松田公太の発言 (本会議)

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○松田公太君 みんなの党、松田公太です。
 私は、みんなの党を代表して、原子力損害賠償支援機構法案に反対の討論を行います。
 私が国会議員になってから一年がたちますが、たった一年の間で政府・民主党が作成した場当たり的な先見性のない政策や法案を数多く目の当たりにしてきました。しかし、今回のこの原子力損害賠償支援機構法案は、その中でも最も愚策で、満身創痍の日本を誤った方向に導く危険な法案の一つだと言わざるを得ません。
 なぜ、この法案がそれほどまでに間違っているか。良識ある議員の皆さんでしたら既にお気付きだと思いますが、この場をお借りして申し述べたいと思います。
 まず第一に、この法案は、資本主義の理念と原則を踏みにじるものだからです。
 私は、六月十四日に閣議決定されたこの法案を読んだ瞬間に背筋が凍る思いをしました。資本主義社会では、失敗をした者が責任を取るというのがルールです。しかし、この法案は、失敗をした東京電力や利害関係者が特別扱いの救済を受け、そのツケを罪のない国民に回すというものです。
 私の周りの多くの経営者は、このような法案が一気呵成に可決されてしまう日本の将来に非常に憂慮しております。自分や家族が路頭に迷うかもしれないリスクを取りながら、決められたルールの中で経営をすること、それがいかに大変なことか、菅総理はお分かりになりますでしょうか。簡単に債務超過にさせない、しないと言ってしまうような方には理解は難しいでしょう。
 資本主義の原則を大切だと思っていないから、このような法案を安易に作ってしまう。だから、この国にはベンチャー企業が増えないのです。起業家が輩出されないのです。新規の企業が生まれて、増えないということは、国の経済に未来がないということです。普通の感覚を持った経営者は、これでは残念ながらどんどんと海外へ出ていってしまうでしょう。本法案に賛成の方々は、この瞬間は気付かないかもしれませんが、このような考え方が長期的に日本経済を衰退の道へといざなっていることを認識していただきたいと思います。
 第二に、法治国家として本来取るべく道は東京電力の破綻処理ですが、それを明確な理由なしに回避していることです。
 それを回避する理由として、政府や修正案提出者は様々な言い訳を考えておられましたが、どれもこれも詭弁で国民の目を欺くものばかりです。
 例えば、東電を破綻させると安定的な電力の供給に支障が生じるというもの、これは全く理由になりません。事業者の法的整理は、完全に見捨てられない限り事業の停止を意味しません。政府が電力供給に責任を持ち、運転資金を融通するなどの策を講じれば支障は生じないはずです。会社更生手続をした日本航空も一時は同様の指摘がありましたが、サービスは継続されました。
 そして、会社更生法を適用すれば一般担保付社債よりも損害賠償債権が劣後するので被害者救済ができなくなるというもの、これも言い訳です。電力債には優先権が与えられていますが、国は残った賠償債務について援助する責務があると原賠法にも書かれております。国が破綻処理のため一時国有化で誠実に対処する以上、被害者救済が怠ることはないはずです。
 それでは、なぜ一番透明性があって分かりやすく公平な法的整理を選ばないのか。
 私は、四月十四日の経済産業委員会で海江田大臣に、東電は破綻処理をし、一時国有化するべきではないかとの質問をさせていただきました。そのときの最初のお答えが、九十三万人の株主の権利を守らなくてはいけないということでした。私は、海江田大臣が本心でそう考えるとは思えません。とっさに官僚が準備した答弁だったのかもしれませんが、そのようなときにこそ政府が間違った思想に毒されている状況がはっきり見えると思います。
 御存じのことだと思いますが、株を購入する人や法人は、株価が上がった場合や配当金が出る場合の受益を期待して購入するのです。その代わり、下がったりただの紙くずになってしまったりする可能性も引き受けなくてはいけません。なのに、東京電力という巨大な利権を持つ特別な会社の株主や経営者だけは優先的に守りましょうという発想がおかし過ぎるのです。全くフェアじゃないんです。何事にもぶれまくっている菅内閣が、東京電力のステークホルダーを守るということに関してだけは終始一貫し、法的整理という道を回避し続けてきたのです。
