東田親司の発言 (行政監視委員会)

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○参考人(東田親司君) まず最初に、このような機会を与えていただきまして心から感謝申し上げたいと思います。
 私自身は、総務庁という役所に長く公務員として勤務しておりまして、その後、現在の大学に移って研究活動に入っておりますので、二つの経験に基づきまして僣越ですが申し上げさせていただきます。
 お二人のお話を伺っていますと一部重なる面があろうかと思いますが、お許しいただきたいと思います。
 最初に、私のレジュメ、項目だけで恐縮ですけれども、最初に中央省庁について申し上げたいと思います。
 まず、そのうちの大規模省、これは具体的には国交省と厚労省についてでございます。
 今世紀初頭に行われました中央省庁等改革における省編成の基本方針をここでまた振り返ってみますと、目的別の省編成、それから大ぐくり編成、利益相反性への考慮、それから省間バランス、省間の相互調整などの原則があります。しかし、現在、十年以上が経過した時点でその実態を見てみますと、大ぐくり編成に重点が置かれて、目的別の編成や省間バランスの観点がやや弱かったのではないか。分かりやすく言えば、中央省庁の数を減らすことを重視し過ぎた結果、大臣のコントロールの範囲を超えた大規模省ができているのではないかというふうに考えます。
 例えば、再編後の省庁の内部部局の数で見てみますと、平均しますと一省平均約七局でありますが、その倍近くの局数の大規模省があります。
 最多の十三局となっている国交省について見てみますと、国土の総合的な開発利用とそのための社会資本の整備が主たる任務になって発足しておりますけれども、社会資本を利用する陸海空の運輸事業者等への指導監督まで所管しておりますため、一人の大臣の統括範囲としては無理があるのではないか、もう少し省間バランスに配慮して、二人の大臣の所管に戻してもよいのではないかというふうに考えます。
 二番目に局数が多い十一局の厚労省につきましては、雇用の確保、労働条件の整備と社会保障の向上とが主たる任務とされ、政策の在り方として少子高齢社会などに対応した労働政策と社会保障政策との統合、連携強化などが求められて発足しております。今日では年金と雇用との連携の問題など再編の目的を大いに発揮すべき状況になっているという見方は当然できますけれども、今後、年金行政、少子高齢化対策、雇用行政がそれぞれ国民生活の上で更に重要性を増し、国民の関心も一層高まることを考慮すれば、むしろ社会保障と労働行政とに分割して、それぞれ責任を持つ大臣を置き、両行政の調整の過程を外部に出すことで国民的議論の俎上にのせる方が適当なのではないかというふうに考えます。
 次に、内閣官房、内閣府について申し上げます。
 内閣官房、内閣府につきましては、先ほど古川元副長官からお話がありましたように、何々本部とか何々会議と呼ばれる全政府的な組織が置かれたり、内閣府特命担当大臣が多数任命されておりまして、それに伴って事務局や担当室も置かれて、組織、人員が肥大化しております。
 例えば組織について見てみますと、内閣官房のホームページでは現在活動中の各種本部や会議が九十以上ありまして、本来の約八百人の定員のほかに七百人以上が併任で常駐しているというふうに聞いております。また、内閣府本府には二十以上の担当室が置かれ、本来の約二千三百人の定員のほかに併任が四百人以上いると聞いております。それから、特命担当大臣が現在八人おられまして、その下に副大臣や大臣政務官が多数おられますので、指揮命令系統は極めて入り組んだ複雑な状態になっておりまして、国会でも肥大化が問題視されております。
 このような組織の肥大化と指揮命令系統の複雑化を解決するために、政府内の調整にかかわる元々の役割分担がどうなっていたかというのを振り返ってみたいと思います。
 基となった行政改革会議の報告書では、政府内の調整に関して、内閣官房、内閣府、各省の三類型の調整を組み合わせて機能強化を図るべきことを提起しております。三類型の調整を簡単に申し上げますと、まず各省の行政目的達成のための調整権が各省にありまして、その上に、担当する主たる省を特定することが困難な課題について内閣府が必要な場合には特命担当大臣を置いて総合調整を行うこととされ、そして最後に、内閣官房が総理の活動を直接補佐する立場から最高、最終の総合調整を行うこととなっております。
 こうした三つの分担基準で現状を見たときに、まず各省の調整に委ねてよいと考えられるものまで内閣官房や内閣府に集約されていると思われますので、次の二つの原則で内閣官房、内閣府の調整の在り方を見直してはどうかと思います。
