本島修の発言 (科学技術・イノベーション推進特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○本島参考人 委員長、ありがとうございます。
フランスの南プロバンスにありますITERと申します、これはラテン語で道という意味ですが、核融合実験炉計画が今建設期に入っております。今回、貴重な機会をいただきましたことをまずお礼申し上げたいと思って、こちらへ参りました。
お手元の資料で、きょうは二十枚ほどのビューグラフを使って、ITER計画の現状、目的、今後の見通し等について説明させていただく予定にしております。
そのほかの参考資料としまして、この冊子ですが、現場の建設が建物等を中心として進んできておりますのをまとめたものです。目で見える形で建設が進んでいるということをお示しするための資料です。
それから、こちらの小冊子は、これは「パリティ」が、来年の一月の新年号で各分野の科学研究がどう進んだかということを特集するんですが、そこに頼まれて原稿を書いたものです。御参考にしていただきたいと思います。
それから、これは文部科学省の方で各分野について、一家に一枚というキャッチフレーズのもとに、その分野のアクティビティーを示したポスターなんですが、右の方にITERが書いてありますとおり、いろいろな分野に私どもの研究がスピンオフしておりますので、それを示すためのものです。御参考にしていただきたいと思います。
それでは、早速ですが、この資料に基づいて御説明をさせていただきます。
まず一枚目ですが、ITER計画、インターナショナル・サーモニュークリア・エクスペリメンタル・リアクターの略ですか、日本の未来のために、世界の未来のためのエネルギーの研究を進めるためのビッグプロジェクトでございます。
一言でまず申し上げたいのは、エネルギーを出すことが求められておりますので、五百メガワット、これは通常の発電所の規模ですが、五十万キロの核融合エネルギーの達成を目指しております。これを二〇二七年に実現することによって、先生方、社会の皆様方から、核融合エネルギーが役に立つということを認めていただける、こういうふうに信じて研究を進めておるわけです。
このITERは、核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性と安全特性の実証を目的としております。カダラッシュに太陽をというのをキャッチフレーズに現在建設を進めております。
私は、出身は科学者、この分野の実験家でございまして、日本で進められてきました大学共同利用機関の核融合科学研究所の創設に加わりまして、一九八九年から九八年にかけて、大きな超電導装置、大型ヘリカル装置と申します、現在も世界一の装置ですが、その建設の責任者を務めまして、その後十年間ほど実験の責任者そして所長を務めて、所長をリタイアした後、昨年からITER機構のディレクターゼネラル、機構長を務めさせていただいております。
私がこの国際機関の機構長に推挙されましたのも、日本の高い科学技術のバックグラウンドがあったからでございまして、私もそのことを第一に誇りに思うとともに、日本の科学技術の推進のために、エネルギーの推進のために、カダラッシュで現在仕事をしております。
このサイトは、一・五キロ、横一キロのサイトでして、この写真のとおりです。
やはり核融合の目的について一言申し上げたいと思いますので、二ページ目をお願いいたします。
ITERの目的は、地上のミニ太陽を実現することでありまして、太陽の中で起こっております核融合反応、これは四十七億年も安全に反応が起こっております、これを地上で実現しようというものです。
原理は、左の方にありますとおり、アインシュタインの相対性原理に基づいて、物質とエネルギーが同じだということを原理にしております。燃料は、左の上にありますように、Dが重水素、Tが三重水素でして、この水素の同位体、仲間を約一億度に加熱いたしますと、核融合反応が起こってヘリウムと中性子が出てくる。この中性子をリチウムという軽い元素に吸収させるとさらにエネルギーが起こる、こういった原理をもとにしております。
重水素は、先生方の体の中にも〇・〇三%入っていて、放射性物質でも何でもないんですが、トリチウムは放射性物質ですので、取り扱いの技術は、十分安全なものを開発する必要がございます。
化石燃料はいずれ枯渇するわけですし、炭酸ガスを出すエネルギー源というのは、今後、温暖化の問題をさらに深刻化していくこと、これも非常にクリアになってきているところでございますが、この核融合反応は、海の中に豊富に存在する重水素を燃料といたしますので、我が国のように海に囲まれている国の場合は特に燃料について問題がないという特徴、それから、排出ガスがヘリウムです、黄色いところですが、地球温暖化を起こさない、低コストの水素ガスの生産に適している、こういったことを特徴としております。
