柴田明夫の発言 (国際・地球環境・食糧問題に関する調査会)
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○参考人(柴田明夫君) 資源・食糧問題研究所柴田と申します。よろしくお願いいたします。
私の方は、前段で世界の食料問題について申し上げまして、次に水の話に進めていきたいと思います。(資料映写)
初めに、日本の食料生産を各国、主要国と比較したものであります。
日本は、八百万トンの米を中心に大体年間一千万トンの食料を生産しております。ほかの国と比べますと、例えばイギリスなどは人口、国土面積半分でありますけれども、三千万トンの穀物を生産しております。ドイツは五千五百万トンというレベルの穀物を生産しております。日本が一千万トンの国内穀物生産で済んでいるというのは、実は、もう一つ、三千万トン近い穀物を海外から輸入しているという、こういうことであります。実は、この輸入分は不足でありますけれども、この不足と、国内生産のよく過剰と言われています、過剰と不足が併存しているというのが日本の特色、特徴であります。
実は、不足分の三千万トンというのは、水の輸入、バーチャルウオーターの輸入でもありますし、大きな、そういう意味では国際社会に水の輸入という格好で日本は負担を強いているということも言えるかと思います。
世界の食料市場の動向でありますけれども、このグラフは過去六十年間の年平均の小麦とトウモロコシと原油価格の推移を見たものであります。七〇年代、八〇年代、九〇年代と、今振り返りますと低位安定した推移をしておりましたけれども、二〇〇〇年代に入ってステージが変わるように価格が上がってきております。この安い食料時代というのは終えんしたと、こんなふうに見ております。
背景でありますけれども、世界的な食料需給の逼迫が予想される。その中心は、中国の影響が大きくなってきているということであります。バイオエタノール等の生産も拡大しておりまして、今食料市場においては三つの性格の争奪戦が強まってきていると。国家間の奪い合い、エネルギー市場との奪い合い、それから水と土地をめぐって農業分野と工業分野、あるいは都市生活分野との奪い合いであります。
食料というのは、今までは言わば太陽の光と水と土地があれば幾らでも再生産可能な無限の資源でありましたが、だんだん有限の資源化の性格を帯びてきている。資源問題といえば希少性の問題でありましたけれども、今世紀に入ってからは徐々に希少性とは関係のなかった食料とか水とか温暖な気候とか多様な生物とか、こういうものも新たな希少性の問題をはらみ出したというところが非常に気になるところであります。
穀物の価格でありますけれども、二〇〇八年のリーマン・ショック前のときに過去最高レベルに達しました。リーマン・ショックで急落しましたけれども、下がったとはいえ、見ていただくと、これはシカゴの大豆、小麦、トウモロコシの価格でありますが、昔の十年に一度干ばつで大相場が出る、その高値が安値に変わっただけでありまして、穀物価格のステージは大きく変わってきております。足下、再びこれは上昇の兆しが見られるということであります。
穀物に限らず、石炭とか鉄鉱石、銅地金、原油、天然ゴム、あらゆる資源価格を時間軸五十年ほどで眺めてみますと、二〇〇〇年代に入ってから大きくこの価格の上昇が見られるようになったという点が特徴であります。投機マネーの影響はもちろん大きいわけですけれども、価格とは一体何かと。あらゆる情報が圧縮されたものが価格でありまして、その価格がこういう具合で均衡点が変わるような動きをしているということは、需給が大きく変わってきている、需給の構図が変わってきているということであります。
食料については、特に二〇〇〇年代に入ってから、これは穀物の生産、消費、期末在庫率の動きでありますが、二〇〇〇年に入ってからのいわゆる市場の拡大が著しくなってきております。消費はこの十年間、前年を下回ることなく過去最高を更新し続けているということであります。生産がこれに追い付いて足下の生産は過去最高レベルでありますけれども、異常気象等、干ばつ等で減産になれば投機マネーが入り価格が上昇する、期末在庫率も二割を維持するのがやっとと、こういうふうな状況であります。
