原優の発言 (憲法審査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○原(優)政府当局者 お答えいたします。
 先ほど御説明いたしましたように、法制審議会から法務大臣に答申がされましたのは、民法の成年年齢を引き下げることが妥当かどうか、そういうことでございますが、法制審議会におきましては、まず議論の初めとして、今話題になりました民法の成年年齢と公職選挙法の選挙権年齢の関係についての議論もしているわけでございます。
 その議論の概要を御紹介させていただきたいと思いますが、憲法十五条では、成年者による普通選挙権を保障するという規定がございます。この憲法十五条の成年が民法の成年を指すのか、それとも別の公法上の成年を指すかにつきましては、憲法の学説上も対立が見られます。
 もし、この十五条の成年が民法の成年を指すとしますと、民法の成年年齢を下げないで選挙権を行使させるということになりますと、これは憲法違反の疑いが強くなります。ところが、公法上の成年であれば、憲法を受けた公職選挙法で成年者の年齢を定めればいいわけですから、そこで憲法上の問題は生じないということになります。
 それから、仮に憲法十五条の成年を民法の成年年齢と解したといたしましても、憲法は成年者による普通選挙権を保障するというわけですので、成年者に達しない者の選挙権を認めるということは、別に憲法上問題がない、選挙権の行使を広く認めるわけですので憲法違反にはならない、学説ではこんなことが言われているわけでございますので、憲法十五条の成年を民法上の成年と解するのか、それとも公法上の成年と解するのか、いずれの立場に立ちましても、憲法は成年者に対する選挙権を保障しているだけでございますので、それ未満の者に選挙権を与えることは禁止していない。したがいまして、民法の成年年齢よりも低く選挙年齢を定めることは可能である、これは学説上定まっている見解ではないかというふうに思います。
 したがいまして、理論的な観点からいたしますと、民法の成年年齢を引き下げることなく選挙年齢を引き下げることは可能であるというふうに考えております。
 このように、理論的に両者が一致する必要はないと考えられますし、両者の立法趣旨を考えますと、民法の成年年齢は、何歳から一人で契約ができることにするのか、あるいは親権による保護を受けないことにするのか、そういうことから定められているのに対しまして、公職選挙法の選挙年齢は、いつから国政への参加、選挙権の行使を認めるかということでございますので、その立法趣旨が異なっております。
 それから、諸外国の立法例を見ますと、成年年齢と選挙年齢を一致させている法制も多いわけでございますが、必ずしも両者が一致していない立法例もございます。
 例えば、私法上の成年年齢よりも低く選挙年齢を定めている国としましては、アメリカ合衆国、カナダ、ブラジルがございます。
 アメリカは、選挙年齢は十八歳でございますが、成年年齢は州によって異なっております。もちろん、成年年齢を十八歳としている州も多いわけですが、州によりましては、十九歳、二十一歳としている州もございます。カナダも、選挙年齢は十八歳としておりますが、成人年齢につきましては州によって異なっておりまして、十八歳としている州と十九歳にしている州がございます。ブラジルは、選挙年齢は十六歳でございますが、成年年齢は十八歳としている。
 その他、例えばアルジェリア、アルゼンチン、インドネシア、エジプト、タイ、南アフリカの国々では、やはり成年年齢よりも低く選挙年齢を定めております。
 それから、選挙年齢の引き下げを成人年齢の引き下げよりも先行して実施している国がございます。
 例えば、ドイツでは現在、選挙年齢と成人年齢はともに十八歳になっておりますが、選挙年齢は一九七〇年に十八歳に引き下げ、成人年齢はその四年後の一九七四年に引き下げている。韓国も同じでございまして、今、選挙年齢十九歳と成人年齢二十歳でございますが、成年年齢の引き下げの方が後行しているということでございます。ニュージーランドでもそうです。
 このように、諸外国におきましても、必ずしも選挙年齢と成人年齢が一致しているわけではございませんし、成年年齢の引き下げにつきましてはさまざまな課題があるということで、まず選挙年齢を先行して引き下げた上で成年年齢を引き下げている国もある。
 こういうことを考えますと、我が国におきましても、民法の成年年齢を引き下げずに公職選挙法の選挙年齢を引き下げることは可能でありますし、先ほどの御説明で御指摘いたしましたように、国民の意識を変えていくという観点からは、まず国政選挙に参加していただいて、その後に成人年齢の引き下げということをやるのが、ある意味では一つの有力な選択肢ではないかというふうに考えているところでございます。
 法制審議会の成年年齢部会の議論も、理論的には選挙年齢と成年年齢が一致する必要はございませんが、現在、両者が一致しているわけですので、これは将来的には一致するのが相当だという結論を出しておりますが、成年年齢の引き下げにつきましては、先ほど御説明いたしましたように、消費者被害の拡大等の問題がございますので、選挙年齢が引き下げられるのであれば、そうした問題を解決した上で成年年齢の引き下げを行うのが相当である、こういう結論に至っておりますので、法制審の議論も、そういった段階的な引き下げというものを示しているのではないかと私どもとしては解釈しているところでございます。
 それから、大口委員から御指摘のありました、いつその環境整備ができるかということですが、これはなかなか法務省としてはお答えすることが困難でございまして、現在、各省庁におきまして、環境整備に向けたいろいろな施策を実施しているところでございますので、それらの施策について、どれだけ効果が発生し、国民の間に浸透して、国民の皆さんも成人年齢の引き下げについて、いいだろうという、そういう理解が得られるかどうかにつきましては、国会におきましても先生方に御議論をいただければありがたいというふうに考えております。

発言情報

speech_id: 118004183X00120120223_022

発言者: 原優

speaker_id: 12768

日付: 2012-02-23

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会