2012-05-23
衆議院
五十嵐仁
政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会
五十嵐仁の発言 (政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会)
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○五十嵐参考人 御紹介をいただきました五十嵐でございます。
お招きをいただきましてありがとうございます。
私は、今から約二十年前、一九九三年に「一目でわかる小選挙区比例代表並立制」という本を書きました。ここで小選挙区制を批判し、また、連用制の問題点も指摘しております。その四年後の九七年に、前年、九六年に初めて実施された並立制での総選挙を分析した「徹底検証 政治改革神話」という本も出しております。
小選挙区制に問題があるということは、このときから明瞭でありました。そのような私からすれば、何を今さらと言いたい気持ちですけれども、過ちを改めることは大変よいことでありまして、今がその絶好のチャンスだというふうに思っております。
以下、小選挙区制の問題点と望ましい選挙制度のあり方についてお話をさせていただこうと思いますけれども、この小選挙区制の問題点のことにつきましては、今の田中参考人がほとんど話をされまして、また、私とほぼ意見は一致しております。重ならないようにしたいと思いますけれども。
まず第一点が、小選挙区制の制度的欠陥です。小選挙区制には、もともと根本的な制度的欠陥がある。選挙制度にはいろいろなよしあしがありますけれども、小選挙区制は最悪、ワーストの選挙制度であり、ぜひこれは廃止、なくしてもらいたいというのが、一言で言えば私のきょうの意見であります。
最初に、最も単純なモデルをそこに図示してあります。有権者九人、選挙区三つのモデルでありますけれども、全体で投票すれば四対五になる結果が、小選挙区で代表を選ぶと二対一になってしまう、つまり多数と少数が制度によって逆転する、こういうからくりがこの選挙制度にはもともと理論的に含まれているということなんですね。皆さんは、選挙制度を論ずるに当たってこのことを御存じで議論されているかどうかということを、私はまず伺いたいというふうに思います。
しかも、今、田中先生がおっしゃいましたように、イギリスの総選挙では、少数が多数になるとか、逆転するということがありましたし、二〇〇〇年のアメリカの大統領選挙でも、また二〇一〇年七月の参議院選挙でも同じような現象が生まれております。理論的にだけではなくて、現実に少数と多数が逆転する、こういう選挙制度は選挙の制度としてはあってはならない。民主主義を少なくとも口にするのであるならば、これを認めてはならない、私はそう思っております。
また、二点目は、少数が多数に読みかえられるという問題点もあります。
さらに、三点目は、多くの死票が出て選挙結果に生かされません。〇九年総選挙の場合は、四六%が死票になっております。
四点目に、過剰勝利と過剰敗北によって選挙の結果が激変する。〇五年の場合と〇九年の場合、二回の総選挙を比較しますと、民主党は激増し自民党は激減して、過剰勝利、過剰敗北という結果が生じております。
五番目に、政党規模に対して中立的ではない。これも今田中先生が御指摘されたとおりでありまして、大政党に有利に、小政党に不利になる。人為的に民意をゆがめて代表させる、根本的な欠陥を持つ最悪の選挙制度が小選挙区制であるというふうに私は考えております。
実際にどのような問題点が生じてきたかということについても幾つか指摘しておきたいと思います。
一つは、政権の選択肢が事実上二つしか存在しない。大きな政党が二つしかなくなるということの結果、そうなるということです。
二つ目に、民主党を前にしてこれを言うのは非常に言いづらいのですが、選挙互助会的な政党の登場ということでありまして、小選挙区で当選できるのは一人だけしかないということでもって、肩を寄せ合う、そういう政党ができたというふうに思います。
三点目は、風向きによって短期間で多数政党が交代する。その結果、衆参が異なるねじれ現象が起きやすくなっているという問題があります。
