小室淑恵の発言 (国民生活・経済・社会保障に関する調査会)

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○参考人(小室淑恵君) ただいま御紹介いただきました株式会社ワーク・ライフバランスの小室と申します。貴重なお時間をいただきまして、本日はありがとうございます。
 私は、今日はパワーポイントを使って発表させていただきます。(資料映写)
 現在、私は株式会社ワーク・ライフバランスというそのままの社名の会社をやっているんですけれども、本業は企業の働き方を見直すコンサルティング、残業を削減する仕事が非常に多くて、一年間で残業の三、四〇%を削減するというようなことをやっています。
 ただ、その発端となっている、自分の現在の仕事の元々のきっかけというのがどういうものだったかということをお話ししつつ、後半は、今私どもがやっているワーク・ライフ・バランスという概念、これがまさに今日お話のテーマになっている持続可能な社会というもの、ワーク・ライフ・バランス、イコール、サステナブルな社会というふうに私たちは思っているんですが、これがどうして必要になってきたのかというような背景をちょっと前半部分で、社会と企業という面から二枚のスライドで御紹介をしまして、後半は、そのサステナブルな社会をつくるためにどういったことが必要だというふうに考えているかという提言をスライドで述べさせていただきたいと思います。
 私の自己紹介のスライドが一枚、前に入っているんですけれども、私は、現在三十六歳、結婚九年目で息子が五歳でして、この右にあります写真なんですけれども、今五歳の子育てをしながら、ちょうど会社が丸五年、出産して三週間で会社を起業して現在までやっているというような両立をしてきています。
 その発端となった九七年の出来事なんですけれども、上から二行目にアメリカ放浪というふうに書いてあると思うんですが、私が一年、大学三年と四年の間を休学しまして、一年間アメリカに放浪の旅に出ていた時期があったんですが、そのときにお金が尽きまして、仕方がないので住み込みでベビーシッターをして一年過ごした時期がありました。
 そのときに、私、目からうろこ事件があって、私がベビーシッターに雇ってもらったシングルマザーの女性が、育児休業中に在宅でe—ラーニング、e—ラーニングって分かりますでしょうか、ネットで勉強をする仕組みですね、インターネットで勉強をして資格を二つ取りまして、元々いた会社に育児休業後に復帰したときには昇格したという方がいたんですね。
 育児休業イコール、当時の日本ではブランク、育休取るぐらいなら辞めてくれと言われる社会にいた私にとって大変衝撃的で、彼女が言っていたのは、育児休業はブランクではない、その期間に何をするかが重要で、その時期に学びをし、会社の情報をまめに連絡交換をしていれば、ブランクというよりはむしろブラッシュアップの期間になるというふうに彼女は言っていて、私はこの概念を日本社会で実現したいという、自分のテーマに、そのとき夢を見付けて、日本に帰ってきてから資生堂に最初は入社したんですが、その後社内ベンチャーで、資生堂の中で育児休業者の復帰支援システムというものをつくりました。
 それが、現在は私の会社でやっているarmoというものなんですが、この左の下辺りにオレンジ色のイラストで入っているものなんですが、これは今四百社に導入をいただいていて、通常、育児休業に入った社員のことを企業は一年間ほうっておきっ放しなんですけれども、このシステムを入れると毎月上司と本人が仕事の話を連絡交換ができて、それからe—ラーニングシステムで七十講座の中から好きなだけ選んで勉強をすることができる。すなわち、休業期間でもっとステップアップをして復帰できるというような、こういったものをやっています。
 ただ、これが、現在は私どもとして本業の一つとしてやっていることなんですが、これをやっていくうちに更に気付いた大きな課題というのがありました。企業に復帰支援をさんざんして、たくさんの女性たちが復帰していって、以前よりも復帰の率が四倍上がったというような企業さんはたくさん出たんですが、復帰した後どうかというと、数年のうちに辞めてしまっています。なぜかというと、職場が長時間労働だからなんですね。復帰直後にはしょっちゅう子供が熱を出しますし、もう呼出しばかりになると。時間制約のある中で仕事をしたいと思っても、ほかの方たちは二十四時間型で働いていてどんどん肩身が狭くなると。当然、両立できるような生活というのが復帰後になかったというところで多くの方が辞めていらっしゃいました。
