黒田東彦の発言 (財務金融委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に、通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしております。最近では、本年六月十四日に、平成二十四年度下期の報告書を提出いたしました。今回、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼を申し上げます。
最初に、我が国の経済金融情勢について御説明申し上げます。
我が国の景気は、国内需要が底がたく推移する中で、輸出や鉱工業生産で改善の動きが続いていることから、持ち直しています。海外経済は、製造業部門に緩慢な動きも見られていますが、全体としては徐々に持ち直しに向かっています。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつあります。設備投資は、非製造業が底がたく推移する中、全体としても下げどまりつつあります。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にあります。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底がたく推移しています。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直しています。
先行きについては、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底がたさを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。
この間、我が国の金融環境は、緩和した状態にあります。マネタリーベースは、日本銀行による資産買い入れの進捗を反映して大幅に増加しており、企業の資金調達コストは低水準で推移しています。銀行貸出残高は、運転資金や企業買収関連を中心に、前年比二%程度で増加しています。CP、社債市場の発行環境も、総じて見れば、良好な環境が続いています。
金融市場では、五月下旬以降、海外市場の動きなどを受けて、やや不安定な動きが見られています。もっとも、我が国経済は順調に回復への道筋をたどっており、こうした実体経済の前向きな動きを反映して、次第に落ちつきを取り戻していくと見ています。
物価面では、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっています。予想物価上昇率については、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもありますが、家計やエコノミストに対する調査など、全体としては上昇を示唆する指標が見られています。東京の消費者物価の五月分は四年二カ月ぶりに前年比プラスに転じており、先行き、全国の消費者物価の前年比も次第にプラスに転じていくと見込まれます。
もとより、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国、資源国経済の成長力など、日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい情勢です。金融市場の動向を含め、今後の展開には十分注意していく必要があると考えています。
次に、日本銀行の金融政策運営について御説明申し上げます。
日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、本年四月に量的・質的金融緩和を導入しました。
量的・質的金融緩和は、量的に見ても質的に見ても、これまでとは次元の違う金融緩和政策です。
具体的には、第一に、量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、従来の無担保コールレートオーバーナイト物から、マネタリーベースに変更しました。その上で、マネタリーベースを二年間で二倍に拡大します。
第二に、長期国債の保有残高が年間約五十兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行います。これにより、長期国債の保有残高も二年間で二倍となる見込みです。また、長期国債買い入れの平均残存期間を従来の三年弱から七年程度に延長しました。
第三に、ETF及びJ—REITの保有残高が、それぞれ年間約一兆円、年間約三百億円に相当するペースで増加するよう買い入れを行います。
これらの措置から成る量的・質的金融緩和は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続いたします。その際、経済、物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行います。
量的・質的金融緩和の波及経路としては、第一に、資産買い入れにより、長期金利や資産価格のプレミアムに働きかける効果があります。第二に、金融機関や機関投資家の投資行動が変化し、貸し出しやリスク性の資産にシフトする、いわゆるポートフォリオリバランス効果が考えられます。第三に、物価安定の目標の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産の買い入れを継続することで、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できます。これらを通じて、民間需要を刺激するとともに、マクロ的な需給バランスの改善と予想物価上昇率の上昇により、物価の押し上げに寄与すると考えられます。
このような日本銀行の金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を十五年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えております。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めてまいります。
ありがとうございました。