白川浩道の発言 (国民生活・経済・社会保障に関する調査会)

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○参考人(白川浩道君) 白川です。どうぞよろしくお願いいたします。着席してやらせていただきます。(資料映写)
 お手元に私のパワーポイントのプレゼンテーションあるかと思います。
 まず、冒頭、少し何枚かのチャートを御覧いただいて、日本経済の過去、そうですね、数年間の動きをちょっと振り返らせていただいて、その後、消費税増税どう考えるかという話をさせていただきます。今日は、一緒に参考人でいらっしゃいます鈴木さんは割と詳しく社会保障の話をされるんじゃないかと思いますが、私は余り社会保障のところに踏み込まずにマクロの話を中心にいたします。
 まず、一ページ目ですけれども、これは日本のGDPと、それからごく簡単な財政関連データをお示ししております。前回の消費税増税、一九九七年度にあったわけですけれども、この当時からGDP、これはよく実質化して議論することがございますが、これはほとんど財政は実質化する意味はございませんので、名目、つまり金額ベースのものをお示ししておりますけれども、当時五百二十兆円あったGDPが、今年度まだ終わっておりませんけれども、大体四百七十兆円強に減少するということで、いわゆるGDPは五十兆減ったということであります。国民一人当たり年間四十万円ぐらい所得が減った計算になります。国税収入は、この間、五十四兆から四十四兆に、ちょうど約十兆減ったということであります。
 一方で、非裁量的な支出、つまり政府が余りコントロールのできない歳出、社会保障と、これ社会保障は場合によってはコントロールできる部分ありますけど、基本的には人口動態によって影響されますので余りコントロールできないとすれば、この社会保障とそれから国債費、国債の利払いと償還費、九七年度が約三十一兆円強、これが四十六兆円に増えたということであります。
 基本的には、GDPが減って税収が十兆減り、政府がコントロールしにくい歳出が十五兆増えたということで、この両者のバランスは二十五兆円分悪化したということであります。したがいまして、非常に政府の財政運営は厳しくなっているということが確認できると思いますが。
 次のページを御覧いただきますと、その中で、じゃ名目GDP、今申し上げたように約五十兆減ったんですけれども、何が減ったかということであります。
 これは、基本的には投資関連、住宅投資、企業の設備投資、公共投資。公共投資は、先ほど御覧いただいたように、政府の裁量的な支出の余地がかなり落ちましたこともあって、かなり減ったということであります。それからもう一つは、海外との関係であります輸出。純輸出というのは、これは輸出マイナス輸入ですけれども、大ざっぱに申し上げればこれが大きく悪化したと。基本的には、ここの冒頭に書かせていただいているように、深刻な投資不況と外需、つまり輸出の縮小ということであります。
 これは、一つは財政の問題ですが、もう一つはやはり産業空洞化、それから、不幸にして起こりました大震災の影響でエネルギー輸入が増えたということであります。
 ここで注目すべきは消費でございますけど、実は消費はほとんど横ばいであったということでございます。つまり日本経済は、投資不況、外需の縮小の中で、相対的に見れば消費が支えてきたということであります。したがいまして、消費税を考えていく上では、何とか日本経済を支えてきた消費がどういう動きをするかということが非常に重要になるというふうに思います。
 三ページ目は、これは御参考ですのでそんなに詳しく見ていただかなくても結構ですが、今申し上げたような外需の縮小ということの裏側では、日本の対外的な、いわゆる所得の能力であります経常黒字というのがちょうど二十兆円ぐらい減ったという、これは確認でございます。
 問題は、今申し上げたように、相対的に日本は家計消費は安定してきた、安定していたということでありますけれども、では、なぜ家計消費が、世界経済の中で日本は空洞化し、輸出が悪化する中で、そして投資が落ちる中で、家計消費だけがなぜ相対的に安定していたかと。これは、非常に単純に申し上げると、年金の支払を高齢者が使ったということであります。
 基本的に、家計可処分所得というのを御覧いただきますと、実は二十四兆円も減っております。しかし、消費が横ばいだったということは何を意味しているかというと、サラリーマンを中心とした現役世代の所得は減ったんだけれども、それが消費には反映されなかったということであります。
 その大きな理由は、ここに現金社会給付とありますけど、これ基本的には年金であります。年金が二十二兆、一九九七年度対比で、昨年度ですけれども増えているということで、実は日本経済、相対的に消費が安定的であったのは、サラリーマンを中心とした現役世代の所得は減り、恐らくその方々の消費も減ったんですけど、年金給付によって高齢者の消費がかなり日本経済を支える要因になってきたということであります。