また、一方で、二大政党の間に存在する有権者を奪い合うということで、相互の政策が接近するという形で政策が似通う。連立、翼賛化という、連立、提携、連携の可能性、誘惑が生ずる。しかし、小選挙区制でありますから、選挙になれば敵対せざるを得ないということでもって、結局それはうまくいかない、そういうジレンマが生まれるということです。
五番目が、地域や民意との乖離、切断ということでありまして、小選挙区で落選しても比例区で当選できる。選挙区の民意の動向に無頓着である。中選挙区制の場合は、選挙区と議員との結びつきというのは今よりずっと強かったというふうに思いますし、選挙区でいろいろ意見が上がってくると、それが政党の政策にも反映される。自民党が長期にわたって政権を維持できたのは中選挙区制であったからであるというふうにも言えるのではないかと思います。今日、そういう選挙区や民意と、それから個々の議員や政党との応答性というものが非常に薄れているというふうに言えるのではないでしょうか。
六番目も、これも皆さんの前でこういうことを言いたくはないのですが、議員の質の低下という問題があるように思われます。同一政党内での競争や切磋琢磨というような機会がなくなって、鍛錬されたり教育されたりという機会が非常に少なくなっているということでありまして、そういう議員がおられるということは、一般にそう言われておりますし、皆さんは、周りを見ていただければおわかりじゃないかと思います。申しわけありません。
三点目ですが、制度改革に関する幾つかの論点ということですけれども、一つは連用制の問題でございます。
これは、今浮上してきていますけれども、一九九三年にも民間政治臨調によって提案されたものでありまして、また約二十年ぶりに復活したなというふうに、私はちょっと懐かしく思ったのですが。
小政党が不利にならないという点では小選挙区制よりはましということではありますけれども、しかし、小選挙区と、比例代表ではなく反比例代表が並立するという形になるわけでありまして、有権者の選択が、特にこの比例部分では逆転するということで、頑張ってほしいと思って有権者が投じたら、投じれば投じるほど減ってしまう、小選挙区でもって頑張ってほしいと投じれば比例代表部分が減ってしまう、こういう形でゆがめられます。
「正当に選挙された国会における代表者」という憲法前文の文言からしますと大きな問題が生ずるわけであって、これは憲法違反ではないかという、その可能性もある。もし選挙がこの連用制のもとでなされれば、裁判に訴えられ、違憲判決が出るという可能性もあるのではないかというふうに思います。
比例定数の削減案も、現在の選挙制度改革との関連で出てきておりますけれども、日本の国会議員は国際的に見ても多くありません。先進国で一人当たりの国民の数が多いのはアメリカだけでありまして、日本は、イギリスやフランスやドイツなどと比べても多くない。したがって、現在よりも少なくすることは反対であります。
これは、身を切る改革というふうに言われておりますけれども、実際は民意を切る改悪でありまして、比例区定数の削減は小選挙区の比率を高めて、今指摘しました問題や害悪というものをさらに拡大する、増大させるということになるだろうというふうに思います。
これをぜひやりたいというのは消費増税のための口実ではないのか。これをやらないとほかに、やることがないということじゃないですけれども、ほかに身を切るということでもってやれることが余りない、せめて比例区定数ぐらい切っちゃったらどうだという、いわゆる政局や党略のために制度改革を利用するというようなことがあってはならないというふうに思っております。
三点目に、〇増五減案でありますけれども、これは、やらないよりはましだという面がありますが、しかし、それは当面の緊急避難でありまして、人口異動が続けば、いずれまた是正が必要になるだろうというふうに思います。
昨年三月の最高裁判決が問題としました一人別枠方式にはメスが入りませんし、抜本的改革を先延ばしするための口実ということになってしまうのではないか。つまり、もうこれで終わりということで、その次の抜本的改革に着手されないということになってしまっては困るということであります。
