駒村康平の発言 (社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会)
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○駒村公述人 おはようございます。
社会保障・税一体改革、年金制度に意見、こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私にいただいた時間は十五分でございますので、早速、資料に基づいてお話しさせていただきたいと存じます。
お手元に私のパワーポイントを打ち出したものが、横に印刷してあるものがございます。これが、番号を右下に打っておりまして、きょう、まず最初の報告で、九ページまで使わせていただいて御報告させていただきたいと思います。
その後のページは資料あるいは論文になってございますので、また後ほど必要に応じて言及していきたい、こういうふうに思います。
では、一ページ目の表紙をめくっていただき、最初の絵でございますけれども、社会保障制度、とりわけ年金に関して、今回の社会保障・税一体改革における改革の目標というのは、ここにある三つが挙げられている、こういうふうに理解しております。働き方、ライフコースの選択に影響を与えない一元的な制度、それから、最低保障機能を有し、高齢者の防貧、救済機能が強化された制度、国民から信頼されて財政的にも安定した制度、この三つだと思います。
この三つの改革目標、これは、九〇年代後半から二〇〇〇年代にかけて、OECD、先進国各国で行われた年金改革、これもほぼ同じ三つの目標、つまり、働き方や、最低所得の機能強化、それから財政的な安定性、高齢化が進んでも年金財政が破綻しないような仕組み。これは先進国で行われた年金改革に共通した目標だと思います。
そういう意味では、今回の一体改革の年金改革の部分の目標というのはまず正しい、こういうふうに評価しております。
次のページを見ていただきまして、この次のページというのは、これは、国民年金一号被保険者の職業構成であります。
国民年金一号は、いわゆる未納化、四割の方が払っていないという批判があるわけですけれども、実際に、国民年金一号の加入者でございますが、このほとんどが現在は無業者あるいは非正規労働者によって構成されている。自営業者は、かつてと違い、既に二五%ぐらいまで減少している。残り七五%は不安定な生活を送っている方たちである。この方たちの四割が払っていない。国民年金の定額負担、一万六千円程度の定額負担、最終的には一万六千九百円まで上がるとされている負担に今後耐え得るかというのが大きな課題になっているだろうと思います。
また、年金のいわゆる空洞化の背景には、こういった非正規労働者の増加というのも大きな要因になっているのではないかと思います。したがって、働き方にかかわらず、年金、特に所得に比例して保険料を払う厚生年金になるべく多くの方に入っていただくというのは正しい改革の方向性だろうと思いますし、諸外国でも類似の改革は行われております。
そういう意味では、今回の一体改革の中の年金の部分での適用拡大と言われている部分も、わずか四十五万人というのは研究者から見れば非常に残念ではございますが、今後、適用拡大がより大きくなるということを期待して評価したい、こういうふうに思います。
次のページを見ていただきたいと思います。
これは、一方で高齢者の貧困率が現在どうなっているのかというのを見たものであります。貧困率というのも、どうやってとるかによって数字に随分違いが出てくるわけでございますけれども、ここでは、生活保護の状況を見たものでございます。
赤い線が、生活保護を受給している世帯の中での高齢者、六十五歳以上の世帯の構成ということで、途中で少し定義が変わっておりますので少し折れている部分はございますけれども、これは定義上の問題でございます。現在は、生活保護受給者の四五%ほど、六十歳以上に定義を広めると五〇%以上、生活保護の約半分が高齢者によって占められているという状況でございます。
真ん中の点線でございますけれども、これは左目盛りを見ていただくわけでございますが、これは高齢者世帯の中で生活保護を受けている世帯の割合ということでございます。左目盛りはパーミルということですので、一四〇というのは一四%を意味しております。
かつて、年金が非常にまだ充実していない時代は、確かに高齢者の貧困率は極めて高かったという時代がございますが、その後、年金の拡充とともに、高齢者の貧困率、生活保護を受けている高齢者の割合というのは低下傾向に入ったということになります。しかし、九〇年代後半からこれが逆転上昇を始めているということも見てとれる。これは、後ほどもう少し年齢構成別に細かく見てみたいと思います。
何を申し上げたいかというと、高齢者の数がまず今後も急激にふえていく。特に六十五歳以上の割合は人口の四〇%、七十五歳以上だけに限定しても三〇%近くになっていくということでございますけれども、高齢者の数また割合が今後もふえていく。さらに、高齢者の貧困率そのものが上昇傾向にある。これは、両方を考慮すると、今後も生活保護受給者はふえていき、しかも、その中に占める高齢者の割合がより一層ふえるのではないかという心配があるわけです。
次のページを見ていただきたいと存じます。
これは生活保護を受けている人の動向でございますけれども、薄い青い線がこの二十年間の人口の伸び率でございます。総数のところを例えば見ていただくと、ほとんど変わらない、人口総数はむしろ減少傾向にあるということでございますが、生活保護受給者は、御案内のとおり二百十万人を超えており、戦後最大の数字になっているということでございます。
それを年齢区分別に見ますと、確かに二十代のところは伸び率は非常に高いわけですけれども、これは全体の占める割合は余り多くない。六十歳、七十歳のところがこれもまた急激に伸びていることがわかる。七十歳以上の人口はふえているわけですけれども、それ以上に生活保護受給者がふえている。六十代は、人口の増加率をはるかに上回るペースで生活保護受給者がふえているということでございます。
