藤本祐司の発言 (憲法審査会)

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○藤本祐司君 ありがとうございます。
 まず、議論の前提を述べたいと思いますが、憲法は公権力の行使の在り方を規制することを目的としているという認識で進めていきたいと思います。
 つまり、憲法とは、主権者である国民が国家機構等に公権力を委ねるとともに、その限界を設け、これを自らの監視下に置きコントロールするための基本ルールであるということの位置付けであると思います。つまり、憲法上の人権は、国家と国民の関係に適用されるものであって、私人相互間を直接的に規律することは憲法の役割ではありません。
 また、全ての国民は個人として尊重されると憲法十三条にも規定されております。さらに、人権の実現と保障は国際社会の共通の利益と認識されています。全ての人間が生まれながらにして固有の奪うことのできない権利を持つという考え方に立っていると思います。それゆえ、人権、新しい人権を考える際は、日本特有の権利としてとらえるのではなくて、国際社会共通の概念としてとらえることが必要だと思っています。
 なお、国民の権利及び義務を定めた憲法第三章は、保障すべき人権全てを網羅しているわけではありません。それゆえ、社会環境が変化し、社会構造や個人の価値観が多様化、複雑化するに従って、憲法制定時には想定していなかった新たな権利や利益が憲法で保障されるべき権利へと進んで、成長することは認識しておかなければなりません。その変化の過程で、現代社会の要請に対応して新しい人権をどのように取り扱っていくかという課題が生まれてきているのだと思います。こうした社会変動に対応するためにも、人間の尊厳の維持にとって不可欠な権利の確立が求められています。
 こうした議論の前提を踏まえ、新しい人権を憲法に組み込むかどうかを検討する際は、保護すべき新たな利益が個人の人格的生存に不可欠として一般社会に承認されたものなのか、価値観の多様化の中で他の人権と調和できるのか、憲法に書き込むことで我々の生活や価値観にどのような影響を及ぼすかなどを考慮して検討することが必要だと思います。
 確かに、いわゆる人権カタログでしょうか、人権カタログを充実させることによって人権創造機能としての最高裁判所の審理がしやすくなると思います。また、憲法に規定することによってシンボリックな意味合いも大きくなってくると思います。
 一方で、人権カタログを容易に膨らませることは人権のインフレ化を招きかねません。インフレ化が過ぎると、権利と権利のぶつかり合いが生じる可能性も大きくなります。また、憲法は多数の人権だけではなくて少数の人権も保障することにその意義を持っていると思います。さらに、憲法が示した理想が過ぎて現実性が乏しくなると、憲法の信頼性も揺るぎかねません。このような点に十分配慮して新しい人権を考えていく必要があると思います。
 さて、新しい人権の代表例でありました環境権、プライバシー権、知る権利について少し見解を述べたいと思います。
 これらの権利を憲法に書き込んだ場合、日本の姿勢を示すという意味では大変意義のあることであるとは思います。ただ、環境権の権利としての権利性の確立は、まず、環境基本法を始め個別の環境保護立法の整備で対応できるかどうか、ここの点をしっかり検討することが必要だろうと思います。プライバシー権は、幸福追求権やその背後にある個人の尊重の理念によって基礎付けられると思います。知る権利は、広義的には表現の自由を支える基礎的権利であると解釈でき、いわゆる情報受領権、あるいは情報収集権に含まれると考えられます。この知る権利は、マスメディアの表現の自由と衝突するものでもあり、行政情報の公開を求める権利となれば、国や地方自治体の秘密の保持の要請と調整する必要が生じてくると思います。
 結論を申し上げますと、この環境権、プライバシー権、知る権利につきましては、憲法で事細かく規定することはできませんし、それを権利性を持たせていくというためには、まずは法律を整備することが優先順位として高いのではないかなというふうに思います。少なくとも、憲法改正をする理由として、このような新しい人権が優先するということではないのかなというふうに思っております。
 そういう意味で、この新しい人権については、権利性の確立をまず考えた上で慎重に検討していく必要があるのかなというふうに思っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 藤本祐司

speaker_id: 30800

日付: 2013-06-12

院: 参議院

会議名: 憲法審査会