 そこで、私の問題意識は更に上の段階に行きまして、復帰した後の職場の働き方というところが本質的な問題なのではないか、それが短時間で生産性高く働くような人材の集合体の企業になっていないから、本人たちは肩身が狭くなって辞めるし、企業は残業代がかさんで利益が出ないし、互いに損な体質を持っているのではないかということで、現在は、働き方を見直す、すなわち生産性を上げないといけないので相当職場に深く入り込んでいろんなツールを使って働き方を見直していくんですけれども、そういったことを現在やっているというような、ワーク・ライフ・バランスというのが育児をしながら働く人にとっても働きやすい職場ですし、それ以外の方にとっても生産性が高く企業がもうかる仕組みだということを信じてやっている人間ですということを紹介させていただきました。
 ちょっと、ここからは二枚のスライドを使いまして、今の日本社会と企業が一体どういうニーズがあってワーク・ライフ・バランスということに向かわざるを得ないのかということを簡単に解説したいと思います。
 私どもの会社は今五百社のクライアントがいるんですが、創業してから一度も営業の電話をしたことがないんです。八百社全部、先方からお問合せをいただいて、ワーク・ライフ・バランスに取り組みたいと企業の方が実は今さんざん言ってくるという時代なんですね。なぜ今、企業がそんな社員のための、一見福祉に思えるようなことを熱心にやろうとしているのかということをちょっと御紹介したいと思います。
 まず、社会的な背景なんですが、左上にありますように、今何といっても少子高齢化、そこから、その下ですね、労働力人口の減少が起きていて、これは年金の払い手と言い換えることもできます。先日も三井化学さんとお話をしていたら、あと五年で社員数が定年退職によって半分になるんだそうです。NTT西日本さんはあと八年で社員数が三分の一になるんだそうです。それぐらい団塊世代前後のところに社員が固まって存在している。その方たちがあと二年後に六十五歳という年金のもらい手になりますので、年金財源はあと二年後から急枯渇に向かっていくと。
 じゃ、そうならないために、年金の払い手をどう増やすかと考えると、一番手っ取り早いのは、一番すぐに浮かぶのは出生率の向上という、女性が子供をもっと産んで将来の年金の払い手を増やすという政策なんですが、これには大きな落とし穴があります。
 日本は、一九九七年に専業主婦家庭の数を共働き家庭の数が超えまして、働いている女性の方が圧倒的に多い社会、つまり女性は年金の払い手、立派な一なんですね。これが、今の日本社会ですと、出産で辞めてしまうか復帰した職場が長時間労働なので力尽きて辞めるかのどちらかですので、先に年金の払い手がマイナス一になります。二十年間そのまま行って、産んだ子供の分の年金がプラス一になっても、これではプラマイゼロですので、実際には出生率を上げれば上げるほど、短期的に言うと年金財源は減るということが言えるんですね。これでは何の解決にもならないので、実は出生率の向上は長期的にはとても必要ですが、短期的に効果を出すのは女性の継続就業、辞めないですぐ復帰できてその後働き続けられる、そして二十年後に子供の分の年金の払い手がプラス一、プラス二と乗っかってくる、この両方を長期的、短期的にやっていかないと意味がないということが言えるわけです。
 それに対して、左下のような次世代育成法、二〇〇三年に施行された、企業に対して自社で育児する社員をどう支援するのかを計画を立てて国に提出し達成することを義務付けた法律、これが出ていて、これも企業に対して非常に強制力が今発揮されて、とても企業はこれを背景に熱心に両立支援に取り組んできています。そしてさらに、二十一世紀職業財団などに代表されるような職場復帰を促す奨励金というのを企業に出している、こういったものも今企業さんは非常によく使っていて、復帰をする人に対して何かしら休業中のケアをすると奨励金がもらえるということで、企業の推進になっています。
 ところが、右側のグラフを見ていただきたいんですが、大変ショッキングな現実があります。縦軸が出生率で横軸が女性の労働力率、国際比較をしているグラフなんですが、日本は左の下なんですね。女性が子供を産んでもいなければ働いてもいない。一方で、他の国は女性が働くほど産んでいる。右上にありまして、最近右上にどんどん移動しています。女性が働くほど産むと聞くと非常に違和感があって、日本では女性が働くから子供を産まなくなったというような、右下に下がっていくようなイメージを強く持っている方が多いんですが、それは四十年前のデータなんです。四十年前は、今右上にある国々のほとんどが日本の左のちょっと上辺りにあって、当時は女性が働くほど産まないというのが国際的な傾向でした。でも、四十年間の間に日本だけ置いてきぼりで、ほかの国はぐわっと右上に移動してしまったんですね。これは、四十年前に取った政策が日本と他国で全く違ったからです。
