加藤一彦の発言 (憲法審査会)

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○参考人(加藤一彦君) まず最初に、国権の最高機関であり、また良識の府であります本院にお招きくださり、心より御礼申し上げます。
 本日、十五分ばかりお話しいたしますが、何分勉強不足のゆえ、至らない点もあろうかと思います。少しでも本審査会のお役に立てればと考えております。
 では、早速中身に入ります。事前にお渡しした簡単な要旨に従いましてお話ししたいと思います。限られた時間でございますので省略するところもあります。
 まず、一番目。
 世界には約百八十の国、共同体があります。その全てを網羅的に調べ上げるのは不可能でありますし、また必要ではありません。日本との比較では、一定の条件を付した方がよいと思われます。そこで、日本の国力、すなわちG20加盟国ということと世界の人口規模に着眼して分類してみますると、次のように分かたれると思います。
 両院制の国につきましては、ここに書いてありますように、皆様方がよく知られている国だと思います。これに対して一院制の国、韓国、サウジアラビア、トルコ、中国、この四つの国が一院制の国でございますが、人口一億人という単位で見ますると、中国のみがこれを超えているということになります。要するに、経済的国力と人口規模に着眼した場合、共産党の一党独裁制を取る中国のみが一院制でございます。このことは、両院制が高いレベルで共通の憲法理解になっているのではないかと思われます。
 次、二の両院制の分類でありますが、両院制を取る場合どのような形式があるかということでございますが、憲法学では、第二院の選出方法に着眼しまして次の三つに分類する場合が多いです。貴族院型、連邦型、多角的民意反映型という三つでございます。
 では、第二院を置く理由はどこにあるのかということでございます。主に次の四つがその根拠と言われております。第一番目は多様な民意の反映、第二番目は第一院の補完機能、第三番目は慎重審議の励行、四番目は議会内の均衡の要請。この四つの理由は、日本国憲法上の国会との関係でいえば、当然、参議院の役割と対応関係性を持つことになります。
 そこで、次の大きい三のところで参議院の事柄について触れたいと思います。
 参議院の存在根拠につきまして、そもそも論というのが確かに一個あろうかと思われます。しかし、このことにつきましては既に皆様方多く知られていることだと思いますので、ここでは次のことだけ確認しておけばよろしいかと思います。GHQの憲法草案は一院制であったと。これに対して日本政府側が猛烈に反対をし、二院制を導入したと。その際に、貴族院の名称から、衆議院と同じようにハウス、両議院という言葉で表現できるようにということで参議院という言葉がその当時造語としてつくられたということを確認しておけばこの部分はよろしいかと思います。
 次に、参議院の存在理由の点について入っていきたいと思います。
 参議院の存在の根拠というのは、先ほど挙げた①から④の理由と当然関係してまいります。日本国憲法上、次のことと対応関係を持つと思います。①の多様な民意の反映に相当するのが憲法四十六条に定める各参議院議員の任期六年半数改選制であること、②の第一院の補完機能に相当するのが参議院の緊急集会の制度であること、③の慎重審議の励行に相当するのが両議院における法律案の議決という形式を取っていること、④議会内の均衡の要請に相当するのが憲法六十条二項など憲法所定事由以外両院は対等であるという点であります。すなわち、憲法上、衆議院の優越領域が極めて限定化されているということであります。
 以上挙げた四つの理由に、もう一つ重要な参議院の存在理由があります。それは、参議院議員の通常選挙は必ず三年ごとに行われます。すなわち参議院議員の通常選挙は定時的定点的民意反映機能があることであります。
 衆議院の総選挙とは異なり、内閣の意思による選挙執行はできません。そのため、内閣は、通常の場合、参議院通常選挙を意識しながら政権運営をせざるを得ないと。この定時的定点的民意反映機能が、恐らく第五番目の参議院の存在理由であろうかと思われます。
 ただし、今挙げた①から④プラス第五番目の特質もひっくるめてでございますが、以上の憲法的機能を参議院が果たし得るのには一つ約束事があります。それは、参議院が全国民の代表機関であるという憲法四十三条に立脚する組織体であるということであります。時折、参議院を地域代表あるいは職能代表と描きがちでありますが、憲法上、全国民の代表機関であるということは、当然、部分代表的要素を排除することを意味します。この点は最高裁判所の判決にもかいま見ることができると思います。
 では次、大きい四番目のところに入りたいと思います。逆転国会、あるいはメディアではねじれ国会という言い方もされると思いますが、ここでは普通の用語法として逆転国会という言葉を用いますが、この逆転国会というのは政治表層の問題であって、両院制の本質的問題ではないと考えております。なぜならば、これは解決可能な課題であるからであります。すなわち日本国憲法の想定内の問題であると、そう考えております。
 両院関係性についてでございますが、私、ドイツをほんの少しばかり勉強しておりますので、ドイツとの比較の上で少しばかりお話ししたいと思います。