 第一の原則は、内閣府特命担当大臣の在り方についてですが、特命事項の内容から見て、主たる省を特定することが困難な課題は引き続き内閣府が担当しますが、それ以外の、本来、主に所管する大臣がいる場合にはその大臣を調整の主役にするということであります。例えば、少子化対策は厚生労働大臣に、宇宙開発は文部科学大臣に、郵政改革は総務大臣が調整の主役になるべきだと思います。その際、必要があれば、これら主に担当する大臣を特命担当に発令してもよいと思います。こうした措置によって、現状では内閣府特命担当大臣と主に所管する大臣の二人が関係大臣になっていて、その間の役割分担が明確でなく、指揮命令系統が複雑化している状態が是正され、簡素化が期待できます。
 第二の原則は、内閣官房、内閣府に置かれる事務局や担当室についても、内閣全体の総合的、戦略的な方針の企画立案機能を担う役割にかかわる場合や主たる所管省を特定できない場合だけに限りまして、その他のものは最も関係する省の担当部局が全政府的な事務局の役割を担うことです。例えば、地域主権戦略会議の事務局は内閣府ではなく総務省に、障がい者制度改革推進本部の事務局は内閣府ではなく厚生労働省にという具合にすることです。そうした視点で内閣官房、内閣府の事務局や担当室を点検いたしますと、組織の簡素化と併任者の整理が相当できるのではないかと考えます。
 現状が肥大化、複雑化している背景には、私の推測ですが、主たる担当省が政府全体の調整の主役となることに対して他の府省が納得しない場合があること、あるいは特定省が調整の主役になるよりも政府中枢での取組姿勢を見せた方が政治的な効用があるなどの判断からきていると考えますけれども、今申し上げた二つの原則で見直しを行いまして、可能な限り内閣官房、内閣府のスリム化を進めることで政府内の役割分担を明確化し、政権中枢の簡素で迅速な指揮命令系統を確立すべきではないかと考えます。
 三番目に、総務省についてでございますが、総務省は、中央省庁等改革基本法で、「内閣及び内閣総理大臣を補佐し、支援する体制を強化する役割を担うものとして設置」というふうに書かれております。主に管理的業務の調整を担う役所として設置された経緯があると考えます。しかし、発足後、本来所管すべき郵政改革、公務員制度改革、行政改革などの調整課題が内閣官房や内閣府の所管となりまして、設置後の性格が曖昧になった面があると思います。先ほど述べました内閣官房、内閣府のスリム化を図る原則からすれば、郵政改革、公務員制度改革、行政改革などは総務省の所管に戻すことが考えられます。
 しかし、この場合、考えないとならないのは、国家公務員制度改革基本法が既に成立しておりまして、それに基づき内閣官房に内閣人事局が設置され、それに伴って総務省の担っている人事行政に関する機能、これは人事管理とか組織・定員管理だと思いますが、これも必要な範囲で内閣官房に移管することが法律で規定されております。そのことを考慮いたしますと、今後の総務省の在り方は、人事行政に関係する機能は内閣官房に移管し、総務省はそれ以外の機能を所管することが原則になろうかと思います。その際、内閣府にも必ずしも内閣府でなければならない業務以外のものも所管されていると思われますので、内閣官房、内閣府、総務省の三者の役割分担は一体的に検討しなければならない課題だと考えます。
 次に、大きな二番目で、公務員制度改革でございます。
 そのうちの(1)公務員の給与と労働基本権について申し上げます。
 現在、一般行政事務を遂行する公務員に労働協約締結権を認めて、給与等の勤務条件を労使の話合いで決定しようとする政策が提案されておりますが、公務員の給与は労働基本権の制約の下での代償措置により民間給与の平均水準を確保するというこれまでの仕組みを根本から変えるものでありまして、慎重な対応が必要と考えます。
 一般に、公務は業務の成果を計量的に測定し難いものが多いなどの特殊性があることや、公務員を希望する者は、経済的な対価よりも公的、社会的な貢献に生きがいを感じて職業選択してきた者が多いと思いますので、これらの者の労働の対価である給与等の勤務条件は、当事者が交渉により決定するよりも、社会一般が認容する水準に収まるようにする仕組みが望ましいと考えます。その点で、現在の労働基本権の制約とその代償措置である人事院勧告制度は特に問題はないと考えられ、あえて労働協約締結権を付与してまでして当事者の交渉に委ねることのメリットが何であるのかが不明であります。