 したがいまして、年金支払をカットすれば当然高齢者の消費が落ちる可能性が高いということになるわけでありまして、なかなか政府として景気を考えたときも年金給付削減という議論はしにくいというふうに、その面からは考えるわけであります。
 ところでといいますか、ところがと言った方がいいと思いますけれども、ところが、では、消費税を増税して、年金バランスというものをずっと維持してなるべく高齢者にお金を使ってもらうということは、ある意味では経済的にメークセンス、つまり意味があると思える一方で、私自身はどちらかといいますと、所得で見た所得階級といいますか、比較的所得の低い方々の消費へのインパクトを増税はよく気にしますけど、私はどちらかといいますと世代を気にしております。
 世代という意味は、若年層ほど消費税耐久力が弱い。したがって、高齢者にとって消費税増税は相対的には問題が少なく、かつ日本経済の一つの元気な部分である消費を落とさない意味でも重要ではあるかと思いますが、一方で、若年層にとっては消費税増税は当然マイナスのインパクトをもたらすと考えた方がいいと思います。
 これは問題は、どちらかといいますと私の理解は、世代間の闘争と言うと極端ですけれども、世代間のやはり所得分配的な、ないしは勝ち負け的な、極端に言ってしまえばそういう税制になる可能性があると思っております。増税としてはそういう効果を持ってしまう可能性があろうと思います。
 通常、増税を議論する際には、所得の低い層、若年層は、簡単に言うと消費比率が高く、特にエンゲル係数も高いということで、消費税増税の影響は大きく出るという議論がありますけど、それは当然正しいんですけれども、一つ考えていただきたいのは、経済学で考えるときにはフローの所得だけで消費を議論いたしません。当然フローの所得は大事です。フローと言っているのは年間の給与所得、これは大事でありますし、高齢者にとっては年金所得が大事ですけれども、実はストック、つまり残高ということでいきますと、金融資産をどれぐらい持っているかということが経済学でいう消費にはかなり重要になります。
 若年層の問題は、ライフサイクル的に所得が低いところにまだいるという問題だけではなくて、貯蓄がないということであります。どんな人でも一定の貯蓄計画というのを持って生活している。つまり、二十代、三十代、四十代となっていく上で、自分はどれぐらい毎月ためていこうかと、どれぐらいためたら家を買おうかと。ライフサイクルが当然そこにはあるわけでございます。
 つまり、若年層にとっての消費税の問題点は、消費余力が預金も含めて考えますと非常に低い状態にある、そういう人たちに増税の効果として何が出るかといいますと、自分たちの貯蓄計画に狂いが生じるということです。極端に言うと、百万円の所得のうち八十万円を消費に使って二十万円を貯蓄しようと思っていた。しかし、その八十万円が増税によって八十四万円になると、十六万円しか貯蓄ができない。そうすると、二十万円できるはずが十六万円しかできないということになりますので、四万円分やれることは何か、消費を落とすということであります。
 この五ページのチャートは何を意味しているかといいますと、これは年間の所得、年間の給与所得プラス平均的に例えば二十代の方が持っている預金、これ世帯の平均的なものですから、それを足し上げてその消費額に対する比率を示しております。イメージで申し上げますと、二十代の方々は平均年間所得が大体ざっくり二百万円ぐらいだと思っていただけばいいんですけれども、それに対する消費が大体二百万円ぐらいなんですが、預金を二百万円持っていますので、二百万足す二百万で四百万という数字が消費の二倍になっているということで、ここではブルーのバーチャートは二倍という数字になります。つまり、自分の預金と所得の大体半分が消費になっていると。ただ、七十代になりますと、自分が年間消費している消費額の約五倍、五倍に近い金額を預金と所得で持っているということであります。
 したがいまして、消費する際に預金ということも含めて考えて、ないしは貯蓄ということも含めて考えていきますと、消費税増税のインパクトは若年層に非常に大きく出ます。この赤いラインは、どれぐらいのインパクトが五%の消費税で出るかということを示しております。
 つまり、今申し上げたように、若い世代は消費税増税をまともに受け入れてしまいますと、イメージ的には自分の貯蓄と所得を合わせた金額のうち大体七%目減りするということですから、自分の将来の貯蓄計画が狂う分、消費の金額を落とすということになりますので、消費税を増税し年金を維持することは、高齢者の消費にとっては恐らくプラスと思われますが、若年層にとっては恐らくマイナスというふうに出ざるを得ないと。
