小宮山宏の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○小宮山参考人 ありがとうございます。
 私も、ある意味でいうと人生をかけて考えてきたことなので、二つ申し上げておきたいというふうに思います。
 一つは、科学技術が日本は非常にすぐれているというのは、ノーベル賞の数でもわかるわけです。二十一世紀に入ってのノーベル賞は、圧倒的に多いのがアメリカで、たしか三十何人だったと思いますけれども、日本とイギリスが大体十人です。九人か十人だったと思いますね。その下はドイツとかスイスの四人ぐらいになりますから、そういう意味で科学技術はトップです。
 ただし、よく考えなくちゃいけないのは、科学技術というのは分野が非常にたくさんあるんですよ。昔ですと化学だ物理だという感じなんですが、今はその中が百だ千だに分かれているわけです。そういう状況で日本がトップをとっている、あるいはトップに近いところが多いというのが日本の科学技術の強さという意味ですね。ですから、これと社会とはすぐにはつながらないんですよ。
 昔、ノーベル賞をとったペニシリンの発明、あれなんかを考えてみると、ペニシリンができたら抗生物質という知識が生まれて、第二次世界大戦で化膿して死んじゃう人というのが本当にいなくなるという公共的な価値を物すごく生んだし、あれはファイザーでしたか、ファイザーという会社がそれで大もうけするという経済的価値を生む。つまり、ノーベル賞が社会的な価値というのと極めて単純に結びついたんですよ。よき時代です。
 それが非常に細分化してきて、細かいことまでわかってきて、利根川さんのノーベル賞というのはすばらしいノーベル賞で、ノーベル賞でもピンからキリまであるんですが、利根川さんのノーベル賞は極めて立派なノーベル賞ですよ。だけれども、あれは免疫ですから、免疫ががんと関係することはほとんど確実なんですが、利根川さんがノーベル賞をとったからといって、がんなんて治らないじゃないですか。この差ですよ。
 要するに、ペニシリンが発見されたらこれだけの直接的な効果がある、利根川さんがノーベル賞をとって、人間にとっての直接的な価値がどれぐらい生まれたか。これは細分化と高度化なんです。ここが実は、社会の中に起こるべきイノベーション、高齢社会をどうするかとか、もっといい医療を受けたいとかいう社会の要請と、細分化された領域で生まれてくる科学技術との問題なんです。ここを一人でつなぐことはできないんですよ。
 だから、ノーベル賞学者なんてここに呼んで聞いたって、私は、そうそううまくいかないと思いますよ。要するに、組織として、細分化され高度化した科学技術を社会にどう役立てるか、ここを掛け算するところが必要なんです。
 それの一つの事例は、科学技術振興機構の中に低炭素社会戦略センターというセンターをつくりました。ここでは、まさにそれをやっているんです。低炭素化のさまざまな、燃料電池のいい触媒が見つかったり、こっちは細かいんですよ。だけれども、こっちは、どうやって人々が生活してエネルギーが減っていきますかという議論ですから、こっちは非常に包括的なんですよ。この間を体系的につなぐのを、今研究員は二十人ぐらいですか、それがあったことが、先ほど申し上げた市民の節電運動をやれることにもつながったわけです。
 そうしたような細分化した科学技術と社会とをつなぐ機能が組織として必要なんだ。小宮山先生に聞いたってわからないんだということですよ。小柴先生に聞いたって、そんなことはわからないんだということですよ。ここのところをどうやって社会としてやっていくか。例えば、総合科学技術会議あたりがそういうことを果たすべきなんだけれども、あそこは手足がないからできないんですよ。そういうのをどうやってやっていくか。ここら辺はぜひ、行政、立法の観点からお願いしたいことの一つです。
 それからもう一つは、規制緩和の包括性ということだと思うんです。
 先ほど、バイオマスのコジェネの例を申し上げましたけれども、私も何度も、国会の先生だの役人とあらゆることを話しました。まじめにやったんです。どっちもまじめなんですよ。これをやるために、例えば医療の採血、予防医療をやるために何が問題になっているんだと考えるわけです。そうすると、薬事法の何とかという話になってくるわけです。それでは、そこを緩和しようというわけですよ。それで、規制緩和でやるわけですね。
 ところが、別のものが出てくるんです。新しいことをやるというのはそういうことなんですよ。社会で適用しようとすると、最初に予測したってわからないものが、だから絶対だめなのは、役人が何をやりたいんだと聞くわけです。こういうことをやりたいんだと言うわけですよ。では、何が問題なんだと言うと、薬事法のここが問題なんだと言うわけですよ。では、それを緩和しようといってやりますね。このやり方では絶対にだめ。やらないよりはましだけれども、このやり方では新しいことは起きない。
 イノベーションというのは、やっているうちに、ちょっと待て、これがいいと言っていたけれども、実は、人々が喜ぶのはこっちなんだといって変わっていくんですね。それと、人間の知恵は有限ですから、山のようにある法律だの政令だ省令だ条例だ、そんなものがみんな頭に入っている人はいないんですよ。やる前にはわからないんですよ。だから、包括的な、どういうふうにやったらいいのか、つくっていただきたいんですよ。
 例えば、総合特区と言っている総合というのもそういう意味だし、包括的な復興特区と申し上げているのもそういう意味なんだけれども、何かやろうとしたらいろいろな問題が必ず出てきますよ。それを、わかりません、ここら辺は私は素人ですので、例えば知事と自治体のヘッドが裏書きすればやっていいとか、そういうぐらいのかなりソフトな、内閣府、法制局なんかが目をむくような、それぐらいのことをやらないと僕は前に進めないと思う。
 本当は、アメリカみたいなのはあり得るんですよ。例えば、ユーチューブが動画の配信でもって世界の一つの情報イノベーションの基盤を担いましたよね。あんなものを認可するところはないですよ、あれは明らかに個人の知財の侵害ですから。だけれども、あれはやっちゃったんですよ。そうしたらば、ニューヨーク・タイムズが半年後ぐらいに表彰しちゃったんですよ。そうして、みんなおもしろいというのでもってわっといっちゃったから、もうとめられないんですよ。今だって、あれはしばしば違反だと思いますよ。
 それぐらいのことができるのがアメリカのダイナミズムなんだけれども、日本でそれはなかなか難しいかもしれない。だから、日本にふさわしいような仕組みというのを、ぜひ議員立法か何かでやっていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
 私が思いつくのは、その二点ぐらいですね。

発言情報

speech_id: 117703910X01120110826_009

発言者: 小宮山宏

speaker_id: 23389

日付: 2011-08-26

院: 衆議院

会議名: 科学技術・イノベーション推進特別委員会