CO2が減って、しかも快適になるという道が幾らでもあるのが家庭、オフィス、輸送。いい物づくりでリードして、左側の日々の暮らしでCO2を削減していく、これがグリーンイノベーションですし、これを世界に広めていくというのが日本がグリーングロースをしていくということであると思います。
ですから、日本はCO2は減らせないと言っているのは間違いで、日本の成長を阻害しているわけです。
次をお願いいたします。
二つだけ、ごく普通の例を申しますが、冷暖房が一番、オフィス、家庭のエネルギーの使用の大きいところです。
これの対策としては二つです。
一つは、家の断熱をよくすること。
私の前の家、これは普通の家です。それと、新しくつくった家、これも今の普通の家です。これを建てかえるだけで、大体断熱が三倍よくなります。これは、冷暖房のエネルギーが三分の一になるということなんです。極めて重要。最大のエネルギー消費が三分の一になっちゃうんですよ。しかも快適になるんです。ここが重要ですね。
それから、もう一つが機器ですね、エアコン。
日本のエアコンというのは世界の標準的なエアコンの半分しか電力を消費しません。これが、少ししかつくっていないから、高くて、日本の国内でしか売れていなくて、ウォルマートだ何か全くほかの国に抑えられているというのが日本のガラパゴス化ということですよ。ここが日本の弱いところであります。
物はいいんです。一九九〇年のエアコンと、去年売られたエアコンとは、電力消費は六〇%減っております。冷蔵庫に至っては、二十年の間に、電力消費が五分の一に減っております。二十年前のエアコンをお使いの先生方は、ぜひ買いかえていただくと、電気代が五分の一になります。
私は、十三年間使った冷蔵庫を買いかえて、電力代が三分の一になりました。一年に二万円、電気代が得しました。私の冷蔵庫は十四万円です。ですから、七年で元が取れちゃうんです。これをやると、私の生活は快適になります。
冷蔵庫の場合ですと、大きさが同じだと、内容量が三百五十リッターから四百三十リッターにふえました。これは、断熱材が、今は日本のは真空断熱材で薄くなっているからですよ。だから、同じところに置いても広くなるわけです。もちろんきれいになります。それで、電力消費が三分の一に減って、私の製品は東芝から買いましたので、東芝が喜ぶ。
これをもう少し大きく敷衍すると、生活が快適になって、電力消費が減って、お金は回収できて、日本の産業が強くなるわけです。これがグリーングロースということであると思います。
次をお願いいたします。
まだ余り普及していない、極めて重要な日本の先端商品が給湯です。給湯は家庭で一番大きなエネルギー消費です。給湯のエネルギーというのは、八割減る、あるいはほとんどなくなってしまいます。皆さん方が家庭でお使いの瞬間ガス湯沸かし器、あそこで燃やしているガスというのがなくなっちゃうんです。
これが非常に大きな大変な商品で、一つはヒートポンプタイプ。これは電力系の会社がつくっているエコキュートという商品名で発売されているもの。それから燃料電池、これはエネファームという名前で、石油系、ガス系が発売している。どちらもすばらしい商品であります。
これを、中でどっちがいいとかいう神学論争をやっているのが日本の情けないところで、これはほとんど、世界でも一番大きな給湯のエネルギーがなくなっちゃうぐらいのグリーンイノベーションの代表製品ですから、これを世界に早く売っていく、そのためには補助金をつけたっていいんですよ。補助金をつけるならこういうところにつけて、グリーングロースを引っ張っていくというのが必要だと思います。
次をお願いいたします。
これは、省エネは、先ほど申し上げましたが、日本の産業がエネルギー効率を上げたというのは、人類のためにやったわけではございません。これはフリーマーケットで、エネルギー効率を上げるためには初期投資が必要なわけですけれども、初期投資がエネルギーコストの削減で回収できるから企業が投資をしていったわけであります。つまり、回収できる投資が省エネルギーなんですね。私の冷蔵庫の例も、今申し上げたのは同じような意味。