 自民党や公明党と作成してきた修正案も、表向きは耳触りの良いことを記載し、結局は改悪そのものでしかありません。国の責任を明記できたことは良いことだと修正案提出者は繰り返しますが、国の責任といっても菅総理や海江田大臣が責任を取って支払うわけではありません。逆に、それによって税金の直接投入規定が追加されるなど、無制限の国民負担が法的に担保されたことになります。なぜ、東京電力のステークホルダーが守られ、国民が無限責任を負うことになるんでしょうか。とても理解に苦しみます。
 また、見直し規定により、将来は様々な可能性を検討するとしていますが、破綻処理をするなら今するしかありません。本法案による救済スキームが一旦動き出してしまえば、後戻りができなくなるのは明らかです。国民のお金が投入された後に破綻処理をということになれば、そのお金こそが優先担保付社債に劣後することになり、どぶに捨てるということになってしまうからです。
 そもそも、現在、既に債務超過が間違いないと言われている中で段階ステップを経る必要がどこにあるのでしょうか。将来的に破綻処理をするならば、今実施した方が問題を最小限に抑えることができ、最も公正なはずです。やはり、このスキームが一旦動き出してしまえば誰も止められなくなることを知っての、その場しのぎの机上の空論でしかありません。
 そして第三に、この法案が成立すると、日本のエネルギー政策はより良い未来に向かって進めなくなってしまいます。
 このスキームが回り始めれば、東京電力は多額の特別負担金を毎年捻出することになります。この支払額は、東京電力が平常時に出せる利益を試算ベースとしています。つまり、今後何十年にもわたり、東京電力は借金を返済するだけの会社になってしまうのです。その返済のために発送電の分離をすることはできなくなってしまうでしょう。また、東京電力救済のために負担金を強いられるほかの電力会社も、同じ理由で現状維持を保護されるようなものです。それによって、ますます地域独占は強固なものとなり、電力の自由化や菅総理の個人的な夢でもある脱原発は、はかない夢と終わってしまうでしょう。
 そして、国内における独占的なマーケットシェアに頼った会社がどのような末路を迎えるかは、産業界の歴史を見ても分かります。新しい技術やイノベーションに力を注ぐモチベーションは減り、徐々に衰退してしまうのです。それによって、今後の世界の潮流、先端技術として競争するべきスマートグリッドの開発や再生可能エネルギーは、他国に圧倒的な差を付けられることになってしまうでしょう。借金だけを返す会社に優秀な人材が集まるとも思えません。日本経済の可能性を更につぼめることになるのです。
 さて、このようにマイナス面の多過ぎる本法案を少しでも改善しようと、みんなの党は東日本大震災復興特別委員会に修正案を提出しました。その最大のポイントは、東京電力を解体、破綻処理し、一時国有化するというものです。それにより、数兆円の価値がある送電や配電設備等の売却が検討され、賠償原資を徹底的に捻出し、国民負担を最小限に抑えることができるのです。東電は、発電を中心とした新しい会社として復活することも可能になるでしょう。それがいかに健全なことか。また、働く社員にとっても夢が持てる会社になる可能性が高まるんです。
 この新しい会社は、発電などが主力となるため、必死に再生可能エネルギーの開発にも力を入れるでしょう。何よりも、公平な競争の下で電力料金の値下げも促進されることになります。つまり、個人、法人を問わず、国民、使用者のメリットにもなるのです。日本における電力事業の本当の自由化の幕開けとなる修正案なのです。
 残念ながら、みんなの党の修正案は否決されてしまいましたが、民主党、自民党の中にも、本音では我が党の修正案に賛同していたという議員が少なからずいたと思われます。いえ、むしろ、政府・民主党、自民党と公明党を中心に提出された法案に大きな疑問を感じていたのではないでしょうか。
 繰り返しになりますが、この法案によって、日本の法治国家、資本主義としての理念は踏みにじられ、原発事故によって大きなマイナスに落ち込んでしまった日本のエネルギー事情も、プラスに転じるどころか、長期的にも更に悪化の道をたどることとなります。
 ピンチをチャンスにする可能性が目前にあるのにそれをみすみす逃し、将来の可能性も潰してしまう原子力損害賠償支援機構法案に心から反対の意を表明し、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

発言情報

speech_id: 117715254X03020110803_009

発言者: 松田公太

speaker_id: 18144

日付: 2011-08-03

院: 参議院

会議名: 本会議