高橋進の発言 (社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会)

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○高橋(進)公述人 株式会社日本総合研究所の高橋でございます。
 本日は、私は手元に資料を御用意申し上げておりませんので、口述のみで申し上げたいと思います。
 まず、社会保障と税の一体改革ということでございますけれども、私は、社会保障の持続性と財政の健全性、この二つを確保するために不可欠な取り組みであるというふうに思います。したがいまして、今国会での審議をいただくことはもとより、個人的に申し上げれば、党派の枠を超えて、継続的で抜本的な検討と取り組みが行われていくことを期待させていただきたいと思います。
 社会保障制度への取り組みがそれだけおくれれば、財政健全化への取り組みもおくれるだけではなくて、国民の社会保障制度全般への信頼が揺らいで、消費の抑制、こういったことを通じて実体経済に悪影響を与えることになるというふうに考えております。
 本日は、一体改革について、社会保障、それから税制改革、成長戦略、この三つの観点からお話をさせていただきたいと思います。
 まず、社会保障改革については、社会保障制度の持続性を確保するためには、社会保障に関連するさまざまな制度の根幹にまで踏み込んだ改革が必要というふうに考えます。
 もっとも、どこまで踏み込んだ改革が必要なのか、国民的、政治的にはいまだコンセンサスはできていないというふうに理解しております。
 したがいまして、まず、現行の年金制度が持続可能なのか否か、この点について十分検証する必要があるというふうに思います。そして、その検証を基礎にして年金制度の重要改革に着手していくべきではないかと思います。
 医療・介護制度についても、高齢化とともに給付額が増加し、これまでの制度を維持することは困難になるというふうに見られますけれども、ここでも、必要な改革の程度について十分な検証が必要ではないかというふうに思います。
 社会保障制度の持続性の確保にかかわるもう一つの大きな論点があるというふうに思います。それは、高齢者に偏った社会保障給付の是正ということではないかと思います。
 現行制度のままでは、今後、給付と負担の双方で世代間の不公平の状態がさらに悪化し、そのことが現役世代の制度への信認を失わせ、制度自体の持続性を危うくすることになるのではないかと懸念いたします。
 世代間の公平な支え合いといった観点から、年金特例水準の見直し、あるいはマクロ経済スライドの見直し、これは必要な措置と考えます。
 しかしながら、それだけでは世代間の不公平の是正は不十分であり、年金制度の抜本改革や医療制度の改革に踏み込む必要があるというふうに考えます。
 さらに、世代間不公平是正の一環として、若年層や低所得層に対しては、過度の負担を是正するというだけではなくて、支援の強化も必要と思います。とりわけ、子育て層に対する支援は、日本の人材力を強化し、潜在成長力を引き上げるという観点から極めて重要と考えます。ただし、支援強化に当たっては、ばらまきに陥らぬよう自助努力を促す仕組みとすることが必要だと思います。
 その際、給付つき税額控除、またはそれに類似した制度を埋め込むことは一つの選択肢ではないかと思います。そうした政策を実行するためにも、社会保障・税番号制度の導入は喫緊の課題と考えます。
 一方で、高齢者世代の世代内の所得再分配を強化すること、これによって若年世代の負担を軽減することも検討すべきだと思います。消費税の増税を通じて高齢者にも応分の負担を求めることはもちろんですが、高所得者、資産保有者に支給する年金のカット、あるいは後期高齢者医療制度などはこれに当たるものというふうに考えます。
 なお、医療制度については、健康保険の保険者機能の見直し、あるいは急性期医療体制の充実、地域医療機関の再編、病院と介護施設の連携強化、あるいは健康保険のカバー範囲の見直し、こういったところもタブーなく見直していくことを検討すべきではないかというふうに思います。
 続きまして、財政健全化への取り組みについて申し上げたいと思います。
 財政の健全性の確保については、中期的な時間軸の中で財政を健全化に向けた軌道に乗せていくことが必要と考えます。
 現時点で日本はユーロ圏のような債務危機には陥っておりませんが、一たび長期金利が上がり出せば、日本は、GDP比で見た債務残高の大きさが災いして、財政のコントロールが失われてしまうことは必定でございます。
 財政健全化への取り組みがおくれればおくれるほど、財政赤字が国内貯蓄を食い潰し、長期金利が上昇するリスクが高まる筋合いと考えます。
 そうしたリスクが顕在化するまでに残された時間は、そう長くないというふうに思います。政府部門の赤字が縮まらず、一方で高齢化とともに家計の貯蓄の伸びが鈍化するということになれば、企業部門の一定の貯蓄超過が続いたとしても、日本はいずれ貯蓄超過から投資超過経済に陥り、言いかえれば経常収支が赤字化する。その結果、政府は資金調達を海外に依存するようになる、そうすれば財政のリスクが現実のものになるという危険があると思います。そうなる前に財政改革を軌道に乗せる必要があるというふうに思います。
