萩本修の発言 (国際・地球環境・食糧問題に関する調査会)

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○政府参考人(萩本修君) 法務省の萩本でございます。
 法務省からは、民法を所管する立場から、水資源の保全のための法整備についての一般的な考え方を御説明したいと思います。資料は、右上に法務省民事局と書かれたものでございます。
 水資源の保全を目的として何らかの規制を行う場合、土地の所有権との関係をどのように考えることになるのかといった御質問を受けることがございます。
 そこで、まず資料の1(1)で、水資源の保全のための法整備と所有権との関係について御説明いたします。
 民法は、所有権について、所有者は、法令の制限の範囲内で、所有物の使用、収益及び処分をすることができると定めております。資料のその中ほどに参照条文を掲げておりますが、民法第二百六条を御覧いただきますと、その文言上、法令の制限内においてという留保があることから明らかなとおり、所有権は一定の場合には一定の制限を受けることが元々想定されております。所有権に対する法令の制限にも様々なものがあり、各省庁が様々な行政目的を達成するためにそれぞれの所管の法令において様々な制限を規定しております。
 水に関係するものとしましては、他省庁の所管法律になってしまいますので資料には掲げておりませんけれども、例えば建築物用地下水の採取の規制に関する法律という法律がございます。これは、特定の地域内において冷房設備などの用に供する地下水の採取について、地盤の沈下の防止のため必要な規制を定めたものでございます。この法律が適用されますと、たとえ土地の所有者であっても地下水の採取について一定の制限を受けることになります。
 したがいまして、水源地の土地の所有権につきましても、水資源の保全のために取水を制限するなど一定の制限をすることは民法上可能でございます。もっとも、土地の所有権も財産権に該当しますから、その制限をするに当たっては憲法二十九条の財産権の保障との関係を考慮する必要がございます。財産権の制限が許容されるためには、規制目的が正当性を有することと、規制手段がその目的を達成するための手段として必要性、合理性を有することを要するとするのが最高裁判所の判例の考え方でございます。
 水資源の保全のための法整備を検討するに当たっても、規制目的と規制手段の両面からの検討、すなわち、水資源の実態を踏まえた上で、その保全という目的に照らしてどのような場所についてどのような内容の規制をすることが必要かつ合理的であるかを検討する必要があるものと考えられます。
 次、資料の1(2)ですが、水資源の保全という観点から、外国人や外国資本による水源地の取得を規制すべきとの指摘がございます。今申し上げた水資源の保全のための法整備と所有権との関係を前提としますと、このような指摘には資料の1(2)の①及び②のような検討課題があるものと考えられます。
 一つ目は、規制の対象となる主体についてです。すなわち、外国人や外国資本のみを日本人と区別して規制することが水資源の保全という目的を実現するために必要かつ合理的と言うことができるかという検討課題です。外国人や外国資本に限らず、日本人についても水資源の保全を害するような行為を防止することが必要ではないかとも考えられます。
 二つ目は、規制の対象となる行為についてです。すなわち、水源地の所有権の取得を規制することが水資源の保全という目的を実現するために必要かつ合理的と言うことができるかという検討課題です。
 水源地の所有権の取得自体が直ちに水資源の保全を害する行為であるとは限りませんし、水資源の保全を害する行為をしようとする場合には、水源地の所有権を取得しなくても、水源地を賃貸借するとか、水源地に不法に侵入するとか、そういうことにより水資源の保全を害する行為を行うことが可能であるとも考えられるところです。
 水資源の保全という目的を実現するためにいかなる法整備が必要かつ合理的であるかという点は、水資源の保全に関する事務を所管する省庁において検討されるのが適切ではありますが、今申し上げたような検討課題を踏まえますと、外国人、外国資本による水源地の取得を規制するのではなく、水資源の保全を害するような行為そのものを、その主体のいかんを問わずに規制するということが規制目的に照らして必要かつ合理的な手段ということになるのではないかと考えられるところです。
 政府としてこのような検討を行うに当たりましては、法務省も民法を始めとする民事基本法を所管する立場から協力してまいりたいと考えております。
 次に、資料の二枚目を御覧ください。
 従前から、外国人、外国資本による土地取得に対しては、法務省が所管する外国人土地法に基づく政令を新たに制定することにより対応できるのではないかとの御指摘をいただくことがございます。
 そこで、外国人土地法の概要と、これによる対応の問題点について簡単に御説明いたします。
 我が国においては、明治六年に制定された地所質入書入規則で外国人の土地取得を禁止しておりました。外国人土地法は、そのような状況の中で、外国人、外国法人による土地取得を解禁することを目的として大正十四年に制定されたものでございます。もっとも、外国人土地法は二つの場合について例外を規定しております。
 例外の一つ目は、相互主義に基づく例外でして、外国が日本人による土地取得を制限する場合には、政令を制定して当該外国の外国人、外国法人について日本における土地取得の制限をすることができる旨を規定しております。
 例外の二つ目は、国防上必要な地区についての例外でして、国防上必要な地区については政令を制定して外国人、外国法人による土地取得を制限することができる旨規定しております。
 もっとも、相互主義に基づく政令はこれまで一度も制定されたことがございません。また、国防上必要な地区を定めた政令は、戦前に一度制定されたことがありますが、昭和二十年に廃止され、それ以降はこれに関する政令も定められたことはございません。
 以上が外国人土地法の概要ですが、外国人土地法に基づく政令を新たに制定して外国人や外国資本による土地取得を規制することができるかと申しますと、それには次のような問題があるものと考えております。
 外国人土地法は、その規制の対象となる権利、制限の態様、それから制限違反があった場合の措置などについて具体的に規定しておりません。これらを全て政令で定めることとしておりまして、言わば政令に白紙的、包括的に委任をしております。
 このような白紙的、包括的な委任は、国民の権利を制限し義務を課すことは国会の立法によって行わなければならないという憲法の原則に抵触するおそれがあるところでして、具体的な委任なしに新たな政令を制定すれば憲法上の問題が起こりかねないものと考えております。そのため、外国人土地法に基づく新たな政令を制定することにより外国人や外国資本による土地取得を規制することは困難であると言わざるを得ないのではないかと考えているところでございます。
 他方で、じゃ、新たな法律を制定して外国人、外国資本による土地取得を規制することにつきましては、先ほどこの資料の一枚目に基づいて御説明したとおりの検討課題があるということになります。
 繰り返しになりますが、水資源の保全という政策目的を達成するためには、いかなる法整備が必要であり、かつ合理的であるかについて、規制目的を踏まえた規制手段が検討される必要があると考えられます。そのような課題につきましては、法務省も政府の一員として、民事基本法を所管する立場から協力をしてまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 萩本修

speaker_id: 829

日付: 2013-02-06

院: 参議院

会議名: 国際・地球環境・食糧問題に関する調査会