穀物の在庫の特に三分の一以上は中国で在庫されていると、こういう状況であります。米とトウモロコシは世界の半分が中国の在庫であります。
市場が拡大している背景の一つの要因は人口の増加であります。昨年十月、国連によりますと、世界人口は七十億を超えた。この人口をどう見るかということでありますが、働き手として見れば、経済成長を押し上げるというわけで、むしろ好ましいことでありますけれども、消費者の口として見れば、あらゆる食料を含め資源を食べ尽くしていくという、こういう点では、地球が無限であれば問題ないわけですけれども、今、均衡点価格が上がったり資源の争奪戦が始まったりということは、もう既にこの地球は無限ではないという、こういう見方に切り替える必要があるなということであります。
人口の増加は、これ下の方で、マルサスの問題でありますけれども、幾何級数的に人口は増えていくけれども食料生産は直線的にしか増えない。しかしながら、生産性が上がって近代化してくる中で、その直線の立ち位置はずっと上に上方シフトしたわけですけれども、これが徐々に伸びが低下してくるだろうと、こういう懸念があります。
需要サイドの要因というのは中国でありまして、中国のGDP、七八年に改革・開放をしてからもう三十二年が過ぎ、平均成長率が一〇%で成長しますと、そのGDPの規模というのは幾何級数的な姿を示すようになった。今後も、しかしながら、日本のGDPを追い抜いたわけでありますけれども、人口で割るとまだまだ一人当たり四千四百ドル弱ということで、成長が必要であります。しかし、成長すれば、資源、エネルギー、食料、こういったもののまた需要が拡大してくるということであります。
中国の人口の増加も背景にありまして、増加する人口の約半分が都市部に生活すると。十万人以上の人が住む地域が都市でありますけれども、六百六十近い都市に人口の半分が住む。都市化をすれば、核家族化が進み世帯数が増える、食生活が一気に改善してくるという中で肉の消費が増える、そういう中で食料の需要が拡大しているわけであります。
この部分は、中国、九〇年代までの量の消費から質を伴う消費に拡大してきているということであります。
輸入も増えてきて、トウモロコシ、大豆などは、特に大豆は五千七百万トンという輸入規模になっています。トウモロコシは、これまで自給してきたものが二〇〇九年以降自給ができなくなって純輸入国に転じてきている。右側のはUSDAの二〇二一年までの見通しでありますが、一貫して輸入が拡大していくと、こういう見方になっております。
資源戦略も明確に打ち出してきておりまして、二〇〇八年以降、供給量を確保する、備蓄の拡充、需要サイドからの省エネ、省資源を徹底させると、こういうふうな戦略を中国は打ち出してきております。
アメリカにおいては、右の上にエタノール向けの消費量の拡大がなかなか止まらないという、そういう、青い部分でありますけれども、姿になっております。一方で、赤いグラフの部分、輸出でありますが、輸出の足下、絶対数が減ってきて、生産に占める輸出の比率も下がってきているという状況であります。長期的にも、右下でありますけれども、世界の在庫率は低下していく、アメリカの在庫率は低下していくという見通しであります。
生産を増やせばいいんですけれども、この青い棒グラフの部分でありますが、耕地面積はもう頭打ちであります。専ら単収を引き上げてきていますけれども、単収の伸びはだんだん鈍化してきているという状況にあります。長期的に見ても、世界の食料の需給というのは逼迫傾向をたどるというのが多くの国際機関の見通しになっております。
加えて、様々な自然の反逆とも受け取れかねない問題が生じてきていると。除草剤の効かないスーパー雑草が急繁殖するとか、こういったことも指摘されております。気象も、異常気象の頻発化というのは肌身に感じるところであります。
それから、水の問題でありますけれども、地球上の水のうち利用できるのが大体一万分の一というところで、水自体は循環資源であって増えもしなければ減りもしないわけですけれども、一方で需要はこのように急拡大している。今、食料の生産のために七割が消費されていますけれども、工業用水、都市生活用水の需要が拡大するという格好になってきております。