つまり、冷蔵庫からエアコンから石炭火力発電所に至るまで、効率を上げるというのが一番大きなエネルギー減なんです。原子力を太陽電池が補完できるかどうかというような議論にすぐ行きますけれども、これは間違い。一番大きなエネルギー減というのは省エネルギーなんです。そして、ここで日本はイノベーションの種を山ほど持っているわけですよ。私は、今ごく一部の例を御紹介したわけです。ここで日本は世界を引っ張るべきなんです。
次、お願いいたします。
これが私が二〇五〇年のビジョンとして提案しているエネルギーに関する絵で、きょうは細かいことを申す時間がございません、御質問いただけばぜひお答えしたいと思いますけれども、二〇五〇年までに省エネルギーでエネルギー消費を五五%減らします。そうして、現在一八%、原子力がとまっていて減ってきていますけれども、一八%の準国産エネルギーを含めた国産エネルギーを三二までふやします。太陽電池、風力発電、バイオマスエネルギー、地熱、中小水力の総動員です。これによって三二までふやす。そうすると、日本は七〇%のエネルギー自給国家になれるわけです。これが私の提案しているモデル。
二十年以上提案しておりますけれども、なかなか聞いていただけません。最近ようやく少し目を向けていただいて、今ここに呼んでいただいたんですかね。
次、お願いいたします。
私は、今、グリーンイノベーションの議論をしました。これが日本のグリーンイノベーションのビジョンとして提案しているものです。資源自給国家。
一次資源が安く買える時代というのは終わりました。私が学生の時代に一バレル一ドルだった石油が今百ドルしていて、この後三百ドルになるんですよ。それを、日本は資源の輸入国家だからといっていて次世代に日本を引き継ぐことはできません。食料だって間違いなく価格が上がっていくわけです。なくなるわけではありませんけれども、価格が上がっていくわけですよ。それを、日本は輸入国家だからといって引き継ぐことはできません。
一つ一つ根拠がございます。
エネルギー七〇%というのは今ざっと申し上げた話。鉱物資源七〇%というのはリサイクルです、都市鉱山ですよ。リサイクルをきちんとやることで鉱物資源の七〇%をリサイクル品、本当は二〇五〇年に一〇〇%と言ったっていいんですけれども、物事一〇〇%はいきませんので、三〇%ぐらい輸入してもいいかと。それから、食料七〇。今、カロリーベースで四〇ですね。
それから、木材は昨年二四%です。こんなものは世界に対する犯罪ですよ。七〇%の森林のある国で二四%しか自給していない、それで世界のNGOから日本は世界の森林資源を枯渇させる元凶だと言われているんですから。これは事実ですよ。
日本が森林を開発して、林業を開発して、このキーワードは大規模化と機械化とサプライチェーンの構築、これの全体像をつくることですよ。ここでさまざまな社会的な条件を突破することですよ。これをやって初めて、端材として出てくる膨大なバイオマスがエネルギーの方にも効いてくるわけです。
結論を申しますと、水が最大の資源になってくるというふうに私は思っております。水があって、食べ物があって、林産資源があって、鉱物資源があって、エネルギー資源がある、これが最低限必要な一次資源ですよね。これを七〇%供給できるようになったら日本は本当に強いし、そこには十分科学技術的な根拠がございます。そこを目指すべきだというのが私のグリーンイノベーションでの提案です。
次、お願いいたします。
もう一つがシルバーイノベーションで、ぜひ、年金だとか介護だとかという議論を、このデータをベースに議論してください。
これは、秋山弘子さんという世界のジェロントロジーの分野のリーダーですが、彼女が、六十歳以上の人々六千人を、百五十人のインタビュアーを動員して二十年間フォローした結果です。
これはそれの男性版ですが、どうやって人間のアクティビティーが落ちてくるか、肉体的なアクティビティー、おふろに入れるかとか、散歩ができるか、階段を上れるかといったようなこと、それから知的なアクティビティー、電話を一人でかけられるか、買い物に一人で行ってちゃんと帰ってくるか。それと、もう一個はちょっと忘れちゃいましたけれども、六項目で調べる。