このITER計画は、我が国が引き続き世界をリードしていくための科学技術のイノベーションを生み出すことができます。そして、科学技術立国に必要な優秀な人材を育てることができます。
左の下にありますのは、どれぐらいのエネルギー効率があるかということですが、石油のタンク一個分の水の中にあります重水素を燃料として核融合反応を起こしますと、約二百五十本分の石油に相当するエネルギーを出すことができます。こういう非常に大きな可能性を持ったエネルギー源の研究をしておるわけでございます。
ITERは、地球環境の保全と世界平和への貢献、そして、人類の高度文明、私どもの高度文明を一万年以上続かすことができる可能性を持ったエネルギー源である、こういうことが申せます。
三ページ目に移っていただきたいと思います。
なぜITERか。ITERは、こういう大きな装置でして、全体で二万三千トン、高さが三十メーター、横幅が三十メーターという装置で、超電導のコイルを使って強い磁場を発生させて、このピンク色で書いてありますようなドーナツ状のプラズマをつくりまして、一億度に温度を上げる、そこで核融合反応を起こさす、こういう仕掛けです。
ITERは、将来の商業炉のために必要なステップでありまして、いろいろな技術の塊であります。超電導、材料、コンピューター、制御、大電力機器、リモートハンドリング、ニュートロニクス、こういったものでございます。
そして、我が国は、準ホスト国として貢献しておりまして、高いプレゼンスを発揮しております。私が機構長に選ばれたということも、その象徴的な一つであると自負しております。
得られた科学技術的な知見は各国で共有されるわけでございますが、いかに活用するかは各国の今後の戦略に大きく依存いたします。したがいまして、我が国の利益を最大化するために、国内の受け皿、大学、研究所、企業等の基盤でございますが、これを整備すること、そして、より多くの人材をITERに送り込んでいただきまして、次の段階に備える必要がございます。
四ページ目は、今までの研究の進展を示したもので、横軸が時間で、縦軸がプラズマの性能です。ここまで、我が国は核融合研究開発に大きく貢献しておりまして、日本の国旗がついておるとおりです。プラズマの性能が高くなっていくことに大いに貢献しております。
この性能の進展は、青い色で書いてありますのがスーパーコンピューターの進展、進捗ぶりを示しておりますが、二年ごとに二倍という最も速く進んだ科学技術と言われておりますが、これよりも少し速いぐらいだということを示しております。
五ページ目でございますが、各国がしのぎを削って研究をしているということがこの絵で、左の方にいろいろな装置が国旗とともに並んでおりますが、その結果がITERに集約されていると同時に、各国、特に中国、韓国も最近大きな超電導装置をつくる実力を備えてきておりまして、非常に厳しい競争と、それから共同研究が同時に進行しているということを示しております。
相互に利益をもたらす協力関係をつくること、それから、各極の、各国と同じ意味で使っておりますが、利益の最大化ということが同時進行しております。
次のボタンを押してください。中間に赤い線がありますが、最初の左側の線がITERの計画でして、二〇二〇年に装置の完成、そして水素の実験をしまして、二〇二七年から、実際に重水素と三重水素を使った五十万キロを発生させる実験を行います。それと同時に、次の段階の計画が進むわけでございまして、設計、建設、安全性等の許認可を経まして、二〇四〇年、五〇年には次の原型炉、実証炉がITERの成功をもとに可能になるわけでございます。ITERは非常に大きなステップであるというふうに申し上げられます。
次に、六ページ目ですが、やはり三月十一日の未曾有の大災害と福島第一原発のことがございます。核融合の安全性ということの説明責任というのはより大きくなっておるわけでございまして、次の二枚で、核融合はどういう安全性を持っているかということを簡単に御説明申し上げます。
ITERでは、つまり核融合では、福島原発のような事故はあり得ません。その理由が左の方に書いてあるわけですが、燃料の蓄え、これが極めて少ないわけでして、装置の中にはたった一グラムしか燃料が入っておりません。ですから、人間のつくったものですから、故障する可能性というのはゼロではないわけですが、故障しても自然にとまる性質を持っております。それから、ウランを使いませんから、暴走する、メルトダウンを起こすというふうな危険もないわけです。