 国家公務員制度改革基本法第十二条では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」と規定しておりますが、協約締結権の付与に伴う便益及び費用等の全体像がこれまでに国民に分かりやすく提示されたとは思えません。便益については、公務員への労働協約締結権の付与が国民にとってどういう便益があるのか不明ですし、費用については、労働協約締結権の付与に伴う副作用がどの程度国民生活に影響を与えるのか提示しなければならないと思います。
 その点で、平成二十二年版の公務員白書におきまして、人事院が、主要諸外国においては、協約締結権は認めるが、争議権は制約し、その代償措置として仲裁裁定制度を設けるという例は諸外国にはないとしていること、それから、かつて我が国に存在した三公社五現業においてそのような制度がありましたけれども、法律や予算の統制等により当局側が当事者能力を失い仲裁裁定による決着が続いた結果、労使交渉が形骸化して労使関係は安定せず、大規模な労使紛争が繰り返されたことなどの警鐘を鳴らしております。
 公務員の労働基本権は公務員制度の根幹であり、その変更は公務の能率や公務の受け手である国民生活に大きな影響を与えますので、公務員一般や国民一般に理解されるよう慎重に対応すべきと考えます。
 また、関連しまして、東日本大震災の復興財源の確保のために国家公務員給与の臨時的な削減措置が行われることになりましたが、これを恒久的な措置にすべきというような意見も一部にあるようですが、公務員の給与を制度的に民間平均値よりも低いものとすることは不合理であり、あくまで短期間の臨時的な措置にすべきと考えます。
 さらに、公務部門が率先して歳出を抑制すべきことは分かりますが、なぜ人件費削減率が二割なのかは不明でありまして、こうした公務員の基本的な処遇にかかわる重要な制度が合理的な説明がないまま政治的な判断で変革されていくことは、公務員制度の安定性を損ない、現職公務員の士気に影響し、公務員志望者数の減少や質の低下を招来するおそれが強いと考えます。
 次に(2)として、幹部職員の人事について申し上げます。
 国家公務員制度改革基本法の規定による内閣人事局の設置が具体化して現在提案されている国家公務員法の一部改正案が成立いたしますと、各府省の幹部職員人事に対して、総理又は官房長官から、内閣の重要政策を実現するために内閣全体の視点から適切な人材を登用する必要があると判断するときは、任命権者に対し、幹部職員の任免について協議を求めることができることとなっておりまして、一言で言うと、内閣からの府省幹部人事への関与が強化されることになります。
 これによって、幹部職員の所属府省への帰属意識が薄らぎまして、縦割り行政の是正に寄与することが期待されておりますが、他方では、一般職公務員である府省の事務次官以下の幹部の人事が恣意的な任用に陥るおそれが出てくると考えます。例えば、政権交代があった際などに、前政権時代の府省幹部は原則交代してもらうといった安直な考えで政権中枢からの関与が行われる可能性があります。
 特に国家公務員法の一部改正法案では、審議官クラスから事務次官までの幹部クラスが一グループとみなされて、極端な場合には、事務次官から審議官に異動させられても、現在は降任となりますが、新しい仕組みの下では降任にならず転任になりますので、事実上の降任が行われやすい状況になりますので、十分な注意を払う必要があります。
 恣意的な任用を防止するためには、中立的な機関が人事任用を監視しつつ必要な是正勧告を行うことや本人へ転任理由を開示すること、それから、事実上の降任である転任も不服申立ての対象として中立的な機関が是正勧告できるようにすることなどが必要ではないかと考えます。
 (3)として、再就職について申し上げます。
 現在の政権では公務員の再就職のための役所側によるあっせんが一切禁止されておりますため、多くの公務員は定年まで在職しております。このため、在任期間の長期化により組織の新陳代謝に問題が出たり、独立行政法人の役員ポストの公募が現職公務員の出向により有名無実化したり、処遇のための専門スタッフ職等のポストの増設などにより人件費が増嵩したりなどの弊害が出るとともに、新規採用を大幅に抑制しなければならない状態になり、公務員としての人生設計を描いている学生等に大きな衝撃を与えております。
 確かに、再就職を野放しにすれば、民間企業等との癒着、出身府省への帰属意識に伴う縦割り行政の弊害の発生、それからOBのいる企業や団体との随意契約や助成などによる非効率な公費支出などが発生するおそれがありますが、他方で、全面的な再就職のあっせんの禁止は、人件費の膨脹、組織の新陳代謝機能の低下、公務員であった者の能力の未活用などの弊害を招き、さらには、先ほど申したように、若者の公務への貢献の夢の実現を狭めていることは重大な問題があると考えます。