そうすると、赤、七〇%の人は、七十代の後半ぐらいに脳溢血をやるとか何かでどこかひざがおかしくなるとかなってきて、九十ぐらいで亡くなられる。一一%ぐらい、国会議員の先生方はこういう人が結構いるんですけれども、一一%ぐらいは九十になってもまだ落ちてこない。
はっきり言うと、こっちはいいんですよ。左側ですよ。二〇%近い人が六十代の前半で、何か脳障害とかやるわけですよ。そして、ここを見てください。その下をはっているでしょう、七十二ぐらいから九十ぐらいまで。こういう人たちが長期の介護になるんですよ。
ここをどうするかという議論をするのが、どうやって活気ある高齢社会をつくっていくかという議論じゃないですか。年寄りに金をもっと払わせるのか、若い人が払うのか、そんな議論を幾らやっていたって、答えが出るわけはないんですよ。そこの答えというのはここにあって、どうやって左側の二〇%の人を減らしていくか、これが個人にとっても幸せということですし、社会の負担も減っていく、いい高齢社会ということです。ここに膨大な産業がある。
一つは、やはりいい家をつくることですね。日本の脳溢血、脳障害の八割は、十一月から二月の間に起きています。これは、やはり、凍えるように寒いおふろの脱衣所とかトイレとか、そういうところで倒れているわけですよ。
そこを、例えば断熱のいい家にすればそういうのがなくなりますから、それが減れば結局いい高齢社会にもつながっていくということですし、ひざの筋肉が落ちちゃっただけだって、買い物に行けなくなるわけですよ。ここに、サポーター型のロボット、ひざにちょっとこうやればできるようなサポーター型のロボット、こういうようなものがあれば、外に出られるじゃないですか。そうすると、左側にならずに右側になれるんですよ。こういうような物づくり産業。
例えば、オンディマンドバス。これは、買い物弱者、こんなことを言っていて高齢社会がよくなるはずはない、外に出て人と接触しなければ、人はぼけるんです。これはもうこの要因分析でよくわかってきております。
例えば、オンディマンドバスを走らせて、隣の若い人に車に乗せていってもらわなくても買い物に行けるようにするような社会システムをつくる。オンディマンドバスを入れて、この左側を右側に持っていく、そういうところにシルバーイノベーションという新しい産業が起きて、そのシステムが中国を初めとする世界に膨大な輸出産業となるわけですよ。ここを考えていかないと、日本のイノベーションの議論はできない。
次をお願いいたします。
私は、日本のビジョンは何かというふうに今議論をしております。これは、結局、三種の神器とかいって皆が物を欲しがって成長していったのが高度成長社会ですよ。もうその欲しいものがないんです。車も持っているし、家も持っている。五千万世帯があって、日本には五千八百万軒の家があります。家も余っているんです。だから、数は充足しているんですよ、もう物は。
そのときに、僕らは何が欲しいんだという議論、これが今後の社会ですよ。この競争が、先進国、日米欧がしている競争の本質なんですよ。その一つとして、社会システムをどうするんだ、資本主義をこのままやっていけるのか、修正する必要があるんじゃないかという議論もその一つですよ。そこを我々は考えている。
今、私たちはプラチナ社会というものを考えている。一つはエコロジーだろう。やはり、中国に行って、昼間晴れていたって、この間、北京でもって太陽は赤黒くあるわけです。物を持った後で、ああいうところに住みたいとは思わないんですよ。我々は、やはり、エコロジー、資源の心配なんかもしたくないという意味でのエコロジー。
それから、世界が高齢化に向かうんですから、高齢者を含めて人々すべてが参加できる社会だと思うんです。
それから、六十歳で定年になってさようならという社会というのは、この後、成り立ちませんよ、人生百年時代にとって、長過ぎる。ここで、やはり一生人々がそれなりに成長し続けられる社会。これは生命科学的な背景も出てきています。平均すると、死ぬ二年前まで、条件がそろうと、人間の脳の可塑性というのは残るんです。成長できるということなんです。そういう意味で、人が成長し続けられる、そして雇用がある、これが恐らく僕らが欲しい社会なんじゃないか。わかりません。ここが一番議論すべき点だと思います。