次のページに移らせていただきまして、七ページ目ですが、ITERでは長半減期の高レベルの廃棄物は出ません。これはウランを使わないからです。住民の方の被曝量というのは、自然界の被曝量の千分の一ぐらいに実際に抑えることができます。それから、最悪の事故シナリオは関連施設での火災ですが、この場合でも、近隣の放射線量は自然界の量と同等または少ないレベルに抑えることができます。
現在、フランス当局の安全審査がほぼ最終段階に来ておりまして、十二月末に実質的な許認可をいただけるめどがついているところでございます。住民の皆様の御意見を聞く、いわゆるパブリックインクワイアリーというプロセスをことしの夏に終了しております。
八ページ目ですが、原子力と核融合エネルギーの違いは、もう既に申し上げましたように、核融合発電の場合は、燃料を補給しながら発電いたしますので、燃料をとめれば十秒ぐらいで反応がとまって、いわゆる暴走が起こらない。原子力につきましては、もちろん日本の技術は非常に高いものがあるわけですが、燃料を大量に発電所の中に置きますので、その制御ができなくなったり、青く書いてあります、水が下がると反応が、熱が大量に出て制御できなくなってしまう。この違いがクリアに八ページ目に示されているとおりです。
九ページ目ですが、ITERは、中国、ヨーロッパ、インド、日本、韓国、ロシア、アメリカから成る国際協力でして、世界の人口の五〇%以上と世界のGDPの八〇%を占める国々の国際協力です。二〇〇六年に、パリのエリゼ宮におきましてITER協定が署名されまして、二〇〇七年に正式に発足しております。
次の十ページ目は、装置の中で主要機器、ITERの本体を示しておりますが、各国がどういう責任を分担しているかということを示すものでございます。
コイルと書いてありますのは、超電導コイルでございます。一つずつ御説明する時間がないわけですが、主要な機器につきまして、各国がこのように分担をしている。これは、各国が自分の利益も考えながら、国際協力として分担を決めていったという経緯がございます。
日本は、中心の磁場を出すコイル、それから熱を最後に取り出す部分のダイバータを中心としてのコントリビューションをしております。
次に、関連して、十一ページですが、各極がどういう調達をしているかという分布を示したものです。それから、コスト的なものも書いてあります。
私どもは国際協力でありますので、特殊な予算の単位を使っております。これをクレジットと通称申しますが、その単位がキロIUAという単位でありまして、過去、ドルをベースにして決められたものです。四千七百キロIUAがトータルの建設コストでありまして、一キロIUAが一・五五ミリオン、だから百五十五万ユーロに相当いたします。この詳細については、後ほどまた御質問等でお答えする機会があるかと思っております。
欧州は四五%を分担いたします。これはホスト国でして、建屋等もこの中に入ります。その他の極は九%ということになっております。
建設計画でございますが、次のページをお願いいたします。サイトがバックにございますが、二〇二〇年に装置完成、組み立てが十九年まで、そして、その後いろいろな試運転等を行いながら、最初の実験、ファーストプラズマと書いてある部分です、二〇二〇年の十一月を予定しております。核融合反応は二〇二七年でございます。
それから、機構の職員につきましては十三ページにあるとおりでございまして、日本からは三十五名、私を入れて三十五名のスタッフがITER機構におりまして、大変レベルの高い仕事をしてくれております。日本がプレゼンスを発揮していることの一つであるということが申し上げられます。
そして、十四ページ目は、機器の製造も開始している、それから現状を示したものでございまして、十六ページ目は超電導コイルの一種でございますが、大きなコイルの製造が始まっているということを示した写真です。
それから、十五ページ目は、これは日本で進んでおります超電導導線の製作でございます。こういった大きな電流を流す太い超電導導線がつくられてきております。日本は、この分野でも大変高い技術を持っております。
それから、次の十六ページですが、欧州におきますコイルの製作の状況を示しております。右側に人の写った写真がありますとおり、これはトロイダルフィールドコイルでございますが、装置の中心部をなす部分です。上で日本がつくった超電導導線が下のコイルに装着される、こういうわけです。欧州と日本で九個ずつ、十八個をつくって装置に据えつける計画であります。