 じゃ、日本経済全体で見たらどうかということなんですけど、高齢層の方々の消費の金額の方が絶対額としては大きいと思います。実はもう今、この間もデータを見ていて自分でびっくりしたんですけど、何と六十歳以上の方の人口が四割を超えています。したがいまして、二十代、三十代と六十代超を恐らく比べますと大体二対一ぐらいしかありませんので、負け組になってしまう若年層のなかなか声を代弁するということにマクロ政治的にはならないというふうに思います。私はどちらかというと、別にどこの世代をサポートしようとしているという強いあれがあるわけではありませんが、私の意見は、申し上げたように、若年層にしわが寄るという世代間の不公平の問題があるというふうに考えております。
 ちなみに、若い方々はどこにお金を使うか、使っているかということであります。これは先ほど申し上げた、人の一生にはライフサイクルがありますので、大体若いときは貯蓄がありませんから、家賃等にお金を使う傾向が当然あるわけです。例えば、これは二十代から七十代にかけての年齢階層別の消費構造ですけれども、食料は若い方も高齢者も大体二割で大きくは変わりません。これ、所得階級にしますと当然低い方がウエートが上がりますけど、世代的には余りありません。
 ところが、家賃には顕著な差があります。つまり、年を取っていく過程で貯蓄ができれば家を買うという行動が出ますから、当然、持家比率が上がり、家賃のウエートは下がっていくということで、この食料と家賃と光熱水道という基本的には一般の家計がコントロールしにくい消費、固定費ですね、これは若年層は全体の消費の半分を占めています。したがって、若年層の消費に影響が出るとすれば彼らは何を切るかということになるわけですけど、基本的に食料、家賃、光熱水道が切れないということは、恐らく楽しみの消費が減るということであります。つまり、若い人たちの当然所得が痛んで、その分消費が悪化するということですけど、非常に暗い世界が若い人たちには来る可能性があると。
 一方で、高齢者の方々はいわゆるこの固定費的なもののウエートが小さい部分があります。まあ、ちょっとデータ的には家賃が七十代になると少しまた上がってしまうというのは、これ統計的には、恐らくですけれども、持家を一旦売られる方がいたり、それから医療的な施設に入られる方がいたりということもあると思いますけれども、相対的には、特に五十代、六十代というのはウエートが低くなりますので、こういう方々は貯蓄があって余力がある上にインパクトが小さいですから、楽しみの消費もできる余裕があって、そういう方々に対するインパクトは小さいということで、余り論理の飛躍をしてはいけないと思いますけれども、やはり若年層というライフサイクルの若い層へのインパクトを考慮していきませんと、若年層がますます閉塞感を持ち、そして極端に申し上げると、ひょっとすると出生率に影響が出るかもしれないと。
 そこまでおっしゃる社会保障学者の方はいらっしゃいませんし、私も特に人口とかが専門ではありませんので何とも言えませんけど、そういう意味でのバランスといいますか、高齢者と若年層のバランスを考えていくことは非常に重要になるだろうというふうに考えております。
 私の方は大体そんなことで、まとめのところに書かせていただいたことは今申し上げたようなことを基本的に書かせていただいておりますけれども、実は四点目のところに、これは私の持論でありまして、もう二年、三年前から申し上げていて、実は評判が悪く、ほとんどの方が賛同をしていただけないという状態が続いておりますけど、私は消費税ではなく貯蓄に課税しろということをずっと言ってきております。これを申し上げると、メディア等でも取り上げていただいたことがあるんですが、大変な反発が高齢層からありまして、某テレビ朝日のラインがパンクしたと、私が貯蓄税を三度にわたって特別番組で組んでいただいたときに、その後、高齢者の方々から批判の電話が鳴りやまないと。
 ただ、私が申し上げたいのは、先ほど申し上げたように、こういったバランスのことを考えますと、実は余裕がある貯蓄を持った高齢者から、まあ高齢者と言っちゃいけないですね、これは大体高齢者がたまっているからなんですけど、富裕層、高齢者の方々の貯蓄に課税していく方が基本的には正しい、その方がデフレ脱却にも資するということで、それを申し上げてきているために、ちょっとこれ、ちらっとここに書かせていただいたということでございます。
 以上、私の方からはこれで終わりにさせていただきます。

発言情報

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発言者: 白川浩道

speaker_id: 13141

日付: 2013-03-13

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済・社会保障に関する調査会