 日本は、女性が働きになんか出るから仕事が面白くなっちゃって産まないんだと、家庭に閉じ込めておきゃ産むんだよということで、左上に行かせよう政策を行ったというのに等しいと思います。女性を二十四時間家庭へ、男性を二十四時間労働へ。そのことによって、介護施設や保育施設を建てなくてはならない資金を抑制したんですね。施設を造る費用を節約するために、女性を二十四時間家庭に入れて男性を二十四時間筋肉労働に引っ張り出す。これは、四十年前の政策としては大変有効だったんだとは思うんですが、それの結果、じゃ左上に動いたのかというと全く動かずに、日本の位置は垂直に下に落ちました。出生率だけが落ちて労働力率も全く上がりませんでした。
 他国はどのような分析、対策をしたかというと、女性が働くと産めない環境が問題だから環境整備しようと三点のことを行いました。一点目が、安心して預けて働ける質の高い保育所の数を増やす。二点目が、企業の両立支援制度の整備を義務付けて、守らない企業にはペナルティーを科す。そして、三点目が一番重要なんですが、男女共に早く帰って育児、家事に携われるように労働時間規制を入れる。フランスは週三十五時間しか働いてはならないんですね。かつ、前日帰宅した時間から十一時間たたないと翌日の業務を開始してはならないという、今やEUで批准されている法律があります。後ろの方に参考で入れておきました。実際に本当に一日七時間しか働けないようになっているんですが、労働生産性は日本人の一・三倍ほどあります。時間当たりの生産性は日本人よりもずっと高いという状況なんですね。
 こうやって右上に行かせよう政策を取って実際に右の上に上がっていきましたが、そこにはもう一つ大きな要因がありました。女性が働いたら忙しくなって産まないはずなんですが、女性が働いても産んだ理由は、妻が働いたことで収入が二本になり家計が安定したので、先進国は教育費がとても高いんですが、その教育費を出してでも二人以上育てられるという見込みが立ったからなんですね。経済的な理由で諦める人が減った。
 これは現在の日本にとても関係がありまして、弊社の試算なんですが、四十年前の男性一人の収入で育てられる子供が、当時、妻が専業主婦でも三人育てられました。現在、三十代の男性一人の収入で、今子供を育てるというと大学まで行かせるのが通常になっているので、何と一・三人分しか育てられないんですね。無理すれば二人分出せないこともないんですが、そうすると夫婦の老後資金がゼロ円になるという計算になります。この中で、二人以上育てられる経済力というところが大きなハードルとなって二人以上持たない。これが、他国の場合は妻が働いたことで家計が二本になったので上に上がっていった。
 これは、内閣府のデータを見て私も大変驚いたんですが、妻が出産で仕事を辞めてパートで復帰して生涯を終えた場合の生涯賃金と、辞めないで三回育児休業を取ったとしても生涯働き続けた場合の生涯賃金が、一人の女性で五千万から二億違うんですね。これだけ生涯賃金が増えたらその分の税収もすごく本当は増えるはずなんですけれども。こういった妻の収入ということが大きな力になるということが分かって、今は個人も非常に右上に行きたがっている。男性も夫婦共働きの方を非常に選びたがっていますし、行政も、右に行くことで短期的年金収入、上に行くことで長期的年金収入を得なくてはならないという、右上に行かざるを得ない環境が日本にあると言えます。
 下に三行でまとめましたが、だから、働きながら子育てをするということが社会の年金問題を救う、両立できる制度整備が急務であるということが言えると思います。
 ただし、どんなにこれを、女性の両立支援だけやっても駄目なんですね。もう一つ女性が二人目を産まない理由があるからです。私も出産後三か月目のときに嫌というほど体感したんですが、今六十時間以上残業する人が世界で一番多い国は日本なんですね。そんな国で子供を産むと、妻に待っているのは深夜まで続くたった一人での育児。私の夫は経済産業省に勤めているんですけれども、実は、当時は深夜二時の帰宅時間でしたので、もうベッドに置いたら泣く、置いたら泣くという子供との悪戦苦闘をして、やっと深く寝てくれてベッドに置いた瞬間、深夜二時ぐらいに、見てたのかというタイミングで帰ってきて、そしてドアを閉めた音で息子を起こすというのをすると、もう私の心に夫への殺意が芽生えて、二度と帰ってこなくていいんだよという話を夜中に何度もしました。結局、一人目を産んだ女性ほど、こんな状態で二人目を産みたくないと、当時はけんかをすると最後はもう二度と二人目産まないからということを言っていました。
 二人目の出産体験がトラウマ体験になるのは、実は男性の労働時間というのが大きな関係があります。なので、これは内閣府のデータでも、夫の帰宅時間が遅く、家事、育児への参画時間が短い家庭ほど妻の出産への意欲が落ちるという傾向、きれいに出ていますので、一番実は根本に大事なのは、一番下の行ですね、男性を含めた働き方の見直し、ここが重要ではないかなというふうに社会的なニーズから考えています。