 完全無欠な解決策は見当たりませんし、また高級官僚の天下りが行政への信頼を損なう大きな要因になっていることは否定できませんが、他方で、全面的な再就職のためのあっせんの禁止が、良い面だけでなく副作用として無駄の発生や組織の活力をそいでいる面もあること、そして若年者の雇用にまで影響を与えている事実も国民に知ってもらい、その上で総合判断をしてもらう必要があると思います。
 私個人は、再就職の抑制に伴う長所短所を比較すれば現状は大きな問題点を内包しておりますので、例えば、官民の癒着を引き起こしそうな営利企業への再就職は原則禁止としつつ、独立行政法人や公益法人などの現在現職公務員が出向している準公務部門への再就職については、個々の再就職者の能力の活用が公益に合致しているという採用理由を開示して認めることとし、その代わり、OBから役所側への働きかけや役所側から特定の法人への優遇措置などを禁止したり、またその監視を徹底することが一つの解決策ではないかと考えます。
 なお、再就職に関連して、現在、行政機関の特定ポストや独立行政法人等の役員の公募を行う場合がありますが、公募は言うまでもなく応募者の能力や適性を公平に判断すべきでありますのに、過去の経歴に公務員経歴があるというだけでマイナスに評価される場合があるという声も聞きますので、一層公平に運用いただくよう要請したいと思います。
 最後に、早急に是正すべきと考える当面の改革課題について二点申し上げます。
 (1)国・地方間の人事交流についてであります。
 国家公務員と地方公務員間の人事交流は、相互の仕事を理解し今後の地方分権を進める上でも有用な仕組みと考えます。
 総務省の資料によりますと、平成二十三年八月時点で、国から地方へ千七百十二人、地方から国へ二千九十三人が出向しており、大きくとらえますと同程度の数の交流が毎年なされております。しかし、国から地方への出向者の約半数が課長級以上のポストに就任しているのに比べて、地方から国への出向者のうち僅か二人しか室長以上のポストに就いておらず、交流のレベルは大幅な不均衡になっております。
 特に、地方自治を所管する総務省は三百八人の出向者の七一%、公共事業を所管する国交省は四百八十五人の出向者の六二%が都道府県や市町村の課長以上の要職に就いております。逆に、地方から国への出向者のうち室長以上の者は二〇〇五年ころには十五人前後で一%ありましたが、最近では二人で〇・一%と減少しております。
 国、地方間の人事交流を対等なものとすべきことは、地方分権推進委員会の勧告を受けて政府が平成十年に閣議決定した地方分権推進計画に盛られている事項であり、直近では平成二十一年三月三日の採用昇任等基本方針の閣議決定で、相互・対等交流の促進を原則として、交流ポストの長期固定化により生ずる弊害の排除に配慮しつつ、地方公共団体との人事交流を進めるとうたっておりますが、実態は程遠くむしろ悪化している状況も見られ、早急な是正が必要であります。
 この問題は、国だけでなく受入れ側の地方にも責任がありますが、特に地方分権や地方財政に大きな影響力を持つ総務省や公共事業予算を持つ国交省を始めとする中央省庁が地方公共団体を出先機関や指定席のように見る姿勢を改めることから始めなければならないと考えます。
 閣議決定が有名無実化し、非対等で長期固定化し、ひいては地方公務員の方々の士気にも影響を与えている現状を見ますと、国と地方の人事交流を適正化する法制的な措置も必要ではないかと考えます。例えば、国と地方公共団体との間の人事交流に関する法律を作ったり、あるいは、提案中の国家公務員法の一部改正法案では官民人材交流の活発化の措置が規定されておりますので、これと並べて国、地方間の交流についてのルールを追加規定するなどして、各省任せにしない方法を考えていただきたいと思います。
 最後に、時間がなくなりましたので、統合省庁でのスタッフ職について簡単に申し上げます。
 中央省庁再編の際には省庁数を減らすことが重視されたため、統合省庁では幹部ポストが減少することへの代償措置として主に大臣官房にスタッフ職が多く設けられております。事務次官級、官房長級、それから官房課長級などに複数のポストが用意されておりまして、統合した数の省庁の分だけあるように見られます。これについては、既に十数年経過しておりますので、もう整理合理化してよろしいのではないかというふうに考えます。
 ちょっとオーバーいたしまして、申し訳ありませんでした。

発言情報

speech_id: 118014281X00220120319_010

発言者: 東田親司

speaker_id: 1858

日付: 2012-03-19

院: 参議院

会議名: 行政監視委員会