十七ページ目は、日本におけるトロイダルコイルの製作の工場におきます写真でして、非常に複雑な製作機具を使いながら精度の高いコイルをつくる、その写真でございます。
十八ページ目は建設の現場でございます。今、三カ所で、メーンになります本体棟の建設、それから本部の建物、そしてコイルをつくる工場を建てております。今後さらに、カダラッシュのサイトでの建物の建設も加速されていきます。
十九ページ目はもう少し詳細な写真ですが、本体棟基盤、一・五メーターのコンクリートの層をつくりますが、多くの鉄筋をつくって建設を進めているのが左上。それから、その一部となります、地震に対する耐震構造物の鉄筋の写真です。それから左下は、PFコイル、これはポロイダルフィールドコイルと申しますが、ヨーロッパが五つ、ロシアが一つつくるんですが、ヨーロッパのつくる部分が、半径が大き過ぎまして運べないという事情から、現場で工場を建ててつくる、その建物です。右側は本部ビル、オフィスビルでありまして、来年の夏に完成いたします。来年の夏以降、先生方にこちらへ視察に来ていただけるときには、こちらでごあいさつ申し上げることができるようになります。
これが現地での建設の現状を示す写真です。どんどん建設が進んでおります。
その次のページですが、一言、私どもの分野でどういう波及効果が出るかということを示しておりまして、左側の木が、いろいろなところに技術を波及させることができるという、その可能性も含めたものを示しておりまして、核融合は総合技術でございますので、いろいろなところにスピンオフしていくわけです。真空関係、材料関係、極低温関係、電力、制御、こういったものです。
右側はその成功した一例を書いてあるわけですが、プラズマというのは電離した気体ですので、電子とイオンから成るんですが、電子を加熱するためにマイクロ波を使います。電子レンジみたいなものです。これを使いますと、陶磁器が非常にうまく焼けるという技術を開発いたしました。私が前にいました研究所で行った技術開発なのですが、これは炭酸ガスを出さない加熱です。自然環境にも大変優しいわけです。
これが驚くことに溶鉱炉の、溶鉱炉は石炭と鉄鉱石をまぜて溶かして鉄をつくるわけですが、マイクロ波を使いますと、三十メーターの溶鉱炉が八メーターぐらいになる、こういう研究も出てきまして、現在、科研費等を使って、さらに進んだ溶鉱炉の開発、炭酸ガスの排出量を三分の一ぐらいに抑えることができるわけですが、こういった研究も進められるようになりました。重要な波及効果の一つとして御紹介申し上げます。
二十一ページ目は、最初に申し上げました、一家に一枚の「未来をつくるプラズマ」のポスターでありまして、いろいろな可能性があるし、現在、テレビはもうそのプラズマが使われている典型ですし、ICチップ等の製作にもプラズマが使われるわけでございます。いろいろな可能性を示している図でございます。
最後に、二十二ページですが、ITERは新たな時代へのステップでありまして、地球の環境を守りながら、エネルギー需要の増大にどう対応していくかという重要な命題に対する一つの答えを出させていただこうと。そのために七極が予算を、これは非常に高い装置であります、それだけ成果が求められるわけでございますが、今、力を合わせて建設を開始したところです。
ITERは、人工的に安全で無尽蔵に生産可能なエネルギーの実現に向けた新たな時代へのステップを開こうとしております。
そして、日本はITER計画の主要な牽引車でありまして、今、世界は日本の高い科学技術力に注目するとともに期待をしておるわけでございます。
一言、三月十一日の大震災につきましては、各国から日本に対して、何でも言ってください、協力できることは何でもいたします、そういう国際協力ならではのやりとりがございまして、その結果といたしまして、日本の原子力機構の震災によるダメージを最小化すること、それから企業の受けたダメージを最小化する新しい建設計画をまとめて、現在、その計画をもとに建設を進めております。
おくれと言うとなんですが、昨年の段階では、二〇一九年の十一月に装置を完成させるということがベースラインという文書として七極の理事会で承認を受けたのですが、そのベースラインの中の考え方の範囲という理解のもとに、一年完成を延ばして、二〇二〇年の十一月に装置を完成させるということが七極で、つい先週の理事会で承認いただきましたので、現在、それに基づきまして、鋭意建設計画を再スタートしているところでございます。
大変手短で、十分な説明ができなかった面があるのは大変申しわけないとは思いますが、現状を説明させていただきましたことを大変感謝申し上げたいと思います。
委員長、ありがとうございました。(拍手)