2011-08-23
衆議院
諸岡正道
海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会
諸岡正道の発言 (海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会)
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○諸岡参考人 日本郵船株式会社代表取締役の諸岡でございます。
このたびは、我が国経済を支えるアジアと中東、欧州、アフリカとを結ぶ大通商路を崩壊させかねないリスクのあるソマリア・アデン湾並びにインド洋における海賊問題に関しまして、弊社の意見、要望を述べさせていただく機会をいただき、まことにありがとうございます。
初めに、二〇〇九年の海賊対処法により、ソマリア・アデン湾に海上自衛隊の護衛艦や哨戒機を派遣していただき、海賊対処活動に御尽力をいただいております日本国政府並びに国会議員の皆様、関係者の皆様に対しまして、厚く御礼を申し上げます。
しかし、海賊問題の現状に目を向けますと、我が国を初めとした各国の懸命な対策にもかかわらず、残念ながら、身の代金目的の人質事件など、海賊による被害はますます急増、凶悪化し、また、発生海域も広域化しており、今後さらなる海賊・テロ対策が強く求められている状況でございます。
本日は、日本船主協会より芦田会長が御出席されておりますので、ソマリア・アデン湾並びにインド洋における昨今の海賊事件の概要説明と、海運業界における海賊対策の現状並びに要望につきましては、後ほど芦田会長よりお話しいただくことになろうかと存じます。
よって、私からは、実際昨年十月にハイジャックをされました、私ども日本郵船の完全子会社であります日之出郵船株式会社が運航していました貨物船イズミの事例を御紹介させていただき、あわせて弊社の要望を述べさせていただきたいと思います。
本船イズミは、フェアフィールドシッピングという会社が所有している船舶で、日之出郵船がフェアフィールド社から同船を借り受け、運航を行っておりました。
同船の概要につきましては、お配りした資料に記載されておりますように、総トン数一万四千百六十二トン、全長百四十七メートル、乗組員は全員フィリピン人で、二十名が乗船しておりました。
同船は、日本と東アフリカの間を三カ月間で一巡する定期航路に従事しており、事件が発生した航海では、昨二〇一〇年八月三十一日に神戸、九月十二日に君津で鉄鋼製品や雑貨一万七千四十トンを積み、九月二十二日にシンガポールで燃料油を積んだ後、ケニアのモンバサ向けに航海を開始しました。
モンバサに至るまでの航路は、海賊の出没が多数報告されている海域を通る直行航路を避け、安全だと言われていたマダガスカル島の南端からアフリカ諸国の領海内を通過する迂回航路を選定しておりました。航路の概要は、お配りした資料に記載しております。
また、インド洋を航行中から、万一海賊に襲撃された場合でも容易に乗り込むことができないよう、船体の周囲に有刺鉄線を張りめぐらし、さらに、操舵室の見張り員を増員しておりました。航行速力は全速力の約十三ノット、時速に換算すると約二十四キロで、同船の安否に関しては、船長からの報告とともに、弊社の船舶動静管理システムでも毎日確認しておりました。
モンバサには現地時間の十月十日十一時に到着予定でしたが、到着の約二時間前、八時五十三分に、同船が異常を知らせる船舶警報通報装置を作動させました。その後、フェアフィールドシッピング社、日之出郵船並びに弊社の安全運航を担当する部署が同船に連絡をとりましたが、いずれも連絡をとることはできませんでした。
その後、同船の付近を航行していたEU軍のデンマーク艦船がハイジャックされていることを確認し、その事実が国土交通省経由、日之出郵船に連絡された次第です。ハイジャックされた地点は、タンザニア領ペンバ島東方沖約十五キロの海域です。
その後、同船はソマリア沖に拘束され、本年二月二十五日に解放されました。遺憾ながら、拘束されている間、海賊の母船として使われていた模様です。
