山根隆治の発言 (環境委員会)

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○山根隆治君 御報告いたします。
 去る一月十九日及び二十日の二日間、小笠原諸島の世界自然遺産登録に向けた取組状況等に関する実情調査のため、北川委員長、轟木理事、川口理事、亀井委員及び私、山根の五名で調査を行ってまいりました。
 一日目は、まず、小笠原諸島の世界自然遺産登録に向けた取組などについて、環境省、林野庁、東京都及び小笠原村から説明を聴取いたしました。
 小笠原諸島は、東京から南に約千キロメートル離れた三十余りの島々から成り、どの島も成立以来大陸と陸続きになったことがない海洋島で、現在、父島と母島に約二千五百人が居住しております。
 自然遺産として、平成十九年一月に世界遺産条約に基づく我が国の暫定一覧表に登録され、平成二十二年一月、世界遺産一覧表記載のための推薦書がユネスコ世界遺産センターに提出されました。世界自然遺産の四つの評価基準のうち、地形・地質、生態系、生物多様性の三つに適合するとされています。
 平成二十二年七月、国際自然保護連合、IUCNによる現地調査が行われ、その結果を踏まえ、IUCNから我が国に対して、既存の海域公園地区を推薦区域に編入することなどを内容とする指摘や追加情報の要請があり、同年十一月、これに対する回答が行われました。世界自然遺産登録の可否は、本年六月下旬に決定される予定です。
 観光業従事者が多い小笠原村では、世界自然遺産に登録されれば、村の活性化と貴重な自然環境の保全という二つの目的を同時に達成することができるとして、村民の期待も大きいとのことでありました。
 小笠原諸島の世界自然遺産登録に当たり最大の課題とされた外来種対策は、環境省、林野庁、東京都、小笠原村、民間団体及び村内外のボランティアの連携協力の下、実施されています。駆除に当たっては、別の外来種がかえって増えてしまわないよう、捕食関係なども考慮しながら取組が進められています。こうした外来種対策は、一定の成果を上げており、固有植物を食べたり植生を踏み荒らしたりするノヤギの根絶に成功した兄島では植生が回復してきています。
 また、東京都では、東京都自然ガイド同行による立入りや利用のルールを定めたエコツーリズム制度を実施しており、自然環境の保全と適正な利用の両立が図られています。
 次に訪れた長崎展望台では、父島の乾燥した気候に適応した固有種の乾性低木林や、外来種のモクマオウやリュウキュウマツといった樹木をつぶさに観察しました。外来植物が繁茂すると本来の植生に影響を及ぼすことから、薬剤などを用いた駆除が進められています。また、同展望台からは、乾性低木林に覆われた兄島が間近に見えたほか、IUCNからの指摘を受けて推薦地に含めた兄島海域公園地区を確認することができました。
 その後視察した東平は、希少種の生息・生育地域であることからノヤギ・ノネコ侵入防止柵が設置されており、柵の総延長は約五キロメートル、柵に囲まれた面積は父島の約九%になっています。
 この柵の内側にある、希少種のアカガシラカラスバト、通称アカポッポが繁殖しやすい環境を守るためのサンクチュアリーは森林生態系保護地域のモデル地区となっており、立入禁止になっている繁殖地の手前には立入り条件の異なる二つの利用ルートが設定されています。入口には、外来種の侵入防止のための種子を除去する装置や、観光や調査研究などの利用目的ごとに色の違う石を竹筒に入れていく利用者数計測装置が設置されていました。
 ノネコの捕獲も行われており、東平を中心に約百四十個の捕獲用のかごが設置されているとのことでした。これまでに二百頭以上が捕獲されており、その大部分が東京本土に搬送され、社団法人東京都獣医師会の協力の下、動物病院における飼い猫としての順化と飼い主探しが行われています。捕獲後、搬送用の船が出航するまでの一時飼養施設として、ねこ待合所が村の中心部に設置されています。その外壁には、引き取られたノネコの似顔絵と受入先の動物病院名が掲示されるなど、ノネコ問題の普及啓発施設としての役割も果たしています。ノネコの根絶と同時に、新たなノネコを生み出さないよう飼い猫との共存も図っていく必要があるとのことでした。
 北米原産のトカゲで、特定外来生物でもあるグリーンアノールは、小笠原諸島では父島と母島に生息し、特に父島での影響が大きく、希少種のオガサワラシジミというチョウが父島では全く見られなくなっています。父島の港湾区域では、グリーンアノールが船に紛れてほかの島に拡散するのを防ぐため、粘着トラップで捕獲して生息数の低密度化を図っています。母島では、新夕日ケ丘などの希少な昆虫類の保護区にグリーンアノールの侵入防止柵を設置しており、そこではオガサワラシジミの産卵が確認されるなどの新たな成果が見られています。
 小笠原諸島唯一の固有哺乳類で、国内希少野生動植物種や天然記念物に指定されているオガサワラオオコウモリは、種子の散布者、花粉の媒介者として生態系において重要な役割を果たしていると見られ、絶滅すると植生が変わる可能性もあると指摘されています。一方で、島レモンの葉やタンカンの実を食べるなどの農業被害や防除ネットへの絡まり事故も発生していることから、小笠原亜熱帯農業センターでは、個体を傷つけない防除方法を研究し、被害防止と保護の両立を図っています。同センター視察中、オガサワラオオコウモリが日没後にねぐらから飛び立つ様子を観察するという貴重な体験ができました。
 島内視察の間、委員からは、小笠原諸島の世界自然遺産登録の可否の見通し、世界自然遺産として登録された場合の観光客受入れの在り方、駆除したノヤギの処理方法、飼い猫の適正飼養ルールの有無、オガサワラオオコウモリのねぐらの機能や繁殖実態、島内のごみ処理の状況等について質問が行われました。
 二日目は、まず、船上から父島周辺海域を視察しました。海洋プレートが沈み込み始めて間もない時期にのみ発生するボニナイトの枕状溶岩や、カルスト地形が海中に沈降して形成された沈水カルスト地形、ハートロックとも呼ばれる赤い岩壁の千尋岩などを観察し、世界自然遺産として推薦された価値の一端に触れることができました。途中、何度も遭遇したザトウクジラの観察に当たっては、クジラから百メートル以内を侵入禁止水域とするなどの小笠原ホエールウォッチング協会の自主ルールにのっとって観察を行いました。一方で、船上からも、父島の急峻な斜面をノヤギが移動する様子や、モクマオウの群生ぶりが見られるなど、外来種問題の深刻さも痛感させられました。
 最後に小笠原村の集落景観を視察しました。現在、東京都では、小笠原諸島の世界自然遺産登録も念頭に、メーンストリートにおける無電柱化や歩道の拡幅工事を行っており、完成後には、小笠原諸島の玄関口として、より魅力ある景観となることが期待されます。
 今回の訪問では、小笠原諸島の自然環境を守るための様々な主体による真摯な取組に深い感銘を受けました。こうした努力が報われ、世界自然遺産として登録され、貴重な自然環境が今後も受け継がれていくことを切に願ってやみません。
 最後に、今回の派遣に際し、お世話になった関係者の方々に厚く御礼を申し上げ、報告を終わります。

発言情報

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発言者: 山根隆治

speaker_id: 17341

日付: 2011-03-10

院: 参議院

会議名: 環境委員会