 では企業の方はどうかというと、企業は二〇〇七年問題、団塊世代の一斉定年退職によって、今人はいないけど仕事は残っちゃうという状態が起きています。さっき例に出したNTT西日本さんは毎年三千人定年退職するんですが、採用数は九十人なんですね。二千九百十人分の仕事が毎年中堅の上に乗っかっていっている。そうすると、中堅はただただ残業が膨大になっていってうつ病が非常に発生してきています。ここ数年でうつ病が異常に増えている印象を皆さんも持っていらっしゃると思いますが、団塊世代が辞めて、その労働量は全然変えないままに少ない人数でやっているわけですから、当たり前のことが起きてきているんです。これによって非常に長時間労働の企業には優秀な人はもう集まらないですし、定着もしないしモチベーションも上がらないというような、会社全体が停滞した空気、これは日本の団塊世代が多くいた企業さんには全てに起きている現象なんですが、こんなことが起きてきています。
 こういうことが起きた企業さんが、コストを掛けずにどうやったらうちの会社にもっと優秀な人をこれからも引き付け定着させ、高いモチベーションで働かせられるかということをいろいろ考えたときに、一番コストが掛からなくて最も若手の社員を引き付ける施策がワーク・ライフ・バランスというものだったというところで、現在企業が自らワーク・ライフ・バランスということを推進していっているという背景があります。
 それを更に推し進めると、その下に潜在労働力に注目をする必要性が出てきます。人はいないという中で、ところが新卒男子日本人にこだわる企業というのがまだまだいるんですけれども、それでは人は採れないということになってきて、じゃ日本の潜在労働力、これから目を向けていかなきゃいけない労働力は誰かというと、右側のグラフで非常に端的に分かります。この右側のグラフ、水色の方がHDIといって、その国で教育を受けた人がどれぐらい能力を伸ばしたか。日本は世界第八位で男女ともにトップクラスの能力水準を持っています。一方で、黄色い方の棒グラフはGEMといって、女性が政治や経済にどれぐらい参画をしているかというもの。これは何と直近では五十九位に転落していて、キルギス、ウルグアイと同順位なんですね。
 つまり、能力水準はトップクラスの男女がいながら、その半分の女性を能力以外のもので排除した結果、あれほどしか活用していない、登用において性差別がある大変悲しい国ということが分かるんですが、このグラフを是非ポジティブに見ていただきたいんですね。あの赤丸の中こそ潜在労働力なんです。能力は十分で、まだ使っていない人材があんなにいる国は世界の中でも日本だけ、あの赤丸の中を使いさえすれば、まだまだ労働力人口はいるでしょうということなんですね。
 これに気付いた利益にシビアな企業が、左下ですけれども、女子学生採用における優位性を確立したり、せっかく採った人材を長期的に育成できる環境づくり、つまりロールモデル、先輩ですね。目指す先輩、仕事の壁を乗り越えて昇進をしていっている管理職の先輩を三割以上、女性管理職比率を増やすなんということを積極的にやるようになり、男の業界と言われた証券会社でも、大和証券さんが三年前に女性役員を四名抜てきして大変話題になりましたが、その三年前から現在まで、大和証券さんの学生からの人気ランキングというのは三年間男女ともにうなぎ登りなんですね。これによって採れる人材の質がぐっと上がったということをおっしゃっていました。
 こうやって多くの企業さんが女性の働く環境というところに目を向けたんですが、一方で、全く女性ということに興味を示さなかった男性中心でこれからもやっていけるという企業さん、たくさんいました。ところが、そんな企業が最近ぐっと目を向けてきているのが、その下、介護という問題なんです。私はこれを五年前からもう一つの二〇〇七年問題と名付けてずっと提唱してきているんですが、二〇〇七年に一斉に定年退職した団塊世代が、先ほど先生がおっしゃられたとおり、これから一気に七十代に突入して要介護になる割合がぼんと増えます。その人たちを見るのは団塊ジュニア世代なんです。施設は圧倒的に足りないですから、仕事と介護を両立しながらやっていかなきゃいけないようになるのが、私、団塊ジュニア世代なんですが、この世代以降です。ところが、この世代は圧倒的に共働きですから、お父さんの介護でどっちが会社休むのという話になるんですね。私たち、同じように今日までやってきたでしょう、育児はほとんど私がやったでしょうと。あっ、そういえばあなたのお父さんじゃないとか言われてですね。
 非常にシビアで、男性も当たり前のように自分の親の介護をする時代になってきていて、実はこれ、男性の方が介護をする可能性が最近、企業においては高いんです。まず、三十代で男性の方が未婚率が二〇%も高いという企業がほとんどなんですね。しかも、会社のホープで一番仕事をしているような人というのが大抵未婚者、結婚しなかった人なんです。しかも、四十代、五十代になると九、一で男性の割合が高いんですね。でも、介護で休む人というのは四十代、五十代なんです。