人質となった船員や本船の被害に関しましては、同船の備品や乗組員の貴重品、現金などが盗難に遭い、船室のドアや床が損傷を受けましたが、乗組員に危害が加えられた様子はありませんでした。
日之出郵船は、今回の事件以降、安全な航海を確保する有効な手段がないという理由で、東アフリカ航路を中断しております。同社は欧州航路も運営しておりますが、海賊行為がアデン湾のみならず、インド洋北西部、紅海南部で多発し危険なことから、スエズ運河を通過せず、アフリカ南端の喜望峰を迂回する航路を選定せざるを得ない状況でございます。
ペルシャ湾方面への配船は、最短航路をとらず、インド沿岸を航行する迂回措置をとっております。日之出郵船のみならず弊社の他のグループ会社でも、航路の休止や迂回による燃料費の増大など大きな影響を受けております。
また、一九九六年以来、十五年連続して運航している弊社客船飛鳥の世界一周クルーズも、昨年、ことしと二年連続して、スエズ運河通航から引き続き地中海クルーズを断念したため、一部乗客の予約取り消し等、客船運航面においても経済的なダメージを受けております。
以上、本船イズミのハイジャック事件を御紹介いたしましたが、同船以外にも数隻の弊社関係船が海賊の被害を受けております。特に、二〇〇八年四月に、原油を満載しましたタンカー高山がアデン湾で襲撃された事件は日本でも大きく報道されました。その他の事件に関しましては、お手元の資料に記載してあるとおりでございます。
仮に、このまま凶悪化する海賊行為への対処を放置した場合、私どもが危惧いたしますことは、現在、四百人前後の船員を海賊に拘留されているわけですが、フィリピンやインド等の船員供出国が、適切な海賊対処を行わない国が運航する商船への乗船を拒否する事態でございます。
我が国の海運会社が運航する外航商船の船員のうち、外国人船員は約九五%を占めていると言われております。これらの船員が乗船拒否するような事態が発生することとなれば、我が国の商船の運航は全く成り立たず、石油、LNGなどのエネルギー、食料、鉄鉱石の輸入も、また自動車、機械などの輸出も途絶えてしまいかねません。
ペルシャ湾の出入り口に当たるホルムズ海峡は、我が国の原油輸入量の約八八%、一億六千万トン、LNG輸入量の約二六%、千六百万トンが通過する資源エネルギーの最大通商路です。また、紅海、アデン湾は、欧州、アフリカ諸国との工業品、消費財、エネルギーの重要な通商路です。
これらの地理的なリスクに加え、船員供出国の乗船拒否リスクもあわせると、冒頭で申し上げましたとおり、ソマリア・アデン湾並びにインド洋における海賊問題は、我が国経済を支えるアジアと中東、欧州、アフリカを結ぶ大通商路を崩壊させかねないリスクであると御理解いただけるものと思います。
ますます広域化、凶暴化する海賊行為に対処する有効手段としては、後ほど日本船主協会より、海上自衛隊の護衛艦または補給艦の追加派遣や日本籍船への武装警備員の乗船を可能にする措置など、具体的な要望が挙げられます。
特に、国際的には、武装警備員を乗船させてハイジャック対策を施している傾向が見られますため、弊社も、これら具体策の実現、実施に向けた御検討を強くお願いするところでございます。
また、ソマリアにおける海賊問題の抜本的な解決策として、海賊行為はおいしいビジネスではないということを認識させ、海賊行為を抑止する施策を重ねていくことが重要であるかと思います。
具体的には、海賊を厳正に処罰するための国際法、裁判システムの整備、周辺国の海上警戒態勢整備への積極的援助、さらには、疲弊するソマリア社会への人道、治安維持、インフラ整備のための支援や協力について、国連や国際海事機構など、国際的な機構、枠組みの中で、我が国が今後とも積極的に取り組んでいただきたいと思います。
これこそ、三月の大震災で各国から多大な支援を受けた我が国の、世界各国に向けた返礼の一部になるものだと信じております。
国会議員の皆様方の強力なリーダーシップをお願い申し上げます。
私からの意見、要望は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)