 財政健全化への取り組みの基本は、歳出改革、歳入改革と成長戦略、この三つの改革をバランスよく進めていくこと、それによって政府の債務残高の増加をできるだけ抑制し、名目成長率の伸び以下に抑えていくこと、これが基本と思います。具体的には、目標年次を定め、政府が目標を達成していくことにコミットする必要があると思います。
 ただし、増税だけで財政健全化目標を達成しようとすれば、大幅な増税が不可避となり、経済に大きな下押し圧力となって、結果的に財政赤字は縮小しないと考えます。増税幅を極力圧縮するためには、歳出の伸びを抑制すること、成長によって税収を伸ばしていくことが不可欠と思います。
 三つの改革のうち、歳出改革につきましては、その柱は、行政・政治改革と社会保障改革の二つと考えます。行政・政治改革については、時限的な措置にとどまらず、公務員制度改革や地方分権にまで踏み込んだ恒久的な改革が必要だと思います。社会保障制度改革については先ほど申し上げました。
 一方、歳入改革でございますけれども、消費税を引き上げとする税制改革、これが妥当と考えますが、将来的には、フローだけではなくてストック、すなわち資産への課税の強化、これも視野に入れる必要があるというふうに思います。
 続きまして、成長戦略ということについて申し上げたいと思います。
 今後、増税のマイナス影響をはね返し、税収を伸ばしていくためにも、言いかえれば、財政健全化をなし遂げ、社会保障の財源を確保するためにも、成長戦略への取り組みが極めて重要だというふうに考えます。これまで歴代政権のもとで成長戦略がつくられてきましたけれども、継続的な取り組みには至らず、結果的にその成果が乏しかったと言わざるを得ないのではないかと思います。
 日本は、失われた二十年と言われてきましたけれども、高齢化が進展するもとでさらに企業の空洞化が進めば、日本の潜在成長力は今以上にさらに低下するおそれがあります。したがいまして、増税に踏み切る前に、実効性のある成長戦略への取り組みが求められるというところだと思います。
 その成長戦略の基本は、日本企業によるグローバル市場の開拓、あるいは国内での新市場、新分野の開拓、これをサポートして、結果的にアジアの需要を取り込み、そして国内の潜在需要を満たしていくことだと思います。とりわけ、現時点では、環境、エネルギーあるいは医療、介護、農業、こういった分野が潜在需要が大きい有望分野と考えます。
 もっとも、こうした分野の成長を図る上で、従来型の産業政策の有効性は乏しく、成長戦略の基本は、経営環境、ビジネス環境の整備に置くべきと考えます。ビジネス環境の整備の具体策としては、法人税の引き下げ、あるいはTPPの推進、こういったことと並んで、国内での規制改革や既得権益の打破、これを進めるべきというふうに思います。
 こうすることによって企業の成長期待を高め、新市場や新規分野への参入を活発化させること、これが経済活性化の道と考えます。国内で有望市場の開拓が阻まれている状況で、結果的に企業の活力が海外に流れてしまう、これは長期的に見て、日本の経済にとって大きなマイナスと考えます。
 今般のユーロの債務危機は、ユーロの導入によって資金調達が容易になった南欧各国が、安易な財政支出や金融緩和に依存した景気拡大を繰り返す、その一方で経済体質を強化するための構造改革を怠ってきたこと、これが原因だというふうに考えます。日本が同じ轍を踏まないためにも、規制改革を中心とする構造改革に本格的に着手すべきと考えます。
 最後に、増税と景気の関係について申し上げたいと思います。
 消費税の引き上げに際しては、そのときの景気動向に細心の注意を払うことは言うまでもないと思います。日本の潜在成長力が低下している現状では、消費税引き上げによる経済へのマイナス効果、これについて十分に注意を払う必要があると考えます。消費税を引き上げただけで景気後退に陥るということはないと見ますが、他にマイナス材料があって、それが重なる場合には、その複合効果に十分な注意が必要だと思います。
 実際、前回の引き下げ時には、消費税の引き上げに加え、不良債権問題やアジア危機、これが重なった結果、マイナス成長に陥りました。今回は、引き上げ時点で、復興需要の減少、あるいは世界景気のスローダウンの持続、あるいはその他家計負担の増加、企業の空洞化、こういったマイナス材料もございますので、引き上げのタイミングについては細心の注意が必要ではないかということを繰り返して申し上げたいと思います。
 私から申し上げたいことは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 高橋進

speaker_id: 34504

日付: 2012-06-13

院: 衆議院

会議名: 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会