四点目に、民意の反映か集約かという論議が、これはもう二十年前からありました。比例代表は民意の反映であって、小選挙区は民意の集約であると。付言しますと、小選挙区は多数党に有利だけれども比例代表は少数党に有利だという議論もありましたけれども、小選挙区は多数党に確かに有利ですけれども、比例代表は少数政党を不利にしないということであって、別に有利にするわけではありません。この点も大きな誤解ではありましたけれども、この反映か集約かという議論もまた大きな誤解に基づくものであるというふうに思います。
そもそも、選挙というのは民意を議会に反映するためのシステムでありまして、制度でありまして、反映された民意を、議会において議論、熟議を通じて、討論を行うことによって一つの方向性に集約していくというのが議会であり国会の役割なんですね。だから、国会議員が、つまり議会に選出されて民意を反映するべき議員自身が、選挙によって集約などということを言うのはまさに自己否定そのものであって、国会に正当に反映された民意に基づいて国民の意思を一つの方向、政策にどうまとめ上げていくかということこそ、議会に選出された議員の方々が行うべき役割、重要な役割なのではないだろうかというふうに思います。
望ましい選挙制度の提案ということでございます。
一つは、十一ブロックでの比例代表制であります。現行の十一ブロックをそのままに小選挙区の定数を加えるということで、今すぐに、この場で皆さんが合意すればできる、こういう簡単な制度改善、制度改革でありまして、できればそういう方向で話し合いをして合意をしていただきたいなというふうに思います。
二つ目が、全国一区での比例代表制ということでありまして、これは四百八十議席全てを全国一区の比例代表で選出するというやり方です。
三番目が、都道府県単位での比例代表制ということで、現在の議席を人口に比例して配分し、比例代表で選出するというやり方です。
全国一区が一番民主的なんですけれども、しかし、地域代表としての性格が薄れるという問題がありますし、全国を股にかけて選挙をするというのも候補者の皆さんの負担が大きいということで、しかも、十一ブロックという制度になっておりますので、それを生かす形で、ある程度地域性を保持しながら比例代表制を導入するというやり方がよろしいのではないかということです。
各都道府県ということになりますと、選出単位が狭くなって死票が多くなりますし、どのような形でそれぞれの定数を配分するかということが問題になります。人口異動によってそれぞれの都道府県の定数に不均衡があらわれるという場合も出てくるかもしれません。比例代表ということでやりますと、定数不均衡問題というのは同時に解決されるということです。この点での大きなメリットがある。
四番目が、現在、中選挙区制復活ということで議員連盟ができたりして、そういう動きがありますけれども、これも、少数政党もそれなりに議席を獲得できる準比例代表制ですから、現状より改善されるだろうというふうに思います。
しかし、準比例代表制の、準をわざわざつくる必要はないのでありまして、準を取って完全な比例代表という形にした方がより民主的ではないか。しかも、定数三や、前にやった五なんかの場合ですと、三議席目、五議席目は、やはりこれは小選挙区制的な問題が生まれるということでありまして、さらにまた、これも以前の中選挙区制もそうでしたけれども、定数不均衡の問題というのが、ある一定の年月、期間がたてば生ぜざるを得ないだろうというふうに思います。
ということで、結びですが、今から約二十年前に、先ほど申しましたような形で小選挙区制を批判し、連用制の問題点も指摘した私としましては、今日このような形での意見陳述を行う機会を得たことはまことに感慨無量でありまして、ここで述べたような問題が生ずることは以前からわかっていたことではありますけれども、政治改革神話が崩れて、そしてそれをやはり見直さなきゃいけないということでこういう形で皆さんが議論されている。大変結構なことだというふうに思いますし、歓迎したい。
ぜひ、現在の選挙制度を見直して、小選挙区制を廃止し、比例代表的な選挙制度を導入することによって、より民主的な選挙制度、本当に国民の気持ちが国会にきちんと反映され、そして皆さんがそれに基づいて、熟議、討論を通じてよりよい政策を形成することができるような国会をつくる、そういう方向での制度改革を行っていただきたいというふうに思います。このことをお願いして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)