一応、物があるという社会で、次の社会というのをプラチナ社会というふうに定義いたしました。登録商標をとってございますので、使うときにはぜひ一言、まあ、どうでもいいんですけれども。
次をお願いいたします。
そして、中央集権だけでは無理だろう、先日道州制のシンポジウムも行われましたけれども、中央集権だけでは無理である。やはり、自治体をベースに市民が自分でもって前に進むという体制をつくらないと、今後、日本はないだろう。国は何をやっているんだという議論をしているだけでは前に進めないだろうと思います。そうした思いに御賛同いただいて百の自治体が、百ちょっとですね、現在参加してございます。
その次をお願いいたします。
これは、こういうシステムをつくっておりますので、今回の電力危機、幸いにして東京電力は極めて悠々と電力危機をクリアできると思いますけれども、もちろん工場、オフィスも協力したんですけれども、市民も相当協力していると私は思います。これは今分析しております。
それを動かした一つは、低炭素社会戦略センターという科学技術振興機構のセンターがございます。ここでのさまざまな研究をプラチナ構想ネットワークを通じて自治体に広げていった。自治体は、PTAのネットワークとかさまざまなネットワークで市民に直接連絡するということを行いました。
次をお願いいたします。
結局、現在、四十八の市、県、町が参加して、これは東京電力管内でございます、東京二十三区の多くを含め、栃木県も福田知事と宇都宮市長とが連携して全体に、まあ、どこまで浸透したか、これはまだこれからやらなくちゃいけませんが、こうしたことが必要なんだと思うんです。
今回の津波でも、警報を出しても聞いた人と聞かない人といるわけですよ。うまく連携がとれる、人々の間で連携がとれるところと、とれないところとあるわけですよ。これは、日ごろからいろいろな形で市民が参加するという民主主義をつくっていかないと、そのときだけ、安全のために津波警報だとだけ言っていてもだめだと僕は思います。こういうものをつくっていって、例えば今のネットワーク・オブ・ネットワークス、これが多分今後の民主主義の運動論なんではないかというのが私の考えであります。
次をお願いいたします。
国内で多数の事例を、これは、先ほど申し上げた林業一〇〇%の自給率を二〇五〇年に目指すというのは極めて妥当だというふうな結論に至った理由でございまして、プラチナ構想に参加している多くの自治体で調べました。
そうすると、一生懸命はやっているんですね。でも、基本的に言うと、一点突破のパッチワーク。バイオマスでもってボイラーを入れて自然エネルギーですねと言っているというような一点突破のパッチワークがあるだけです。全体像がまるでない。パッチワークと補助金の垂れ流しというのが基本的な構造ですから、これをうまく設計していくというのを今始めているところでございます。
次をお願いいたします。
イノベーション。イノベーションというのは統合的な変化だと思います。科学技術というのは局部の発見、発明であります。これを社会と結びつけるというのは極めて大きな作業が必要なんです。これをやるところが今ないんです。あるとすると企業だけなんですが、これだけではだめ、ここに国も関与することがあるんだと思います。
私たちの関与の仕方というのは、今言ったようなやり方で、調査した結果、林業を再生すればバイオマスも成立するし、林業再生のかぎというのは大規模化と機械化とサプライチェーンの構築だ、これで二十一世紀林業の創生だ。これは、用材、木材ですね、それから紙、エネルギー、さらにはキシリトールとかいったようなさまざまな高付加価値物、こうしたもののサプライチェーンをトータルで設計する、ここにさまざまな地域を当てはめていく、そういうトップダウンとボトムアップの掛け算がないと日本の林業は復興しないと思います。
次をお願いいたします。
私は、三つのイノベーションが必要だと思います。これは、グリーンイノベーション、シルバーイノベーション、きょう申し上げませんでしたけれども、科学技術の観点からいって、日本で一番おくれているのは情報技術です。情報技術自体はそんなに負けておりません。この間、幸い、スパコンでもって世界一を取り返しました。