 ドイツも両院制に分類しようと思えばすることもできるんですが、ドイツの連邦参議院は日本の参議院とは全く異なります。ドイツの連邦参議院を直訳すると、連邦の評議会となります。議院、ハウス、ドイツ語で言うカマーではありません。これは、ドイツ連邦憲法裁判所及び通説においても、連邦参議院はハウスではないということが明言されております。
 連邦参議院は州の代表機関であり、全国民の代表機関ではございません。そのため、連邦参議院の構成員は州の指示に拘束されます。構成員は全て州政府の首相及び閣僚が兼務いたします。当然、無給でございます。何となれば州政府の給与をもらっているからでございます。
 連邦参議院の構成員は、州の規模によって各州ごとに異なります。最低三名で、連邦参議院の今の構成数は六十九名でございます。ドイツの連邦参議院については大変イメージしにくいと思いますが、日本的にいえば、もしかしたらこう言った方が分かりやすいかと思います。全国知事会が立法権に参加している、各都道府県の人口数によって議員数、議決数が異なる、各知事の指示の下、各議決権は一括して投票されると、そういうイメージで描いた方が分かりやすいかと思います。
 連邦参議院はそういった組織体でありますが、州レベルの選挙の結果、連邦議会、これは日本の衆議院に相当しますが、連邦議会と連邦参議院の多数派が異なるいわゆる逆転国会が発生します。その場合、ドイツではどういう解決を図っているのかということでございます。
 今言った逆転が発生した場合は、日本の両院協議会に近しい法案審議合同協議会が形成されます。連邦議会側からは十六名、連邦参議院側から十六名です。この十六という値はドイツの州の数と同じです。この三十二名で成案を獲得すべく努力をするわけでございますが、かなりの高いレベルで成案獲得はしております。成案獲得率は約八五%です。
 この高いパーセンテージはなぜ確保できるのかと申しますと、連邦議会側の協議委員、日本的にいえば協議委員になると思いますが、それは長老の政治家の方々がおなりになる。また、連邦参議院の側は、そもそもが各州の首相、閣僚でございますので、相当な政治的経験を積んだ方々によって構成されます。妥協案がそこで形成されれば、連邦議会はまず反対いたしません。そういうことで、逆転国会が発生した場合、政権党は何とか行き詰まりを回避すべく努力をしております。
 では、日本の場合はどうかということであります。
 両院協議会が憲法上及び国会法上設けられておりますが、両院協議会は二つの形式に分かつことができます。必要的両院協議会と任意的両院協議会でございます。必要的両院協議会は、成案不成立が前提となります。衆議院の議決を確定させるためです。これに対して任意的両院協議会は、法律案に関し衆議院側がその設置を認めた場合においてのみ形成されます。しかし、成案作成が著しく困難であります。過去を見ましても、昭和二十年代はあったと思うんですが、平成に入ってからは例の政治改革関連四法のみでございます。日本では、両院協議会において成案を獲得する法的環境は、実はそもそもないと見た方が自然かもしれません。
 では、両院協議会についてどうしたらいいのかということでございますが、まず一つは、国会法改正を考えたらどうであろうかということになろうかと思います。それはどういうことかというと、衆議院優越は、憲法所定事由のみなのかと、法律で新たに創出することができるのかという論点と関連します。
 国会法十三条は、既存法律で唯一衆議院の議決に優先権を与えています。参議院側は、従来両院対等として考えていたため、法律上衆議院を優先させるということにかなり消極的であり、むしろ抵抗してまいりました。したがいまして、国会法十三条を除いて衆議院の議決に優先権を与える法律上の規定は今日もありません。したがって、国会法改正で衆議院の優越を認めるという発想は、参議院サイドの態度を改めない限り不可能でありますし、また、私もこれは現実的可能性は著しく低いと見ております。
 もう一つは、既存の両院協議会の組織をどのように変えていくのか、両院協議会の改革をすれば何とかなるんではないかということでありますが、これもかなり難しいであろうというふうに見ております。と申しますのも、現在のような衆議院十名全員与党と参議院十名全員野党では、対立があることを確認する機関で終わるからでございます。
 では、最後にということで、本院には過去の議論の蓄積があるかと思います。河野謙三議長以来の良き伝統であります。これまで、参議院の存在を示すため、重要な三つのプランが出されたと思います。任期六年制の下、長期的視野に立った議論ができる環境を本院は持っているはずだというふうに私は考えております。すなわち、参議院廃止という非常に短期的な視点ではなく、なぜ本日挙げたところの一番最初の、多くの国々は第二院を置いたのかをやはりしっかり見詰め直した方がよろしいんじゃないかと考えております。
 お約束の時間が来ました。これをもちまして、私の拙い報告、終了いたします。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 加藤一彦

speaker_id: 14898

日付: 2013-04-03

院: 参議院

会議名: 憲法審査会