特に水の利用という面では、世界人口の六割が集中するアジアで、しかも急速な経済成長が見られます。一方で、降水量でいきますと、大体年間、世界の三割弱、淡水のシェアで二七%ということで、アジアにおいて最もこの水の問題というのは先鋭的に現れてくる可能性が高いわけであります。地下水においても、先ほど滝沢先生の方から指摘がありましたが、砒素の汚染の問題というのも深刻化しているということであります。
水の需要、これ、先ほどちょっと申し上げまして、四十年で倍増すると、人口の伸びを上回る形で伸びているということであります。
ここはちょっと飛ばしたいと思いますが、バーチャルウオーターの話であります。
それから、国内においては、右下のように、ちょっと細かな表で恐縮でありますが、日本の場合には大体年間千七百ミリを国土面積に掛けますと水の賦存量というのは六千五百億トンということでありますけれども、実際に利用されているものはこの左側の八百五十二億トンということで、蒸発した部分を除いて水資源量の二〇%ぐらいにとどまっているということであります。これは、国内の水資源のフル活用の方向へ切り替える、こういう必要があるのではないかと思います。
その一つは、沿岸部湧水地における水資源の活用ということで、例えばこの特定港湾の高知県宿毛湾など、湧水地の水を、国内の各地域はもとより、場合によっては海外への輸出も可能ではないかと。雨水の農業への有効利用とか、あるいは水道においても、おおむね下流のところに浄水場があるということで、重たい水を重力に逆らって排水していくという、こういうふうな状況にもなっていますので、なるたけ上流地点に浄水場を変えることによって電力を始めエネルギーの削減効果が得られるんじゃないか、こういうことも言われております。
これは、例えば国内資源のフル活用というところでは、木材なども、同時に水源涵養林としての木材もフルに活用していく必要があるなと。海外においては過伐採で問題になっているけれども、御承知のように、日本の場合には木を切らないことによる問題が生じているということであります。
それから、水のビジネスということであれば、左側のように、その地域地域によって必要とされる水の性格が異なるということでありますが、特に経済発展の段階に応じて、発展がまだ低いレベルの場合には上水道、それから第二段階になりますと下水道、そして第三段階であれば海水の淡水化を含めた造水、排水の処理と、こういうものが必要になってくるということであります。
これは、先ほど滝沢先生の御指摘の部分と重なりますので、飛ばしたいと思います。
水ビジネスの三つのパターンというところでは、上下水道関連ビジネス、規模の面では、ここでありますけれども、二番目、節水、リサイクル、水の高度利用というところも一つのビジネスの領域であります。それから、BOPビジネスということで、ベース・オブ・ザ・エコノミック・ピラミッド、非常に低所得層における水のビジネスというところがこれからは注目されるのかなと。
水は、膜による水処理市場というのも急速に伸びてきて、一方で右のように淡水化のコストもかなり下がってきております。一トン当たり一ドルを切るような状況にもなってきておりますので、この淡水化のビジネスも期待できるわけであります。
ここはちょっと技術的なところで飛ばしたいと思いますが。
一方で、水ビジネスの難しさというところでは、先ほどの大きな資金難、ファイナンスが問題であるというところであります。それから、一方で、この生命の糧としての水と、ビジネス、商品としての水と、いわゆるコモンズの、地域の共同資源なのか商品なのかという、こういう根本的な問題も出てきているなということであります。
ここは次に行きたいと思うんですが。
中国の水ビジネスの市場、これは参考までで、急速に、問題を抱えつつ、潜在的な市場が非常に大きいということであります。
日本の企業群としましては、よく言われておりますように、水処理の機器関連とかエンジニアリング、あるいは商社と、要素部分では力を持っているわけですけれども、一貫した開発から最終的な水道事業、そして下水道、料金の回収、こういうふうなところではなかなか力がまだ発揮できないという問題であります。
資源の問題、水の問題というのは、結局はこの地球の限界に対して活動がより活発化している、この帰結ではないかと、こういうふうなことであります。
以上であります。