こういう技術で負けているわけではありませんが、社会への導入、社会での活用というのは途上国以下です。これだけ進歩してきた情報技術というのが、国際的に比べて、社会でもってほとんど活用されていない。これが問題です。逆に言うと、ここに膨大なイノベーションの種がある。
次をお願いいたします。
それで、私は、東北だと思います。日本は、リスボン地震でもってポルトガルが二度と浮かび上がらなかったという一七五五年でしたかの事例を思い出すまでもなく、今度の東北というのは、ライジングサンからサンセッティングにかかっている日本にとって強烈なダメージですよ。しかし、ここにチャンスもあるんだと思います。
というのは、二十世紀型の、二十世紀の社会が日本は非常に強いから、いいから、二十一世紀への移行ができないという構造があるんだけれども、東北の一部で、なくなっちゃったんですから、あそこに新しい、いいものをつくりましょうよ。
だから、私は、それは港を復興するとかセメントも重要ですよ。だけれども、十八兆円でしたっけ、十九兆円でしたっけ、そのうちの相当部分、そんなコンクリートほど金はかかりません、その部分を、私の言い方をすればプラチナ社会を構築する、言い方はいろいろでいいですよ、新しいイノベーションのための投資に向けるという決意が僕は今後の日本にとって決定的に重要なんだろうというふうに考えております。
具体的に、私は、宮城の復興会議の議長をお引き受けして、やってきました。例えば、あの地域にブロードバンドは光でもって全部張る。これを決めましょうよ。大した金じゃないですよ、兆と比べたら。それができるとスマートグリッドの種にもなるし、インフラだし。
それから医療ですよ。医療で、カルテが全部流れちゃったんですから、その新しいカルテをつくってカルテを共有して、東北大学のお医者さんでも町のお医者さんでも、同じカルテを同時に見られる。MRIも一回撮れば、あっちでもこっちでも見られる。当たり前じゃないですか、今のクラウドでもって、情報技術の時代で。それを、医師会の一部の古い人たちが反対するからとやれないのが今の日本なんですよ。それを東北でやるんですよ。それがイノベーションで、科学技術を幾らやっていたってイノベーションは起きませんよ。ここが私の申し上げたいところです。
だから、復興特区、やりましょうよ、総合的な復興特区。ここで、東北で新しいものをつくって、なるほど、ああいういいことができるんだというものが見えれば、ほかのところにも入りやすくなると思います。
最後のスライド、最後ですか。
先進国は、日本は今まで二番手、明治の時代には百番手ぐらいだったんでしょうけれども、そこから一気に二番手か、下手をすると一人当たりGDPが一位になったこともあるんだから、一番手まで来たわけです。
だけれども、先進国というのは二番手、三番手では勝てないんですよ。イノベーションを最初にやらないと勝てないんですよ、今、イノベーションをやる人たちがみんなアメリカへ行っちゃうんだから。アメリカへ行っちゃうんですから、種を持っている人たちが。それで科学技術、イノベーションと言っていたって、できるわけがないじゃないですか。ここですよ。
だから、これは一枚目のスライド、科学技術と社会実験でイノベーションが起きるので、イノベーション、この答えは規制緩和なんだけれども、僕は、具体的には復興特区なんじゃないかと今考えております。
それで、下の、現状で、ビジョンと移行プロセス、ここが欠落しているんですけれども、ここが復興計画なのではないか、それを日本でやるのではないだろうか。本当に希有なチャンスで、これが僕は二万人の鎮魂だと思いますけれどもね。
次を、これが最後になりますが、こういう思いを私は書きました。僕はいい本だと思っています。
ところが、いい本が一万部しか売れないんですね。どうでもいい本が売れるんですよ。百八十ページですから、ぜひ先生方には、必要であればお送りします、お買いにならなくても結構ですよ。私お送りしますので、お読みになる方はぜひ御請求いただければお送りさせていただきたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。済みません、長くなりました。(拍手)