こういうふうに見ていきますと、既に現行制度の中で漏れ落ちた人たちが生活保護の方に徐々に徐々にシフトしてしまっているというのが大きな課題になっているだろうと思います。
では、現行制度、今後どういう問題を迎えていくんだろうか、既に現在抱えているんだろうかというものを見たのが六ページ、現行制度の抱える課題ということでございますが、四つほど挙げさせていただきたいと思います。
一つは、一号の未納者の増加。これは非正規労働者の増加が原因である。これに対しては適用拡大をなるべく広くやっていく、これが解消の手段であろうと思います。
二番目。二〇〇四年の年金改革によってマクロ経済スライドが組み込まれたわけですけれども、このマクロ経済スライドによって、基礎年金、厚生年金ともに給付水準が落ちていくということも非常に大きな問題になってくるのではないか。足元で既に高齢者の貧困率が高まっている中で、さらにマクロ経済スライドを行っていく、特に基礎年金で行っていくというのは非常に問題を引き起こすのではないか、こういうふうに思っております。
三番目。二〇二五年に向けて、既に見通しが発表されているわけですけれども、介護保険料、後期高齢者医療保険料、こういったものが急激に上昇していく、これによって手取りの年金額が急激に下がっていくのではないか。この問題に対してどういうふうに対応するのか。生活保護とのいわゆる逆転の問題もさらに広がるのではないか、こういうふうに思います。
そういうふうに考えますと、高齢者の貧困率の上昇、そして、そのことに加えて、その背景には、無年金・低年金者がいて、それが生活保護に流入していく。生活保護と基礎年金をともににらんだ新しい最低所得保障のあり方を考える時期ではないかと思います。そういった意味では、今回の一体改革の中に入っている加算と言われているところは、完全ではないにしろ、一定の評価をしたい、こういうふうに思っております。
次のページでございますけれども、現行制度と、一体改革が成立した場合の年金制度と、民主党案、いわゆる民主党年金改革の比較を行ったものであります。
一番右の欄に「課題」というふうに書いてあるところが共通する課題でございまして、保険料については、保険料固定方式。これは、現行制度も一体改革後も民主党案も変わらない。一八・三%を将来目指す、民主党案は一五%に障害・遺族年金分が別途つくということになっているだろうと思います。
高齢化への対応、これが高齢化社会において一番難しいわけです。マクロ経済スライドという形で行うわけですが、これは民主党も既に試算で明らかにされているように、みなし運用利回り、これはほぼマクロ経済スライドと同じ発想の調整方法が行われている、こういうふうに理解しております。
年金一元化については、厚生年金。一体改革の後は厚生年金の適用を共済、短時間労働者に広げていくということ。民主党のアイデアは、これを自営業も含めた全国民を対象にしていくということであります。ここにおいては、所得捕捉、事業主負担が大きな課題になっていくと思います。
最後に、国庫負担の使い方でありますけれども、現行制度は基礎年金の二分の一を国庫で保障している。それに対して、一体改革では、低所得加算と高所得への減算を行い、国庫負担分の重点化を図っていくというふうに評価をしております。これを突き詰めていくと、ある種、民主党の方の最低保障年金にも形としては接近していくのではないかと思います。その際には、やはり、所得捕捉を前提にした所得比例年金の全国民への適用拡大というのが最大のテーマになってくるわけでございます。
そういう意味では、八ページの方に、現行制度を一番左の端に置いて、そして民主党案を右の端に置くと、今回の一体改革はちょうど中間的な方向に向かい始めているという点で、抜本改革という言葉ではないですけれども、大型のリフォームを繰り返すことによって、公費の使い方をより重点化していくということに注目すると、民主党案の最低保障年金と類型としては近づいているのではないか、こういうふうに思います。
まとめますと、二段階の一元化というわけでございまして、被用者年金の一元化をまず行い、適用拡大を次に行い、そして、無職、低所得者への保険料免除の徹底を行っていけば、所得比例による保険料によって九割までの年金加入者をカバーすることができるということで、ほとんどの非正規労働者は今よりも負担は軽減されるだろうと思います。
二段目に、残り一〇%の自営業者への扱いをどうするか。ここが必要なのか、可能なのか、その影響はどうなのかということも今後議論していかなければいけないだろうと思います。
しかし、マクロ経済スライドによって、あるいは保険料負担の上昇を低所得者に対してどのように対応していくのかということを考えれば、国庫の使い方をより重点化していかなければいけないだろうという点では、現行制度の課題を一つ一つ検討していけばおのずと答えは明らかになっていく。低所得者の方に国庫の集中投入をやっていかなければいけなくなるのではないかと思います。
最後に、九ページに入らせていただきたいと思いますけれども、今後の年金の議論の進め方については、議員の皆さんに九つの提案をさせていただきたいと思います。
これは、年金改革を非常に与野党で進めていったスウェーデンの年金改革の進め方を参考にしたものでありますが、与野党で現行制度の課題を共有し、制約条件を、どういう限界があるのかということを見て、さらに、それぞれの案にはこだわらず、必ず合意はして、合意内容については与野党で責任を持ち、議論をパフォーマンスには使わない、目先の選挙の争点にはしない、圧力団体からの独立した議論、そして全ての情報を国民に提供する、こういうような与野党協議のルールをつくっていただき、実のある議論を進めていただきたいと期待しております。
時間が来ましたので、私の最初の発言は以上にさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございます。(拍手)