 なので、このまま行くと、育児で休んでいる女性の数なんかよりも介護で休んでいる男性の数の方がずっと多いという企業が、大体四、五年後ぐらいで数が逆転してくるということが分かっています。トヨタ自動車さんの試算によると、現在六万八千人いる社員が十年後に抱える親の介護の数が一万四千人、社員の六分の一以上で、しかも累積して増えると試算していました。介護は十年、二十年、平気で続くんですね。なので、定年までずっと介護と両立ということが起きてくると。
 じゃ、そうなったら、一番下の二行ですけれども、十年後も継続して利益が上げられる企業というのは、そもそもほとんどの人材が六時以降は業務に時間を使えなくなるわけですから、全員が九時—六時で仕事を終えて利益が上がるような組織でなければ十年後はもう勝てないということだねと。これに気付いた多くの企業さんが自らの組織を見直そうという流れの方に入ってきた。これが弊社に御依頼をいただいている企業さんが急速に増えているというところでもあり、今日議論になっている持続可能な社会ということが求められている背景かなというふうに思います。
 ここからは私からの提言なんですけれども、ではこれからどういう企業を増やしていかなくてはならないのか、そういう企業を増やすような社会の仕組みを作らなきゃいけないのかというところなんですが、現在、残念ながら短期的な思考の経営者の方が取る手法というのがこういった図になっています。
 これは、左側の図が、この一本一本の棒が労働者をイメージしています。ブルーの部分が八時間以内の労働、上の緑色の部分は残業時間というイメージをしてください。今は八時間を超えた残業をしている人がたくさんいるんですが、この中で短期的にコスト削減をしようとする企業が多いんですが、コスト削減の手法が赤い点線の中を削る、つまり固定費を下げようとして人員削減に走る企業さんがいます。そうすると何が起きるかというと、右側の図ですね、あの点線になって欠けた部分の労働力を上に乗っけている。黄緑色の部分ですけれども、ここに乗っけて、一人一人の労働時間を延ばすことで人員は減らしてコストを削減しようとするんですが、ところが昨年の四月に労働法は改正になりまして、六十時間以上残業する人は一・五倍の残業代を払わなきゃいけないという法律になっているので、実はあの部分のコストというのが非常に大きく、下に四行で書きましたが、削減した固定費を大幅に上回る残業代増となって、更にメンタル疾患増加による費用とリスクの増加、そして次々に優秀な人材が流出していき、そして全社員のモチベーションもダウンしている、こんな状況に短期的思考の経営者の会社というのが陥っている現象というのを見てきています。
 さらに、その企業の行く末というのをイメージしてみると、この右側、次のスライドの右側になります。
 これから介護で辞職する人、介護で時間制約を持つ人、メンタルで時間制約を持つ人、様々な人が生まれてきて、あの点線の中の部分の労働力が抜けることになります。そうすると、右下の四行で書きましたが、そもそも頭数を減らしちゃっていますので、抜けた分の労働をフォローする人がいないんですね。抜けたフォローが不可能、そして労働環境の悪さで優秀な人材が新規でも採れない、そうするともう事業継続が不可能になる、こんな流れが短期的な経営者の企業の行く末として出てくることが考えられます。
 一方で今、逆転の発想で取るべき手法、実際に幾つかの企業さんが実はこれをやっているんですけれども、どんなふうにやるとこれからのサステナブルな社会になるのかというと、あの黒い点線の中の部分を削って、つまり、今社員がやっている残業を削って右側の青い部分、つまり頭数、若者の雇用を増やすという方向に動かす。同じコストですけれども、右側の四角い部分のところに移すと、右の下の三行ですけれども、若者の雇用を増やす。そして実はコストは非常に減ります。残業代は一・二五倍払っていますので、ここの部分が減って若者の安い労働力が確保できる。時間制約を持つ社員の積極的採用で残業をさせないようにするというようなことをすると、一日八時間以内のフレッシュな集中力のある質の高い労働というので業務が遂行するということができる。この行く末というか未来というのがスライドの七番の右側になります。

発言情報

speech_id: 117714323X00620110427_005

発言者: 小室淑恵

speaker_id: 28859

日付: 2011-04-27

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済・社会保障に関する調査会