白川浩道の発言 (国民生活・経済・社会保障に関する調査会)
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○参考人(白川浩道君) 今御指摘いただいたように、私がかつて分析したところでは、量的緩和政策による円安の副作用といいますか、経済に対する効果として、実は福井総裁時代に、二〇〇一年から二〇〇六年にかけて日本銀行は量的緩和をいたしましたけれども、この後に起こったことは実はデフレだったということですね。
解釈が二つありまして、二〇〇六年三月に量的緩和を五年でやめたからデフレになったのだという考え方が一つ。それからもう一つは、これは非常に難しいところなんですが、実は金融緩和というのはデフレを促すんじゃないかという、非常に自己矛盾的なことであります。浜田先生に言ったら多分怒られてしまうと思いますけれども。
私のこの二〇〇六年にかけてのイメージは、円安というのは株高をもたらし、株高をもたらす過程で企業の収益が上がり、そして企業は設備投資を結構積極的に増やしました。これは一時的には景気浮揚に見えます。ところが、需要が冷え込みますと、今度は過剰設備になってしまうということでありまして、難しいところですけれども、実は二〇〇六年にかけての量的緩和の後に起こったことは、車のメーカーも電機も投資をし過ぎて、終わってみたらば過剰設備を抱えてしまいデフレ的になってしまいましたと。一方で、需要の根幹であります消費は、輸入物価が上がり、エネルギー、食料が上がったために、今度は実質消費は伸びなかったということで、量的緩和政策によってむしろデフレギャップが広がってしまったというのが経験として言えると思います。
現状は、少し話が変わっております。この量的緩和を前回やめてから約七年が経過いたしましたけれども、一つの大きな変化は、日本経済では空洞化がかなり進展いたしまして、企業の国内における設備投資のインセンティブは物すごく落ちてしまったんですね。ですから、今の、まだアベノミクスなるものがスタートしてそんなに時間がたっておりませんので結論を出すのは早いかと思いますが、現状では企業の方々から投資を増やすという話は余り聞こえてきません。したがいまして、過去に比べて円安によって国内で過度な投資が行われる可能性はかなり減ったという意味で、七年前とか十年前に比べますと、金融政策のこのマイナスの効果が出にくくなっている。
ただ、問題はこの消費でございまして、これは、やはり急激に物価が上がりますと、これは消費税増税と全く同じですけれども、やっぱり消費は縮こまる傾向がどうしてもありますので、問題はそこがどうかということです。
もう既に輸入物価は前年対比で一五%ぐらい上がってまいりましたので、これ早晩、夏場ぐらいにかけては食料品が上がり始めると思いますけれども、これがかなり急激ですとやはりちょっと消費にマイナスの影響が出てくる可能性がありますので、何とかこれを相殺するような政策的なものを講じていきませんと、やはり残念ながら、特に金融緩和が始まって一年間ぐらいはデフレ的な効果が強く出てしまうと。しばらく時間がたってきますと、恐らく為替もどんどん円安にならないでしょうから、輸入インフレ圧力も落ちていくでしょうし、そして、株価が上がるなどの効果によって徐々に染み出してくる効果が勝れば消費も落ち着いてくると思いますけれども、向こう一年ぐらいはちょっとその心配がありますので、やはりそこは、賃金が上がることが大事ではあると思いますけれども、なかなか企業も皆さん、賃金上げるかどうか分かりませんので、やはりちょっと短期的にはそこは少し心配しているところではございます。
ただ、私、日銀出身ではありますけど、必ずしも緩和に否定的ではないんですが、そのポイントは、先生の二つ目の御質問に関しますけれども、日本銀行は、私のこれは考え方で、日本銀行の方々はそう思っていないと思いますし、財務省の方々もそう思っていないと思いますけれども、もう日本銀行が国債を買うしかありません、基本的にはですね。これだけ膨大な国債を誰が将来買って持っていくんでしょうということでありまして、これはやはり日本銀行が一定のレベルの国債を保有せざるを得ないと思います。
したがって、デフレ脱却という政策目標のために日本銀行が国債を買うということだけではなくて、将来の金融システムの安定も考えますと、日本銀行が一定量の国債を保有することはもう不可避だというふうに考えております。つまり、今七百兆円ぐらいある国債のうち日本銀行が今百兆円持っていますが、これ七分の一です。私のざっくりとしたイメージは、日本銀行は多分市場の三割は持たないと駄目ではないかと。駄目ではないかという意味は、それぐらい持っておくことによって将来の国債の下落リスク等も日本銀行が背負うということであります。ただ、これは当然中央銀行のバランスシートが悪化しますので、為替や金利に影響が出る可能性はありますけれども、そこは不可避だという意味で、必ずしも緩和に否定的な部分があるわけではございません。
それで、今の、国債金利の話出ましたけど、株価がこれだけ上がって円安になっているのになかなか国債は売られませんねと、なぜなんでしょうかということですが、これはやはり市場の参加者、特に大手の金融機関の方々は、今の金融政策、リフレと呼んでいますけど、リフレ政策ですぐにインフレになると思っている方はやっぱり非常に少ないということで、なかなか景気回復、物価上昇というのが想定しにくい。そういう中で、日本銀行が恐らく国債をもっと買ってくれるだろうという期待で、むしろ需給で国債が買われて金利が下がってしまっていると、そういう理解をしておりますので、当面は金利がなかなか上がらないだろうというふうに思います。